社会保険労務士(社労士)試験合格には勉強の順番も重要? 他の受験生に差をつける科目着手の順番を、その根拠と共に紹介!

社会保険労務士(社労士)試験合格には勉強の順番も重要? 他の受験生に差をつける科目着手の順番を、その根拠と共に紹介!

社労士試験の出題範囲は、数ある法律系国家資格のなかでも広いことで有名です。これは裏を返せば、社労士の実務にそれだけ多くの知識が要求されることの証明でもあります。

物事は何でもやれば良いというものではなく、社労士試験対策にも合格に近づくための効率的なやり方は存在するはずです。この記事ではそんな疑問に応えるべく、社労士試験対策には然るべき勉強の順番があるのかについて調べました。その根拠についても分かりやすく紹介します!

1 社労士試験出題科目はどの順番で勉強すべき?

労働系科目と社会保険系科目に分かれた10科目が出題される社労士試験。出題形式にも、選択式と択一式の2種類があります。出題範囲があまりにも広いため、計画的な学習を心掛けないと、あっという間に試験の日になってしまいそうな試験なのです。

(1)社労士試験の出題科目は?

社労士試験の科目別の出題数と配点について、下表にまとめました。

注意しなければいけないのは、社労士試験には合格基準点が設けられている点です。合格基準点は各科目と選択式・択一式ごとに設けられており、この基準点に引っかかってしまうと、いくら他教科で高得点を取得しても不合格になってしまうのです。

試験科目 択一式計7科目(配点) 選択式計8科目(配点)
労働保険関連 労働基準法 10問(10点) 1問(5点)
労働安全衛生法
労働者災害補償保険法 10問(10点) 1問(5点)
労働保険徴収法
雇用保険法 10問(10点) 1問(5点)
労務管理その他の労働に関する一般常識 10問(10点) 1問(5点)
社会保険関連 社会保険に関する一般常識 1問(5点)
健康保険法 10問(10点) 1問(5点)
厚生年金保険法 10問(10点) 1問(5点)
国民年金法 10問(10点) 1問(5点)
合  計 70問(70点) 8問(40点)

(2)ジャンルを3つに分けて勉強しよう

出題される10科目は、最初から一つひとつ潰していくというよりも、3つのジャンルに分けて計画的に勉強しましょう。ジャンル別に勉強すると高い連動性が発揮できます。勉強効率が上がるだけでなく、各ジャンルの共通事項を確認でき、知識を相互補完しやすいのです。

労働系科目 ・社労士試験のための勉強の主軸となる。
・「労働者災害補償保険法」と「雇用保険法」は、強制適用事業所と任意適用事業所に若干の違いがあるものの、要件はほとんど一緒。
・「労働保険徴収法」の学習では上記2科目の強制適用事業所と任意適用事業所の知識が必要になる。
社会保険系科目 ・「健康保険法」「国民年金法」「厚生年金保険法」を古い順から学習する。
・最も歴史が古いのは「健康保険」。ここからまず理解する。
・次に年金制度のベースとなる「国民年金」について学ぶ。
・その上で発展的に生まれた「厚生年金保険」学び進める。
一般常識系科目 一般常識科目ジャンルは最後に勉強するのがベスト。

労働系科目は社労士試験の出題科目の主軸なので初めに着手すべきですが、実は、次に勉強するべき社会保険科目で受験生間に大きな得点差が生じています。社会保険制度は、社会の発展や変化に対応しながら複雑な変化が加えられてきたため、もともと理解するのが難しいものです。

試験では、体系的かつ整理された理解力をつけないと得点に結びつかないので、この点に留意しながら学習を進めましょう。

2 合格するための科目の順番は?

各ジャンル内の科目にも、優先すべき勉強の順番はあるのでしょうか。特に労働系科目には、労基、安衛、労災、雇用、徴収の5つの科目がありますが、これらも然るべき勉強の順番があるのでしょうか。

(1)順番付けのコツとは?

