働き方改革 副業に対する政府の法政策及び副業のメリット・デメリットについて

働き方改革 副業に対する政府の法政策及び副業のメリット・デメリットについて

政府の働き方改革では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の年5日取得義務化などが導入されるなど、労働者のワーク・ライフ・バランスの確保が求められています。

その一方で、副業や兼業を普及させていこうとする動きもあり、副業や兼業を禁止していた企業も徐々に解禁し始めている傾向があります。

本業に加えてさらに別の仕事をすることで労働時間は増えますが、さらなるキャリアアップや収入を求める労働者にとっては興味深い動きです。

この記事では、働き方改革として、副業が今後どのようになっていくのか、また、企業における副業の対応状況などについて解説しています。

1 働き方改革でなぜいま副業なのか?

働き方改革では、副業や兼業を普及させていくこととされており、大企業を中心に副業を認める企業が増えるようになってきています。

ひと昔前であれば、副業は禁止とする会社がほとんどであり、それはいまも大きくは変わっていません。

では、なぜいま政府は働き方改革で副業を普及させようとしているのでしょうか?

働き方改革の実現を目的とする働き方改革実現会議が2017年3月に決定した「働き方改革実行計画」では、日本の労働制度と働き方にある課題として、次の3つが挙げられています。

「正規、非正規の不合理な処遇の差」

正当な処遇がなされていないという気持ちを「非正規」労働者に起こさせ、頑張ろうという意欲をなくす。

「長時間労働」

健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や女性のキャリア形成を阻む原因、また、男性の家庭参加を阻む原因となっている。

「単線型の日本のキャリアパス」

ライフステージに合った仕事の仕方を選択しにくい。

「正規、非正規の不合理な処遇の差」への対策としては同一労働同一賃金、「長時間労働」への対策としては、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の年5日取得義務化などが挙げられます。

「単線型の日本のキャリアパス」についてはあまり聞きなれない言葉ですが、簡単に言えば、一度、会社に入ったらその会社でキャリアアップを目指していくということです。終身雇用制度を前提としていた日本特有のものであり、労働者にとっては、会社に入ってしまえば、より自分にあった仕事の仕方を選択することができなくなることを意味しています。

この対策として副業や兼業が出てくるわけですが、上記の「働き方改革実行計画」では、副業や兼業は「新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効」とされており、よりスキルアップを図りたい労働者や終身雇用制度も崩壊した中で自立しようとする労働者の一助になるものと考えられています。

【参考】[働き方改革実行計画(概要)/首相官邸](http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/pdf/gaiyou_h290328.pdf

2 働き方改革における政府の取り組み

政府は副業を普及、促進させるため、具体的には次のような取り組みを行っています。

(1)「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の策定

2018年1月に、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、企業や労働者が現行法令のもとでどのような事項に留意すべきかなどをまとめています。

その中では、企業と労働者の対応について次のようなことが書かれています。

①企業の対応

・裁判例を踏まえれば、原則、副業や兼業を認める方向とすることが適当である。

・副業や兼業を禁止または一律許可制にしている企業は、副業や兼業が自社での業務に支障をもたらすような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則として、副業や兼業を認める方向で検討することが求められる。

・実際に副業や兼業を進めるにあたっては、労働者と企業双方が納得感を持って進めることができるよう、労働者と十分にコミュニケーションをとることが重要である

・副業や兼業を認める場合、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等がないか、また、長時間労働を招くものとなっていないか確認する観点から、副業や兼業の内容等を労働者に申請や届出をさせることも考えられる。

・労働者が、副業や兼業先でも雇用されている場合には、労働時間に関する規定の適用について通算するとされていることに留意する必要がある。また、労働時間や健康の状態を把握するためにも、副業や兼業の内容等を労働者に申請や届出させることが望ましい。

・各企業における検討にあたっては、厚生労働省が改定したモデル就業規則(このあと説明します。)の規定を参照することができる。

②労働者の対応

・副業や兼業を希望する場合にも、まず、自身が勤めている企業の副業や兼業に関するルール(労働契約、就業規則等)を確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業や兼業を選択する必要がある。

・実際に副業や兼業を行うにあたっては、労働者と企業双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と十分にコミュニケーションをとることが重要である。

・副業や兼業を行うにあたっては、副業や兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、労働者(管理監督者である労働者も含む。)が自ら、本業及び副業や兼業の業務量や進捗状況、それらに費やす時間や健康状態を管理する必要がある。

