働き方改革や新型コロナで人事・労務は大混乱?今こそ人的リソースの専門家・社労士に頼ろう!

働き方改革や新型コロナで人事・労務は大混乱?今こそ人的リソースの専門家・社労士に頼ろう!

新型コロナウイルス感染拡大対策として、政府は数々の助成金を設けました。制度の拡充、申請手順の簡素化を重ねているものの、まだまだ理解するのが難解な制度です。そんな中活躍しているのが、人事・労務のプロである社会保険労務士(以下、社労士)です。

この記事では、働き方改革でも存在感を増した社労士の業務と、社労士が企業の人事部をどのようにサポートできるのかについて解説します。

1 そもそも社労士とは何かをおさらい

士業にはそれぞれ法律に守られた独占業務がありますが、社労士の独占業務は、1号業務と2号業務といいます。1号業務は➀書類作成➁提出代行③事務代理④紛争解決手続き代理業務、2号業務は「帳簿書類作成」がそれにあたります。しかしこの解説では、社労士が具体的にどんな業務を取り扱うのか、よく分かりませんよね。

まず社労士の種類と業務について、解説しましょう。

(1)社労士とは?

「ヒト・カネ・モノ・情報」の4大経営リソースのうち、ご存知の通り社労士は「ヒト」というリソースに関するプロフェッショナルです。社労士が専門領域とする「労働社会保険諸法令」は、全て人的リソース、つまり労働者を守るためのものです。

(2)社労士の分類

実は、社労士には「開業社労士」「勤務社労士」「社労士法人」と、3つの種類が存在します。そして試験合格後の社労士登録では、それらのいずれかを選択する必要があります。勤務社労士になった場合は企業の人事・労務部門に勤務することになり、その企業の業務に専従します。他の2つの社労士も、企業の委託を受けて人事や労務管理、労働・社会保険に係る業務に携わります。

開業社労士 独立開業して、誰からでも報酬を受け取り業務委託で職務をおこなうことができる。主な働き方は中小企業と顧問契約を結ぶこと。労働・社会保険の諸手続き、人事・労務管理の相談・指導などをおこなう。
勤務社労士 企業の人事・労務管理部門や開業社労士の事務所に勤務する。開業社労士とは異なり、勤務先の業務に専従。
社労士法人 社労士業務をおこなうことを目的として設立された、社労士法人(一人法人も可)。

(3)社労士の業務と人事

社労士の業務は大きく5つに分類されます。

①労働社会保険手続業務

社労士は、労働社会保険の業務を代行し、労働社会保険への適正な加入をサポートします。労働災害や失業、定年後の年金給付を受けられないなどの不安要素があっては、従業員は安心して働けません。しかし労働社会保険の手続きは、制度の複雑化から手続きが難解になっており、労務担当者の大きな負担となっています。

1 労働社会保険の適用、年度更新、算定基礎届 法改正により複雑化した労働社会保険の諸手続き業務を代行。
2 各種助成金などの申請 国の政策による助成金の申請業務を担当。厚生労働省の雇用関係助成金の代理申請は、社労士の独占業務。
3 労働者名簿、賃金台帳の調製 労働者名簿及び賃金台帳は法定帳簿であるため、不備がある場合罰則の適用も。
4 就業規則・36協定の作成、変更 法改正に対応した就業規則、労使協定(36協定)の作成・見直し。

②労務管理の相談指導業務

良好な労使関係を維持するため、賃金制度の相談・指導などをおこないます。

1 雇用管理・人材育成に関する相談 適切な労働時間の管理や、人材の採用・育成に関するコンサルティングを提供。
2 人事・賃金・労働時間の相談 人事、賃金、労働時間に関する提案。
3 経営労務監査 コンプライアンス違反、職場トラブルを予防。

③年金関連業務

「障害年金」「遺族年金」「老齢年金」は度重なる法改正で複雑化しています。社労士は「公的年金に関する唯一の国家資格者」です。

1 年金の加入期間、

受給資格などの確認

年金をいつからいくら受け取ることができるのかなどについても回答し、必要な書類作成や手続きもサポート。
2 裁定請求書の作成・提出 年金は自動的に支給が開始されません。社労士が必要な申請手続きを代行。

④紛争解決手続代理業務

ADRとは、裁判によらない、あっせんや調停、仲裁などの手続きで紛争の解決を図る方法です。ADR代理業務は、特定社労士のみがおこなえる業務です。

1 あっせん申立てに関する相談・手続き 特定社労士があっせんに必要な手続をおこなう。
2 代理人として意見を陳述・和解の交渉・和解契約締結 特定社労士が依頼主の考えを法的に整理し円満解決に導く。

⑤補佐人の業務

労働・社会保険の制度の複雑化から国民と行政のトラブルも増えています。

補佐人として意見を陳述 補佐人として労働社会保険に関する行政訴訟、個別労働関係紛争に関する民事訴訟で、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述をおこなう。

2 人事部の役割と機能とは?

