社会保険の電子申請の義務化!あなたの会社は対象?どうすればスムーズに対応できる?

社会保険の電子申請の義務化!あなたの会社は対象?どうすればスムーズに対応できる?

オンラインシステムは、目下の新型コロナウイルスの感染拡大に窮する状況下で、大きくその価値をあらわしています。

2020年4月からの社会保険の電子申請の義務化は、元々は「行政手続きコストの削減」が目的でした。しかし今回のコロナ禍で、公衆衛生が脅かされた状況でも行政や企業を機能させるオンライン化は、価値を一層拡大させています。

この記事では、社会保険の電子申請が義務化された背景と、電子申請に上手く対応するためのコツをあわせて紹介していきます。

1 社会保険の電子申請義務化とは?

2018年3月、厚生労働省より発表された「行政手続きコスト削減のための基本計画」により、2020年4月1日より社会保険の電子申請の義務化が特定の法人で適用されます。

対象企業は電子政府を介して、日本年金機構やハローワークなどに提出手続きをおこなわなければなりません。電子申請の義務化の背景には、行政手続のコストを削減するねらいがあります。

(1)社会保険の電子申請義務化の概要

特定の法人とは ・資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
・相互会社(保険業法)
・投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
・特定目的会社(資産の流動化に関する法律)
一部の手続とは 健康保険
厚生年金保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
労働保険 ・継続事業(一括有期事業を含む。)を行う事業主が提出する以下の申告書

■年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
■増加概算保険料申告書

雇用保険 ・被保険者資格取得届
・被保険者資格喪失届
・被保険者転勤届
・高年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請

出典:厚生労働省

(2)事業年度はどうなる?

制度の適用は、事業年度が切り替わる決算月の翌月からなのか、それとも一斉適用なのかという疑問を耳にします。

答えは、各会社の決算月の翌月からになります。

(3)全ての手続きが電子申請義務化の対象?

まずは、厚生労働省が定めた手続きのみが対象となります。

【対象】
算定基礎届、月額変更届など社会保険系の主要な手続き、雇用保険の資格取得・喪失手続き(頻繁に発生する手続き)【対象外】
社会保険の資格取得・喪失手続き、被扶養者異動の手続き

2 電子申請の背景

行政が電子申請化に向かう動きの背景には、電子政府という概念があります。

電子政府とは、行政と国民・事業者との間で書類や対面でおこなわれている業務のオンライン化をおこない、情報を瞬時に共有活用する新たな行政を実現するものを指します。

(1)電子政府と電子申請の関係

電子政府という概念については、総務省ホームページで、以下のように詳細に公表されています。

電子政府の推進

電子政府は、行政分野へのICTの活用とこれに併せた業務等の見直しにより、行政の合理化、効率化及び透明性の向上や国民の利便性の向上を図ることを目的としています。行政管理局では、政府CIOと協力し、電子政府に関する各府省の施策の統一性・総合性確保と積極的推進のための企画・立案・調整を行っています。

出典:総務省

これは、2017年3月の規制改革推進会議に端を発したものです。
日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会が集った同会議では、次の内容が定められました。

①「事業者目線での規制改革、行政手続の簡素化、IT化の一体的推進」の観点から、2020年3月までに、行政手続コストの20%以上を削減する。

②行政手続コスト削減の3原則に、以下を掲げる。
Ⅰ 行政手続の電子化の徹底(デジタルファースト)
Ⅱ 同じ情報は一度だけの原則(ワンスオンリー)
Ⅲ 書式や様式の統一

電子申請の義務化はこれらの動きに沿って、実現を目指すようになります。

2020年の電子申請の義務化は大企業が対象となりましたが、今後中小企業もその範囲内となることが予想されます。

(2)電子申請の種類とは

電子申請 税金 財務 e-Tax (elevtronic + Tax) 国税
el TAX (electronic + local + TAX) エルタックス 地方税
社会保険 人事

