マイナンバーを制して選ばれる社労士に!定額給付金でも注目されたマイナンバーと社労士業務の関わりを解説

マイナンバーを制して選ばれる社労士に!定額給付金でも注目されたマイナンバーと社労士業務の関わりを解説

新型コロナウイルス感染拡大により、国民1人に10万円ずつ支給されることが決定した定額給付金。郵送とともに申請方法として採用されたマイナンバーですが、マイナンバーカードの低い普及率や今後の発行の必要性について多くの議論が起こりました。

年末調整にあたってマイナンバーを提供することから、税務とマイナンバーの関係は周知の通りですが、社会保険労務士(社労士)も、業務上マイナンバーを取り扱っています。

この記事では、今後ますます活用頻度が高まるであろうマイナンバーが、社労士業務にどのように関わっているかを分かりやすく解説します!

1 マイナンバーと社労士

マイナンバーは、まず以下のような目的で使われはじめました。

・雇用保険、健康保険、厚生年金の資格取得、喪失などの手続き
・給付を受ける手続き
・福祉分野の各種給付や生活保護

税務でも、確定申告や年末調整の書類にマイナンバーの記載欄が設けられました。この他、災害対策の目的でもマイナンバーが活用されることとなっています。

社労士といえば労務や年金の専門家ですが、マイナンバー制度は、社労士の業務にどのように関わっているのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

(1)労働保険社会保険諸法令に関する手続をおこなう

社会保険労務士が取り扱う法律は「労働社会保険諸法令」といい、労働基準法をはじめとする「労働関係・労働保険関係法規」、国民健康保険法などの「社会保険関係法規」など膨大な数の法律を含みます。

これらの法律に則った手続きを遂行するには、マイナンバーが必要となります。

(2)特定個人情報の適正な安全管理措置を講じる

個人情報にマイナンバーが記載されると「特定個人情報」に昇格し、法律上厳しい管理が求められるものになります。

例えば、社員が退職したら特定個人情報であるマイナンバーはすみやかに廃棄しなければなりません。また、社会保険に関する書類を役所に提出する際にマイナンバーを記載しますが、セキュリティの問題から戻ってくる書類にはマイナンバーが記載されていません。

そもそも社労士には社会保険労務士法で守秘義務が課せられており、個人情報に関しては、適正な取扱いが求められています。

全国社会保険労務士会連合会は、認証制度(SRP認証制度)を創設し、個人情報の適正な取扱いを実践していることを「見える化」する取り組みをおこなってきました。更にマイナンバー制度の導入にあたっては、更に高度な情報セキュリティ対策を講じる認証制度を創設しています。

また同連合会は、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」をもとに、厚生労働省や当該制度に精通した弁護士の協力を得て「社労士のためのマイナンバー対応ハンドブック」を作成しました。ホームページ上で、社労士業務におけるマイナンバー制度の取り扱いについて取り扱う本書について、周知・徹底に努めています。

2  マイナンバーの保管ルールとは?

社会保障関連の手続きをおこなうために、企業は従業員のみならず、その扶養家族のマイナンバーまでも取り扱うこととなりました。企業の規模によってはそのボリュームは膨大な量になり、保管には番号法順守が求められます。

社労士は、このようなマイナンバー管理業務を顧問先の企業から委託されることがあります。詳しく後述しますが、それにあたって漏えいリスクをなくすために、4つの安全管理措置に対応した保管方法を取ることが義務付けられています。

万が一、個人情報の漏えいや紛失といった失態を犯すと、社労士事務所への責任が取らされるだけでなく、顧問先の企業にも罰則が課される可能性があるのです。マイナンバーを管理できる社労士として企業からの信頼を勝ち取るためには、事務所として万全の対策を備えておくことが大事です。

(1)安全管理措置

「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」には、マイナンバーを扱う際に実施することが義務付けられた、4種類の安全管理措置について記載されています。大半の機密情報漏えいの要因は以下の4つであり、管理者はそれぞれのリスクを潰しておく必要があるというものです。

①組織的対策の不備
②人的ミス
③物理的脆弱性
④技術的脆弱性

「番号法」とは「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」のことで、マイナンバーに関するルールを定めたものです。当ガイドラインは、この番号法にのっとり、行政によって設けられたものです。

