ダイバーシティを実現したい企業必見!「外国人雇用」で社労士に依頼すべき内容とは?

ダイバーシティを実現したい企業必見!「外国人雇用」で社労士に依頼すべき内容とは?


ダイバーシティという言葉が持つ意味は、お分かりのように「多様性」です。多様性は、働き方改革で政府が目指す労働環境の、一環を担っています。この場合の多様性とは、性別、年齢、国籍などを越えて共存するすがたを指します。このように多様性を持った労働社会を構築しなければ、日本の労働生産性が危うくなる状態にきています。

この記事では、日本の存続の鍵ともいえる外国人雇用を促進するために、社会保険労務士(社労士)ができることについて解説します。

1、日本における外国人雇用

島国である日本は、諸外国よりも外国人が入って来にくい地理環境を持っています。しかし近年、日本の入国管理を語る上で、抜きにできない出来事がありました。2019年4月から、新しい在留資格「特定技能」創設されたのですが、このことは人材確保に苦しむ建設業、宿泊業、外食業などの業種に「外国人雇用」という光を差し込むことが予想されたのです。

⑴外国人雇用は労働力不足の克服の鍵

人材確保は、少子高齢化で深刻な労働力不足にあえぐ日本にとっては、非常に大きな課題です。ですので政府は、在留資格の新設をもって日本企業の外国人雇用を促進し、この問題を乗り越えるための鍵としようとしました。

厚生労働省によると、令和元年10月末現在の「外国人労働者数」は1,658,804人でした。この数字は平成19年の届出の義務化以降、過去最高を更新しました。

⑵労務管理が整備ができていない会社も

しかし、外国人労働者数は過去最高でも、外国人を受け入れるだけの知識や体制が整った会社は少ないという実状があります。また、外国人雇用の増加は全体的な現象ではなく、一部の業種や都市部のみに限られて見られるのも実情です。

もっとも、今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、日本への入国者自体が一気に激減してしまいました。今後の外国人雇用の見通しもまだまだ立ちませんが、外国人雇用のための知識取得と労務管理体制の構築は、進めておいた方が良いでしょう。

2、外国人雇用と社労士

ご存知の通り、社労士とは、「ヒト・カネ・モノ・情報」の企業リソースのうち、ヒト(人材)の専門家です。それは日本人だけでなく外国人が対象でも同様です。

社労士は、企業の外国人雇用において、具体的にどのようなサポートができるのでしょうか?

⑴外国人雇用と法令順守

厚生労働省パンフレット「外国人を雇用する事業主の方へ」によると、外国人労働者の雇用管理の改善等に関するポイントは、次の通りです。

 

➀ 事業主は外国人労働者について、労働関係法令および社会保険関係法令を遵守すること。

➁ 外国人労働者が適切な労働条件および安全衛生の下、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講ずること。

 

外国人を雇用する事業主の中には、外国人には日本人を雇う時のような労働関係法令は適用されないと思っている人もいます。しかし実際には、法を守るだけでなく、積極的に外国人の就労環境の改善を図らなければなりません。事業主が彼らのために適切な処置を図る姿勢がなければ、彼らは安心して働くことができないのです。

この課題についての質疑応答が、ちょうど同パンフレットの「よくある質問」に掲載されているので紹介します。

 

Q5 外国人を初めて雇用するのですが、どんな生活サポートをしてあげるべきですか?

A5 医・食・住のサポートが必要になってきます。日本で暮らす上でのマナーも必要でしょう。

 

Q4 最低賃金は支払っているので、日本人に付いているような手当は不支給でもいいですか?

A4 賃金支払いの5原則(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月最低1回の支払い・一定期日払い)は守らなくてはいけません。そして、同一の仕事で責任の程度も同様であれば、国籍に関係なく均等待遇が必要です。管理費がかかるからという理由で賃金を低くしてはいけません。

⑵外国人の雇用管理の改善は事業主の努力義務

また、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」には、「事業主が努めるべきこと」として、以下の7項目が列挙されています。

➀ 外国人労働者募集及び採用の適正化について

➁ 適正な労働条件の確保について

③ 安全衛生の確保について

④ 労働保険・社会保険について

⑤ 適切な人事管理について

⑥ 解雇の予防及び再就職援助について

⑦ 外国人労働者の雇用労務責任者の選任について

 

ご覧のように、これらの項目には、労働関係法令および社会保険関係法令が関わってきます。相手が外国人だから、いくら残業させていいわけではありません。労働・社会保険に関しても、日本人従業員の場合と同様に、必要な手続をとる必要があります。

3、外国人雇用における社労士の役割とは?