労務

e-Gov (electronic + Government)イーガブ
労働保険
登記 法務 登記ねっと
供託ねっと

上表にまとめたように、電子申請の窓口は管轄分野によって分かれています。

それぞれ既に認知度が高いのでご存知でしょうが、税金関係であれば、国税ならe-tax(イータックス)、地方税ならeltax(エルタックス)で申告します。登記関係は「登記ネット」と「供託ねっと」を活用します。

登記ねっと 「登記・供託オンライン申請システム」で取り扱う不動産登記、商業・法人登記、動産譲渡登記、債権譲渡登記、成年後見登記及び電子公証についてのオンライン申請の手続案内のページ。
供託ねっと 供託手続に関する情報提供及びオンライン供託手続の案内の総合ウェブサイト。

社会保険・労働保険はe-Gov(イーガブ)です。

電子申請の窓口であるe-Gov(イーガブ)は、行政情報の総合的な検索・案内サービスの提供、様々な行政手続きについてオンライン申請・届出をおこなう窓口サービスを提供するポータルサイトです。

このe-Govは、2020年9月にリニューアルを予定しています。

サービスの内容をより分かりやすくするための「ユーザーインターフェイスデザインの変更」や、「マイページの導入」で個々のe-Govアカウントを創設し、基本情報、申請状況の検索や確認、また行政機関からの公文書通知を管理できるようにすることなどが、新たな改善点となります。

これまで、このように様々な手続きが電子化されてきました。しかし実際の利用状況は、労務系に関しては出遅れている実情があるのです。

(3)行政手続オンライン化関係三法

電子申請の歴史を語る上で抜きにできないのが、平成14年の「行政手続オンライン化関係三法」です。これは行政手続のオンライン化を推進するための基盤となりました。

従来の法令には、法令に基づきおこなわれる手続きについて、書面を意味する用語を数多く用いていました。そのままであれば、手続きをオンラインで行った場合に、法的効力は認められない状態でした。

そこで、書面だけでなくオンライン手続きも可能とするために「行政手続オンライン化関係三法」が整備されました。三法には以下の法律が含まれます。

①行政手続オンライン化法 ②整備法 ③公的個人認証法
行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律 行政手続等における情報通信の施術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律
・これまで書面によることとされていた行政手続きについてオンラインでも可能とするため、特例規定を整備する内容の法律。

・この法律ができ、オンライン化のための個別の法改正は不要に。

・オンライン手続きでは、いつ申請等が相手に到達したとみなすかが重要だが、送信相手のPCに備えられた時点で到達したとみなすと決定。

・書署名・押印等が必要な場合電子署名などで代替が可能。

・オンライン化にあたって例外事項等が必要なものについて71の個別法を改正し、束ねたもの。

・例えば、印紙を添付はオンライン手続きではできなくなるため、現金での納付が可能と改正された。

・申請・届出等のオンライン手続きでは、作成者、第三者が改ざんな無いか等を確認することが必要。

・その基盤となる高度な個人認証サービスを、全国的に安い費用で提供できる制度を構築しようとする法律。

この「行政手続オンライン化関係三法」によって、まず電子申請の基盤が作られ、申請・届出、歳出・歳入手続き、納税など広範囲な電子申請化のスタートが切られたのです。

(4)実際の利用状況

各業務の電子申請の普及率を見てみましょう。

e-Taxによる国税の電子申請は、2017年時点で約70%ですので、比較的普及しているといえます。平成30年度におこなわれた税制改正で「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、法人税等の申告は一定の法人において、e-Taxにより提出しなければならなくなりました。このことを「電子申告の義務化」といいます。

電子申告の義務化が図られた目的は、経済社会のICT化の進展に合わせて税務手続でもICT活用を推進し、かつデータ活用も推進しようというものでした。また自動化によるコスト削減と、企業の生産性向上も同様に図られました。

不動産登記の電子申請は約65%の普及率です。従来の法務局の窓口受付と郵送による申請に併せて、オンラインによる申請も可能となりました。特に相続登記などで、司法書士に依頼しないで自分で手続きを済ませようとするなら、オンラインでの登記申請は便利です。

納税と登記を比較すると、社会保険・労働保険の電子申請の普及率は約15%と、実に低いことが分かります。これではまだまだ一般的に普及しているとは言い難い状況です。

3 電子申請義務化のメリットとは?

