社労士業務のオンライン申請が義務化に!2020年4月より適用された電子申請義務化の内容とは?

社労士業務のオンライン申請が義務化に!2020年4月より適用された電子申請義務化の内容とは?

新型コロナウィルス感染拡大によって、業務のオンライン化はより必要性が高まった印象がありますが、もとより全ての業種において導入が急がれていました。行政手続きにおいても同様で、2020年4月より、社会保険・労働保険関連手続などの社労士業務の一部も電子申請が義務化されました。

この記事では、満を持して開始された社労士業務の電子申請について、導入方法も含め分かりやすく解説していきます!

1 社労士業務と電子申請

全ての業界においてオンライン化が課題となっている今日ですが、社労士業務においては、どのような経緯で電子申請が義務化の運びとなったのでしょうか?まずは、その歩みについて、触れておきましょう。

(1)社労士業務の電子申請化への歩み

電子申請義務化への具体的な取り組みは、2017年6月に政府が立てた「規制改革実施計画」から始まりました。このとき、厚生労働省は「行政手続コスト」を削減するために、特定の法人(詳細は後述)に対して、社会保険・労働保険の手続きの一部について、電子申請を義務化すると発表しました。2020年4月1日以降に開始する特定事業者の事業年度から、電子申請義務化が適用されることが決定し、発表されたのです。

対象となる法人は、これまで日本年金機構やハローワークなどに書面で提出していた手続き書類を、この日から電子政府(e-Gov・イーガブ)を介して提出しなければならなくなりました。

後述しますが、「行政手続コスト」の削減は、2016年に政府が打ち立てた日本再興戦略の目標である、「GDP600兆円」実現のための施策の一つです。この高い目標を達成するためには、生産性の向上が必須であり、そのためには行政手続きコストを「20%以上」削減すべき、と方向付けられました。そして、社会保険や労働保険の電子申請を導入し義務化することで、申請書作成や提出のための人的コストや労働時間の削減を図ろうとしたのです。

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(2)背景にあるe-Japan構想

電子政府とは、行政と国民・事業者間の手続き業務を、対面式や書類提出からオンライン化にした行政のすがたを指します。オンライン化の恩恵により、全ての情報は瞬時に共有され、活用することができます。

電子政府の実現は、そもそも政府が2001年に提唱した「e-Japan戦略」の一環でした。電子政府は、「超高速ネットワークインフラ整備」や「電子商取引」などの戦略のなかでも、目玉であるとうたわれました。そして、各申請手続きのオンライン化のために、次のポータルサイトが開設されました。

税務関係 e-tax
(Eタックス)
国税における手続きを、オンラインでおこなうためのポータルサイト。
eltax
(エルタックス)
地方税における手続きを、オンラインでおこなうためのポータルサイト。
社会保険
労働保険
e-Gov
(イーガブ)
行政機関に対する申請・届出などの手続きを、オンラインでおこなうためのポータルサイト。
登記関係 登記・供託オンライン申請システム 申請・請求や電子公文書の取得を、インターネット又はLGWAN・政府共通ネットワークを利用しておこなうシステム。

(3)2017年時点で各手続きにおける電子申請普及率

電子申請の普及率は、社会保険や労働保険においては非常に低い状態でした。具体的には約15%という低い普及率を示したのに対し、登記の電子申請は約70%、国税の電子申請は約65%と、ずっと高い数値を示しました。

このように社会保険や労働保険における電子申請は、普及率が非常に低い状況から、「行政手続きコスト」の20%超の削減の実現のために、電子申請の義務化に至ったのです。

2 電子申請の方法

一旦電子申請が義務化されたら、対象法人はシステムやインターネットが苦手だといっている場合ではありません。しかし、電子申請のやり方は、果たして万人が扱えるような簡単なものなのでしょうか?

(1)電子申請とは?