外国人を雇用するには、まず雇用管理の問題点を多く乗り越えなければなりません。ただ人手が足りないからと、外国人を簡単に雇用できないことがお分かりいただけたでしょう。まず、労働関係法令および社会保険関係法令を遵守している企業であるか、問われるようになってきています。助成金申請も近年は審査が厳格化しています。例えば、10人以上雇っていたら就業規則をきちんと作成しているかなどもチェックされます。

各審査に落ちたりしないためには、社労士の力を借りるのが賢明でしょう。

 

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⑴事業主の責務とは?

外国人の雇入れ・離職時の届け出と適切な雇用管理は、事業主の責務とされています。以下の2つの内容は事業主が遵守すべき内容です。

 

1 外国人の雇用状況を適切に届け出る
外国人の雇入れ・離職の際には、氏名、在留資格などをハローワークに届け出る。

ハローワークでは届出に基づき、雇用環境の改善に向けて、事業主の方への助言や指導、離職した外国人への再就職支援をおこなう。

届出に当たり、事業主が雇い入れる外国人の在留資格などを確認するため、不法就労の防止につながる。

2 外国人の雇用管理を適切におこなう
「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」

事業主が遵守すべき法令や、努めるべき雇用管理の内容などが盛り込まれている。

この指針に沿って、職場環境の改善や再就職の支援に取り組む。

厚生労働省資料を基に作成

⑵社労士ができること

とはいっても、誰もが労働・社会保険関係の書類作成についての知識を有しているわけではありません。人材確保のために外国人雇用を始めても、知識不足であったために法律違反を犯してしまっては本末転倒です。

以下の内容については特に、労務のプロである社労士に相談しながら進めることをおすすめします。

➀ 外国人のブラック雇用阻止

働き方改革で日本の労働環境にメスが入れられる中、外国人雇用に関しては、依然として安い労働力として働かせようという認識が持たれています。仕事内容が同一なら同一賃金、労働・社会保険に加入させるなど、外国人に対してもコンプライアンスが守られなければいけません。

➁ 外国人雇用企業の労務管理の整備

外国人を雇用するためには、まず入国管理法に基づいた申請がおこなわれなければなりません。入管の申請取次業務自体は、弁護士・行政書士の共管業務になりますが、外国人を雇用するに当たって問われる労務管理は、社労士の専門分野になります。適切な労務管理がおこなわれているか、労働・社会保険に加入しているかなどの受け入れ体制が整っていないと、そもそも審査が通りません。

事業主には外国人の雇入れや離職をハローワークの届け出るほか、雇用管理の改善努力といった責務があります。分からないことがあったら最寄りの都道府県労働局またはハローワークへたずねるか、社労士に相談しましょう。

③ 外国人雇用助成金

新たに外国人を採用した事業主には、受給の可能性がある助成金があります。こちらも、労務管理や労働関係法令および社会保険関係法令の順守に問題があると、審査に通りません。

これの助成金は雇用保険を財源としているため、申請業務は社労士の独占業務に定められています。

3、社労士が請け負うことのできる外国人雇用助成金

ここでは、外国人を雇用することで受給できる可能性がある助成金を4つ紹介します。雇用企業が社会保険に加入していることが前提ですが、状況次第では4つ全てを受給することができます。

⑴キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)

契約社員と正社員の格差是正を促進するための制度です。すでに働いている正社員の従業員と契約社員の手当を共通にすると、適用される助成金です。当該コースで支給対象となるものは下記の11項目で、このうちいずれかを新設し、正社員と同条件で適用する必要があります。

➀ 賞与(ボーナス)

➁ 役職手当

③ 特殊作業手当・特殊勤務手当

④ 精皆勤手当

⑤ 食事手当

⑥ 単身赴任手当

⑦ 地域手当

⑧ 家族手当

⑨ 住宅手当

⑩ 時間外労働手当

⑪ 深夜・休日労働手当

※少なくとも、6か月間支給した実績が必要。

⑵キャリアアップ助成金(正社員転換コース)

