社労士(社会保険労務士)試験の最難関科目「労一」とは?押さえるべきポイントとおすすめ勉強法

社労士(社会保険労務士)試験の最難関科目「労一」とは?押さえるべきポイントとおすすめ勉強法

社会保険労務士試験(以下、社労士試験)のなかでも最難関科目といわれる「一般常識・労務管理その他の労働に関する一般常識」(以下、「労一」)。出題範囲には30もの法律が包括され、範囲の広さから苦手とする受験生が多いといわれています。

労働者の保護の観点から出題予想して、「労働契約法」、統計資料である「労働統計」「白書」などについて、押さえるべきポイントを紹介していきます。

1. 社労士試験「労一」の範囲

一般常識・労一の範囲を大別すると、「労働関係法令」「労務管理」「労働経済」になります。それぞれの解説をしましょう。

①労働関係法令
全ての労働者に適用される、労働条件の最低条件を定めた法令で、労働基準法、最低賃金法などを指します。

②労務管理
就業規則を制定したり福利厚生の設定と管理をおこなうこと、または給与計算業務などで、労働者が働きやすい環境を整えることを指します。

③労働経済
労働問題を主に経済的側面から取り扱うもののこと。労働市場、雇用・失業・賃金その他の労働条件、生活内容、労使関係などがその具体的内容となります。「労働経済」は労働に関わる諸問題を解明し、人々の幸福を高めることを目的とした学問です。

出典:はてなキーワード

2. 社労士試験「労一」の出題傾向

膨大な範囲で知られる労一にも、出題傾向はあるはずです。過去問を踏襲する要素はあるはずですので、 効率的な学習のためにも、まずは出題傾向を知りましょう。

(1)労働関係法令を押さえること

労働組合法・労働関係調整法・最低賃金法・職業安定法・高年齢者雇用安定法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法などが、労働関係法令と呼ばれる頻出問題です。出題の可能性が高いと思われますので重点的に学習しましょう。

各労働関係法令については、後ほどそれぞれのポイントについて詳しく解説します。

法律の学習には、丸暗記は無理があります。細かいところまで暗記しようとせず、精読してテキストを読み進めることでいったんまず理解し、その後に問題集に挑戦して知識を補充していきましょう。厚生労働省のホームページを活用して、法律の概略等についてチェックして理解を深めるのも良いでしょう。

(2)労務管理用語

社労士試験対策を始めてから、初めて聞くような法律用語にたくさん出会ったのではないでしょうか。

用語を見るだけで内容を説明できるようなレベルまでは求められません。テキストの内容を読んだらその用語が思い浮かぶレベルで十分です。単語帳を作って、隙間時間を効率よく利用する勉強法がおすすめです。

(3)労働経済白書

労働経済白書の統計資料を使った出題は恒例です。厚生労働省のホームページには、労働経済白書の「要約文」がアップされていますので、時間があれば目を通しておきましょう。

(4)日本の労務管理の特徴を押さえる

基本的なことですが、確認しておきます。

①終身雇用制
②年功序列制
③企業別労働組合(企業グループや単一企業で組織する労働組合。日本はこの形が多いが、欧米には産業別の組合が主流)

3. 労働関係の諸法令(主要科目以外の関連法令)の解説

(1)労働組合法

労働組合法第1条
①この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出すること、その他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること、並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること、及びその手続を助成することを目的とする。

②刑法(明治40年法律第45号)第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。

出典:労働組合法

つまり、労働組合法の目的は「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」を確立し、労働者の地位を向上することです。「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」は憲法28条で保障されています。

①団結権:労働組合を結成する権利
労働条件や労働環境の改善や維持のために、労働者が団体活動を行う権利のことで、憲法28条で保障されています。団体を結成して加入することにより、使用者と対等な立場で交渉を行うことができます。

②団体交渉権:労働組合が使用者と労働条件について交渉する権利
労働者の団体が、使用者に対し賃金などの労働条件に関する交渉を行う権利を団体交渉権と言い、憲法28条で保障されています。使用者が正当な理由が無いにも関わらず団体交渉を拒否することは不当労働行為となり、労働組合法で禁止されています。

③団体行動権:労働組合が使用者と交渉をおこなう際に、ストライキ(争議行為)などをおこなうことができる権利
労働者が団体行動をする権利が保障されていることをいいます。通常は労働組合が労働条件の改善や維持を求めて、ストライキなどの団体で行動を行う権利を指すことが多いですが、最近は争議行為のみならずビラ貼りや職場集会などの組合活動を含む広い意味で使用される場合もあります。

