身近に感じてもやはり難しい!社会保険労務士(社労士)試験 健康保険法の概要を解説!

身近に感じてもやはり難しい!社会保険労務士(社労士)試験 健康保険法の概要を解説!

社会保険労務士(以下、社労士)試験にいざ取り掛かろうとしたら、「健康保険法」 は労働の分野よりは馴染みがある分、やりやすく感じるのではないでしょうか。しかし、実際には度重なる改正で複雑化し、資格の認定や支給額の計算なども難解なものになっています。

健康保険は、社労士にとって専門知識の最たるものの一つです。出題範囲も膨大ですが、この記事では頻出分野をともに確認していきましょう。

1. 健康保険法とは、医療保険の一つ

健康保険とは、医療保険のひとつで、会社員などを対象に、「療養の給付」を代表とする給付をおこないます。対して国民健康保険は、自営業者や無職の人などが対象です。75歳以上になると、全員等しく後期高齢者医療制度に加入します。

2. 健康保険法の出題傾向

健康保険法の出題数は、選択式で10問(10点)、択一式で1問(5点)となっています。社会保険関連(健康保険法、国民年金、厚生年金保険)は、労働関係科目よりも出題量が多いのですが、そうすると頻出部分が似通ってくるのかもしれません。健康保険法の場合は、そのような理由からか、頻出傾向が強いため、過去問をやりこむことで効果的な対策ができます。

ただ、医療保険制度は、近年法改正が多い分野です。法改正の部分も頻出傾向がありますから、最新の改正点は要チェックです。

膨大な出題範囲ではありますが、全範囲をまんべんなく読み込み、基本的な理解をすることが重要です。なぜなら、条文の内容を正しく理解しておけば、対応できる問題も出題されるからです。基本問題とは、取りこぼすと合否に大きく影響するため、確実に得点できるようにしておきましょう。

健康保険法は、広範な範囲からの出題実績がある科目ですが、条文の内容を良く理解するようにしましょう。健康保険法では、条文の知識を実例に応用する問題も頻出なのですが、こうした応用問題に対応できるようになるためには、条文理解ができていることが前提となるのです。

健康保険制度の成り立ちや背景も頻出ですので、よくまとめておきましょう。

3. 健康保険法の出題ポイントとは?

健康保険法の学習は、横断的に見ることも効果的です。共通部分が多く、例えば給付に関しては、健康保険は国民健康保険や後期高齢者医療制度とほぼ同じなのです。適用や保険料に関しては、厚生年金保険との共通部分があります。

(1)医療保険制度

「健康保険制度」「国民健康保険制度」の2つがあります。それぞれに属性を表にしてみました。75歳になれば、全員が被扶養者も含めて後期高齢者医療制度の被保険者となる点もポイントです。

表:医療保険制度

会社員等の被用者
扶養家族
健康保険制度
協会健保・健保組合
退職者は国民健康保険制度へ
75歳~後期高齢者医療制度
公務員
私立学校教職員
健康保険制度
共済組合
退職者は国民健康保険制度へ
自営業
無職者
国民健康保険制度
都道府県、市町村、国保組合

「保険者」とは制度の実施者を指します。

健康保険の保険者は、

①全国健康保険協会(協会けんぽ)
②健康保険組合(健保組合)

の二つになります。

協会けんぽの設立は平成20年10月1日で、政府管掌健康保険を引き継ぐかたちで設立しました。健保組合には、一つの企業が単独で実施する「単一組合」(700人以上)と、複数企業による「総合組合」(3,000人以上)の二種類があります。

(2)被扶養者について

被扶養者制度は「扶養から外れる」ことで税金が発生したりすることから、一般的にも認知度が高い制度です。夫が被保険者で、妻が被扶養者となっていれば、妻は夫が加入する健康保険制度を使えます。

