中小企業の定義と働き方改革におけるポイント・影響・違反した際の罰則・主な対策とは?

中小企業の定義と働き方改革におけるポイント・影響・違反した際の罰則・主な対策とは?

2019年4月に施行された働き方改革関連法は、あなたの職場にどのような変化をもたらしましたか?

「残業をしないように言われている」

「早速有給を取らされた」

など、これまでにない様々な変化が生じていると思われます。

満を持してスタートを切った働き方改革ですが、現時点では、職場によってその影響力にまだ差異があることをご存知でしょうか。その理由は、今回の改正の法的拘束力は、事業規模や業種によって「義務化の是非」や「施行開始日」などが異なっているためです。

あなたの会社は、働き方改革関連法の改正によってどのような影響を受けるのでしょうか。この記事では、働き方改革が日本の企業のほとんどを占める「中小企業」に及ぼす影響を調べるとともに、今後中小企業に科される法律とその遵守のために必要な対策についてまとめていきます。

1 一般的な中小企業の定義とは?

日本の産業の特徴は、会社の割合において圧倒的である中小企業によって支えられている点だといわれます。データを以て後述しますが、日本の会社はそのほとんどが中小企業であり、日本の総従業者数の70%は中小企業に勤務しています。

中小企業基盤整備機構によると、日本には国の産業を支えているといえる優秀な中小企業が多く存在します。「世界市場の獲得につながる先端技術を活用する中小企業」や、「地域で育まれた伝統と特性を有する、多様な地域資源を活用する担い手となっている中小企業」など、優れた特色を持つ会社を中小企業の中に多く見出すことができるからです。

(1)中小企業基本法による定義

下図は、中小企業基本法で定められた「中小企業者の範囲」と「小規模企業者の定義」の規定について、表にしたものです。

図1:中小企業者の範囲と小規模企業者の定義

出典:中小企業庁

中小企業基本法とは、中小企業に対する施策についてまとめた法律のことです。同法によると、中小企業の範囲は、簡単にまとめると以下のようになります。(会社法、法人税法における定義には若干の違いがありますが、後ほど解説します。)

“資本金または出資総額が3億円以下の会社や、常時使用する従業員の人数が300人以下の会社もしくは個人の製造業、建設業、運輸業、その他の業種の事業所”

(2)会社法における中小企業の定義

会社法には、実は中小企業の定義に関する規定が明記されていません。大会社の定義については「資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社」と定めてあるのですが、中小企業についての定義はありません。そのため、上記の大会社の規定に当てはまらない会社については「中小企業」とみなしているのです。

つまり、会社法に基づくと「資本金5億円未満かつ負債総額200億円未満」の企業であれば中小企業だと考えられます。したがって、このような規模の企業には、大会社に義務付けられた「会計監査人による監査」や、「貸借対照表と損益計算書両方の公告」などを果たす義務はありません。

(3)法人税法における中小企業の定義

法人税法においては「中小企業」は「中小法人」と規定されますが、これに当てはまるのは資本金(出資金)が1億円以下である場合です。

ただし例外があります。資本金が5億円以上の大法人の「100%子会社」である場合などがそれにあたります。大企業との支配関係いかんによっては例外措置が取られ、中小法人と規定してもらえないのです。これは法人法税のみがもつ特徴です。

その理由は、中小法人として認められると様々なメリットを受けることができるからです。例えば、「法人税率の軽減」、「税務上の赤字の繰り越しについての制限緩和」「一定の範囲内での交際費は経費計上可」などがそれなのですが、中小法人になるとそういった節税の優遇を受けることができるため、法人税法における中小法人の認定は厳しいといえます。

(4)その他の業種において

前述の通り、中小企業基本法の定める中小企業の定義とは“資本金または出資総額が3億円以下の会社や、常時使用する従業員の人数が300人以下の会社もしくは個人の製造業、建設業、運輸業、その他の業種の事業所”です。

この定義上の「その他の業種の事業所」を指す業種は、以下のように3つあります。

①卸売業

資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの

②サービス業

資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの

③小売業

資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人であつて、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの

なお、中小企業基本法は「小規模企業」という事業規模も定義しています。小規模企業の定義とは、“常時使用する従業員の数が20人以下の事業者(商業またはサービス業については5人以下)”と定められています。

2 働き方改革関連法におけるポイント3つ

2019年4月の働き方改革関連法の改正によって、改正点が10項目ほど生じています。その中でも中小企業を含めた会社全般に大きく関わってくるのは、以下の3つでしょう。

中小企業に対しては改正の適用が1~2年遅れるものがあります。それについてはその点も明記します。

(1)時間外労働の上限規制の導入(施行:2019年4月1日~)

今回の改正で、時間外労働をする場合には下記のような上限規制が定められました。

①原則

月45時間、年360時間

②臨時的な特別な事情がある場合

年720時間

単月100時間未満(休日労働含む)

複数月平均80時間(休日労働含む)