この記事では科目別の勉強の順番を紹介しますが、その根拠として次の2点を据えています。

①関連性のある科目は続けて勉強する

②重要性が低いまたは暗記の比重が重い科目は、後回しにする

親和性のある科目は、効率性からもバラバラではなく続けて勉強した法が良いでしょう。また、暗記科目も後回しにした方が良いでしょう。あまり初めの方で暗記科目に取り組んでしまうと忘れてしまうので、再度復習が必要になり手間が増えるからです。

①労働系科目の労働基準法から始めよう

勉強する科目の一番目には「労働基準法」をおすすめします。労働基準法は全ての労働法の基本であるといえるからです。まず労働基準法をしっかり理解することで、他の科目へスムーズに移行できます。

労働基準法の学習で大事なのは、暗記よりも条文の深い理解です。その次は、そのままの流れで労働に関する法律「労働安全衛生法」や「労働災害補償保険法」に移りましょう。ただし「労務管理その他の労働に関する一般常識」は労働と付く科目ですが、一般常識学習として後回しにしましょう。

②一般常識は最後に

労働に関する科目が済んだら、次は社会保険関連科目の勉強に入りましょう。

労働系科目では労働基準法が一番にくるのと同じ理由で、社会保険の勉強は「健康保険法」から入ると良いでしょう。労働、社会保険の科目が済んだら、最後に一般常識科目の勉強をおこないます。

(2)具体的な科目の順番

これまで紹介してきた根拠を元に、各ジャンルごとのおすすめの順番を紹介します。科目間の関連性の理由から、特に初学者にはぜひこの順番で勉強して頂きたいです。

①労働系科目

労働系科目は、会社で働く人にとっては3つのなかで最も身近な法律だといえるでしょう。

①労働基準法 主に労働条件の最低基準について定める。
労働者保護を目的とし、使用者が規制の対象となっている。

労働基準法は労働関係においては憲法のような存在であり、他の労働関連の法律のベースになっています。社労士業務にとっては最重要科目といえるでしょう。労働基準法の趣旨が理解できると、その後の安全衛生法、労災保険法、雇用保険法、徴収法の学習が大変スムーズになります。
年次有給休暇、割増賃金、休憩時間・休日などついて労働者の視点から定めてあるため、これらの知識を持っていると、働き方改革への理解も深まります。

②労働安全衛生法 労働災害の防止と、労働者の健康と安全の確保を目的とした法律。
労働基準法とは親子関係だといえる。

労働安全衛生法は、労働者の健康と安全の確保を目的とした法律で、職場のルールについて規定しています。全出題科目中で最も出題数が少ないものの出題内容の難易度は高く、なかなか得点に結び付かない科目です。学習重要性は低いと考えて良いでしょう。

③労働者災害補償保険法 仕事中、通勤中に災害を被った労働者に対して、政府が保険給付をおこなうことを定めた法律。

労働者災害補償保険法で取り扱う労災は社会保険制度の一つのひな型であるため、他の社会保険制度を理解するベースになります。

災害を被った労働者の権利補償や救済について定めたもので、社労士業務とも非常に深く関わってくる科目です。

④雇用保険法 失業した労働者の所得を保証することを目的とした法律。

雇用保険法は、給付の種類が多く数字要件を主体とした事項があることから、苦手と感じる受験生も多い科目です。まずは「基本手当」をしっかりと理解しましょう。

「雇用保険法」に次に続く「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」は、暗記の比重が重い科目です。雇用保険法と関連性もあるため続けて勉強をおこない、順番は最後に持ってきましょう。

⑤労働保険の保険料の徴収等に関する法律 労災保険と雇用保険の保険料をまとめて徴収することを定めた法律。
「労災」と「雇用保険法」とは姉妹関係だといえる。

労災・雇用保険料の徴収について定めた法律です。労働保険料の納期限、計算方法など数字要件を中心とした暗記事項が多いため、本科目も苦手意識を持つ受験生が少なくありません。しかし過去問を焼き直した出題が多く、過去問対策が有利に働くことに気付けば、実は得意科目にできる科目です。

