社会保険労務士(社労士)試験で重要な労働安全衛生法の出題傾向・ポイントと学習法

社会保険労務士(社労士)試験で重要な労働安全衛生法の出題傾向・ポイントと学習法

社労士試験(社会保険労務士試験)では様々な法令が試験科目になっていますが、そのうちの一つである労働安全衛生法は、事業場の安全衛生管理体制や健康診断などついて定めている法律です。

労働安全衛生法は労働基準法とあわせて1つの試験科目になっており、労働基準法と比べると出題数が少ないことから、そのことも踏まえて効率的に学習を進めなければなりません。

この記事では、社労士試験の概要や、労働安全衛生法の出題傾向と対策、おすすめの学習法などについて詳しく解説しています。

1、労働安全衛生法及び労働安全衛生に関するその他の法令とは?

労働安全衛生法に限った話ではありませんが、法律はそれだけで存在しているわけではなく、政令や省令、通達などから成り立っており、場合によっては判例もその法律の解釈を拘束することになります。

労働安全衛生法の社労士試験対策などを説明する前に、労働安全衛生法とはどのような法律であるのか、また、その他に把握しておくべき関係法令にはどのようなものがあるのかについて説明します。

(1)労働安全衛生法

労働安全衛生法は、もともと労働基準法の中に規定されていた労働者の安全および衛生に関する内容を、1972年(昭和47年)に分離、拡充する形で制定された法律です。事業場における安全衛生管理体制や、健康診断のような労働者の健康を保持増進するための措置などが定められています。

(2)労働安全衛生法施行令

労働安全衛生法施行令とは、労働安全衛生法を施行するために必要な細則などを定めた政令(内閣が制定する命令)です。労働安全衛生法の多くの規定では、細かな基準などは「政令で定める」とされており、各規定を正確に把握するためには、この労働安全衛生法施行令も確認しなければなりません。

【参考】[労働安全衛生法施行令/電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)]

(3)労働安全衛生規則等

労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法や労働安全衛生法施行令を施行するために必要な細則などを定めた省令(各府省の大臣が発する命令)です。

労働安全衛生法や労働安全衛生法施行令の多くの規定では、細かな基準などは「省令で定める」とされており、各規定を正確に把握するためには、この労働安全衛生規則も確認しなければなりません。

また、労働安全衛生規則のほかにも、ボイラー及び圧力容器安全規則やクレーン等安全規則など、数多くの労働安全衛生法に関する省令があります。

【参考】[労働安全衛生規則/電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)]

(4)通達・告示・判例

労働安全衛生法に関する通達(監督行政庁が所轄の下級行政機関に対して法律の解釈などを示す文書)や告示(行政機関が決定した事項などを国民に知らせること。)、また、重要判例などについても理解しておかなければなりません。

2、社労士試験の概要

社労士試験の学習を進めるためには、社労士試験にはどのような試験科目があり、出題形式や配点、また、実際に何点とれば合格できるのかなどを知っておく必要があります。ここでは、社労士試験の概要について説明します。

(1)社労士試験の試験科目

社労士試験の試験科目は、雇用保険法ほかの労働および労働保険関係法令や、健康保険法ほかの社会保険関係法令などで構成されており、次の表のとおり8つの試験科目があります。

なお、労働安全衛生法は労働基準法とあわせて1つの試験科目になっていますので注意が必要です。

試験科目択一式 計7科目(配点)選択式 計8科目(配点)
労働基準法及び労働安全衛生法10問(10点)1問(5点)
労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
10問(10点)1問(5点)
雇用保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
10問(10点)1問(5点)
労務管理その他の労働に関する一般常識10問(10点)1問(5点)
社会保険に関する一般常識10問(10点)1問(5点)
健康保険法10問(10点)1問(5点)
厚生年金保険法10問(10点)1問(5点)
国民年金法10問(10点)1問(5点)
合計70問(70点)8問(40点)

【出典】[社会保険労務士試験の概要 (1)試験科目/社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会試験センター)]

(2)社労士試験の出題形式

社労士試験の出題形式には、択一式と選択式の2種類がありますが、具体的には、次のような出題形式になります。

➀択一式

択一式とは、5つの文章の中から、正しいもの、あるいは、誤っているものを1つ選択させたり、5つの文章について、正しいもの、あるいは、誤っているものとして示された組み合わせを1つ選択させるような出題形式です。

実際の試験問題は次のようなものになります。

【出典】[社会保険労務士試験 第51回 択一式試験問題/社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会試験センター)]