企業の取るべき4つの対策「組織的安全管理措置」「人的安全管理措置」「物理的安全管理措置」「技術的安全管理措置」について、具体的に下表にまとめました。これら4つの対策を全て穴がない状態でおこなうことが理想的ですが、実際には大企業でも十分におこなうのは難しいのが現状です。特に中小企業においては困難な状態になっています。

1 組織的安全措置 組織全体として取り組むべき安全措置のこと。
・取り扱い担当者を明確に定めておく。
・担当者以外はマイナンバーデータに触らない仕組みを構築する。
2 人的安全措置 人的ミスを未然に防ぐための安全措置のこと。
・実務担当者に対して研修をしっかりとおこなう。
・マイナンバーの取り扱い方やルールを教育しておく。
3 物理的安全措置 物理的に情報が奪われることを防ぐための措置のこと。
・マイナンバー関連の事務を別室でおこなう。
・関連書類の保管場所を鍵付きにする。
4 技術的安全措置 技術的脆弱性につけ込まれないための措置のこと。
・アクセス権限を限定してセキュリティを強化。
・ウイルス対策を徹底。
・不正アクセス対策を徹底。

(2)保管期限の遵守

特定個人情報であるマイナンバーは、その取扱いについて以下のような厳密なルールが定められています。

①原則的には利用するごとに取得する

マイナンバーを利用することができる用途は、非常に限定的です。また、一度マイナンバーを利用し目的が達成されたら、原則的にはすみやかに廃棄しなければなりません。その後、再度同じ人のマイナンバーが必要になった場合は、改めて提供を求めなければいけません。

②保管が許されるのは継続的な雇用関係にある場合のみ

しかし、継続的な雇用関係にある従業員の場合は別で、マイナンバーを継続して保管することが許されています。継続的な雇用が続いている従業員に関しては、その従業員に関する社会保障関連事務や税務処理を、毎年必ずおこなわなければならないからです。

③退職者のマイナンバーは?

雇用していた従業員が退職した場合、その退職者のマイナンバーをすみやかに廃棄する必要があります。ただし、年度途中の退職など、その後まだ事務処理にマイナンバーを利用する場合には、業務完了まで保管し続けても問題ありません。扶養控除等申告書に7年間の保管義務があるため、税務上、退職者のマイナンバーは最長で7年間は保管が許可されています。

(3)廃棄システムを準備

機密情報の管理は、保管よりも廃棄の方に手間やコストがかかることも少なくありません。民間事業者は、いつかはすべてのマイナンバー情報を廃棄しなければなりません。ですので以下に挙げるようなスムーズな廃棄ができるシステムを、あらかじめ整えておく必要があります。

【デジタルのデータ】
抽出すれば簡単に廃棄がおこなえる。

【紙ベースのデータ】
・基本的に廃棄に手間がかかる。
・書類は作成年度ではなく退職年ごとに保管するようにしておく。
・マイナンバーの部分だけ切り取ってシュレッダーにかけてもOK。
・復元不可能なマスキング処理を施す。

3 マイナンバーが社労士にもたらす影響とは?

マイナンバー制度創設時には、ちょうど「AIが人間の仕事を奪う」論が噴出した時と同じく、「マイナンバーは社労士の仕事を奪う」論がまことしやかに囁かれました。平成27年の通知開始以降、果たしてマイナンバー制度は社労士の仕事を奪ってきたのでしょうか。

(1)社労士の仕事がなくなった?

マイナンバー制度は、社労士の仕事の喪失に繋がるという懸念は確かにありました。果たしてその通りになったのでしょうか。

内閣府ホームページによると、マイナンバーの創設目的とは以下の3つです。

①公平・公正な社会の実現
②国民の利便性の向上
③行政の効率化

マイナンバー創設にあたり、③の行政手続き業務の効率化が、社労士の独占業務である「労働・社会保険関連手続き代行」を激減させるのではないか、といった懸念があったのです。

その結果はどうだったでしょうか。本来マイナンバーは、今回の新型コロナ禍のような状況下で定額給付金などをすみやかに給付するために創設されました。しかし今回判明したのは、15%というマイナンバーカードの低い普及率と、本制度を利用したオンライン申請の不具合の頻発です。そもそも、マイナンバー制度自体がデジタル社会のインフラとして普及するのに、時間がかかっています。

今般の新型コロナ禍で、マイナンバー問題以上に社労士の存在を印象付けたのは、感染拡大を防ぐ対策として急がれたテレワーク導入や、政府が拡充した助成金への申請業務でした。

