社労士(社会保険労務士)試験に記述試験が加わる?噂の真相と試験追加の可能性について解説

社労士(社会保険労務士)試験に記述試験が加わる?噂の真相と試験追加の可能性について解説

働き方改革や近年の人手不足問題で活躍の場が増え、注目を浴びている社会保険労務士(以下、社労士)。企業にお勤めの人なら、人事・労務や社会保険で、または年金の問題で、間接的にお世話になったことがあると思われます。

社労士になるためには、毎年8月におこなわれる社労士試験に合格しなければなりません。

社労士試験は範囲が実に広く、難易度が高いことで知られているのですが、その試験の形式に「記述試験」が加えられるという噂があります。また、新たな科目が追加されるという噂もあります。

この記事では、現在おこなわれている社労士試験の形式と、記述試験の有無について、また今後の社労士試験の予測についてまとめていきます。

1 社労士試験の形式とは?

社労士試験は、選択式と択一式という2つの形式でおこなわれます。試験時間は午前午後合わせて4時間50分ですが、その時間で78問(110点)を解くという長丁場な試験になります。

(1)社労士試験は選択式試験と択一式試験

社労士試験の試験科目はご存知の通り10科目ありますが、選択式試験が8試験科目で択一式試験が7試験科目になり、いずれもマークシート形式です。したがって、記述試験に必要な「条文の丸暗記」は必要ありません。正誤判断に必要になってくるキーワードを正確に記憶することが、試験勉強の基本とななってきます。

①選択式試験

1問につき空欄が5つあります。空欄に入る語句として適当なものを、選択肢のなかから1つ選択する形式空欄補充形式の試験です。8問×5点=40点満点です。社労士試験のオフィシャルサイトに掲載されている、実際の過去問を見てみましょう。

図1:第50回社労士試験 選択式試験問題 過去問

図2:第50回社労士試験 選択式試験問題 過去問 選択肢

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

このように、8つの問いにはそれぞれ5つの空欄が準備されています。

厚生労働省ホームページには「社会保険労務士試験の合格基準」が掲載されていて大変参考になるのですが、第50回(平成30年度)の場合は、以下のような合格基準点でした(昨年度合格実績との比較もあります)。

図3:選択式試験

合格基準点 昨年度実績
総得点 23点以上

(平均点20.5点

前年度比△0.8点)

24点以上

(平均点21.3点

前年度比+0.8点)

各科目 社会保険に関する一般常識

国民年金法

につき 2点以上

その他 3点以上

雇用保険法

健康保険法

につき 2点以上

その他 3点以上

出典:厚生労働省

上図によると、選択式試験の総得点は23点以上必要であり、なおかつ各科目(科目基準点)が3点以上必要であることが分かります。ただし、社会保険に関する一般常識および国民年金法の得点においては、2点以上得点していれば大丈夫です。

なお、選択式では「救済措置」がおこなわれるのが毎年恒例となっています。救済措置が無かった年度も過去にはありましたが、平成13年度以降では平成19年度のみでした。

選択式では、総得点ではなく「いかに各科目で科目基準点の3点を得点していくか」が重要で、そこが勝負の分かれ目だといわれています。

平成28年度以降、厚生労働省はホームページで、社労士試験の「合格基準の考え方について」を発表するようになりました。それによると、実力差が出やすいような難易度の高い問題はほとんどの科目において1~2個ほどであり、極端に難易度の高い問題は出なくなっているようです。

ただ、その3点を確保するのが非常に難しい設問となっています。ご存知のように社労士試験の出題範囲は実に広範囲かつ分散されているので、3点を得点することがそんなに容易ではない設問になっているのです。

満点を得点する必要はないですが、どの科目においても3点を確保することを心がけましょう。選択式は過去問の傾向がしっかりと反映されるため、対策がしやすいといえます。選択式においてもう一つ特筆すべきことは、数字的要素に関する出題です。数字の出題は、全40の回答欄のうち22個を占めるのでかなりのボリュームだといえます。この傾向にも留意して、試験対策をおこなうようにして下さい。