②選択式

選択式とは、文中の空欄に入る語句を一定の語群の中から5つ選択させるような出題形式です。

実際の試験問題は次のようなものになります。

【出典】[社会保険労務士試験 第51回 選択式試験問題/社会保険労務士試験オフィシャルサイト(全国社会保険労務士会連合会試験センター)]

(3)労働基準法及び労働安全衛生法の出題数と配点

労働基準法及び労働安全衛生法の出題数と配点については、上記の試験科目表のとおりですが、択一式では、計10問(各1点)で10点満点、選択式では、計1問(空欄について語群の中から5つ選択(各1点))で5点満点となっています。

なお、労働基準法と労働安全衛生法の出題数と配点の内訳については、例年、次のようになっています。

〔択一式(計10問、10点満点)〕
労働基準法:計7問(7点満点)、労働安全衛生法:計3問(3点満点)

〔選択式(計1問(5肢)、5点満点〕
労働基準法:計3肢(3点満点)、労働安全衛生法:計2肢(2点満点)

労働安全衛生法は、労働基準法と比べると、出題数が少ないため、学習を進めるうえでも時間配分などに注意しなければなりません。

(4)労働基準法及び労働安全衛生法の平均点(2016年度~2018年度)

各試験科目の平均点については、毎年度、11月の合格発表時に厚生労働省が公表していますが、2016年(平成28年)度~2018年(平成30年)度の平均点をまとめると次のようになります。

労働基準法及び労働安全衛生法の平均点については、年度によって多少の差はありつつも、すべての試験科目の中でも高い方であるため、合格のためには高得点を狙いたい試験科目であると言えます。

【参考】[第48回(平成28年度)社会保険労務士試験科目得点状況表/厚生労働省]

【参考】[第49回(平成29年度)社会保険労務士試験科目得点状況表/厚生労働省]

【参考】[第50回(平成30年度)社会保険労務士試験科目得点状況表/厚生労働省]

(5)合格基準点について

社労士試験には原則的な合格基準点が定められており、それを超えれば合格することができます。

ただし、この原則的な合格基準点は、毎年度、各試験科目の難易度を考慮して補正(引き下げ)が行われることになっています。

➀原則的な合格基準点

原則的な合格基準点は、2000年(平成12年)度の試験から、次のとおりとされています。

〔選択式〕
総得点40点中28点以上(満点の7割以上)、各試験科目5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中49点以上(満点の7割以上)、各試験科目10点中4点以上

【参考】[社会保険労務士試験の合格基準の考え方について/厚生労働省]

②年度毎の合格基準点の補正

原則的な合格基準点は上記のとおりとしつつ、毎年度、各試験科目の難易度を考慮して補正(引き下げ)が行われることになっています。2016年(平成28年)度~2018年(平成30年)度の合格基準点については、次のとおりとされています。

Ⅰ、第48回・2016年度(平成28年度)の合格基準点

〔選択式〕
総得点40点中23点以上、「労務管理その他の労働に関する一般常識」及び「健康保険法」は5点中2点以上、その他の試験科目は5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中42点以上、「労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識」及び「厚生年金保険法」、「国民年金法」は10点中3点以上、その他の試験科目は10点中4点以上

Ⅱ、第49回・2017年度(平成29年度)の合格基準点

〔選択式〕
総得点40点中24点以上、「雇用保険法」及び「健康保険法」は5点中2点以上、その他の試験科目は5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中45点以上、「厚生年金保険法」は10点中3点以上、その他の試験科目は10点中4点以上

Ⅲ、第50回・2018年度(平成30年度)の合格基準点

〔選択式〕
総得点40点中23点以上、「社会保険に関する一般常識」及び「国民年金法」は5点中2点以上、その他の試験科目は5点中3点以上

〔択一式〕
総得点70点中45点以上、全試験科目について10点中4点以上

【参考】[第48回(平成28年度)社会保険労務士試験の合格基準について/厚生労働省]

【参考】[第49回(平成29年度)社会保険労務士試験の合格基準について/厚生労働省]

【参考】[第49回(平成29年度)社会保険労務士試験の合格基準について/厚生労働省]

③労働基準法及び労働安全衛生法で合格基準点の補正は期待できない

10年ほど前までは、労働基準法及び労働安全衛生法の難易度が高く、選択式、択一式とも試験科目ごとの合格基準点が引き下げられたこともありましたが、ここ数年の合格基準点は、原則どおり、選択式は5点中3点以上、択一式は10点中4点以上となっています。