続いて、企業における人事・労務部門の役割について、掘り下げてみましょう。人事・労務部はどの企業にもその役割を担う部署(または担当者)があり、職務をないがしろにすると、労働基準法違反などの違法行為を犯してしまうこともあります。

(1)人事部の役割とは?

企業とは何かを一言でいえば、「自らの保有する経営リソースを事業活動へ投入し、利潤を追い求める存在」です。企業が保有する経営リソースとは、繰り返しますが「ヒト・モノ・カネ・情報」の4要素に分類されるのが一般的です。

そして人事部とは「ヒト」という経営リソースのを最大有効活用の実現を目指す部署です。人的リソースを最大限に有効活用していくかたちは、企業や業態によって違います。絶対的なものは存在しなく、「最適解」は企業の数だけ存在しえます。企業による人事部の構成の違いについて、挙げてみましょう。

・金融機関:労務管理を担当する、独立した組織は存在しない
・製造業:本社の人事機能を補完するために事業部や事業所ごとに人事担当組織を構成
・総合商社:各事業部内の企画担当組織で人事労務管理も担う

しかし、かたちは違えど共通しているのは、人的リソースの最大有効活用のために存在するのが「人事部」であるということです。

(2)人事部の機能とは?

人事部が日々担う役割には、様々な内容がありますが、その時の景気の動向や社会情勢によって、急務が発生することもあります。今般の新型コロナ禍のように、雇用調整助成金や小学校休業等対応助成金などの休業手当の申請など、時限的な業務も発生するからです。

1 採用機能 社員の募集と採用活動をおこない、人材の有効活用のバランスを取る。企業によってやり方は様々。

・社員の採用は全て人事がおこなう
・正社員採用は人事、非正規社員は各部門や事業所に委ねる
・採用プロセスの初期段階は各部門、最終段階は人事、またはその逆

2 処遇機能 社員の配属先、人事異動、昇進・昇格、昇給について扱う。
具体的にどのような役割を担うかは企業ごとに違う。
3 人事制度の企画・立案 社員の処遇決定の基準となる評価制度や、報酬制度の構築。人材を最大有効活用するうえで非常に重要な機能。企業の特徴が顕著に反映される。人事制度のミスマッチはモチベーション低下や離職率の悪化をを招く。
4 労務管理機能 労務管理や、労働組合との折衝もおこなう。働き方改革関連法施行後は、残業時間管理など労務管理機能の強化が求められている。単なる労務管理だけでなくリスクヘッジ機能も併せ持つように。
5 能力開発機能 社員への研修制度を構築し、「能力開発」の機能が挙げられる。社員という経営資源が陳腐化しないように能力開発に投資する機能を担う。

①採用機能

人材採用に関する業務も多岐に渡ります。また単なる不足人材の補充・穴埋めではなく、企業の将来を見据えた人材採用を戦略的におこなうことも必要とされます。働き方改革では「ダイバーシティ採用」と謳われる、女性やシニアの採用といった社会的目標も掲げられました。

採用活動には、具体的に以下のようなものがあります。

・組織内の現状の把握
・求められる人物像の把握
・採用計画の決定
・採用方法の詳細決定
・採用担当者やリクルーターを選定(アウトソーシングの場合も)
・求人情報を社内外に公開
・会社説明会や選考会、面接を実施
・内定者や採用者を決定、内定者のフォロー

②処遇機能

人材評価と処遇の実行は、従業員のモチベーションを高めることが主な目的です。人事部は、人材評価と処遇の実行を通じて従業員のモチベーション向上や適正な人材配置を図る必要があります。明確な査定や評価基準を設定することによって、評価の公平性を確保することも、人事部の重要な役割です。

人材評価と処遇の実行に関する業務には以下のようなものがあります。

・組織に求められる人物像の明確化
・人事評価制度の策定
・等級制度・報酬制度の策定
・制度に従って評価、昇格や昇給などの人事を実行
・人事異動の実施
・人員配置の最適化

