人気が高まる社労士(社会保険労務士)試験に出題される一般常識とは?難関科目の対策方法を解説

人気が高まる社労士(社会保険労務士)試験に出題される一般常識とは?難関科目の対策方法を解説

社会保険労務士(社労士)試験の範囲のなかに、「一般常識」という科目があることをご存知ですか?

一般常識と聞くと、何やら簡単そうな印象を受けるものですが、そこは労務や年金に関する法律の専門家・社労士になるための試験の出題科目。一般常識は、社労士試験の最難関として受験者を悩ませている試験科目なのです。

この記事では、そんな一般常識において出題される具体的な科目と、効果的な勉強法・対策についてまとめていきます。

1.  社労士試験の一般常識とは

社労士試験科目のひとつ・一般常識は、受験生が最も対策に悩まされるであろう試験科目 だといわれています。一般常識は、出題範囲も広くて的をしぼりにくいため、合格レベルにあるような受験生でも大変苦労する科目です。

ご存知のように、社労士試験に合格するためには、総得点だけではなく各科目の得点においても、基準点を超えなくてはいけません。最難関といわれる一般常識で基準点に1点及ばないことで、不合格になることは起こり得るのです。

社労士試験の「一般常識」には、「労一」こと労務管理その他の労働に関する一般常識と、「社一」こと社会保険に関する一般常識という、2種類の試験があります。両方ともとにかく出題範囲が広いため、勉強法としては「広く、浅く」理解していくことが重要になります。

また、統計資料として「労働経済白書」や「厚生労働白書」が用いられますので、白書の対策や日頃から厚生労働省の施策に関心を持って読み慣れておくことが重要です。

(1)一般常識試験 概要

労一と呼ばれる「労務管理その他の労働に関する一般常識」と、社一と呼ばれる「社会保険に関する一般常識」の違いは何でしょうか。それぞれについて詳しく説明していきましょう。

図1:社労士試験 一般常識

試験科目 択一式

計7科目(配点)

選択式

計8科目(配点)

労務管理その他の労働に

関する一般常識

10問(10点) 1問(5点)
社会保険に関する一般常識 1問(5点)

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

一般常識の出題方法ですが、労一も社一も、選択式問題(空欄補充問題)と択一式問題(五肢択一問題)の2種類からなっています。選択式ではそれぞれ5問ずつ出題され、択一式では、各5問ずつで計10問出題されます。

「一般常識」にも、他の科目と同じく合格基準点が設定されています。選択式の科目ごとの合格基準点は各3点、択一式は4点という原則があります。しかし、ここに「救済措置」が取られることが毎年恒例となっています。

救済措置とは、その年の難易度や、得点の分布に鑑みて、これまで実施された社労士試験との公平性を図るために、合格基準点を「補正」することをいいます。これにより、合格基準点が2点になったり3点になったりと変化が生じることがあるのですが、気をつけなければいけないのは、たとえ総得点で合格基準点を上回っていても、選択式・択一式のいずれかで合格基準点を下回ってしまったら不合格となる場合があることです。

これは、大学受験のセンタ―試験と同様に「足切り」と呼ばれています。最難関だといわれる一般常識においては、この「足切り」による不合格が頻出しがちだというのですから、充分にな対策をしておかなければなりません。

(2)一般常識試験 出題内容

それでは、一般常識の出題内容について説明していきましょう。具体的な出題の内容を知っていただければ、社労士試験の一般常識が、その呼び方を裏切って難易度高い知識を要求する科目だと理解して頂けるでしょう。

図2:社労士試験 一般常識の主な出題内容

科目 主な出題内容
労一 主科目以外の労働に関する諸法令、「労働経済白書」、労務管理用語
社一 主科目以外の社会保険に関する諸法令、「厚生労働白書」、社会保険概論

①労務管理その他の労働に関する一般常識の出題内容

労一では「主科目以外の労働に関する諸法令」と、「労働経済白書」と呼ばれる統計資料から主に出題されます。まれに労務管理用語についても出題範囲に含まれることもあります。主科目以外の労働に関する諸法令には膨大な法令の数が包括されますので、後ほど具体的に説明します。

