社労士(社会保険労務士)に相談・依頼できる業務とは? 外注とコンサルティングについて徹底解説

社労士(社会保険労務士)に相談・依頼できる業務とは? 外注とコンサルティングについて徹底解説

会社に長く勤務した人であれば、社労士に間接的にお世話になったことがあるかもしれません。

「社会保険労務士」「社労士」と聞くと、会社の労務に関係する専門家、ということは想像できても、具体的にはどのような業務に携わっているのか知らない人は多いでしょう。

この記事では社労士の業務についてまとめ、どのような局面で必要とされ、どういった相談ができるのか解説していきます。

1. 社会保険労務士(社労士)とは?

社労士とは「社会保険労務士」の略です。社労士は「社会保険労務士法」に基づいた国家資格者であり、社会保険、労働に関する問題や諸手続きに関する相談を、個人から企業までを対象として行います。

社労士とはいわば、企業の「ヒト・モノ・カネの資本(リソース)に関する専門家」であり、その存在目的は、快適な企業の運営や個人の生活をつくることに貢献することです。

社労士も、一般的に士業と呼ばれる職業のひとつであり、行政書士や司法書士などとともに、認知度の高い資格です。

(1)社労士の主な仕事

社労士の仕事は、具体的にはどのようなものでしょうか。社会保険労務士試験オフィシャルサイトによると、社労士(社会保険労務士及び社会保険労務士法人)の仕事には以下のようなものがあります。

・労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成
・申請書等の提出代行
・申請等についての事務代理
・都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続の代理
・都道府県労働局における男女雇用機会均等法、パート労働法及び育児・介護休業法の調停の手続の代理
・個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理(紛争価額が120万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
・労務管理その他の労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

同サイトによれば、このうちはじめの3つの業務「労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成」「申請書等の提出代行」「申請等についての事務代理」に従事できるのは、社会保険労務士又は社会保険労務士法人であるとしています。資格を保持しない者は、これらを行うことで報酬を得るなど「業として」行うことが許されていません。

なお、4つめ以降の業務についても、「業として」行うことのできる者が限られています。紛争解決手続代理業務試験に合格し、社会保険労務士名簿にその旨の付記を受けた特定社会保険労務士、及び、特定社会保険労務士が所属する社会保険労務士法人がそれに該当するのですが、そうでない者はこれらを業として行い報酬を得ることはできません。

社労士の具体的な仕事は、簡潔にまとめると以下の3つが主なものとなります。

①労働社会保険の諸手続き
②労働管理についての相談指導
③退職後の年金に関する相談

全国社会保険労務士会連合会ホームページによると、社労士の業務目標は「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施、労働者を取り巻く環境や福祉の向上」となります。人を大切にする企業づくりの支援を使命とする社労士は、労働者の採用から退職にわたって職場や企業の悩みを解決し、個人の退職後の生活のケアや年金の相談を行うことも使命としています。

(2)社労士試験の難易度と受験資格

社労士になるには、年に一度行われている国家試験に合格する必要があります。

①試験科目と難易度

社労士の試験には「労働基準法」「雇用保険」「健康保険法」をはじめ、労務に関する10の法律分野から問題が出題されます。非常に範囲が広いため、十分な準備時間をもって対策しなければいけません。試験科目は下記の通りです。

労働基準法及び労働安全衛生法
労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
雇用保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
労務管理その他の労働に関する一般常識
社会保険に関する一般常識
健康保険法
厚生年金保険法
国民年金法

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

社労士試験は、国家資格のなかでも非常に難易度の高い試験の一つとされています。毎年約4万人ほどが受験しますが、過去10年間の合格率の平均は6.5%と、難関であることがわかります。

②受験資格

社労士試験の受験資格には詳細な規定が設けられており、誰でも受験できるものではありません。前述のサイトによると、受験資格は主に下記の3つに分けられます。

①学歴
②実務経験
③厚生労働大臣の認めた国家試験合格

社労士国家試験を受験したい場合、まず自分が受験資格を有しているか否かを確認する必要があります。

2. 社労士に相談・依頼できること

冒頭でも解説した通り、社労士は「ヒト・モノ・カネの資本(リソース)に関する専門家」です。社労士に相談・依頼できる仕事は、大きく分けて2種類あります。「ヒトに関する業務のアウトソーシング(外注)」と、「ヒトに関する業務のコンサルティング」です。

