社会保険労務士(社労士)試験で重要な雇用保険法の出題傾向・ポイントと学習法

社会保険労務士(社労士)試験で重要な雇用保険法の出題傾向・ポイントと学習法

社労士試験(社会保険労務士試験)では様々な法令が試験科目になっていますが、そのうちの一つである雇用保険法は、労働者が失業した場合に支給される給付などについて定めている法律です。

社会人であれば、馴染みやすい法律であると言えますが、覚えるべき用語や数値が非常に多く、苦手とする受験生も少なくありません。

この記事では、社労士試験の概要や、雇用保険法の出題傾向と対策、おすすめの学習法などについて詳しく解説しています。

1、雇用保険法及び雇用保険に関するその他の法令とは?

雇用保険法に限った話ではありませんが、法律はそれだけで存在しているわけではなく、政令や省令、通達などから成り立っており、場合によっては判例もその法律の解釈を拘束することになります。

雇用保険法の社労士試験対策などを説明する前に、雇用保険法とはどのような法律であるのか、また、その他に把握しておくべき関係法令にはどのようなものがあるのかについて説明します。

(1)雇用保険法

憲法第27条第1項においては、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と規定されており、国民に勤労権を保障するとともに、勤労の義務を課しています。この憲法における勤労権の保障を受け、1947年(昭和22年)には失業した労働者の生活の安定を図ることを目的として、失業保険法が制定され、その後、失業の予防などにも対応していくために、1974年(昭和49年)には失業保険法を吸収して雇用保険法が制定されました。

(2)雇用保険法施行令

雇用保険法施行令とは、雇用保険法を施行するために必要な細則などを定めた政令(内閣が制定する命令)です。雇用保険法の多くの規定では、細かな基準などは「政令で定める」とされており、各規定を正確に把握するためには、この雇用保険法施行令も確認しなければなりません。

【参考】[雇用保険法施行令/電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)]

(3)雇用保険法施行規則

雇用保険法施行規則とは、雇用保険法や雇用保険施行令を施行するために必要な細則などを定めた省令(各府省の大臣が発する命令)です。

雇用保険法や雇用保険法施行令の多くの規定では、細かな基準などは「省令で定める」とされており、各規定を正確に把握するためには、この雇用保険法施行規則も確認しなければなりません。

【参考】[雇用保険法施行規則/電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)]

(4)通達・告示・判例

雇用保険法に関する通達(監督行政庁が所轄の下級行政機関に対して、法律の解釈などを示す文書)や告示(行政機関が決定した事項などを国民に知らせること。)、また、重要判例などについても理解しておかなければなりません。

2、社労士試験の概要と雇用保険法のポイント

社労士試験の学習を進めるためには、社労士試験にはどのような試験科目があり、出題形式や配点、また、実際に何点とれば合格できるのかなどを知っておく必要があります。ここでは、社労士試験の概要について説明します。

(1)社労士試験の試験科目

社労士試験の試験科目は、雇用保険法ほかの労働および労働保険関係法令や、健康保険法ほかの社会保険関係法令などで構成されており、次の表のとおり8つの試験科目があります。

なお、試験科目としての雇用保険法には、雇用保険や労働者災害補償保険の保険料の徴収などについて定めた「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」も含まれているため、注意しなければなりません。

試験科目択一式 計7科目(配点)選択式 計8科目(配点)
労働基準法及び労働安全衛生法10問(10点)1問(5点)
労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
10問(10点)1問(5点)
雇用保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
10問(10点)1問(5点)
労務管理その他の労働に関する一般常識10問(10点)1問(5点)
社会保険に関する一般常識10問(10点)1問(5点)
健康保険法10問(10点)1問(5点)
厚生年金保険法10問(10点)1問(5点)
国民年金法10問(10点)1問(5点)
合計70問(70点)8問(40点)

【出典】[社会保険労務士試験の概要 (1)試験科目/社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会試験センター)]

(2)社労士試験の出題形式 〜 雇用保険法の例

社労士試験の出題形式には、択一式と選択式の2種類がありますが、具体的には、次のような出題形式になります。

➀択一式

択一式とは、5つの文章の中から、正しいもの、あるいは、誤っているものを1つ選択させたり、5つの文章について、正しいもの、あるいは、誤っているものとして示された組み合わせを1つ選択させるような出題形式です。

