個人事業主として副業している時の社会保険ってどうなるの?労働保険や社会保険について徹底解説!

個人事業主として副業している時の社会保険ってどうなるの?労働保険や社会保険について徹底解説!

副業(ダブルワーク)は、働き方改革の一環として、政府でも推奨していることもあり、副業を認める会社も徐々に増えつつあります。最近、会社で副業が解禁されたことで検討中の方も多いのではないでしょうか。

副業をすることで収入を増やすことができますが、当然ながら所得税の負担も増え、一定の要件を満たす場合にはさらに社会保険料の負担も増えることになります。この記事では、主に副業と社会保険・労働保険との関係について解説しています。

1、副業を始める前に

副業(いわゆる「ダブルワーク」)とは、会社員であれば、さらに別の会社で働いたり、個人で事業をすることなどを言い、その形態も様々です。

働き方改革の一環として、政府は副業や兼業を促進していこうとしていますが、会社員が実際に副業を始めるためには、その会社が副業を認めている必要があります。

このため、会社で副業を認めていないにもかかわらず、だまって副業をすれば何かしらの責任を問われる可能性もあります(厳密に言えば、副業の禁止に法的拘束力はありませんが、会社員としては会社のルールは守らざるを得ません)。

副業を始めようと考えている場合には、まずは会社での取り扱いを確認しておく必要があります。

【参考】[副業・兼業/厚生労働省]

2、社会保険と労働保険にはどのようなものがあるか?

一般的に、会社員の社会保険とは、健康保険や介護保険(※)、厚生年金保険を指し、労働保険とは、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」)と雇用保険を指します(広い意味で、これらすべてを社会保険と言う場合もあります)。

これらの公的保険うち、副業をすることで特に問題となるのは社会保険になりますが、まずは全体像を理解するためにも労働保険も含めてその要件などについて解説していきます。

※会社員(健康保険の被保険者)の介護保険は、保険料に限って言えば、40歳以上になると、健康保険料とあわせて自動的に徴収されるものであるため、この記事では健康保険についてのみ言及しています。

(1)社会保険

まず、社会保険として整理される健康保険・厚生年金保険について、加入義務のある事業所と被保険者となる範囲について説明します。

①健康保険・厚生年金保険に加入義務のある事業所

健康保険・厚生年金保険は、会社などの法人事業所については、従業員の人数にかかわらず、加入しなければなりません。また、個人事業所については、従業員が常時5人以上いれば、農林水産業やサービス業など除いて加入しなければならないことになっています。

これらの事業所を「強制適用事業所」と言いますが、これに該当しない、従業員が常時5人未満である個人事業所などは「任意適用事業所」とされており、加入義務はありません(一定の手続きを行うことで自主的に加入することはできます)。

②健康保険・厚生年金保険の被保険者の範囲

上記の「強制適用事業所」および「任意適用事業所」で健康保険・厚生年金保険に加入した事業所は、雇用する従業員が次のⅠおよびⅡに該当する者を健康保険・厚生年金保険に加入させる義務があります。

Ⅰ、常勤の役員(※)、正社員、常勤の契約社員など
Ⅱ、週の所定労働時間および月の所定労働日数が一般社員(正社員)の3/4以上であるアルバイト・パート

※非常勤の役員であっても勤務の実態などから加入対象とされる場合があります。

さらに、アルバイト・パートなどの短時間労働者については、2016年10月、また、2017年4月に健康保険・厚生年金保険の被保険者となる範囲が拡大されており、上記の3/4要件を満たさなくても、次の要件をすべて満たす場合には加入対象になっています。

Ⅰ、週の所定労働時間が20時間以上であること。
Ⅱ、雇用期間が1年以上見込まれること。
Ⅲ、賃金月額が88,000円以上であること。
Ⅳ、学生でないこと。
Ⅴ、被保険者数が常時501人以上の企業に勤めているか、500人以下でも社会保険の加入について労使間で合意がなされている企業に勤めていること。