出典:吉田泰郎法律事務所

労働協約

労働組合と使用者との間で、労働関係のルールについて書面で取り交わしたものです。その内容は、賃金や労働時間、休日などの労働条件や、団体交渉、組合活動などについての取り決めとなっています。労働協約により、一定の労働条件が保障されることで労働者を守ることができ、また、使用者にとっても労使関係の安定が維持されるというメリットがあります。労働協約に定められた基準は、就業規則や労働契約などで定められた基準よりも優先されます(労働組合法第16条)。

また、その締結当事者となるのは、労働者側では労働組合やその連合団体、個人加盟の合同労組、ユニオンなどであり、使用者側では使用者や使用者団体となります。労働協約が有効に成立するには、団体交渉で合意に達した事項を書面に作成し、両当事者が署名または記名押印する必要があります(労働組合法第14条)。

期間:労働協約の有効期限は3年まで。もしこれを超過しても3年まで。期間のない労働協約は、一方からの文書によって解約可能だが、解約を申し出る場合は90日までに予告すること。

出典:吉田泰郎法律事務所

「労働協約」は書面化されなければ全く効力がない点も要チェックです。

(2)労働関係調整法

昭和21年に施行された、使用者と労働組合との集団的紛争を解決するための法律。国や自治体の労働委員会が労使の間に入り解決に導くことを目指しています。

平成13年に、個別労働関係紛争解決促進法(個別法)が施行されましたが、これは労使の紛争を解決する手段としての法律です。解決する手段には2つあります。

①あっせん制度

都道府県労働局の紛争調整委員会による紛争解決方法。紛争当事者からあっせんお申請があった場合、あっせん委員が当事者の間にはいって和解に導く制度。労使の歩み寄りを促す制度。
費用:無料
期間:一日
あっせん委員:弁護士、大学教授、社労士など、または特定社会保険労務士が当事者の代理を務める(紛争解決手続き代理業務)

②調停制度

あっせんと同様の制度。男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法、障害者雇用促進法で用いられる、労使を和解に導く制度。

③労働審判

和解が難しい場合は訴訟となる制度。裁判官と労働審判員がおこなう。

地方裁判所で、裁判官(労働審判官)と
労働審判員(労働関係についての専門知識や経験を持つ者)が、
3回以内の期日で審理をおこなう

調停によって解決を目指す

調停による和解が難しい場合は、紛争解決案を定めた労働審判を下す

労働審判でも解決不可能な場合

訴訟

(3)最低賃金法

使用者が支払うべき賃金の最低額を保証し、労働者の生活の安定などを目的とした法律で、最低賃金は時間給で決まっています。最低賃金には2種類あります。

①地域別最低賃金

都道府県ごとに設定されます。違反したら50万円以下の罰金。
最低賃金の原則(生活保護との整合性に配慮、生活保護の支給額が最低賃金を上回らないようにするため)を遵守し、労働者の生計費、賃金、通常の事業の賃金支払い能力などを考慮して決める必要があります。

②特定の産業別の特定最低賃金

違反したら、労働基準法24条の全額払い違反になる30万円以下の罰金。
(地域の適用がない船員をのぞく)

最低賃金を違反された労働者は、労働基準監督署へ申告ができます。事業者は、最低賃金との差額を支払う必要があります。もし、申告した労働者に対して、解雇など不利益な取り扱いをした場合、6カ月以下の懲役、または30万以下の罰金が科されることになります。

※賃金の支払い確保法(賃金の支払い確保等に関する法律):
未払い賃金の立て替え払いを規定する法律のこと。会社の倒産などにより本来支払われるべき賃金が労働者に支払われなかった場合、国がその額を立て替えて支払うというもの。
対象:
労災保険に1年以上加入実績のある事業主が倒産した場合で、労働者側からの請求があった場合。また、倒産手続き開始申し立てがあった日の6か月前の日から2年以内の未払い賃金が対象になります。退職手当も対象です。
全額支給ではなく、年齢によって上限額が決められています。80%が立て替え払いの支払い対象になります。