②択一式試験

五肢択一式の試験です。70問出題で70点満点です。

図4:第50回社労士試験 択一式試験問題 過去問

図5:第50回社労士試験 択一式試験問題 過去問 選択肢

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 

同サイトによれば、択一式試験の場合の合格基準は下図の通りでした。

図6:択一式試験

合格基準点 昨年度実績
総得点 45点以上

(平均点32.1点

前年度比+0.2点)

45点以上

(平均点31.9点

前年度比+3.1点)

各科目 全科目

につき 4点以上

厚生年金保険法

につき 3点以上

その他 4点以上

出典:厚生労働省

つまり、総得点が45点以上で、なおかつ各科目(科目基準点)が4点以上必要です。なお、毎年のことではありますが「上記合格基準は、試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したものである」と書き添えてあります。

平成28年度試験より、選択式と択一式の試験時間帯が入れ替わっており、午後の時間帯に受験するのは択一式試験になりました。午後には疲れが出ると思われますが、その午後に挑むのが、時間との戦いといわれている択一式試験です。第50回社労士試験の択一式試験の問題用紙は全61ページと、実にボリュームが多い試験なのです。

厚生労働省発表の社労士試験得点状況表によると、得点が最も低い択一式の問題は、労一こと「労務管理その他の労働に関する一般常識」と社一こと「社会保険に関する一般常識」です。難所といわれるこの二科目に関しては、3点以下しか得点できなかった受験者が47.7%もいました。

今後も60ページにも及ぶボリュームが極端に減ることはないでしょう。このボリュームが択一式のアべレージとなると思われますので、試験勉強に演習問題をよく取り入れて、得点力アップを図っておきましょう。
また、択一式には、新たな出題形式として「個数問題」が登場しました。

個数問題とは、

「以下の文章に正しいものはいくつあるか?」
「以下の文章に誤っているものはいくつあるか?」

というように、○または☓の選択肢の数を答えさせる出題形式です。お分かりだと思いますが、この個数問題は、択一式試験の中で最も難易度が高い設問です。なぜならすべての選択肢の正誤が分からない限り、この個数問題には正解することができないからです。

2 社労士試験に記述はある?

「社労士試験には記述試験がある」「社労士試験には今後記述試験が追加される」などとよくいわれますが、現行の試験は全てマークシート方式です。そのため、比較的解答がしやすい設問形式です。

(1)空欄補充形式は「記述式」と呼ばれる場合も

社労士試験対策の予備校や講座が運営するブログなどで、社労士試験の空欄補充問題を「記述」と呼んでいる場合があります。そのため、「社労士試験には記述問題がある」という誤解が生じたのではないでしょうか。

ただ、この空欄補充問題ですが、記述と同じくらい難しいといえます。「数字を制する者は、社労士試験を制す」といえるこらい、数字問題は頻出しています。この数字問題について書かれたブログに、空欄補充形式の選択式問題を「記述」と呼んでいるものがありました。

平成29年度社会保険労務士試験の記述式問題を見て、まず感じたのは、相変わらず数字の穴埋め問題が多いということです。科目ごとの数字穴埋め問題を見てみましょう。

労働基準法及び労働安全衛生法 1問
労働者災害補償保険法 3問
雇用保険法 2問
労務管理その他労働に関する一般常識 3問
社会保険に関する一般常識 1問
健康保険法 2問
厚生年金保険法 5問
国民年金法 3問
合計 20問

上記のように、合計40問のうち、半数の20問が数字の穴埋め問題だったということです。

出典:Medalist Club

このように、選択肢が与えられてその中に最もふさわしい選択肢を補充する「選択式」問題を、記述式と呼んでしまっているケースが他にもあるものと思われます。実際に、数字を補充する問題は、上図でお分かりのようにとても多いため、記述式の出題でも対応できるような理解度をつけておくことが重要だといえます。