②社会保険に関する一般常識の出題内容

社一では、法律科目以外の社会保険に関する法令、共通事項のほかに、医療や年金制度に関する管理・運営、社会保険概論などが出題されます。統計資料では「厚生労働白書」から主に出題されています。

(3)受験生泣かせの一般常識

何度も申し上げますが、一般常識は、名称を裏切り大半の受験生が苦手としている科目です。範囲はあまりにも広く最難関とも呼ばれており、この一般常識で基準点を取れずに足切りにあってしまい、涙を飲む受験生も少なくないことについては既に述べました。

「一般常識」と聞くと、「対策しなくてもどうにかなるだろう」と思いがちですが、ひとたび一般常識の対策を始めれば、その難易度には容易に気が付くでしょう。

世間一般での常識が問われるのかと思わせがちなこの一般常識は、労務や社会保険の分野で把握しておくべき法律的知識はもちろんのこと、統計資料を用いた最近の社会情勢や、統計の読み方が出題されてきます。

社会でニュースになっていることも含まれるので、受験生がニュース等で見聞きして知っている話題もありますが、片や社労士試験の対策をしたことで初めて知る事柄も少なくないと思われます。

「経済労働白書」や「厚生労働白書」の統計資料を読み取っていく力が要求されるのですが、厚生労働白書はページ数が500ページにも及ぶ台資料なのです(経済労働白書は200ページほど)。全てを理解して頭に入れるのは不可能ですが、せめて概論だけでも精読しておきましょう。

白書に関わらずいえることですが、一般常識は出題範囲は広いといえども、コツを心得ておくと対策が立てやすくなり、効率的に勉強ができます。広範囲だから、難解だから、白書なんか読めないからとあきらめるのはもったいないです。

社労士試験の一般常識の対策として、まず「出題傾向を探る」ことを実行しましょう。頻出する範囲、かならず押さえておくべきポイントは、過去問を繰り返し解くことである程度抽出できます。

社労士試験の一般常識の対策における、労一・社一共通の重要ポイントをひとことでいえば、「厚生労働白書」「労働経済白書」そして「周辺法令」対策の3つだといえます。労一では労働経済白書、社一では厚生労働白書が統計資料として用いられますし、それ以上に「周辺法令」と呼ばれる法令の理解がとても重要になってきます。

周辺法令には膨大な範囲があります。思わずあきらめてしまいたくなる範囲の広さですが、ポイントをつかんだ勉強法で対策をしましょう。

2. 「労務管理その他の労働に関する一般常識」の出題内容と対策を解説

それでは、労一の具体的な出題内容と対策についてまとめていきましょう。出題に用いられる統計資料「経済労働白書」についても、分かりやすく解説します。

(1)出題内容

労一の出題範囲は、主に以下の3つです。

①主科目以外の労働に関する諸法令
②「労働経済白書」
③(まれに)労務管理用語

出題範囲については、試験範囲が膨大過ぎて対策の使用がないとよくいわれます。毎年8月の社労士試験実施後に予備校や通信教育のサイトに掲載される講評は、とても参考になります。平成30年度の社労士試験を振り返った多くの講評が、「得点状況から見る難易度の高かった科目」として労一、社一、国民年金法を挙げています。特に労一については、以下のような特徴が見られました。

①「合計特殊出生率(A・B)」「次世代法(C・D)」「統計用語(E)」からの出題があったが、全体的に正答率は低かった。
②次世代法の部分については、平成26年過去問選択式でも出題されていた。
③次世代法の部分については、一般事業主行動計画をヒントに得点することができたはず。

いかがでしょうか。この講評から、一般常識の難易度を伺い知ることができるでしょう。

労一の試験対策として「労働経済白書」と「周辺法令」をよく押さえておく必要があります。「労働経済白書」と「周辺法令」とは何であるかをまず説明します。

①労働経済白書とは

「労働経済白書」は、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書で、今回で70回目(平成30年度)の公表となります。