これまでは、アルバイト・パートなどとして働く場合には、その会社での週の所定労働時間や月の所定労働日数が正社員の3/4以上になれば、健康保険・厚生年金保険に加入対象になっていましたが、現状においてはその要件が緩和されていることに注意が必要です。

【参考】[短時間労働者に対する厚生年金保険等の適用が拡大されています/日本年金機構]

(2)労働保険

次に、労働保険として整理される労災保険・雇用保険について、加入義務のある事業所と、労災保険が適用される労働者の範囲、また、雇用保険の被保険者となる範囲について説明します。

①労災保険・雇用保険に加入義務のある事業所

労災保険・雇用保険は、原則として、業種や規模などにかかわらず、労働者を1人でも雇用していれば、適用事業となり、加入しなければなりません。

これらの事業を「強制適用事業」あるいは「当然適用事業」などと言いますが、従業員が常時5人未満である個人経営の農林水産業では、当分の間、「暫定任意適用事業」とされており、加入義務はありません(一定の手続きを行うことで自主的に加入することはできます)。

②労災保険が適用される労働者の範囲

上記の「強制適用事業」および「暫定任意適用事業」で労災保険に加入(建設業など一部の業種を除き、原則として雇用保険とセットで加入します。)した事業所では、アルバイト・パートなどすべての労働者が労災保険の適用を受けます。(※)

ただし、労災保険は、健康保険・厚生年金保険と違って「労働者」でなければ適用されないため、「労働者」と言えないことの多い役員や事業主と同居している親族については、次のような判断基準があります。

Ⅰ、役員

代表権・業務執行権を有する役員は、労働者とはされませんが、取締役・理事などの地位にある者であっても、法令や定款などの規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上、業務執行権を有する取締役や理事などの指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている者は、原則として、労働者として取り扱うなど一定の考え方があります。

Ⅱ、事業主と同居している親族

原則として労働者とはされませんが、法人や個人を問わず、同居の親族とともに一般の従業員も雇用しており、就労の実態が当該事業場における他の従業員と同様であり、賃金もこれに応じて支払われているなどの要件を満たせば、労働者として取り扱うことになっています。

※労災保険は、労働者が業務中や通勤の途中でけがをしたときなどに保険給付が行われるものですが、この労働者への補償は本来事業主の義務であり、それを肩代わりするものが労災保険であると言えます。このため、労災保険上は労働者を「被保険者」とは呼びません。(ある意味、事業主が「被保険者」ということになります。)

【参考】[労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲/大阪労働局]

③雇用保険の被保険者の範囲

上記の「強制適用事業」および「暫定任意適用事業」で雇用保険に加入(建設業など一部の業種を除き、原則として労災保険とセットで加入します)した事業所において雇用される常勤形態の従業員は、原則として雇用保険の被保険者になります。

パート・アルバイトなどの短時間労働者については、次のⅠおよびⅡのいずれにも該当するときは、雇用保険の被保険者になります。

Ⅰ、1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
Ⅱ、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合を言います。

ⅰ、期間の定めがなく雇用される場合

ⅱ、雇用期間が31日以上である場合

ⅲ、雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合

ⅳ、雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合(当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合でも、その後、31日以上雇用されることが見込まれることになった場合には、その時点から雇用保険が適用されます)

また、雇用保険も労災保険と同様に「労働者」が加入できる制度であるため、役員や事業主と同居している親族が被保険者となりえるかどうかについては、次のような判断基準があります。

Ⅰ、役員

原則として雇用保険の被保険者になりませんが、同時に、部長・支店長・工場長などの従業員としての身分を有しており、報酬などの面から見て労働者的性格が強く、かつ、雇用関係があると認められる場合には被保険者として取り扱うことになっています。

Ⅱ、事業主と同居している親族

原則として雇用保険の被保険者にはなりませんが、法人や個人を問わず、同居の親族とともに一般の従業員も雇用しており、就労の実態が当該事業場における他の従業員と同様であり、賃金もこれに応じて支払われているなどの要件を満たせば、被保険者として取り扱うことになっています(労災保険において「労働者」と取り扱う整理と基本的に同様)。

【参考】[労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲/大阪労働局]

3、副業先で社会保険・労働保険の加入要件を満たすとどうなるのか?