③人事制度の企画・立案

従業員のパフォーマンスを最大にし、組織運営の安定化を図るために実施されるのが、評価制度や報酬制度の構築です。その他、福利厚生、人材育成制度なども人事制度の一部です。

これら人事制度に関する最終決裁権は経営層が持っていますが、企画や立案については人事部がおこなうことが多いのです。

 ④労務管理機能

労務管理業務は、労働基準法や個人情報保護法、働き方改革関連法案など、法令や法案に基づいておこなわれます。そのため、人事に従事する者こそ、誤った理解では許されません。各法令・法案に対する理解を十分に深めておく必要があります。

企業によっては、労務管理は総務部や労務部、経理部などがおこない、人事部は人事管理のみをおこなうこともありますが、その場合にもそれらの、部署が単独で管理業務を実施することがないように注意しなければなりません。人事部と各部署が連携を図って人的資源管理を実現させることができるように努めなければなりません。

今般の新型コロナ禍で創設・拡充された助成金申請には、準備すべき様々な書類があります。申請条件や補償の内容のアップデートをキャッチアップしていくために、労務の専門家である社労士に依頼するのも労務管理の務めです。テレワーク時の労務管理、働き方改革始動時から掲げられる「柔軟な働き方」など、就労環境の刷新に関わるのも労務管理です。

労務管理に関する業務には、以下のようなものがあります。

・労働契約の締結
・労働条件の管理・変更
・就業規則等の作成・届出・周知
・社会保険・労働保険の手続き
・勤怠管理(労働時間管理)
・給与・賞与の計算
・健康管理・支援
・職場環境の現状把握と改善
・労働組合との折衝
・福利厚生の管理・変更

⑤能力開発機能

人材育成の狙いは、従業員一人ひとりの潜在能力を引き出し、最大限に発揮させることです。付加価値的生産性向上はすべての企業のテーマですが、その結果としての競争力の向上は、効果的な能力開発の賜物です。

人はロボットではないので、育成対象者の希望や意見に耳を傾け、腰を据えて進める「血の通った」能力開発をおこなう必要があります。現状の把握に加え、自己啓発などの手法を適切に使い分け、自社の未来を担う人材を育成することが願われます。

また、昨今では個人の能力開発だけでなく、組織全体の活性化を図る「組織開発」にも注目が寄せられています。

人材育成と組織開発に関する業務には以下のようなものがあります。

・新入社員研修など研修の企画立案
・研修のためのプログラムやマニュアルの作成
・目標設定支援や管理など、自己実現に向けた総合的支援
・コーチングスキル・ファシリテーションスキルの強化
・チームビルディング(組織形成)の実施
・従業員サーベイの実施

(3)企業における社労士の役割

社労士業務について知見がある方には、これまで人事・労務部の役割について紹介した内容に、社労士が担当する業務の多さを感じたことでしょう。社労士は、これまで挙げた企業の人事・労務部門の業務を、プロとして請け負うことができます。

社労士の主な業務は以下の2つに大別できますが、働き方改革施行時やリーマンショック・新型コロナ禍といった社会の混乱期には、国からの支援をうけるための適正な申請書類作成をおこなったり、必要要件を満たすための指導をおこなうなど、専門家の立場から多くの貢献をしています。

①労働・社会保険に関する手続き

社労士は社会保険のプロです。労働保険や社会保険は改正を繰り返したことで、手続きは複雑さを極め多岐に渡るようになりました。特に社会保険は、社会の円熟などに合わせて改正が繰り返されたため、全容を理解するのが難解になっています。雇用保険の加入条件も改正されたばかりですが、「変化についていけない」と嘆く経営者や人事従事者は多いのです。

年金は受給資格があっても、申請しなければお金を受け取ることが出来ない制度です。多大な労力を課す年金の手続きを社労士に委託し、その分のマンパワーを本業に回すのも、適切な判断だといえるでしょう。

②人事・労務管理

社労士は、労働者がいきいきと働ける健全な会社作りをサポートします。働き方改革そのものが日本の労働環境の改善を目指しており、関連法案には罰則付きの法律を盛り込んで、国の本気度を見せたといわれています。社労士は働き方改革でも、人事・労務関係の専門家として、企業の法令順守を支えてきました。

残業ありきの働き方を刷新するためには、単なる労務管理だけでなく労働の質が向上しなければなりません。人事・労務の業務にはそのような将来を見据えた戦略も視野に入らなければなりません。