・使用者が提供する健康相談等の機会の活用や、勤務時間や健康診断の結果等の管理が容易になるようなツールを用いることが望ましい。始業・終業時刻、休憩時間、勤務時間、健康診断等の記録ができるような民間等のツールを活用して、自己の就業時間や健康の管理に努めることが考えられる。

・副業や兼業を行い、20万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である。

【参考】[副業・兼業の促進に関するガイドライン/厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

(2)「モデル就業規則」の改定

同じく2018年1月に、厚生労働省が「モデル就業規則」を改定しています。

「モデル就業規則」とは、企業が就業規則を作成、見直しをする際の参考になるよう厚生労働省が公開しているものですが、これまでの「労働者の遵守事項」における「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除して、副業・兼業についての規定を新設しました。

具体的には、次のような規定が新設されており、事前に届出を行わせ、労務提供上の支障があるような場合のほか一定の場合には禁止または制限することができるとしています。

あくまで「モデル就業規則」であるため、企業はこのとおりにする義務はありませんが、この整理にならって、今後は副業・兼業を解禁していく企業が増えていくものと考えられます。

【出典】[【厚生労働省】モデル就業規則 P88](https://www.mhlw.go.jp/content/000496428.pdf)

3 公務員にも副業解禁の動きがある

働き方改革によって、政府は副業・兼業を普及させようとしていますが、公務員の副業については原則として禁止されています。

まず、国家公務員については、国家公務員法によって原則として禁止されており、職員の所轄長などの許可を得れば不可能ではありませんが、実質的には難しい状況です(ただし、家業の農業の手伝いや一定規模以下の不動産賃貸業、駐車場経営などは許される場合があります)。

地方公務員についても地方公務員法において国家公務員とほぼ同様の制限があります。

しかしながら、地方公務員、国家公務員のそれぞれに副業解禁に向けた動きはあります。

(1)地方公務員

他の自治体に先駆けて、2017年4月には、兵庫県の神戸市が、公益性の高い地域貢献活動(NPO法人などでの活動)としての副業を認めており、2017年8月には、奈良県の生駒市が、公共性のある組織での副業を認めています。

やはり公務員であるため、両市とも公益性や地域貢献などが前提とされてはいるものの、副業解禁の流れを見せ始めていると言えます。

(2)国家公務員

政府は2018年6月に「未来投資戦略2018」というものを閣議決定しています。

その中では、「多様で柔軟なワークスタイルの促進」として、「国家公務員については、公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進める。」とされています。

上記、地方公務員の動きと同様に、国家公務員についても公益的活動などを目的とした兼業を認める方向で動いています。

【参考】[公務員の〝副業解禁〟自治体にもジワリ 神戸市、奈良・生駒市で基準明確化/産経ニュース](https://www.sankei.com/west/news/180322/wst1803220042-n1.html

【参考】[未来投資戦略2018 -「Society 5.0」「データ駆動型社会」- 110P/首相官邸](https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai.pdf

【参考】[国家公務員の兼業、政府が容認へ 公益活動に限定/日本経済新聞](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31765320U8A610C1MM8000/

4 企業における副業の対応状況

副業を認めている企業、禁止している企業などの割合については、株式会社リクルートキャリアが2018年10月に実施した「兼業・副業に対する企業の意識調査」というものがあります。(2,271企業からの回答を整理したものです。)

(1)兼業・副業を容認・推進・禁止している割合

まず、兼業・副業を容認・推進・禁止している割合については、禁止している企業が最も多く71.2%、続いて、 容認している企業が25.2%、推進している企業が3.6%となっています。

副業・兼業を認めている企業は、推進+容認で、28.8%ということになります。

【出典】[【株式会社リクルートキャリア】兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)](https://www.recruitcareer.co.jp/news/20181012_03.pdf)

2017年2月に実施した同調査では、推進+容認で22.9%であったとされており、昨年よりも5.9ポイントも上昇していることから、兼業や副業を認めている企業はまだまだ少ないものの徐々に増えていることがわかります。

(2)兼業・副業を禁止している理由

次に、兼業・副業を禁止している71.2%の企業に対して、その理由も調査していますが、「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」が最も多く、44.8%、「労働時間の管理・把握が困難なため」が37.9%、「情報漏えいのリスクがあるため」が34.8%と続いています。

【出典】[【株式会社リクルートキャリア】兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)](https://www.recruitcareer.co.jp/news/20181012_03.pdf)

44.8%を占める「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」については、社員に副業をさせることで健康に問題が生じると、本業に支障をきたしますので、これが一番の理由であるということです。