副業として働く会社で上記の社会保険・労働保険の加入要件を満たすと、特に問題になるのは社会保険ですが、労働保険も含めて注意点などについて説明します。

(1)社会保険

副業として働く会社で社会保険の加入要件を満たすと、次のような手続きが必要になり、副業として収入を得た分の保険料を負担しなければならなくなります。

①年金事務所などで手続きが必要になる

健康保険・厚生年金の手続きにおいて主となる会社(基本的には本業として働く会社)を選択する手続きが必要になります。

具体的には、副業として働く会社で加入要件を満たした日から10日以内に、被保険者自身が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」という書類に、主となる会社がどちらになるのかなどを記入して、選択した会社を管轄する年金事務所に届け出なければなりません(ただし、これを届け出るにあたっては、副業として働く会社から「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」が提出されていなければなりません)。

なお、この届け出を年金事務所に行うことで、年金事務所は、厚生年金保険と、主となる会社として選択された会社の健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)のものである場合の事務処理を行います。主となる会社として選択した会社の健康保険が健康保険組合のものである場合には、原則としてその健康保険組合にも届け出が必要になりますし、選択しない会社の健康保険が健康保険組合のものである場合も含めて、事前にその健康保険組合に確認しておく必要があります。

【参考】[複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き/日本年金機構]

②社会保険料の負担が増える

上記の手続きを行うことで、本業として働く会社と副業として働く会社の毎月の給与額を合算した額から社会保険料が計算されることになります。

そして、それぞれの会社では、この社会保険料を、支払う給与額の割合に応じて納付することになり、その納付額の1/2の額を給与から控除することになります(社会保険料は、会社と従業員で折半することになっています。ここでは給与についてのみ説明していますが、副業として働く会社から賞与も支給されるのであれば、同様に処理されます)。

つまり、副業として収入を得た分の社会保険料が増えるということです。

例えば、毎月の給与が、本業として働く会社から300,000円、副業として働く会社から200,000円支給されている場合のそれぞれの会社で負担することになる社会保険料は次のように計算します(2019年度の整理)。

※対象となる従業員が介護保険に加入しない40歳未満で、主となる会社として選択した会社の健康保険が東京都の全国健康保険協会(協会けんぽ)のものであり、厚生年金基金には加入していないこととします。

300,000円と200,000円の合計500,000円が保険料計算上の「報酬月額」となり、これを下記の表に当てはめると、保険料率を乗ずることになる「標準報酬月額」は500,000円(「報酬月額」が485,000円~515,000円まで)となります。よって、それぞれの会社で負担することになる社会保険料は、次のようになります。

【本業として働く会社の社会保険料】

〔健康保険料〕
500,000円×9.9%(保険料率)×300,000円/500,000円(按分率)=29,700円
※この1/2の額である14,850円を会社と従業員で負担します。

〔厚生年金保険料〕
500,000円×18.3%(保険料率)×300,000円/500,000円(按分率)=54,900円
※この1/2の額である27,450円を会社と従業員で負担します。

【副業として働く会社の社会保険料】

〔健康保険料〕
500,000円×9.9%(保険料率)×200,000円/500,000円(按分率)=19,800円
※この1/2の額である9,900円を会社と従業員で負担します。

〔厚生年金保険料〕
500,000円×18.3%(保険料率)×200,000円/500,000円(按分率)=36,600円
※この1/2の額である18,300円を会社と従業員で負担します。

【出典】[平成31年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)/全国健康保険協会(協会けんぽ)]

③保険証は主となる会社のものを使用する

保険証(正しくは「健康保険被保険者証」)は、副業として働く会社で社会保険の適用対象になっても、被扶養者のものを含めて、上記で選択した主となる会社(基本的には本業として働く会社)のものを使用することになります。

(2)労働保険

労働保険については、労災保険に労働者である以上の適用要件はなく、雇用保険は副業として働く会社で加入要件を満たしても、基本的には本業として働く会社のみで加入していればよいことになります。