実際の試験問題は次のようなものになります。

 【出典】[社会保険労務士試験 第51回 択一式試験問題/社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会試験センター)]

②選択式

選択式とは、文中の空欄に入る語句を一定の語群の中から5つ選択させるような出題形式です。

実際の試験問題は次のようなものになります。

【出典】[社会保険労務士試験 第51回 選択式試験問題/社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会試験センター)]

(3)雇用保険法の出題数と配点

雇用保険法の出題数と配点については、上記の試験科目表のとおりですが、択一式では、計10問(各1点)で10点満点、選択式では、計1問(空欄について語群の中から5つ選択(各1点))で5点満点となっています。

(4)雇用保険法の平均点(2016年度~2018年度)

各試験科目の平均点については、毎年度、11月の合格発表時に厚生労働省が公表していますが、2016年(平成28年)度~2018年(平成30年)度の平均点をまとめると次のようになります。

雇用保険法の平均点については、年度によって多少の差はありますが、その他の試験科目と比べると、択一式では高く、選択式ではどちらかというと低くなっている傾向があります。合格のためには択一式で高得点を狙いたい試験科目であると言えます。

【参考】[第48回(平成28年度)社会保険労務士試験科目得点状況表/厚生労働省]

【参考】[第49回(平成29年度)社会保険労務士試験科目得点状況表/厚生労働省]

【参考】[第50回(平成30年度)社会保険労務士試験科目得点状況表/厚生労働省]

(5)合格基準点について

社労士試験には原則的な合格基準点が定められており、それを超えれば合格することができます。

ただし、この原則的な合格基準点は、毎年度、各試験科目の難易度を考慮して補正(引き下げ)が行われることになっています。

➀原則的な合格基準点

原則的な合格基準点は、2000年(平成12年)度の試験から、次のとおりとされています。

〔選択式〕
総得点40点中28点以上(満点の7割以上)、各試験科目5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中49点以上(満点の7割以上)、各試験科目10点中4点以上

【参考】[社会保険労務士試験の合格基準の考え方について/厚生労働省]

②年度毎の合格基準点の補正

原則的な合格基準点は上記のとおりとしつつ、毎年度、各試験科目の難易度を考慮して補正(引き下げ)が行われることになっています。2016年(平成28年)度~2018年(平成30年)度の合格基準点については、次のとおりとされています。

Ⅰ、第48回・2016年度(平成28年度)の合格基準

〔選択式〕
総得点40点中23点以上、「労務管理その他の労働に関する一般常識」及び「健康保険法」は5点中2点以上、その他の試験科目は5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中42点以上、「労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識」及び「厚生年金保険法」、「国民年金法」は10点中3点以上、その他の試験科目は10点中4点以上

Ⅱ、第49回・2017年度(平成29年度)の合格基準

〔選択式〕
総得点40点中24点以上、「雇用保険法」及び「健康保険法」は5点中2点以上、その他の試験科目は5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中45点以上、「厚生年金保険法」は10点中3点以上、その他の試験科目は10点中4点以上

Ⅲ、第50回・2018年度(平成30年度)の合格基準

〔選択式〕
総得点40点中23点以上、「社会保険に関する一般常識」及び「国民年金法」は5点中2点以上、その他の試験科目は5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中45点以上、全試験科目について10点中4点以上

【参考】[第48回(平成28年度)社会保険労務士試験の合格基準について/厚生労働省]

【参考】[第49回(平成29年度)社会保険労務士試験の合格基準について/厚生労働省]

【参考】[第50回(平成30年度)社会保険労務士試験の合格基準について/厚生労働省]

③雇用保険法の択一式で合格基準点の補正は期待できない

雇用保険法の合格基準点の補正については、上記のとおり、2017年(平成29年)度の選択式で、原則の合格基準点である「5点中3点以上」から「5点中2点以上」に引き下げられ、2013年(平成25年)度や2014年(平成26年)度にも同様に引き下げられています。