この被扶養者について、全国健康保険協会は次のように説明しています。

被扶養者とは?
健康保険では、被保険者が病気になったりけがをしたときや亡くなった場合、または、出産した場合に保険給付が行われますが、その被扶養者についての病気・けが・死亡・出産についても保険給付が行われます。この保険給付が行われる被扶養者の範囲は次のとおりです。

被扶養者の範囲
1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。
2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。

出典:全国健康保険協会

図:被扶養者の範囲(収入がある方)

出典:全国健康保険協会

被扶養者の範囲の覚え方ですが、「生計維持、ソン(直系尊属)ハ(配偶者)シソン(子・孫)と兄弟姉妹」と覚えましょう。

また、被扶養者となるには年収に制限がありますが、これも主婦のパートに「扶養内」という税金が発生しない給与の範囲での求人があったりすることで、認知度は高い制度です。

被扶養者には収入の基準があります。

表:被扶養者 収入の基準

認定対象者が被保険者と
同一世帯に属している場合
認定対象者の年間収入が130万円未満
(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)
であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合。上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満
(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)
であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合がある。
認定対象者が被保険者と
同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が130万円未満

(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)

であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合。

※自営業を営んでいる認定対象者の年間収入の算定は、収入から控除できる経費は事業所得の金額を計算する場合の必要経費とは異なる。

※控除できる経費の例:売上原価(一般所得)、種苗費、肥料費(農業所得)等
控除できない経費の例:減価償却費(一般所得、農業所得、不動産所得)等

出典:全国健康保険協会

(3)保険給付について

健康保険を使って病院にかかると、一部負担金を支払うのみで診察を受けられますが、これを「現物給付」といいます。また、自己負担分だけで診療を受けることを「療養の給付」といいます。診察を受けた病院は「保険医療機関」といいます。また、家族にも保険給付されますが、私傷病手当である「疾病手当金」は家族には給付されません。

表:健康保険の「病気・ケガ」をしたときの保険給付

被保険者の保険給付 家族の保険給付
療養の給付 保険医療機関(病院・診療所)に保険証を提出し、一部負担金を支払うことで、診察・処置・投薬などの治療を受けることができます。 家族療養費
被保険者の
下記5給付に相当①療養の給付
②入院時食事療養費
③入院時生活療養費
④保険外併用療養費⑤療養費
入院時食事療養費 入院時の食事
入院時生活療養費 65歳以上の長期入院患者の食事、水道光熱費
保険外併用療養費 保険が適用される部分のこと

①評価療養:高度先進医療、治験など
②患者申出療養:難病患者からの申し出による療養
③選定療養:特別室代、大病院への入院など

療養費 ①全額負担の払い戻し
②海外療養費
③対象となる柔道整体師からの療養費
訪問看護医療費 医師が認めた人が安心して在宅療養できる制度。医師による訪問診療、訪問看護ステーションの看護師による訪問看護などが受けられる。 家族訪問介護療養費
移送費 病院間移送、ドクターヘリ 家族移送費
高額療養費 同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度。
世帯単位で支給される。
高額介護合算療養費 毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、1年間で設定された基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給する。
世帯単位で支給される。
疾病手当金 病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される。
休業1日につき過去12か月間の標準報酬月額の平均額の30分の1にあたる額の3分の2を支給する。
なし

(4)各種健康保険組合

健康保険組合には、その設立形式や規模で名称が違います。違いについても、比較しながら覚えていきましょう。

表:各種健康保険組合の比較表

各種健康保険組合 キーワード 特徴
指定健康保険組合 健全化計画 健康保険事業の収支が均衡しない健康保険組合であって、厚生労働大臣の指定を受けたもの。
健全化計画(3か年間)を定めて厚生労働大臣の承認を受けなければならない。
承認健康保険組合 特別介護保険料額 厚生労働大臣から承認を受けた健康保険組合。

規約で定めることで標準報酬定率制の介護保険料額に代えて、
所得段階別定額制の特別介護保険料額を採用することができる。
算定方法は、各年度特別介護保険料額の総額と納付すべき介護納付金の額とが等しくなるように定められている。