※時間外労働の上限規制の導入は、中小企業においては2020年からの施行になります。

(2)年次有給休暇の確実な取得(施行:2019年4月1日~)

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要があります。

※年次有給休暇の確実な取得は、事業規模に関わらず2019年4月1日から施行されます。

(3)正規・非正規雇用労働者の不合理な待遇差の禁止(施行:2020年4月1日~)

同一企業内における基本給や賞与などの不合理な待遇差が、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間において禁止されます。具体的な待遇均等化のための規定が、以下のように設けられました。

①均衡待遇規定が明確化

基本給、賞与、役職手当、食事手当、福利厚生、教育訓練等において、判断規定が明確化されます。

②均等待遇規定

新たに有期雇用労働者も対象になります。

※正規・非正規雇用労働者の不合理な待遇差の禁止は、中小企業においては2021年からの施行になります。

3 中小企業の働き方改革における主な影響とは?

今回の改正は、事業規模によっては義務化の是非が異なるために「中小企業にはあまり関係がない」という印象を持たれやすいかもしれません。

しかし、そもそも働き方改革は、長時間労働の是正など労働環境の改善を主眼とするものです。このため、中小企業においても人手不足がますます深刻化している状況のなかで、本改革は会社の生き残りのカギとなってくることは間違いありません。

(1)中小企業の働き方改革は大きな影響力を持つ

下図は、「日本企業の規模別割合と規模別従業者数」を図表化したもので、ここから日本における中小企業の割合と従業者数を読み取ることができます。

中小企業庁の「2017年版中小企業白書概要」によれば、日本全国の中小企業数は日本の全企業数の実に99.7%にあたります。また中小企業に勤める労働者数は約3,361万人で、日本の全労働者の約70%を占めているのです。

このように、企業数・従業者数において高い割合を占める中小企業には大きな影響力があるため、中小企業において働き方改革が進めば、日本の社会や労働環境などに大きな影響が及ぶといって間違いないのです。

近年の中小企業はIoTやAI、ロボット技術を積極的に採用し、その在り方を大きく変化させています。働き方改革が契機となり、労働環境の改善に取り組むことで企業としての魅力を増している中小企業も存在します。離職防止や人材確保に困難をきたさないような、魅力ある息の長い企業に成長するという将来的な目標も見据えつつ、働き方改革に取り組むべきでしょう。

図2 日本企業の規模別割合と規模別従業者数

出典:2017年版中小企業白書

 

(2)働き方改革が中小企業に必要な理由

働き方改革は、労働の質を向上させ日本の労働生産性を上げることを長期的な目標に掲げています。つまり、今日多くの中小企業が抱える課題に対する解決策の提示をおこなっているといえるのです。

例えば、業務効率化の進んでいない中小企業では、人手不足で仕事が回らなかったり新規契約が取れなかったりするどころか、社員の離職や人材確保困難に悩んでいるというケースも多々あります。

人材不足によって長時間労働が常態化してしまうといった負のスパイラルを、今回の働き方改革関連法の改正が断ち切る機会を与えています。そして生産性の高い働き方ができる会社を目指しながら、IT技術の導入や多様な人材の採用などを検討し、魅力ある職場に生まれ変わる契機とすべきなのです。

(3)ダイバーシティなど多彩な人材の活用

ダイバーシティとは「多様化」を意味しますが、ここでは人材採用の多様化を指しています。主婦、高齢者、外国人などにも雇用の門戸を広げてマンパワーを最大限に活かすことで、深刻な人材不足を乗り越えることができるという考え方です。

2015年9月25日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針」が閣議決定されていますが、そこには「妊娠や出産で約6割の女性が仕事を辞めている」「働く意志があるのに復職できない女性は300万人を超えている」といった、人材不足の悪因ともなっている女性の就労困難な現状がまとめられています。

人材不足が叫ばれる一方で、埋もれている優秀な人材がいるといいます。例えば、妊娠・出産までは一流企業でバリバリ働いていた女性、育児・介護に従事する必要がある人、定年後も働く意欲と能力がある高齢者などがそれに当たります。

そこで「ダイバーシティ」を以て、フレックス勤務、テレワークなどを導入し、このような人達のニーズに応えることで、中小企業が優秀な人材を獲得できる可能性が広がるのです。まだまだ埋もれている有益な人材を採用すれば、中小企業の生産性向上や業績アップに大きく結び付く可能性があります。

4 有給休暇の義務化に違反した場合の罰則とは?