しかしながら、近年、択一式では合格基準点の補正は行われていないため、総合得点がどんなに高くても、択一式で原則の合格基準点である「10点中4点以上」の得点ができないと、その時点で不合格になる可能性が高いということを意識しておかなければなりません。

3、雇用保険法の出題傾向と対策

社労士試験においては、一般常識の試験科目を除けば、過去に出題された問題(いわゆる「過去問」)が言い回しを変えて出題されることが多くあります。このため、社労士試験の学習を進めるうえでは、出題傾向を分析したうえで、試験対策を立てることが重要です。

(1)雇用保険法の出題傾向

雇用保険法の2016年(平成28年)度~2018年(平成30年)度の出題傾向をおおまかにまとめると、次のようになります。

雇用保険法は、条文のほぼ大半を各種給付に関する「失業等給付」で占めているため、毎年度出題されているのは当然であり、重点的に学習しなければならない分野です。しかしながら、その他の分野からも必ず出題されますので、手を抜かないように学習しておかなければなりません。

【参考】[社会保険労務士 本試験 資料館/株式会社ブレインコンサルティングオフィス]

(2)雇用保険法の対策

全体的に学習は必要ですが、試験対策としては、やはり、「失業等給付」に重点を置いた学習になります。

「失業等給付」を構成する「求職者給付」や「就職促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」について、全体像を意識しながら、各手当を理解していくことが重要です。

また、雇用保険法には重要な用語や数値が数多くあります。用語については、例えば、「算定対象期間」のような基本用語は確実に理解できていなければなりませんし、同じような「算定基礎期間」との違いも説明できなければなりません。数値については、例えば、「基本手当」の所定給付日数は、年齢および被保険者であった期間に応じて何日分であるのかなどは確実に押さえておく必要があります。

4、雇用保険法のおすすめの学習方法

社労士試験を受験するために資格取得専門学校に通ったり、通信制の教材などを利用すれば、特にどのように学習を進めていくべきかを考える必要はありませんが、独学の場合には次のポイントに注意して進めていく必要があります。

(1)条文の理解

まずは、雇用保険法や雇用保険法施行令、雇用保険法施行規則などの条文にどのようなことが書かれているのかを理解しなければなりませんが、条文だけを読んでもにわかに理解できないため、参考書などとあわせて順番に確認していきます。

なお、使用する参考書は、より学習した内容を記憶に定着させるため、いろいろと購入せず、大手の資格取得専門学校などの信用できるもの1冊に絞ることをおすすめします。

(2)復習及び用語や数値の暗記

上記のように参考書などで順番に条文を確認していくと、一周まわる頃には数ヶ月後になってしまいます。このため、最初の頃に学習した重要な用語や数値などを忘れないためにも復習は欠かせません。

参考書で復習しても構いませんし、参考書から重要な用語や数値などを抜き出して単語カードにまとめ、空いた時間に確認するのも有効な方法です。

(3)過去問を繰り返し解く

先に説明したとおり、社労士試験では、過去問が形を変えて出題されることが多いため、過去問題集で少なくとも直近5年度分は試験まで繰り返し解き、再出題された場合には確実に対応できるようにしておかなければなりません。

過去問は、上記の基本的な学習を終えたあとに取り組むことが一般的ですが、どうしても問題を解きながら学習を進めたい場合や、再受験である場合には参考書の学習と同時並行でも構いません。(いずれにしても綿密に学習スケジュールを立て、試験までにすべての試験科目の学習を完了させる必要があります。)

5、サマリー

いかがでしたでしょうか。雇用保険法は、覚えるべき用語や数値が非常に多く、試験科目としては、保険料の徴収などについて定めた「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」も含まれているため、苦手意識を持つ受験者も少なくありません。学習すべき範囲は広いですが、出題傾向を分析したうえ、効率的に進めていきましょう。

6、まとめ

・雇用保険法は、覚えるべき用語や数値が非常に多く、試験科目としては「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」も含まれている。

・択一式については、例年、平均点が高いため、この試験科目では高得点を狙いたい。

・そのほかの試験科目も同様であるが、高得点を狙うためには過去問を繰り返し解くことが重要である。

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