先述のe-Govではオンライン申請や届出をおこなうことができる他、行政情報について検索したり案内を受けたりすることができます。詳しくは後述しますが、電子申請にあたっては、外部連携API対応システムを利用するという方法も選択できます。

(2)電子申請のメリットとは?

電子申請のメリットには様々ありますが、代表的なものは以下の通りです。

・24時間申請が可能になる

・申告書や届出書を手書きする手間を減らすことができる

・窓口に行くための時間や交通費などのコストを削減できる

・ワンストップで複数の窓口を回る必要がなくなる

・情報漏洩に関するセキュリティの向上

(3)どのような手続きがおこなえるのか?

e-Govでは、労働社会保険関係手続きの大半をオンラインでおこなうことができます。ただし、社労士と被保険者など事業主の電子署名が必要である場合があるため、現在のところ実際にe-Govでおこなえる電子申請は、事業主等の電子署名の省略が認められている手続きに限られてしまっています。

健康保険 ・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
厚⽣年⾦保険
労働保険 継続事業(一括有期事業を含む)をおこなう事業主が提出する以下の申告書
・年度更新に関する申告書
(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出⾦申告書)
・増加概算保険料申告書
雇用保険 ・被保険者資格取得届
・被保険者資格喪失届
・被保険者転勤届
・⾼年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請

(注意事項)
①2020年4⽉以降に開始される各特定の法⼈の事業年度から適用されます。
②社会保険労務士や社会保険労務士法人が、対象となる特定の法⼈に代わって⼿続をおこなう場合も含まれます。
③以下に該当する場合は、電子申請によらない方法により届出が可能です。
Ⅰ 電気通信回線の故障や災害などの理由により、電子申請が困難と認められる場合
Ⅱ 労働保険関係⼿続(保険料申告関係)については、労働保険事務組合に労働保険事務が委託されている場合、単独有期事業をおこなう場合、年度途中に保険関係が成⽴した事業において、保険関係が成⽴し た日から50日以内に申告書を提出する場合。

出典:厚生労働省リーフレット

(4)どのような企業が対象になる?

先述したように、2020年4月より「電子申請義務化の対象」は、以下の法人などに限られています。

・資本金または出資金額が1億円を超える法人
・相互会社(保険業法)
・投資法人(投資信託及び投資法⼈に関する法律)
・特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

これによると「資本金または出資金額が1億円を超える」規模を持つ企業であれば、中小企業でも「電子申請義務化の対象」となります。

また、社労士や社労士法人が手続きを代行する場合も、上記のいずれかに該当すれば、もちろん対象となります。

3 手続きの方法とは?

今回の「電子申請義務化」においては、次の2つの手続き方法が認められています。

①e-Gov(イーガブ)電子申請システムを利用する方法
②外部連携API対応システムを利用する方法

なお、かつてはCD-Rなどでの提出が可能でしたが、今回の電子申請義務化以降は、CD-Rなどの電子媒体での提出は認められません。

(1) e-Gov電子申請システムを利用する場合

「e-Govオンライン申請入門講座〜実習編」を参照すれば、申請までの手順が分かります。

e-Gov電子申請手続きの方法には「通常申請」と「一括申請」の2種類の方法があります。通常申請は、申請書類を一項目ずつサイト上で手入力し、添付書類を一つずつアップロードする方法です。お分かりのように大変地道な申請方法のため、今回義務化の対象となっているような大企業であれば、気の遠くなるような手間がかかります。

このようにe-Govからの申請は、書面手続きよりも手間がかかることもあるうえ、電子申請で申請・届出できる行政手続と、そうではない行政手続きがあります。

メリット 自社からダイレクトに申請できるため、申請コストがかからない。
デメリット ・動作環境がWindowsに限られる。
・従業員ごとに1回ずつ申請しなければならない。
・提出した申請書の進捗状況を確認しにくい。
・誤記入をチェックしづらい。
・操作が複雑。