(1)ヒトに関する業務のアウトソーシング(外注)

まず、ヒトに関する業務のアウトソーシング(外注)とは、総務部・人事部・労務部といった管理部門における、ヒト(人的リソース)に関する業務を社労士に依頼することを指します。

一般的に、こういった業務は自社内でが行われるものですが、もちろんそれができない場合もあるでしょう。そのような場合に、社外の社労士に業務を任せることになるわけです。

例えば、会社が成長すると、組織や制度を整え、雇用を拡大していかなければなりません。そういった状況を迎えた時こそ、社労士に相談すべきでしょう。

社労士は、労働関係法令・社会保険法令にのっとった各種書類の作成・届出、また労務管理や社会保険などを専門とし、「ヒトに関する業務」についての適格なサポートやアドバイスをのぞめる専門家だからです。

社労士に相談・依頼できる具体的な仕事としては、下記のようなものが挙げられます。

・社員の入社・退職時の雇用保険手続き
・健康保険・厚生年金の資格取得や喪失の手続き
・労働災害(労災)発生の届出
・健康保険証の変更手続き業務(社員の扶養家族の増減にともない)
・社員の住所、氏名変更による雇用保険・健康保険などの変更手続き業務
・会社の移転・支店など拠点の増減による労働・社会保険上の手続き
・給与計算や勤怠管理業務
・労働保険料年度更新業務
・算定基礎届
・出産一時金・傷病手当金など健康保険関係の給付手続き

(2)ヒトに関する業務のコンサルティング

もう一つ、社労士に相談・依頼できる業務として「コンサルティング」があります。人事・労務管理に関するコンサルティングについて見ていきましょう。

企業がコンサルティングを受けると聞くと、経営戦略やブランディングに関する内容というイメージがあります。社労士のコンサルティングは、「ブラック企業」と呼ばれないための、健全な企業であるための制度設計にまつわる内容となります。

社労士に相談・依頼できるコンサルティングの内容としては、下記のようなものが挙げられます。

・就業規則の作成・見直し・変更
・変形労働時間制・裁量労働制などの導入
・社会保険事務所・労働基準監督署の調査指導の対応業務
・助成金の申請代行
・賃金制度設計や評価制度の導入
・退職金制度
・社会保険料の適正化
・高齢者の定年後の継続雇用

3. 社労士に相談・依頼すると良いケースは?

社労士に相談・依頼できる業務について具体的に見てきました。それでは実際に、会社がどのような状況を迎えた時に社労士に相談・依頼するべきなのでしょうか。それぞれのケースについて紹介します。

(1)アウトソーシング(外注)の相談をするべきケース

まずは業務単位でのアウトソーシング(外注)の相談・依頼がふさわしい、4つのケースから見ていきましょう。

①余裕がなく「ヒトに関する業務」専門の社員が置けない

スタートアップ期のベンチャーや中小企業では、社長自らが人事・労務関連の業務を行っていることも多いでしょう。業務過多で本来の業務に支障が出てくることから、社労士に相談してくるケースがよく見られます。

また、人事・労務担当者がいる場合でも、継続的な教育が必要です。特に、働き方改革関連法でさまざまな法改正が生じた2019年を境に、その重要性がクローズアップされています。ここを社労士にアウトソーシング(外注)することで、最新知識の更新を始めとした担当者教育の継続が可能になるわけです。

②事業が急成長し「ヒトに関する業務」が溢れてきた

経営が軌道に乗り、事業が急速に成長して社員が大幅に増加した場合も相談のタイミングです。管理部門では入退社手続きや給与計算業務が急増し、かつ複雑化します。

企業規模の拡大に、担当者の採用・育成が追い付かない場合、専門家である社労士へのアウトソーシング(外注)を検討するのが賢明でしょう。

③特定の時期にだけ「ヒトに関する業務」が集中してしまう

スタッフの増員というソリューションでは、繁忙期以外は人員過剰になってしまうケースがあります。この場合においても、社労士へのアウトソーシング(外注)が功を奏します。

月末に給与計算が集中し、そのために残業代をかなり支払っているような企業は、年に一度の業務(労働保険年度更新や社会保険算定基礎届)においても、手続きや作業を溜め込んでいるものです。このような場合も社労士に依頼をすべきでしょう。