(2)過去には記述式問題が出題された

また、いろいろと調べていくと、社労士試験にも過去には記述試験が設けられていた時があったようです。

平成12年に記述式が選択式に

社労士試験関連のサイトで、過去には社労士試験に記述試験が設けられていたという記事を見つけましたので引用します。

現在の試験形式はマークシートの選択式・択一式になっています。

選択式がマークシートになったのは平成12年の試験からで、それ以前は記述式でした。記述式といっても、空欄に入る短めの用語を記入するタイプで、長文を書かせるものではありません。さらに以前は、長文を書かせることもありましたが。

その記述式から選択式に変更されることが明らかなったのは、かなり本試験日ギリギリで、本試験の2週間前くらいに関係各所に連絡が回りました。選択式に変更した理由はもちろん採点処理の効率化で、当時社会保険労務士の受験生が急増していた時期だったため、手採点方式からマークシート方式に変えて対応したわけです。

出典:「社労士試験 合格への架け橋」

このように、本記事は実に詳しく、科目追加の可能性と、記述式が選択式に移行した経緯・理由についてまとめています。また「普通に考えれば、今年も選択式からの変更はない」といいながらも「1%くらいは記述式に戻る可能性もある」ともコメントしています。

同記事によると、選択式から記述式に戻るかもしれない理由には2つあるようです。

1つめは、受験者数=事務量が減ってきたため。
2つめは、選択式試験に対する批判を受けて。

どうやら選択式問題には、最後の合否を分ける問題が、実力差ではなく4択の「運」で取れるかどうか決まってしまうという批判があるようです。その批判への対応として、選択式を記述式に戻す可能性が1%ほどあるのではないか、と推測しています。

そして、記述式のメリットは、ノー勉や勉強不足の層が勘で得点できる確率を大幅に低下させることができることであり、実力差を反映させやすくなるとコメントしています。

(3)記述式は出題者にも受験生にも手間が多い

社労士試験に記述式が導入されると、採点処理が大変になるというデメリットがあります。

受験生が大きく減少しているわけでもないのに、記述式を導入することは、運営側の採点の手間をわざわざ増やすことになります。また、受験者も法律の専門用語を感じで覚えなければならなくなります。漢字の書き間違いで得点ミスをするということも起こり得るでしょう。

3 社労士試験に記述が加わる可能性は?

それでも、社労士試験に記述式が加わる可能性はあるのでしょうか?記述試験の追加が囁かれているのは事実なので、より深く記述式導入の可能性について考えてみましょう。

(1)社会保険労務士試験の見直しがおこなわれるという噂

社労士試験関連のサイトで、「社労士試験が見直される可能性」について言及している記事を見つけましたので、引用します。

「試験方式が変わるってホント?」

ひそかに社会保険労務士試験の見直しが行われるという噂があります。何を見直すのかというと、試験形式らしいです。

現在、社会保険労務士試験はすべてマークシート式で行われています。しかし、見直し案では記述式になるというのです。実は、平成11年までは、マークシート式に加えて記述式の問題があったのです。現在は、選択式問題という形式になっていますが、平成11年まではこれが記述形式だったのです。具体的には、文章中に穴あき箇所が5つあり、当てはまる語句を記述するというものです。

現在の選択式問題は、20個の選択肢の中から当てはまる語句を選び出すものとなっていますが、以前は自分で書かなければならなかったのです。試験形式が見直されて、記述式が復活するとなると正確に漢字を覚える必要があり、苦労することになるでしょう。

出典:?社会保険労務士

このように、社労士試験に記述式が加わるという噂は実在したようです。

そして、実現すれば漢字を正確に覚える必要が受験生に生じるため、受験生の苦労が増える点についても言及しています。

さらに大変なことは、試験科目が増えるらしいことです。現状でも、試験科目の範囲が広いために大変な思いをしている受験生が多いというのに、なんということでしょう。ちなみに、現状の試験科目に憲法、民法、民事訴訟法が加わることになるかもしれないそうです。なんだか頭がパンパンになりそうですね。

出典:?社会保険労務士

このように、社労士試験の科目追加の噂があることについても言及しています。追加される可能性がある科目として「憲法」「民法」「民事訴訟法」が挙げられていますが、現行の社労士試験にはこれらの分野は必要ではありません。