一方、「一括申請」は、添付ファイル・署名ファイルなど申請に必要なデータをひとつの圧縮ファイル(ZIP)にまとめて、アップロードして申請する方法です。このZIPファイルを作成するためには、専用のソフトウェアが必要です。

(2) 外部連携API対応システムを利用する方法

出典:「社会保険・労働保険手続等の電子申請の 利用促進に関する取組について」

e-Gov電子申請システムとAPI連携した、「労務系システム」を使用して申請することも認められています。API連携した労務系システムを利用する場合のメリット・デメリットは、e-Gov使用時と比べた場合、以下の通りです。

メリット ・既にある人事・給与システムなどのデータを活用して、申請に必要な書類を自動作成できる。
・システムが必要な情報を収集してくれるので、入力ミスがない。
・データ作成から進捗管理、申請作業、公文書の取得まで、操作画面からおこなえる。
・大量処理も可能。
デメリット 自社に外部連携API対応システムがない場合は、導入費が発生する。

また、クラウドサービスを利用した場合、「権限の付与」だけで社労士や税理士とも情報共有ができるため、スムーズに委託できるメリットがあります。

4 「準備しておくこと」

電子申請事前準備リーフレットにもあるように、電子申請をおこなうにあたり、届出は必要ありません。ですが、いくつかの事前準備は必要になるため、注意が必要です。

現在「特定の法人」として設けられている対象法人の枠は、近い将来取り除かれていくでしょう。全業種への「電子申請義務化」の波は、いずれ必ずおとずれます。ですので、今から対策を講じておくことが賢明だといえます。

(1)共通して必要な準備

e-Gov、外部連携API対応システムのいずれを利用する場合でも、電子申請をおこなう場合は、必ず「電子証明書」を取得しなければなりません。

電子証明書は認証局で発行され、それらについてはe-Govホームページ内で紹介されています。注意すべきは、申請・届出等手続きによって利用できない電子証明書があることです。また電子証明書の発行には、手数料が必要になります。所轄行政機関に確認したうえで認証局に問い合わせをおこない、電子証明書の発行を受けるようにしましょう。

(2)e-Gov電子申請システムで必要な準備

e-Govを介して直接申請する場合は、対応OSであるWindowsの確認、専用のe-Gov電子申請アプリケーションをインストールするなど、e-Govホームページを参考にして準備を進めましょう。

また、「パーソナライズ」を開設する必要があります「パーソナライズ」とはマイページのような機能で、よく見る手続きの情報や、提出済みの申請の進捗情報を管理することができます。

e-Govで電子申請する場合は、添付書類をあらかじめ準備しておく必要があることにも注意が必要です。電子申請をおこなう前に、行政手続き案内ページで必要書類について確認するようにしましょう。対して外部連携API対応システムで電子申請する場合は、申請業務をおこないながらシステム上で必要なデータを収集することができます。

(3)外部連携API対応システム必要な準備

外部連携API対応システムを利用する場合は、既存の労務系システムがAPI連携できるものであるがどうか、事前に確認する必要があります。バージョンアップが必要な場合もあるので、まず契約先のベンダーに問い合わせると良いでしょう。

5 サマリー

社労士業務の電子申請について、お分かりいただけたでしょうか? e-Govと外部連携API対応システムの、いずれを使うかについては、企業規模などによって選択肢が変わってきます。事前に良く検討するようにしましょう。

6 まとめ

・厚生労働省は2020年4月1日、特定の法人に対して、社会保険・労働保険の手続きの一部の電子申請義務化を発表した。

・申請書作成や提出のコスト削減を図って行政手続コストを20%以上削減し、生産性向上を実現するのがその目的である。

・税務関係の電子申請にはe-taxとeltax、社会・労働保険にはe-Gov、登記関係には登記・供託オンライン申請システムが設立された。

・e-Govからの電子申請の他に、外部連携API対応システムを利用する方法もある。

・e-Gov電子申請手続きの「通常申請」は手間がかかるため、大企業などは外部連携API対応システムを使用するのがおすすめである。

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