表:未払い賃金限度額

30歳未満 110万円
30歳以上45歳未満 220万円
45歳以上 370万円

(4)職業安定法

職業安定所や職業紹介事業者について定めた法律です。「職業紹介事業の許可等に関する規定」では、紹介した事業から報酬を得る「有料職業紹介事業」を、厚生労働大臣の許可制と定め、職業紹介責任者の選任を義務付けています。

(5)高年齢者雇用安定法

定年退職年齢は、60歳を下回ることが出来ないと定めたものです。(坑内作業のみ例外)高年齢者法9条により、「高年齢者雇用確保措置」として定められていますが、これは老齢厚生年金支給開始年齢が65歳となることに基づいています。

65歳未満を定年としている事業主は、

①定年の引き上げ
②継続雇用制度の導入(全体の80%を占める)
③定年の定めの廃止

のうち、いずれかひとつを実施しなくてはなりません。希望者全員が65まで働き続けるようにならないといけませんが、

①嘱託などでも良い
②60でいったん退職させ再雇用する
③親会社から子会社に移して、継続雇用する
④関連企業で継続雇用する

でも構いません。

高年齢者雇用状況報告書の提出が義務づけられており、7月1日時点の定年や継続雇用制度の状況を、7月15日までに、所轄職安経由で厚生労働大臣に提出する必要があります。

(6)男女雇用機会均等法

昭和61年に、男女雇用機会均等法が施行されました。

均等法第6条は、労働者の募集、採用について男女とに均等な機会を与え、配置、昇進、定年、解雇、労働契約の更新などについては男女の差別的扱いを禁止しています。

均等法第5条
「○○職・男性募集」はNG。「○○職・男女募集」とすべきとする。
「保母さん」はNG。「保育士」とすべき。

均等法第9条
女性労働者が婚姻、妊娠、出産をしたことや、労働基準法の産休、妊婦が働きやすい業務への転換を請求した場合に、このことを理由に女性労働者を解雇する等不利益な扱いをしてはなりません。
妊娠中や出産後1年を経過しない女性の解雇は、原則無効(事業主が妊娠、出産を理由とした解雇でない場合はを証明した場合は無効とならない)。

均等法第11条:セクシャルハラスメントの禁止

均等法第12条:マタニティハラスメントの禁止

(7)育児介護休業法

「キーワードは仕事と家庭のバランス」であり、いってみれば働き方改革のキーワード、ライフワークバランスの実現を目的とします。平成3年に育児休業法として制定され、その後介護休業に関する規定を追加しています。

目的は、

①子育て、家族の介護に従事する労働者が、仕事を辞めないで続けられるようにすること
②育児や介護で仕事を辞めてしまった人が、再就職しやすい環境をつくること

です。

育児介護休業法は、以下の休みを認めています。

①育児休業
産後57日~子が1歳に達するまでの休業。産後56日までは産休と呼ばれるので注意。保育所、保育園の入所待ちであれば、1歳6か月まで、子が1歳6か月になっても入所待ちの場合は2歳まで延長できる。

②子の看護休暇
ケガ、病気で子の世話や予防接種、健康診断等を受けさせるために取得させる休暇。1年度において子ひとりあたり5日、二人以上で10日認められる。ただし小学校就学前の子を養育する者が、事業主に申し出ることで取得することができます。

③介護休業
介護のために1人の家族につき3回まで、通算で93日を取得できる制度。

④介護休暇
介護のために1人の家族につき1年度で5日、2人以上なら10日を限度に取得できる制度。

なお、事業主には、育児・介護休暇を取得した日を有給扱いにする義務はありません。

※パパ休暇:
育児休業の取得は、原則一人の子につき一回ですが、母親の産後休業の期間に父親が育児休業を取得、開始し且つ終了した場合は、その後もう一回育児休業が取れる制度です。これを通称「パパ休暇」といいます。

(8)労働者派遣法

派遣元事業者と派遣先事業者に対する規制と派遣労働者の保護を目的としている法律です。労働者派遣事業には、厚生労働大臣の許可が必要なことも定めています。

紹介予定派遣制度
派遣と職業紹介を組み合わせた制度。派遣として最長6か月間働き、お互いが気に入ればそのまま社員となれる制度。

労働契約申し込みみなし制度
派遣先は、
①派遣法で禁止されている建設業などで派遣労働者を働かせた場合
②無許可の業者から派遣労働者を受け入れた場合
③派遣化の期間違反
④偽装請負
をおこなった場合、派遣先の事業者は、派遣労働者に対して、今までと同じ労働条件で直接雇用の申し込みをしたものとみなされます。派遣労働者がこれを受け入れたら、派遣先社員となることができる制度です。