37.9%を占める「労働時間の管理・把握が困難なため」について補足すると、労働時間の管理を適切に行うためには、働き方改革として導入されている時間外労働の上限規制も考える必要があります。

時間外労働の上限規制では、時間外労働と休日労働の合計は単月で100時間未満などとされています。これらの上限時間は副業の労働時間も通算して考えなければなりません。

企業には従業員の健康を確保する責任もあることから、どのように自社と副業先で労働時間を共有するのかなどを検討する必要もあり、これに完全に対応していくためにはある程度の体制を整える必要があります。

(3)兼業・副業を推進・容認している理由や背景

さらに、兼業・副業を推進・容認している28.8%の企業に対して、その理由も調査していますが、「特に禁止する理由がないから」が最も多く、42.5%、「社員の収入増につながるため」が38.8%、「人材育成・本人のスキル向上につながるため」が24.2%と続いています。

【出典】[【株式会社リクルートキャリア】兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)](https://www.recruitcareer.co.jp/news/20181012_03.pdf)

38.8%を占める「社員の収入増につながるため」については、社員本人のためとも捉えられますが、一方でこれまでのように賃金を上げないというような事情も推察できます。

24.2%を占める「人材育成・本人のスキル向上につながるため」についても、社員本人のためというより、副業で社内では得られない新たな知識や経験を得て本業に活かしてもらうことを期待していると考えられます。費用のかからない自主研修と考えれば企業にとっては有難い話です。

(4)兼業・副業に関する就業規則の規定状況

兼業・副業に関して就業規則にどのように定めているのかについても調査しています。

「兼業・副業を就業規則で禁止している」が最も多く、60.8%、「兼業・副業に関する規定自体ない」が17.4%、「兼業・副業の規定はあるが、特に手続きは定めていない」が8.3%と続いています。

【出典】[【株式会社リクルートキャリア】兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)](https://www.recruitcareer.co.jp/news/20181012_03.pdf)

調査結果では「兼業・副業を就業規則で禁止している」が最も多かったですが、副業や兼業についての就業規則における対応パターンは、主に次のように整理できます。

①完全禁止

文字どおり副業を完全に禁止しているパターンです。

ただし、社員は就業規則を遵守する義務はあるものの、そもそも、勤務時間外に本業に支障がない範囲で行う副業については法的にも規制できないという問題もあります。完全に禁止とされているのであれば、相談してみる余地はあります。

②許可制(原則禁止)

最初にも触れましたが、厚生労働省の「モデル就業規則」が改定される前までは、副業について、「労働者の遵守事項」として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」とだけ規定されており、このように整理している企業が多いものと考えられます。

そのほかに、「会社の許可なく、他の会社の役員や社員になったり、または、営利を目的とする業務を行わないこと。」などとする企業も多いですが、いずれの場合も、許可を得れば副業を認める可能性を残しつつも、実態としては禁止の意味合いが強いと言えます。

③届出制(原則許可)

改定後の「モデル就業規則」では、副業を始める前に事前に届出を行わせ、労務提供上の支障があるような場合のほか一定の場合には禁止または制限することができるという整理になりましたが、「モデル就業規則」の改定前からこの整理にしている会社も多くあります。

この場合には届出書にどのような副業をするのかを記入させられ、本業に影響がないのかなどについて審査されることが一般的です。

④完全許可

就業規則に、副業について規定がない場合、あるいは、副業について特に届け出の必要なしなどとされている場合には、自由に副業を行うことができます。

しかしながら、副業によって欠勤や遅刻が増えたり、会社の情報を漏えいさせて損害を与えた場合には、懲戒事由に該当して処分される可能性もあります。この場合でも、本業に支障のない範囲で行わなければならないことに違いはありません。

5 サマリー

いかがでしたでしょうか。副業は、働き方改革によって普及させていく方針になっており、いま現在、禁止している企業でも今後は徐々に解禁の方向に向かっていくことが予想されます。

副業をすることで収入も増え、スキルアップを図ることもできます。転職や独立を考えている場合には副業から始めてみるという手もあります。

まずは、自社の就業規則で副業についてどのように規定されているのかを確認してみることをお勧めします。

6 まとめ

・政府の働き方改革では、副業や兼業は「新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効」であるとし、普及、促進を図っていくこととされている。

・副業は、民間では大企業を中心に解禁されつつあり、国家公務員や地方公務員についても公益活動を前提としながらも解禁の動きがある。

・副業を始める前には、会社の就業規則でどのように規定されているのかを確認する必要がある。

・副業に従事するにあたっては、本業に支障が出ないように注意しなければならない。

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