②社会保険関係

社会保険関係とは、ここでは健康保険法、国民年金法、厚生年金保険法を指しますが、労災や雇用保険も社会保険科目に関連性を持っています。

また、健康保険法、国民年金法、厚生年金保険法は、改正事項や経過措置の理解度から得点差が生じやすい科目であることを覚えておきましょう。

⑥健康保険法 業務災害以外の病気、ケガなどに対する保険給付について定めた法律。
医療保険制度の中心に位置する。

社会保険科目ではまず健康保険法を勉強しましょう。この法律が最も歴史のある法律で、厚生年金保険法と国民年金法は、これをベースに作られたといって過言ではないからです。試験で問われる論点はほぼ限られており、過去問からの再出題が多いという特徴もあります。他にも以下のような特徴があります。

・厚生年金保険法と、適用関係や標準報酬などの共通事項があります。
・「雇用保険法」とも相似・相違部分があり、続けて勉強して比較整理すると効果的です。
・「労働者災害補償保険法」も同様に相似・相違部分があります。

⑦国民年金法 全国民を対象とする。
老齢、障害、死亡に関する年金について定めた法律で、公的年金の土台となっている。

社会保険科目は勉強する順番としては健康保険法からスタートしますが、勉強のウエイトを置くべきなのは、厚生年金保険法と国民年金法です。この2科目の勉強時間をしっかりと確保しましょう。

学習ポイントは、老齢・障害・遺族年金の3つにおいて、国民年金と厚生年金の棲み分けをまとめながら横断学習をすることです。

⑧厚生年金保険法 国民年金とは双子の関係といえる。
国民年金を土台に2階部分の年金について定めた法律。

全出題科目の中で、最も総合力が求められる科目だといえます。よく理解するためにしっかり勉強時間を取りましょう。厚生年金保険法は、社会の変化ともに拡充を遂げてきた制度です。法令への理解や暗記に取り組むとともに、事例問題への対応力を身に付けましょう。

③一般常識

一般常識の出題範囲は実に広範囲なので対策が難しく、苦手意識を持つ受験生が多いと思われます。対策としては学習の最後に持ってきて、労働関連の主要5科目の関連法も幅広く習得すると良いでしょう。

一般常識科目は高得点をねらう必要はなく、最低基準点をクリアすることを目標にしましょう。過去問や予想問題集を一通り解き、最新の統計資料などの数字やグラフの特長を覚えてしまうこともコツです。

⑨労働管理その他の労働に関する一般常識 労基、安衛、労災、雇用、徴収以外の3分野
①労働関係諸法令
②労務管理
③労働経済
について幅広く扱う科目。

通称「労一」は、範囲が広い上に難易度が高い出題のため点数を稼ぎづらく、直近の改正事項に関する出題が多いのも特徴です。

労働経済の分野においては、労働経済白書や各種統計資料に基づく数値に関する出題もありますが、直前期に最新のデータを用いた教材で確認すれば大丈夫です。

⑩社会保険に関する一般常識 健康保険法、国民年金法、厚生年金保険法以外の社会保険諸法令や
社会保険の共通事項・理論等を幅広く扱う科目。

通称「社一」を含め一般常識の出題には「白書」を用いますが、全て読もうとしてもボリュームが膨大でとても手に負えません。

コツとしては確定拠出年金法、確定給付方企業年金法などのトピックや、数字用件や行政機関の名称などを押さえ、構えずに試験を受けるのも良いでしょう。

3 科目別の取り組み方

これまで勉強の順番の重要性について紹介してきましたが、最後に科目別の取り組み方のコツを紹介します。上手く参考にして、試験当日までの限られた時間内で10科目を押さえましょう。

(1)得点を伸ばしやすい科目は?