前述の通り、有給休暇の義務化は事業規模に関わらず2019年4月1日から施行されます。これにもし違反した場合は、どのような罰則が科せられるのでしょうか。

(1)有給休暇の義務化とは

有給休暇の義務化とは、2019年の労働基準法の改正に含まれる労働時間法制の見直しにより義務化された「年次有給休暇の確実な取得」のことです。

これは「年10日以上有給休暇を付与される従業員に対し、会社は最低でも5日は日程を事前に決めて有給休暇を取得させなければならない」というものです。

この改正のコンセプトにあるのは、政府が働き方改革で目指す「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」の実現です。「働き過ぎ」を防ぎながら、生産性の向上を図ろうという国の考えが背景にあるのです。

(2)どのような罰則(罰金)があるのか

有給休暇の義務化に違反した場合の罰則は事業規模にかかわらず科されるため、中小企業も罰則の対象になります。今回の改正により、規定を遵守できなかった場合は「労働基準法違反」とみなされることとなりましたので、事業者に対し6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されます。注意が必要です。

有給休暇の義務化について対象となるのは下記の従業員です。

①入社日から6ヵ月が経過していること

②労働日の8割以上を出勤していること

つまり、すべての従業員が対象となるわけではありません。有給休暇の付与日数は、労働時間や日数により変わります。

5 働き方改革における中小企業のとるべき具体的な対策は?

これまで、中小企業に影響を及ぼす働き方改革関連法について紹介してきました。

今回の策定では違反した場合は罰則が科されますので、中小企業においても具体的な対策を取って法の遵守に取り組むべきだといえます。

まずは法律の内容をよく理解し、そのうえで取るべき対策を講じてみましょう。

(1)法律の内容の理解

今回の改正による変更点を挙げていきます。

①時間外労働の上限規制

時間外労働について、これまで法律上は上限規制がありませんでしたが、今回法律で上限が定められました。改正法の注意点は以下の通りです。

・残業時間は原則として月45時間以内(一日2時間程度)、かつ年360時間以内

・臨時的な特別の事情がある場合の残業時間:

休日労働を含み月100時間未満、そして2~6カ月の平均時間は80時間を超えないこと年間上限は720時間を超えないこと(休日労働は含まない)

②月60時間超の時間外労働における特別割増の中小企業への適用を定める「割増賃金の猶予措置廃止」

今回の改正で、月60時間を超える時間外労働については、割増率が50%となりました。中小企業においても大企業と同じ割増率になります。

これまで中小企業においては、残業分の時間給(100%の賃金)に加え25%の時間外割増賃金を支払うべきでしたが、今後は60時間を超える残業分には、時間給プラス50%の時間外割増賃金を支払わなければならなくなりました。

(2)具体的な対策

法の遵守のため有効と思われる対策を挙げていきます。

①労働時間の把握方法の見直し

まず、労働時間の把握の徹底化は必須です。

理由は既に述べた通り、今回の改正で36(サブロク)協定で定める時間外労働に、罰則付きの上限が設けられたからです。

36(サブロク)協定とは、労働基準法が定める1日8時間・1週40時間以内の「法定労働時間」を超えて時間外労働(残業)をさせる場合、 労働基準法第36条に基づいて必要となる労使協定(36協定)の締結です。また、今回の労働安全衛生法関連省令の改正では、これまで対象外だった裁量労働制・管理監督者の労働時間の把握も義務づけられました。

中小企業がまず確認すべきは、「正確な労働時間の把握がなされているか」です。労働時間の把握には、手書きなどでなくPCのログや、ICカード、タイムカード等を活用し、情報を管理するなど客観的方法が取られるべきです。

まだ環境が整っていなければ、勤怠管理ソフトウェア導入や人事労務業務を仕組み化することなどを急ぎましょう。要件を満たせば、中小企業の時間外労働時間の上限設定の実施に対する助成金を活用して一部助成を受けられるかもしれないので、情報を集めてみましょう。

②業務の平準化

中小企業に限らず、業務の属人化は職場の課題です。働き方改革によって作業が増えるかと思われますが、今回は違反すれば罰則が科されます。そういう事態を避けるため、特定の社員への業務の集中など、これまで業務の非効率を招いてきた要因を分析し、業務を平準化するための施策を考えましょう。アウトソーシング導入も有効です。

6 サマリー

いかがだったでしょうか?中小企業においても、働き方改革は大きく関わってくることがお分かりいただけたでしょうか。

罰則が生じる法改正に対峙する現場には、多少なりとも混乱が起きていると思われます。

しかし、今回の改正は根本的な日本の「労働の質の改善」を目指しており、ひいては中小企業における離職防止、魅力ある職場に生まれ変わり就職の場としての訴求力を高める、といった効果も目指しているのです。成果が見られるまでに時間を要する取り組みであるといえますが、目的を見据えて、社内が一つとなって取り組めば大きな改善が見込めるといえるでしょう。

7 まとめ

・中小企業の定義について解説したうえで、働き方改革は中小企業にも関係することを確認している。

・今回の改正「時間外労働の上限規制の導入」「年次有給休暇の確実な取得」「正規・非正規雇用労働者の不合理な待遇差の禁止」に見られる従来との変更点と、中小企業における施行開始年度が大企業と違う場合それも記載している。

・働き方改革が中小企業に及ぼす主な影響を解説している。

・有給休暇の義務化に違反した場合の罰則を解説している。

・働き方改革関連法施行以降、中小企業のとるべき対策を具体的に説明している。

社会保険労務士カテゴリの最新記事