つまり、どんなに総合得点が高くても、労働基準法及び労働安全衛生法の選択式あるいは択一式で原則の合格基準点を下回ると、その時点で不合格になる可能性が高いということを意識しておかなければなりません。

3、労働安全衛生法の出題傾向と対策

社労士試験においては、一般常識の試験科目を除けば、過去に出題された問題(いわゆる「過去問」)が言い回しを変えて出題されることが多くあります。このため、社労士試験の学習を進めるうえでは、出題傾向を分析したうえで、試験対策を立てることが重要です。

(1)労働安全衛生法の出題傾向

労働安全衛生法の2016年(平成28年)度~2018年(平成30年)度の出題傾向をおおまかにまとめると、次のようになります。

上記3年度の試験で出題されていない分野でも、さらに遡れば出題されているものもあるため、完全に無視していい分野はありません。ただし、「安全衛生管理体制」や「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」、「健康の保持増進のための措置」などは出題頻度の高い分野であり、それらについては重点的に学習を進める必要があります。

【参考】[社会保険労務士 本試験 資料館/株式会社ブレインコンサルティングオフィス]

(2)労働安全衛生法の対策

先に説明したとおり、労働安全衛生法は労働基準法とあわせて1つの試験科目になっており、出題数は労働基準法よりも少なくなっています。このため、労働安全衛生法の学習のためにあまり多くの時間をかけることは得策ではありません。

特に出題頻度の高い分野である「安全衛生管理体制」と「健康の保持増進のための措置」から学習を進め、その後は、条文順に、「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」、「機械等並びに危険物及び有害物に関する規制」、「労働者の就業に当たっての措置」などを押さえていき、時間が許す限り繰り返していけば良いでしょう。

また、労働安全衛生法には重要な用語や数値が数多くあります。例えば、「安全衛生管理体制」における「総括安全衛生管理者」と、その選任が求められる事業場は労働者数が何人以上(業種ごとに異なる)とされているのなどです。これらについては、選択式も意識して確実に覚えておくようにしなければなりません。

4、労働安全衛生法のおすすめの学習方法

社労士試験を受験するために資格取得専門学校に通ったり、通信制の教材などを利用すれば、特にどのように学習を進めていくべきかを考える必要はありませんが、独学の場合には次のポイントに注意して進めていく必要があります。

(1)条文の理解

まずは、労働安全衛生法や労働基準法施行令、労働安全衛生規則などの条文にどのようなことが書かれているのかを理解しなければなりませんが、条文だけを読んでもにわかに理解できないため、参考書などとあわせて順番に確認していきます。

なお、使用する参考書は、より学習した内容を記憶に定着させるため、いろいろと購入せず、大手の資格取得専門学校などの信用できるもの1冊に絞ることをおすすめします。

(2)復習及び用語や数値の暗記

上記のように参考書などで順番に条文を確認していくと、一周まわる頃には数ヶ月後になってしまいます。このため、最初の頃に学習した重要な用語や数値などを忘れないためにも復習は欠かせません。

参考書で復習しても構いませんし、参考書から重要な用語や数値などを抜き出して単語カードにまとめ、空いた時間に確認するのも有効な方法です。

(3)過去問を繰り返し解く

先に説明したとおり、社労士試験では、過去問が形を変えて出題されることが多いため、過去問題集で少なくとも直近5年度分は試験まで繰り返し解き、再出題された場合には確実に対応できるようにしておかなければなりません。

過去問は、上記の基本的な学習を終えたあとに取り組むことが一般的ですが、どうしても問題を解きながら学習を進めたい場合や、再受験である場合には参考書の学習と同時並行でも構いません。

いずれにしても綿密に学習スケジュールを立て、試験までにすべての試験科目の学習を完了させる必要があります。

5、サマリー

いかがでしたでしょうか。

労働安全衛生法は労働基準法とあわせて1つの試験科目になっており、出題数は労働基準法よりも少なくなっています。足切り(特に選択式)にかからないためにも一定の学習は必要ですが、あまり多くの時間をかけることは得策ではありません。

学習すべき範囲は広いですが、出題傾向を分析したうえ、効率的に進めていきましょう。

6、まとめ

・労働安全衛生法は労働基準法とあわせて1つの試験科目になっており、労働基準法より出題数は少ない。

・労働基準法及び労働安全衛生法の平均点は、例年、選択式、択一式とも高いため、問題数の少ない選択式で足切り(5点中3点未満は不合格)にかからないためにもひととおりの学習は必要である。

・そのほかの試験科目も同様であるが、高得点を狙うためには過去問を繰り返し解くことが重要である。

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