④外部委託で「ヒトに関する業務」を合理化したい

合理化による人件費削減で、人事・労務のアウトソーシング(外注)を行う場合もあります。企業規模にもよりますが、人事・労務をすべてアウトソーシング(外注)すると、コストは1/3になるといわれます。

人事・労務の規模が必要以上に膨らんできたと感じたら、社労士へのアウトソーシング(外注)という選択肢を検討するのも良いでしょう。

(2)コンサルティングの相談をするべきケース

次は、単なる業務のアウトソーシング(外注)ではなく、コンサルティングから任せると良い6つのケースをご紹介します。

①社内規則や規定などの整備・見直しをしたい

まず、社内規則・規定をつくりたい場合は、専門家である社労士へアドバイスやサポートを求めましょう。離職率を下げる、労働者のモチベーションと業績アップ、労使の関係改善など、社内規則・規定の作成にあたってのさまざまな理由を社労士に相談し、コンサルティングを依頼することが可能です。

②助成金の申請や受給を検討している

助成金の申請・受給に関するコンサルティングも社労士に依頼できます。申請の条件として、就業規則の整備や運用の実績が求められる場合もあるため、社労士のサポートを要する企業が多いのです。

助成金の申請がきっかけで、就業規則を整備しようとするベンチャー・中小企業は多いのですが、社労士にコンサルティングを依頼すれば、「就労規則の作成・運用」に始まり「助成金の申請」まで一貫してサポートを受けることができます。

③賃金制度の設計をしたい

賃金制度の設計に関しても、専門家である社労士のサポートを受けた方が良いでしょう。会社に合った賃金体系の構築をサポートしてもらうことが可能です。

社員の採用や社内モラルにも大きく関係する賃金体系のあり方は、会社の経営に大きく影響します。応募者の増減に関わったり、多くの離職者を生んだり、逆に賃金水準が高すぎると経営が圧迫されたりするからです。能力給や年俸制、成果給の導入に関する相談や、同業他社の初任給や賃金水準についての質問に対応できるのは、社外の社労士ならではの強みと言えるでしょう。

④社会保険の整備をしたい

社会保険の導入に関しても、社労士の専門性を信頼できるでしょう。創業期には社会保険の整備がいい加減だった企業は、成長にともなってそれが問題化する場合もあります。未加入だったパート・アルバイトの社会保険加入や、社会保険事務所の調査対応、社会保険料負担の増大などについても、社労士への相談で解決できるケースが考えられます。

⑤ヒューマン・リソース・マネジメントにについて相談したい

人材の採用を始めとした、ヒューマンリソース(人的資源)管理に関しても、社労士によるサポートが受けられます。

「優秀な人材が欲しい」「リストラを考えている」といった状況下では、人的リソースに関する法的専門家のアドバイスを求めることが重要です。また、定年後の高齢者の効率的雇用などに関しても然りです。また、人件費を抑えながらも優秀な人材を採用したいというスタートアップのニーズにも、社労士からの具体的なアドバイスが期待できるでしょう。

⑥人事労務関連のトレンドを知りたい

他社の人事労務管理制度を知りたい場合や、人事労務関連の法改正の最新情報を得たいという場合も、社労士に相談できます。特に、数十年ぶりの労働基準法改正が行われた現在、最新の情報を求める声は多いはずです。

ベンチャー企業のような若い会社にとっては、社労士から他社の優れた人事労務管理制度について学べることは、貴重な機会です。法改正情報を正しく把握したい場合も、社労士のサポートが有効となるでしょう。

4. サマリー

いかがだったでしょうか。社労士の業務内容と、相談・依頼がふさわしいケースをご紹介しました。

社労士の具体的な仕事内容からイメージを膨らませると同時に、コンサルティングという側面からも社労士の理解が深まったかと思います。企業の状況に応じて幅広く対応できる、まさに専門家たる社労士の姿が見えてきたのではないでしょうか。

5. まとめ

・社労士は、企業の「ヒト・モノ・カネの資本(リソース)に関する専門家」である
・社労士試験の難易度は高く、過去10年間の合格率の平均は6.5%
・社労士には、ヒトに関する業務の「アウトソーシング(外注)」と「コンサルティング」を相談できる
・社労士への相談や依頼は、企業の置かれている状況に応じて行うと結果が出やすい

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