特定健康保険組合 特例退職被保険者

(旧国民健康保険法の退職被保険者)

所定の要件に該当するものとして厚生労働大臣の認可を受けた健康保険組合
(認可→組合会において組合会議員の定数の2/3以上の多数議決)
旧国民健康保険法の退職被保険者で規約で定める者は特例退職被保険者となる。
地域型健康保険組合 合併後の健保組合、不均一の一般保険料率 合併により設立した健康保険組合又は合併後存続する健康保険組合のうち
次の要件のいずれにも該当する合併にかかるもの(「地域型健康保険組合」)
合併前の健康保険組合の設立事業所がいずれも同一都道府県の区域にある
合併が事業運営基盤の安定が必要と認められる健康保険組合として
厚生労働省令で定めるものを含む当該合併が行われた日の属する年度及び
これに続く5箇年度に限り、1000分の30から1000分の130までの範囲内において、
厚生労働大臣の認可を受けて不均一の一般保険料率を決定することができます。

(5)出産・死亡での給付

出産は病気ではないので「療養の給付」対象とはなりませんが、出産に関する保険給付の対象になります。被保険者が出産した場合のみならず、被扶養者が出産した場合にも一時金が支給されます。被保険者には、出産にあたって仕事を休んでいる間は出産手当金が支給されます。

また、埋葬料、埋葬に要した実費も支給されます。

表:出産・死亡での保険給付

被保険者の保険給付 家族の保険給付
出産育児一時金 1児につき42万円が支給 家族出産育児
一時金
出産育児一時金と同額
出産手当金 出産日以前42日(多胎の場合は98日)と出産日後56日について支給対象に。
出産の日が予定日より遅れた場合、遅れた期間も仕事を休み給料を受けられなかったなら、その期間の分も支給。
支給開始以前12か月間の標準報酬月額の平均額の30分の1にあたる額の3分の2を支給する。
なし
埋葬料
埋葬費用
被保険者が業務外の事由により亡くなった場合、亡くなった被保険者により生計を維持されて、埋葬を行う方に「埋葬料」として5万円が支給される。 家族埋葬金 被扶養者が亡くなったときは、
被保険者に「家族埋葬料」として5万円が支給される。

4. おすすめの健康保険法の勉強方法

過去においては、健康保険法は、特に択一式においては満点を狙いやすい科目だったそうですが、今はそうではありません。むしろ難解な科目です。 社労士試験における健康保険法対策のポイントは、次の3つです。

①キーワード

「被保険者」「被扶養者」「保険給付」など、健康保険制度のキーワードをよく理解しておきましょう。

②法改正

健康保険法の法改正は、改正前の内容を取り上げて、キチンと改正点を理解しているかを探ってくるような出題がされやすいです。

③通達

「通達」が厄介だという話を聞いたことはありますか?健康保険法が難しい理由の一つが、通達をあつかい、本則以外からも出題される点にあります。

通達とは、行政官庁がその所掌事務について、所管の機関や職員に文書で通知することをいいます。または、その文書です。「厚生労働省通達」などと使われます。Amazonで社労士試験対策本を調べてみると、その年の通達攻略本が必ず載っています。受験勉強の仕上げの段階で、通達対策も忘れずにおこないましょう。

5. サマリー

いかがでしたでしょうか。

他の科目もそうですが、健康保険法などの社会保障は、資格や給付の要件などしっかりと暗記を求められる項目が多くあります。まずはその前に、よく読んで理解を深めることが重要です。

6. まとめ

・健康保険法とは医療保険のひとつである。

・「健康保険制度」「国民健康保険制度」の2つの制度が実施されている。

・健康保険法など社会保険関連は出題数が多いので、過去問対策が有効である。

・健康保険法のポイントとしては、給付の種類や資格、組合の種類などをおさえる必要がある。

・頻繁な法改正があるため、改正点の正確な理解が必要である。

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