今回の新型コロナ禍が、働き方改革よりもテレワークの普及を促進したことは明らかで、社会変革には、社労士の専門業務である就業規則の変更や勤務規程の作成、労使協定の締結などが不可欠であり、多くの企業が社労士の力を求めました。

また今回政府が打ち出した数々の助成金は、景気の悪化に伴い拡充を繰り返したので、社労士は厚生労働省助成金の専門家として顕著な活躍を続けています。

①適正にマイナンバーを管理できる社労士に

今後、マイナンバーカードの普及は促進されると見られています。そうなると、マイナンバーを適正に扱えない社労士には、将来性がないことになります。マイナンバー制度は現時点では不具合を続出していても、今後継続してデジタル社会促進の旗手としての使命を担うでしょう。今後社労士として生き残るためには、「マイナンバーに詳しく、適正に管理できる社労士」になることが必須条件となると思われます。

顧問先のマイナンバーを正しく管理できず、外部に情報漏洩させてしまったり、保管義務期間中に廃棄してしまったりしたら、顧問先から契約解除されてしまうようになるでしょう。

②マイナンバー実務対応に役立つ「社労士のためのマイナンバー対応ハンドブック」

前述の「社労士のためのマイナンバー対応ハンドブック」は、以下の内容で構成されています。

・マイナンバー制度の概要
・管理体制の構築方法
・マイナンバー制度の開始に伴い必要となる各種契約書の見直し等

マイナンバー対応を理解する上では必読の内容です。一般公開はされていませんので、晴れて社労士試験に合格し社労士登録を受けた際には、全国社会保険労務士会連合会より入手してぜひ一読しましょう。

(2)仕事はむしろ増えた?

マイナンバー制度の導入は、社労士にとって脅威ではなく、結果的にむしろ業務拡大に繋がったといえるでしょう。

また、マイナンバーなど情報管理の分野に長けることで、他の社労士との差別化を大きく図ることができるようになりました。「マイナンバー管理」に関して、収集方法、保管・管理体制、廃棄まであらゆるフェーズを網羅し、多数展開されているマイナンバー管理ツールについて精通すれば、マイナンバーに強い社労士として競争力を持つことができます。

①マイナンバー管理と手続き業務

マイナンバー制度導入にあたり、事業主には下表の負担が増えたことになります。これは、現場の人手不足や専門知識の不足から、社労士にとってのビジネスチャンスが増えたと言えるでしょう。社労士の専門分野には、新たに秘匿性が高い特定個人情報であるマイナンバーを取り扱う「マイナンバー管理」が追加されました。

労働・
社会保険関連
従業員からマイナンバーを収集 マイナンバー
記入欄が
設けられた
収集したマイナンバーの管理
雇用保険、健康保険、厚生年金の資格取得、喪失などの手続き
給付を受ける手続き
福祉分野の各種給付や生活保護
税務関連 確定申告や年末調整
扶養控除等申告書に7年間の保管義務
災害対策 被災者への迅速・的確・効率的な支援、生活再建

②給与計算

従業員の給与計算は納税と関係するため、マイナンバーなしには対応できない業務のひとつです。通常の給与計算事務にマイナンバー管理も加えられたため、社労士への委託が進みました。

また、繰り返しますが扶養控除等申告書に7年間の保管義務があるため、マイナンバーの管理は従業員の退職後も必要となります。

③就業規則作成

ご存知のように、従業員の労働・社会保険や税務手続きをおこなうためには、従業員によるマイナンバーの提出が必須となりました。しかし、事業者の中には、マイナンバー提出を従業員から拒否されるケースも少なくありません。

この場合は、就業規則に「入社時にマイナンバーを提出すべき」と付け加え、さらに「提出されたマイナンバーの利用目的や管理体制」についても明確化しておく必要があります。就業規則の作成や改定は社労士の専門業務であり、「マイナンバーの提出に応じない場合の対応」についても、取り扱い規程を作成することで解決できます。

④セキュリティ

「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」

マイナンバーに関するセキュリティに関しては、マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)にのっとっておこなう必要があります。ガイドラインからも分かるように、紙ベースでのデータ保管はマイナンバーの管理には適していません。