同ブログは、他にもいくつかの新たな変更の可能性について言及しています。

例えば社会保険労務士試験を受験する際に必要な受験資格についてです。現行では学歴、職歴、その他の国家試験合格等の受験資格を有することが必須ですが、同記事によると受験資格が撤廃されて、誰でも社会保険労務士試験を受けることができるようになるという噂があるといいます。つまり、受験の門戸を広げながら、社労士試験の内容は難化させるという方向性があるということでしょう。

一方、前述の「社労士試験 合格への架け橋」も、「社労士試験に記述式が導入される可能性」と「試験科目の追加」について以下のように言及しています。

そこで、毎年に噂になる、記述式の導入や試験科目の追加があるのかを検証したいと思います。
「試験科目の追加の可能性は?」
結論、絶対にありません。

同サイトによると、記述式から選択式に変更された平成12年に関係各所に出題形式変更の連絡が回ったのは、試験日ギリギリである本試験の2週間前くらいだったといいます。変更の理由はもちろん「採点処理の効率化」で、社会保険労務士の受験生が急増していた当時の状況に対応してのことでした。この時、手採点方式から効率的なマークシート方式に採点方式が変わったのです。

先程も申し上げましたが、同サイトは選択式を記述式に戻す代わりに、選択式問題1科目5問を10問にして対応する可能性もあるのではないかとも言及しています。

(2)社労士試験改正は社会保険労務士法の改正が必要

また、社労士試験の改正には法律が絡んでくるため、簡単に短期間に改正をおこなえないことについても以下のように言及しています。

社労士試験の試験科目は社会保険労務士法9条に定められており、追加するためには社会保険労務士法の改正が必要です。つまり国会を通さなければなりません。その法律改正の動きは見受けられないので、当分の間は現行通りでしょう。(中略)
「試験科目の追加の可能性は?」
結論、絶対にありません。
社労士試験に試験科目は社会保険労務士法9条に定められており、追加するためには社会保険労務士法の改正が必要です。つまり国会を通さなければなりません。その法律改正の動きは見受けられないので、当分の間は現行通りでしょう。

出典:「社労士試験 合格への架け橋」

社会保険労務士法9条の条文とは、以下のようなものです。厚生労働省ホームページで確認することができます。

社会保険労務士法
第九条 社会保険労務士試験は、社会保険労務士となるのに必要な知識及び能力を有するかどうかを判定することを目的とし、次に掲げる科目について行う。

一 労働基準法及び労働安全衛生法
二 労働者災害補償保険法
三 雇用保険法
三の二 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
四 健康保険法
五 厚生年金保険法
六 国民年金法
七 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識

(昭四四法八五・昭四七法五七・昭四九法一一七・昭五三法五二・昭五九法七七・昭六〇法三四・平五法六一・一部改正)
(試験の実施)“

出典:厚生労働省 社会保険労務士法

社会保険労務士法の条文を改める場合、例えば試験科目を追加する場合には社会保険労務士法の改正が必要なため、国会を通さなければならないのです。改正は簡単にはおこなえないものですが、改正の可能性が全くないわけではないということです。

4 サマリー

いかがだったでしょうか?社労士試験には記述式問題は出題されず、現行では選択式問題と択一式問題が出題されていることがお分かりいただけたことでしょう。

また、選択式問題が時として「記述問題」と誤って表現されてしまうこともあります。そういう場合は社会保険労務士試験オフィシャルサイトの公示を確認されることをおすすめします。

5 まとめ

・社労士試験の形式には「選択式試験」と「択一式試験」があることについて説明している。
・社労士試験には記述はなく、全てマークシート方式で、比較的解答がしやすい試験であることに言及している。
・選択式(空欄補充形式)が時として「記述式」と呼ばれる場合もあるため、誤解を生んでいる可能性がある。
・過去には記述式問題が存在した。
・社会保険労務士試験の見直しがおこなわれるという噂があるが、社労士試験改正をおこなうためには、社会保険労務士法の改正が必要である。

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