電子申請には面倒なイメージがありますが、実は手間と時間を最少化できるというメリットがあります。

窓口に出向く申請の方が「用紙に手書きする」「窓口まで足を運ぶ」「窓口で手続きのため順番待ちををする」と、多くの手間と時間を要するのです。

(1)電子申請可のメリットの数々

電子申請化のメリットを、更に挙げてみましょう。

・24時間申請できる
・窓口での順番待ちがない
・交通費も削減できる
・ペーパーレス化できる
・手書きや移動の時間を短縮できる
・行政・企業ともに業務効率化ができる

最後に挙げた「業務効率化」は、日本の生産性向上には不可欠な改善として注目されています。

政府は2016年に、日本再興戦略として「GDP600兆円を目指す」と発表しましたが、その達成のためには企業の生産性向上が急務になります。その一環として、行政手続きコストを20%以上削減することが決定したのです。

社会保険や労働保険の電子申請を義務化すれば、申請書類を作成する手間、役所へ往復する時間などを削減できます。そのような業務効率化を図る最たる目的は、繰り返しますが、日本社会の生産性向上です。

(2)電子申請可に関するよくある疑問

社会保険の電子申請化について、よくある質疑応答を挙げていきましょう。

①書面提出が例外的に許される場合は?

電子申請が義務化されても、書面提出が例外的に許可される状況もあるのでしょうか。

答えは「あり」です。それは「電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められる場合で、かつ、電子情報処理組織を使用しないで当該申告書の提出を行うことができると認められる場合」においてです。災害時などは、法令上書面による提出でも差し支えないとされています。

②電子申請しなかった場合、罰則等の適用は?

働き方改革では、時間外労働の上限規制などのための法律が罰則付きに格上げされました。電子申請義務化に違反した場合にも、同様に罰則等が適用されるのでしょうか?

災害時などであれば、書面での申請もやむを得ないことになります。そうでない場合、電子申請しなかったとしても、法律上罰則は定められていません。しかし、手続きが受理されない可能性はあります。

(3)電子申請化の今後の課題

電子申請には、既に挙げた通り多くのメリットがありますが、今後顕在化しそうな問題点もまだまだ残存しています。まず、技術面では、以下のような問題点が挙げられます。

・決済では、PCやスマホを使ってワンストップで完結する行政手続を実現する必要あり
・行政と金融機関の間で、認証情報をスムーズかつ安全に連携できるようなシステムの実装が必要

次に制度面では、以下のような課題が残っています。

・手続きによっては個人情報を専用線以外の方法で受け取れないため、自宅で交付を受けられない
・個人情報や端末の安全性などセキュリティ確保の問題
・ビデオ通話を用いたサポート体制を組む際の技術的な問題

とはいえ電子政府化が進むことは間違いないので、企業側は対応を急ぐ必要があります。

4 電子申請の手続き方法

電子申請の方法は、総務省オンライン申請入門講座に詳しく解説されています。
同資料から手順について引用します。

(1)電子申請の手順とは

出典:総務省

①e-GovのWebページで申請する手続きを検索
②申請データを入力
③入力した申請データに、電子証明書を用いて書名を付与
④検証をおこなう、正しければ申請書の到達とする
⑤到達番号、問い合わせ番号を返信
⑥到達番号で進捗の確認が可能
⑦(進捗状況はその都度返却)
⑧公文書発行済みの場合には、ダウンロードが可能

(2)利便性が高いオンライン申請は?

直接入力方式 基礎編のオンライン申請の流れにて紹介した、最も基本的な方法です。
e-Gov電子申請のWebページに申請情報を入力して一件ずつ申請を行います。
連記式・
CSVファイル添付方式
日本年金機構が配布(無料)している届書作成プログラムを利用して、磁気媒体届書ファイルを作成し、
e-Gov電子申請のWebページにて申請を行う際にその届書を添付ファイルとして設定します。
一件の手続を行う際に、複数人の対象者を一度に設定することが可能です。
一括申請方式 外部の事業者が作成したソフトウェア(有料)を利用して、
複数件の申請データを束ねた圧縮ファイルを作成し、
e-Gov電子申請のWebページにアップロードをすることで、数件の手続を一度に申請可能とした機能です。
API利用方式 外部の事業者が作成したソフトウェア(有料)を利用して、
e-Gov電子申請のWebページを見ることなく、ソフトウェアから直接に申請が可能となる機能です。一括申請と同じく複数件の手続を一度に申請可能です。