【白書の構成】

第Ⅰ部  労働経済の推移と特徴
第Ⅱ部
第1章  労働生産性や能力開発をめぐる状況と働き方の多様化の進展
第2章  働き方や企業を取り巻く環境変化に応じた人材育成の課題について
第3章  働き方の多様化に応じた「きめ細かな雇用管理」の推進に向けて
第4章  誰もが主体的にキャリア形成できる社会の実現に向けて

出典:厚生労働省

②主要科目以外の周辺法令とは

「周辺法令」が指す法律には様々ありますが、代表的な法律は次のようになります。
最低賃金法、労働者派遣法、労働組合法、労働関係調整法、育児介護休業法、男女雇用機会均等法など。
労働者にとって比較的身近な法律であるといえます。

(2)対策

出題範囲が非常に広いことが特徴である 労一は、「労働関係諸法令」「労務管理」「労働経済」の3分野から出題されています。範囲があまりにも広いので、受験者の間であまり得点差がつかないことも特徴です。

労働関係諸法令

(主要科目以外の関連法令)

雇用対策法、職業安定法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法、地域雇用開発促進法、中小企業労働力確保法、 建設労働者の雇用の改善等に関する法律、港湾労働法、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、最低賃金法、賃金の支払の確保等に関する法律、中小企業退職金共済法、 労働組合法、労働関係調整法、職業能力開発促進法、勤労者財産形成促進法、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律、労働契約法

出典:社会保険労務士試験情報局

労務管理 従業員の賃金や福利厚生といった、労働に関することを管理する仕事のこと
労働経済 労働市場の働きを経済学の視点から研究する学問のこと

労働関係諸法令(主要科目以外の関連法令)の範囲を見ただけでも、労一の範囲がどれだけ幅広いかが分かります。労働関係諸法令のなかでも、特に労一で出題される可能性が高いといわれる諸法令は、以下の通りです。

労働組合法、労働関係調整法、最低賃金法、職業安定法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法など

また、「労働経済白書」では最新の統計資料や改正内容を中心に出題されます。過去問は出題されにくいので注意しましょう。労働経済に関しては、統計調査のなかでも出題頻度の高いものを、流れで大まかに理解しておきましょう。

3. 「社会保険に関する一般常識」の出題内容と対策を解説

社一は労一ほどの難易度はないといわれているため、こちらで得点アップを狙うのが得策です。しかし労一同様、世間一般で考えられている「一般常識」とは大きく内容が異なり、あくまでも法律問題ですので難しいことに変わりはありません。

平成30年度の社労士試験を振り返った講評で、社一に関するものも非常に参考になります。労一と同じく、予備校や通信教育のサイトで掲載されることが多いのですが、社一は労一と国民年金法とともに「得点状況から見る難易度が高かった科目」に挙げられています。平成30年度の社一試験の特徴は、次のようなものでした。

①A(3年)とE(50歳未満)は数字問題だがひっかかりやすかった。
②残りのB・C・Dでしっかりと得点できたかで、明暗を分けたのではないか。
③確定給付企業年金法(C~E)は、頻出の法律。
④確定給付企業年金法(C~E)を押さえられていない場合は不合格だった可能性が高い。

(1)出題内容

社一で、主に出題範囲となる、主科目以外の社会保険に関する諸法令と、厚生労働白書について説明します。

①主科目以外の社会保険に関する諸法令とは

国民健康保険法、介護保険法、児童手当法、社労士法など
社一では、その他社会保障制度の歴史や、確定給付・確定拠出からも多く出題されます。

②厚生労働白書とは

「厚生労働白書」は、厚生労働行政の現状や今後の見通しなどについて、広く国民に伝えることを目的にとりまとめており、平成30年版は、平成13年(2001年)の「厚生労働白書」発刊から数えて18冊目となります。

「平成30年版 厚生労働白書」概要

【第1部】テーマ「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」
障害や病気を有する方などに焦点を当て、障害の特性や病状などの事情に応じ、就労や社会参加を通じて自分らしく生きることができる社会の実現に向け、現状や国民の意識、事例の分析を整理しています。そのうえで、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性を示しています。