このため、社会保険のように保険料で問題になることはありませんが、注意しておくべき点について説明します。

①労災保険で手続きないが副業先での保険給付は低額になる

労災保険は、労働者である限り自動的に適用されるものですので、副業として働く会社では何の手続きもありません。また、保険料については、社会保険料と違って会社の全額負担であるため、保険料の負担が増えることもありません。

なお、労災保険は、業務中や通勤の途中でけがをした場合などに休業(補償)給付などの保険給付が行われるものですが、副業として働く会社でこのような労災事故があれば、保険給付の額はその会社での賃金が基準になります(診療費などはその額が支給されます)。よって、本業として働く会社での保険給付よりも低額になりますので注意が必要です。

②雇用保険は副業先で加入する必要はない

雇用保険は、複数の会社で加入要件を満たしても、制度上、「生計を維持するために必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社」でのみ加入することになっています。

このため、「本業として働く会社の賃金」>「副業として働く会社の賃金」という状況である限り、副業として働く会社で加入する必要はありませんし、保険料を負担することもありません。

【参考】[Q&A~事業主の皆様へ~ Q6 複数の会社で働いている者の雇用保険の加入はどうすればよいのでしょうか。/厚生労働省]

4、副業で社会保険料の負担を増やさないためには?

上記で説明したように、副業として働く会社で社会保険の加入要件を満たすと、副業として収入を得た分、社会保険料を負担しなければならないことになります。

最後に、副業で社会保険料の負担を増やさないためにはどうすべきかについて説明します。

(1)副業先で社会保険の加入要件を満たさないように働く

副業の収入目標がそれほど高くないのであれば、副業として働く会社で社会保険の加入要件を満たさないように働けば(労働時間を一定の範囲内に抑えるなど)、その会社で社会保険料を負担することはありません。

ただし、週の所定労働時間や月の所定労働日数が正社員の3/4以上でないアルバイト・パートでも、週の所定労働時間が20時間以上であるなど一定の要件を満たせば、社会保険の加入対象になってしまうことがあります。副業先の従業員数が500人以下で、かつ、短時間労働者が社会保険の被保険者になることについて労使間の合意がなければ3/4要件が適用されますので、副業として働こうとしている会社の状況も事前に確認しておく必要があります。

(2)個人で事業を始める

副業として個人で事業を始めれば、本業として会社に所属し、社会保険に加入している限り、社会保険料の負担が増えることはありません(個人事業だけを行っているのであれば、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります)。

本業がありながら、起業するというのはハードルが高そうですが、例えば、インターネットなどで商品を販売するなどでも収入を得ることはできます。何か思いあたるものがあれば検討する価値はあります。

5、サマリー

いかがでしたでしょうか。副業をすることで収入は増えますが、副業として働く会社で労働時間などが一定の範囲を超えると、社会保険が適用され、その収入に応じた保険料を負担しなければならなくなります。副業の収入目標と社会保険料の増加分を勘案して働くべきですし、別の会社での副業ではなく、個人で事業を始めるなども検討してもよいかもしれません。

6、まとめ

・副業は、働き方改革の一環として政府も推奨しているが、会社員が副業を始めるためには、まず、自分の会社で副業が認められているのかどうかを確認する必要がある。

・副業として働く会社で社会保険(健康保険・厚生年金保険)が適用されると、年金事務所や健康保険組合で一定の手続きを行わなければならず、その結果、副業として働く会社で収入額に応じた保険料が発生する。

・労災保険は、副業として働く会社でも労働時間に関係なく適用され、保険料も事業主の全額負担であるため、副業を始めることで特に手続きはない。

・雇用保険は、複数の会社で加入要件を満たしても、より賃金の多い会社(つまり、本業として働く会社)でのみ加入することになっているため、そもそも二重加入の問題がない。

・副業を始めることで社会保険料の負担を増やさないためには、副業として働く会社での労働時間などを一定の範囲内に抑えるか、個人で事業を始めるなどの方法がある。

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