出典:総務省

電子申請手続きには、大きく分けて以下の2つの申請方法があります。

①政府が提供しているe-Govのサイトから申請する方法
②外部連携のAPI対応専用ソフトから申請する方法

また手続きの方法には、通常申請と一括申請があります。通常申請は、サイト上で一項目ずつ手で入力する地道な入力作業のため、大変手間がかかります。今回義務化の対象となっている大企業には不可能でしょう。

一括申請は、データや添付ファイル・署名ファイルを圧縮ファイル(ZIP)にまとめ、アップロードできる申請方法です。

上表は下段に行くほど利便性は向上し、最も利便性が高いのは「API利用方式」になります。

(3)e-Govサイトからの電子申請が難しそうな場合は?

「e-GovのWebサイトを覗いてみたら難しそうで、できないかもしれない」と、思われる方もいるでしょう。

そのような場合は、総務省も推奨しているように「外部の事業者が作成したソフトウェア(有料)を利用しましょう。こうすればe-Gov電子申請のWebページを見ることなく、ソフトウェアから直接申請できます。また、一括申請と同じく、複数件の手続を一度に申請可能です。

ほかに、「顧問社会保険労務士がいる場合は、いつものように依頼すれば電子申請してくれるのか」という疑問もあるでしょう。

これに関しては、依頼する社労士が電子申請に対応しているかどうかによります。社労士専用の業務ソフトを利用している場合は、電子申請対応型の「セルズ」や「社労夢」を導入しているか確認してみましょう。これらを活用している社労士は増えていますから、その点を確かめた上で対応可能かどうか直接問い合わせてください。

また、e-Govサイトでの電子申請でわからないことが出てきたら、「お問い合わせフォーム」から質問できます。また、問い合わせ先の電話番号も記載されています。

有料のソフトウェアを使って電子申請する場合は、運用元のヘルプセンターなどに問い合わせをしましょう。

(4)電子申請をおこなうために用意すべきものは?

電子申請をおこなうためには、まず企業側は、電子署名用の電子証明書を入手する必要があります。自社の電子証明書を「認証局」から入手して、電子申請をおこなうパソコンにインポートして下さい。

なお、社労士に電子申請を依頼する場合は社労士の電子署名を用いるので、企業側で電子証明書を入手する必要はありません。

5 サマリー

社会保険の電子申請の義務化について、お分かりいただけましたか?

対象は大企業に留まらず、ゆくゆくは中小企業にも義務化が広がっていくと考えられます。オンライン化の必要性は、当今の新型コロナウイルス禍で、日本社会の課題として認識されるに至りました。

行政手続きコストの削減の目的と併せ、今後も発生するであろう緊急事態に対応するためにも、広範囲での電子申請化の導入が急がれます。

6 まとめ

・2018年3月の「行政手続きコスト削減のための基本計画」に則り、2020年4月1日より社会保険の電子申請が特定の法人で義務化される。

・特定の法人とは、資本金、出資金又は納付拠出金の額が1億円を超える法人などである。

・電子申請の義務化は、電子政府が目指す行政手続きコスト削減の三原則に沿って施行された。

・税金関係は国税ならe-tax、地方税ならeltax、登記関係では登記ネットと供託ねっとが窓口サイトである。

・納税と登記と比較すると、社会保険・労働保険の電子申請の普及率は約15%と実に低い。

・政府は2016年に日本再興戦略として「GDP600兆円を目指す」と発表し、企業の生産性向上の一環として行政手続きコストを20%以上削減することを決定した。

・社会保険の電子申請は①e-Govのサイト②外部連携のAPI対応専用ソフトの両方からおこなえるが、ソフトからが最も利便性が高い。

社会保険労務士カテゴリの最新記事