下表は、各科目を得点のしやすさで分類したものです。

得点源にしやすい科目 ・労働保険料徴収法
・健康保険法
・国民年金法
・厚生年金保険法
・社会保険科目は得点を伸ばしやすい。
・特に択一式で得点を伸ばしやすい。
・条文、法改正をやれば得点につながりやすい。
・徴収法は過去問のリピート率が高い。
比較的得点を伸ばしにくい科目 ・労働基準法
・労働者災害補償保険法
・雇用保険法
・社会保険に関する一般常識
・1科目で10点という科目がない。
・労基、安衛、労災、雇用、徴収の労働科目5科目で30点しか得点できない。
難関科目 ・労働に関する一般常識
・労働安全衛生法
・労一は社一で得点すれば、0点でも大丈夫。
・安衛で作業現場的な問題が出題されると得点しづらい。

社会保険科目、特に年金科目は得点差が激しく、勉強量が反映される科目です。最初は理解するまでに時間がかかりますが、得点のコツが分かれば得点源にできる科目です。

①得点源にしやすい科目

得点源にしやすい科目は合格ラインを超えることで満足せず、満点を目指して総合点に貢献する科目にしたいところです。そのような科目の候補を挙げていきましょう。

Ⅰ「労働保険徴収法」

苦手意識を持つ受験生も多い労働保険徴収法ですが、実は得点源にもしやすい科目です。その理由を挙げてみましょう。

・出題範囲が狭い。
・出題は実は簡単で、難しい理解を必要としない。
・過去問の焼き直し問題が多い。

ある程度の勉強時間を確保すれば、しっかりと得点源にできます。

Ⅱ「健康保険法」「国民年金法」「厚生年金保険法」

これらもしっかりと勉強時間を取り、事例問題に対応できるようになっておくのが得点のポイントです。

②難関科目

一般的に社労士試験の難関科目として認識されているのは、次の2つの科目でしょう。

Ⅰ「労働に関する一般常識」

社労士として知っておくべき知識が出題される科目です。「一般知識」という言葉に騙されそうになりますが、出題内容は 「広範囲」かつ「高難易度」 のダブルパンチの科目です。得点に結びつきにくいので、毎年多くの受験生がこの科目の合格基準点に届かず、合格を逃しています。

出題範囲の高い問題は必ずチェックし、確実に押さえて得点できるようにしておきましょう。

Ⅱ「労働安全衛生法」

本法は労働基準法から分離して制定された法律ですが、とにかく試験範囲が広く出題傾向も細かいことが特徴です。多くの受験生に嫌われているこの科目は、難易度の年度差が比較的大きいと言われていますので、ある年の過去問が解けたとしても年度差が大きいことを念頭に置いて、満足しないように気をつけましょう。

また、本科目は暗記科目でもありますので、ある程度範囲を絞り合格ラインを超えることを目標とするのが良いでしょう。

(2)過去問はいつやる?

これまで、10科目の効果的な勉強法も紹介するなかで、過去問対策が有効な科目もいくつかありました。「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」「健康保険法」などがそうです。

受験生の中には、「過去問はひと通り試験範囲の勉強を終えてから取り組むものだ」と思っている人も多いものです。しかしアウトプットは、実は有効なインプットになることは、皆さんも既にご存知でしょう。過去問に取り掛かる時期を見誤り、結局過去問対策が不十分なままで試験本番を迎える受験生は多いものです。そういう事態は避けたいものです。

4 サマリー

社労士試験対策には、勉強の順番が大切であることがお分かりいただけましたか。

この記事では、その根拠となっている各科目間の親和性や関連性についても詳しく紹介しました。あなたの受験勉強の参考にして頂けると幸いです。

5 まとめ

・社労士試験は出題範囲が広いのであっという間に試験日にならないよう、3つのジャンルに分けて計画的に勉強するべき。

・労働系科目は社労士試験出題科目の主軸なので初めに着手すべきである。

・実は社会保険科目で大きな得点差が生じている。

・勉強の順番は➀関連性のある科目は続けて勉強②重要性が低いか暗記科目は後回しに基づき決める。

・労働系科目では労働基準法から、社会保険科目は健康保険法から入ると良い。

・得点源にしやすい科目は労働保険料徴収法、健康保険法、国民年金法、厚生年金保険法。

・難関科目は、労働に関する一般常識、労働安全衛生法である。

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