外国人労働者を最初は契約社員として雇用し、前出の「諸手当共通化制度」で助成金を受けた後、長期勤務できそうな外国人労働者に対して、半年から1年後に「正社員転換」をおこないます。すると「正社員転換コース」の助成金が受給できます。

➀、➁のフローをまとめると、まず外国人労働者を契約社員として雇用し、6か月間にわたり正社員と同じ諸手当を提供した後、正社員転換をおこなえば、両方の助成金を受給することができる、ことになります。

⑶時間外労働改善助成金(勤務間インターバルコース)

「勤務間インターバル」とは、退勤後9時間は出勤してはいけないという制度です。長時間労働の是正の為に策定された制度で、導入企業には助成金が支給されます。

具体的には、労働生産性向上に繋がる機械や、勤怠管理クラウドサービスなどの設備やソフトを導入した場合に支給されます。そのほか、社労士を講師とした労務管理説明会や就業規則作成のためのセミナーなどの実績にも適用されます。

⑷人材確保等支援助成金・働き方改革支援コース

働き方改革コースとは、勤務間インターバル助成金の交付決定か支給決定を受けている企業が申請できる助成金です。

正確な名称には「時間外労働改善助成金の人材確保等支援助成金・働き方改革支援コース」です。この制度の設立目的は「1人あたりの業務量を改善する」ことで、新たな人員を採用し人手を増やした場合に、1人につき60万円が支給されます。

本制度は、計画届けを提出する必要があります。注意すべくは、この計画期間の指定の6か月の間に採用した人員のみが支給の対象になる点です。加えて、採用したものの離職者が多く出てしまい、計画期間後の雇用者人数が増えていないか減ってしまった場合には、支給を受けることができなくなります。また、新規事業のための新規採用は対象にならず、あくまでも生産性向上のための新規採用のみ適用される制度であることも、覚えておきましょう。

4、外国人雇用における更なる注意点

最後に、社労士に依頼すれば迅速かつ正確な手続きで越えていける業務について挙げてみます。

 

⑴就業規則を作成する

トラブルが頻繁におこる企業は、就業規則を作成していないことが多いです。ましてや外国人を雇用するのであれば、ルールの明文化は欠かせません。法令により、常時10人以上を使用している事業場は、従業員が外国人でもパートやアルバイトでも、就業規則を作成することが義務付けられています。

⑵外国人労働者に就業規則を周知する

すでに就業規則がある企業であれば、外国人従業員が理解できる言語に翻訳して周知するのが理想的です。もっといえば、外国人を雇う段階で「労働条件通知書」も「雇用契約書」も外国人労働者の母国語に訳したもの作成し、渡さなければなりません。少なくとも、労働条件や必須のルール、違反した場合の処置などについては翻訳しておくと良いでしょう。

なお、在留資格によると、外国人を雇用する場合は、外国人個人の専門知識や技術に応じて労働契約を締結することになっています。

⑶労災が発生したら、国籍の報告義務が生じる

外国人を雇用する事業場で労災が発生する場合もあります。改正入管法では、労災が発生した場合は国籍の報告義務が課されることとなりました。本改正の目的は、監督指導などの充実・強化です。新在留資格である特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用した場合は、特に重点的な監督指導がなされますので覚えておきましょう。

5、サマリー

外国人を雇用する場合、入管業務の申請取次は弁護士、行政書士の仕事です。それ以降の労働条件通知や雇用契約書の作成、雇入れや離職の届け出などは、社労士が請け負うことができます。特に、正社員でなくても10人を雇えば、就業規則作成という事業主の義務が発生します。これは助成金申請などにも問われる内容ですので、社労士に相談すると良いでしょう。

6、まとめ

・2019年4月に新在留資格「特定技能」創設され、人材確保に苦しむ業種が多く外国人を雇用すると予想された。

・令和元年10月末現在の「外国人労働者数」は1,658,804人で、平成19年届出の義務化以降、過去最高だった。

・事業主は外国人労働者にも、労働関係法令と社会保険関係法令を遵守せねばならない。

・また厚生労働省指針で定める事項について、適切な措置を講じなければならない。

・外国人に対しても賃金支払いの5原則(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月最低1回の支払い・一定期日払い)は守るべき。

・外国人の雇入れ・離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出る。

・外国人を雇用することで受給できる可能性がある助成金は4つある。

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