【第2部】テーマ「現下の政策課題への対応」
子育て、雇用、年金、医療・介護など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策 の動きをまとめています。

出典:厚生労働省

つまり、厚生労働白書の中身とは分かりやすくいうと次のようになります。

第1部は、厚生労働行政分野における特定のテーマについて「現状分析」をおこない、その解決のためにおこなった「施策」を紹介しています。第2部は、厚生労働省が様々な政策課題に対して、どのように対応してきたのかを年次報告したものです。

第1部では、年度ごとに異なるテーマを扱うのに対して、第2部では毎年同様のテーマを扱っています。統計データを基におこなった分析や、政府の取り組みについて報告しています。

これら統計資料を用いて社労士試験の一般常識に頻出される内容は「医療」「介護」「年金」「少子高齢化」などで、社一対策では必須といえるテーマですので覚えておきましょう。これらの頻出テーマに関わる近年の動向は要チェックです。

また、近年では社会保障に大きな注目が集まっているため頻出が予想されるテーマです。何か新しい動向がないか、ニュースなどで常にチェックするようにしましょう。

 (2)対策

「主科目以外の社会保険に関する諸法令」も以下の通り多くの分野を包括します。

主科目以外の
社会保険に関する諸法令
国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、 介護保険法、船員保険法、児童手当法、社会保険労務士法、確定給付企業年金法、確定拠出年金法、社会保険審査官及び社会保険審査会法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、行政手続法

出典:社会保険労務士試験情報局

社会保険概論 歴史・沿革

「主科目以外の社会保険に関する諸法令」には、社労士労務士制度の基である社会保険労務士法も含まれます。また、介護保険法などの単独の試験科目ではない法律からも出題されます。

「社会保険概論」では、社会保険制度の沿革・歴史に加えて近年の動向なども出題されます。医療保険や年金制度の動向についてなどのニュースをよくチェックして、社会の動きにも注意を払いましょう。

この他には既に申し上げた通り、厚生労働白書などの統計資料からも出題されます。しかし、白書にとらわれすぎてはいけません。まずは社会保険諸法令についてよく理解する方が賢明です。

この他の注意点も挙げておきます。

①法令科目同士の横断的知識を要求する出題もある(似通った制度は比較しておく)
・国民健康保険法と健康保険法
・国民年金法と厚生年金法

②社会保険に関する一般常識で出題される諸法令は「社会保険制度」の問題と関連度が高いので、よく押さえておく

③法改正の出題頻度が高いのでよく押さえておく

④社会保障制度も近年注目度が高いので、出題される確率高いと思われる

⑤社労士試験で出題される「厚生労働白書」の範囲はだいたい決まっている

厚生労働白書は500ページ以上にもなるボリュームです。その中で出題される範囲はだいたい決まっていると分かれば、対策も楽になるというものです。

白書対策には大事なポイントを押さえることが大事なため、予備校の講座を単科で受けたり、上手く教材を使うこともおすすめです。厚生労働白書で出題される統計資料の例としては、「年金制度の運営」「少子高齢化社会の現状」「社会保障」「戦後からの日本の人口変遷」などがあります。

4. サマリー

社労士試験の一般常識の範囲を詳しく解説してきました。

社労士試験では、一般常識といいつつ、かなりの法律的専門性を要求する問題を広範囲に扱っています。統計によると、一般常識科目である労一・社一は「受験生が理解不足のままで臨んだ試験科目」の最上位となっています。あまりにも広範囲で対策のしようがないことも背景にあるのでしょう。

しかし、傾向が分かれば対策は取れます。一般常識問題の対策に、この記事が役立てば幸いです。

5. まとめ

・社労士試験の一般常識とは①労務管理その他の労働に関する一般常識、②社会保険に関する一般常識を指す
・一般常識は最難関の科目で受験生泣かせといわれ、大半の受験生が苦手としている。
・「労務管理その他の労働に関する一般常識」の出題内容と対策を解説している。
・「社会保険に関する一般常識」の出題内容と対策を解説している。

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