一方、パソコン内で情報を保管することにも危険性はあります。社労士は、大企業にはクラウドサービスでの管理を提案するといった、依頼主によって最適なアドバイスができるようにならなけれななりません。

4 マイナンバー時代に求められる社労士の付加価値

マイナンバーに強い社労士になるためには、保管方法や管理ツール研究、セキュリティ対策についてマスターする必要があることには既に触れました。

その他、マイナンバー時代に社労士がさらに備えるべき付加価値とは、どんなものがあるでしょうか。

(1)コンサルタント業

今後、将来性がある社労士となるためには「クライアント企業の顧問として、労務コンサルティングをおこなえる社労士を目指すこと」が必要です。

なぜなら今後、日本の働き方は間違いなく変化していくからです。働き方改革以降・ウィズコロナの激動の時代に、労務関係やコンプライアンス遵守について的確にアドバイスできる社労士は、重宝されるでしょう。

これまで社労士に求められているものは、主に社会保険の知識でした。今後は個人情報の管理、新しい働き方の創造についても任せられる社労士が求められるようになります。

(2)スキルアップで仕事を拡大

「特定社労士」の資格を取得するのもおすすめです。

特定社労士は2007年にできた資格で、近年急増している労使間のトラブルを、裁判外で迅速に解決するために創設された資格です。特定社労士になると、セクハラ・パワハラ、不当解雇などのトラブルを、法定に持ち込まずに解決する「紛争解決手続代理業務」をおこなえるようになります。

特定社労士は、これまでの業務に加えて新たに活躍の場を増やすこともできます。これまでは弁護士にバトンタッチしていた業務まで担当できる資格なので、顧客の安心に繋がります。マイナンバーに関する知識と同様、持っていると有利です。

(3)マイナンバー管理方法の提言

マイナンバーの管理は、その扱いについて法的知識が要るため面倒な業務です。

そのため、会社の中には、税理士と社労士に社員のマイナンバーを預けて何もしないケースもあります。税理士や社会保険労務士にマイナンバーを預けることは、「マイナンバーの管理の委託」になるため、もしマイナンバー管理のトラブルが生じたら、委託先である税理士と社労士に管理責任が生じます。

依頼主の企業は委託をおこなう場合、委託先である税理士や社労士が適正にマイナンバーの管理をおこなっているかどうか、定期的に監督をおこないます。税理士・社労士は、いつ抜き打ち監査をされても良いようにしていなければなりません。

また、大企業や社員の入れ替わりの多い企業は、そもそも社員情報を紙ベースで管理することは困難なため、クラウドサービスの利用をすすめるのも良いでしょう。「マイナンバーがどのように使われたのか利用履歴を残せる」メリットもあります。また、クラウドサービスを利用しマイナンバーの利用履歴を記録することは、社内の不正行為の抑止力にもなります。いわゆるアクセスログが残るシステムでは、不正アクセスがおこなわれにくいというデータも存在します。

しかし、紙での管理にこだわる会社もあります。その場合は銀行の貸金庫に預ける方法を提案できます。銀行の貸金庫なら防犯カメラもあり、入退出記録も付き、作業スペースもあるので良いでしょう。

マイナンバーに強い社労士になりたければ、このようにマイナンバーの管理についても豊富な提案ができる知識を持つことが求められます。

5 サマリー

マイナンバーの取り扱いについて強くなることが、社労士としての差別化に繋がることをお分かりいただけましたでしょうか。マイナンバーはデジタル社会のインフラとして、今後も行政業務の迅速化・簡素化のためにますます活用されるでしょう。

この記事から、社労士としてマイナンバーの取り扱いに精通することの将来性を感じていただければ幸いです。

6 まとめ

・マイナンバーは、まず社会保険など社会保障、給付手続き、福祉の給付や生活保護の用途で使用開始された。

・税務では、確定申告や年末調整、災害対策の目的でも活用される。

・社労士業務である、労働保険社会保険諸法令に関する手続ではマイナンバーが使用される。

・個人情報にマイナンバーが記載されると「特定個人情報」に昇格し、法律上厳しい管理が求められる。

・マイナンバーの扱いに義務付けられた、4種類の安全管理措置とは、①組織的対策の不備、②人的ミス、③物理的脆弱性、④技術的脆弱性である。

・マイナンバーの取扱いには➀利用するごとに取得➁継続的な雇用関係では保管可能③退職者のものは廃棄等のルールがある。

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