また、新型コロナ禍のような有事にも、社労士の知識は大きく求められています。

例えばテレワーク導入支援金の申請条件には、社労士へのコンサルティングやテレワーク勤務規程の作成が含まれていました。そもそもテレワーク導入に当たっては、該当労働者との労使協定締結やテレワーク勤務規程の作成が必要でした。また、雇用調整助成金申請の手順は現在かなり簡素化されていますが、当初は労使協定や賃金・労働時間の証明なども含まれていました。

厚生労働省の助成金申請は、社労士の独占業務に当たります。手続きが煩雑で諦める事業者がいるのは残念なことですので、社労士に相談されることをおすすめします。

3 これからの人事のあるべき姿と社労士

働き方改革関連法の施行時に、その存在が注目を集めた社労士ですが、今回の新型コロナウイルス感染拡大対策の導入にあたっても、多くの事業者が社労士の能力を必要としています。

例えば、感染拡大対策としてのテレワーク導入には、申請条件である社労士とのコンサルティング等もさることながら、テレワーク勤務者の労務管理や評価制度に対する疑問が、事業者の間で多く湧き出ました。これに関する提言も社労士に求めることができます。

(1)新型コロナ禍などの有事に労働者を守る役割

リーマンショックや東日本大震災の時にも制度の拡充があった雇用調整助成金ですが、今回の新型コロナ禍でも更なる拡充が続いています。しかし、制度の継ぎ足しで結果的にいくら貰えるのか分かりにくい制度になっています。また、過去に利用している場合は申請可能かなど、様々な疑問が事業者から噴出している状態です。

新型コロナウイルスは型を変えて第2波、第3波を到来させるという懸念もあります。今回の収束傾向に甘んじることなく、今こそ次世代型経営への舵きりをおこなうべきです。今回のコロナ禍では、テレワーク勤務規程の策定などの労務が、多くの企業の急務となりました。国の有事であり、かつ時代の変革期である今、社労士はその知識を活かして様々な貢献ができます。

(2)戦略的人事への転換

従来の労務は管理業務に重点を置いていましたが、今後は企業の生産性を高や競争力アップにベクトルを向けなくてはいけません。長時間労働ありきの古い生産性に見切りをつけ、戦略的に新しい働き方を開拓する方向性は、人事業務にも反映されるべきです。

(3)新しいタレントマネジメント

人事部には、現時点で会社に不足している能力やスキルを洗い出す役割もあります。今後やってくる「アフターコロナ」「ウィズコロナ」時代は、コロナ前の組織運営では対処できません。今後必要とされる人材の採用や育成も、専門家の力を借りてでも充実させる必要があります。

(4)組織変革の担い手となる

そもそも「働き方改革」は、人材をとりまく環境にメスを入れています。育児や介護の必要がある人、シニア、外国人の雇用などで多様な働き方を実現し、労働人口を増やすことも目標です。するとやはり、課題として出てくるのは労務管理や評価制度の問題です。

また、年々市民権を得ているコンプライアンス遵守の実現も、人事の重要な役割の一つです。しかし労務部のない会社などは、法令順守しているのかを調べる手も足りません。

「企業は人なり」といわれるように、人的リソースこそ企業経営そのものに資するものです。今後ますます求められるICT等の技術革新や、社会のグローバル化に対応できる人材の採用・育成を果たす役割も、人事部に担わされています。これら人事部に課された重責のサポートも、人材のプロ・社労士に依頼することができます。

4 サマリー

社労士がどのように人事の業務に携わることができるかについて、まとめてきました。

テレワーク導入支援や雇用調整助成金についての申請は、社労士の独占業務ですので、必要がある場合はぜひ相談しましょう。

5 まとめ

・社労士は「ヒト・カネ・モノ・情報」の4大経営リソースのうち「ヒト」のプロである。

・社労士の専門領域「労働社会保険諸法令」は、労働者を守るためのものである。

・人事部とは人的リソースの最大有効活用の実現を目指す部署である。

・人事部の機能には、採用・処遇・人事制度の企画と立案・労務管理・能力開発がある。

・社労士は上記の人事部業務のみならず、働き方改革関連法や新型コロナ対策で多くの事業者に力を求められている。

・人事の役割は今後労務管理だけでなく、生産性向上に関わる人事や、労働環境の変革なども含まれる。

社会保険労務士カテゴリの最新記事