労働者派遣法は、どの業種にも適用されるものではありません。

派遣絶対禁止業務
①港湾運送業務
②建設業務
③警備業務

原則禁止業務:医療関係業務

有料職業紹介絶対禁止
①港湾運送業務
②建設業務

(9)労働契約法

労働者保護の観点から重要な法令です。

①労働契約を結ぶとき
使用者と労働者の雇用関係は、労働契約を締結することによって始まるため、労働契約を結ぶに当たり、使用者は労働者に対して、賃金、労働時間などの労働条件を必ず明示しなければならない。更に、特に重要な次の6項目については、労働者に対してきちんと書面を交付しなければならない(労働基準法第 15 条)。

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)
・更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど
・ 労働者がどこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)
・ 仕事の時間や休みについて:始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務のローテーション等
・ 賃金はどのように支払われるのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切と支払日の時期)
・ 労働者が辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※ 労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。期間の定めのある契約は、原則として3年を超えてはならないとされています(労働基準法第 14 条)。

※ パートタイム労働者を雇い入れたときは、上記に加え、昇給、退職手当及び賞与の有無並びにパートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口を文書の交付などにより当該労働者に明示しなければなりません(パートタイム労働法第6条第1項)。

これら以外の労働契約の内容についても、使用者と労働者はできる限り書面で確認する必要があると定められています(労働契約法4条第 2 項)。

出典:「優しい労務管理の手引き」厚生労働省  

4. 社労士試験「労一」に頻出の労務管理用語

社労士試験に頻出かつ重要と思われる用語を紹介します。

①賃金管理(賃金既定の作成)
社労士の仕事のひとつで、基本給や各種手当の設定。

②「同一労働同一賃金」
職務給(やっている仕事に応じて決定)、仕事の難易度、重要性、責任の度合いによって基本給を決定する制度。

③職務評価
職務等級制度で職務をランク付け。

④「同一能力同一賃金」
職能給(職務遂行能力で決定)、次の2つの制度で決定。
Ⅰ 人事考課制度:従業員の能力を評価
Ⅱ 職能資格制度:能力のランク付けをおこなう

⑤ハロー効果
人事考課において特定の印象が評価に影響を与える傾向(例:1流大学卒→すべて優秀)

⑥寛大化傾向
人事考課で個人的感情等により実際より甘く評価する傾向、逆に厳しく評価することは「厳格化傾向」という

⑦職務分析
職務の情報を収集し、内容、要求される知識、能力、責任等を分析し、他の職務との違いを明確にすること

⑧労働力人口
労働の意思及び能力のある15歳以上で就業者と完全失業者の合計。

⑨労働力率
15歳以上の人口に占める労働力人口の割合(労働力人口比率)

⑩完全失業者
就業しておらず、仕事を探し、仕事があればすぐに就くことができる者、労働の意思、能力のある者

⑪完全失業率
労働力人口に占める完全失業者率

5. 社労士試験「労一」に頻出の労働経済白書

一般常識科目の出題傾向として、やはり試験のおこなわれる年度の前年の白書からの出題が多いです。

白書は、出題範囲が広いですが、内容自体はそれほど難解ではないのです。一般常識として、新聞やメディア報道でよく目にする用語を覚えておけば対策として有効です。統計は、厚生労働省ホームページからデータだけでも押さえておくと良いでしょう。

下記に、労一に頻出する発表データを紹介します。

6. 社労士試験「労一」の勉強方法とは?

これまで紹介したように、広範囲なうえに難解な用語が頻出しますし、統計資料のチェックも大事です。

まずは、出題範囲を、用語の意味の理解を深めながら精読しましょう。そして過去問で出題傾向をつかみ、頻出の内容を押さえます。

また、予備校などがおこなう模試も弱点チェックには最適です。参考書にも良書がたくさんあり、特に数字の語呂合わせなどには役立ちますので、活用しましょう。

7. サマリー

・労務管理その他の労働に関する一般常識の基礎は「労働関係法令」「労務管理」「労働経済」である。

・労働関係の諸法令(主要科目以外の関連法令)の頻出問題をおさえ、重点的に学習することが必要。

・労務管理用語、労働経済白書も頻出箇所を押さえて効率よく理解を深めるのがポイントである。

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