国際化の時代、あらゆる業務に国際化の波がおとずれています。社労士には、社会保険や年金を専門とするカタい仕事、というイメージがありますが、最近は業務の幅がかなり広がっています。
特に、英語が話せる社労士の中には、外資系企業に特化して案件を請け負っているところも。この記事では、需要が高まり続けている、英語が話せる社労士の活躍について、紹介していきます!
目次
1 社労士業務に英語は必要?
会社が存在する以上、仕事はなくならないといわれる社労士。それでは、企業もボーダレスで経済活動をおこなう今日、社労士にも英語を必要とする業務が増えているのでしょうか。
(1)社労士資格は日本だけの資格?
繰り返しますが、この世に会社がある以上、社労士の仕事はなくならないといわれています。実際に、社員が10人以上になったら就業規則の作成が義務となりますし、労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要になります。また助成金申請も、就業規則があることなどが条件となるため、会社としての整備がまず求められます。社労士は、これらすべての内容のプロフェッショナルです。
しかし、社労士が専門とする労働社会保険関連法令は、日本でのみ適用される法律です。社会保険労務士という国家資格も、日本独自のものです。外国人に社労士という資格を説明しようとして、難しかった経験がおありではないでしょうか。海外は、労使交渉は弁護士が代理人となっておこなうため、社労士の業務は弁護士のものとなるからです。実際、ご存知のように日本でも、司法試験に合格すると、社労士資格も同時に得ることができます。
社労士の基本業務は以下の通りです。
①書類作成や事務代行(1号業務)
②帳簿の作成(2号業務)
③相談・指導業務(3号業務)
一見すると、英語が必要となる業務はないように見えます。申請書類の提出先にしても日本の役所なので、そこでも英語が必要ありません。社労士とは、基本的には、英語が全く話せなくても務まる国家資格なのです。
(2)英語を話せる社労士の需要は高まっている
しかし、現在はコロナ禍で停滞しているものの、国際化により日本外資系企業や外国人労働者の数は増加の一途を辿っていました。また、外国人向けの技能実習制度の充実なども、日本で働く外国人労働者の増加を促進しました。
このような国際化の進む環境の中で、英語が堪能な社労士はまだまだ少ないという現状があります。ですので、英語ができる社労士の活躍の場は広がり続けており、引く手あまたの状態だといって良いでしょう。実際、インターネット等で「社労士 英語」などで検索してみると、求人も多数見つかるでしょう。国家資格プラスアルファの場合、給与面でも優遇されることが多いです。
社労士事務所の中には、外資系企業をメインの顧客にするところもあります。そういった事務所は、外国人のエグゼクティブ(経営層)と直接英語でやりとりをすることもあるので、ビジネスレベルの英語力が求められます。特に、社労士の3号業務のコンサルティングをおこなう場合は、非常に高い英語力が必要です。
(3)社労士を英語で言うと?
社労士の英語訳は「Labor and Social Security Attorney」とするのが一般的です。英訳の改正が2010年9月におこなわれて以降、ずっとこの英訳が使われています。
「Attorney」とは弁護士のことです。日本では「Lawyer」が一般的に弁護士の英訳だと思われていますが、これは法律に関わる人全般のことを指すため、弁護士だけでなく検事も「Lawyer」になってしまいます。
2010年以前は、
「Certified Human Resources Management consultant」
「social insurance and labor consultant」
などと訳されていました。
2 英語力を活用する社労士業務
それでは、どのような社労士業務において、英語の使用が求められるのでしょうか。
(1)日本に進出した外資系企業の労務管理
労働法など労務については、進出先の国によって異なります。海外から来た外資系企業の社員も、日本で働く限りは日本の労働法を遵守する必要があります。しかし、現地の法律を遵守するためには、まずその内容を知らなければなりません。
日本国内の外資系企業で働いても、カルチャーショックはたくさんあります。日本に来た外国人労働者にとっても同様で、例えば日本で現在進行中の「働き方改革」などは、外国人にとっては不思議な政策に見えるかもしれません。
特に法令は、外国人が正しく理解して守るためには、社労士のような専門家の助けが必要となります。このような場合、英語力のある社労士は大活躍できるはずです。
(2)海外への日本企業の進出
海外へ日本企業が進出した場合は、日本の社労士資格が現地企業で活かせるわけではありません。しかし、高い英語力を持つ社労士が、現地法人の設立時に通訳を努めながら、海外の労務専門家とタッグを組んで、進出先の法令を遵守したルール作りをおこなうことが可能です。
(3)日本における外国人の起業支援
外国人が日本で起業したいという場合もあります。そうすると、日本の法令に則った労務管理をおこなう必要があります。このような外国人起業家をサポートできる社労士は、まだまだ少ないのが現状です。
特に、外国人の起業や外国人材の受け入れについては、労使トラブルが発生するリスクがあります。リスク回避の観点からも、英語で労務問題について対応可能な社労士は、ますます重宝される時代になるでしょう。
外国人起業家や外国人労働者の受け入れに関しては、行政書士と連携してワンストップサービスの展開をおこなうことをおすすめします。行政書士は入管、在留資格の専門家であり、許認可申請を独占業務としています。ワンストップサービスなら、一か所で手続きが完了するため、顧客目線に立ったサービスを提供できます。
3 国際社労士事務所の業務とは?
国際社労士事務所は、外資系企業など顧客企業に対して、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。以下は、彼らの業務について調べて作表したものです。
現地法に基づいた労務の遂行や就業規則の英訳など、外資系企業の法令順守をサポートするための業務が、数応く列挙されています。
(1)国際社労士事務所の具体的業務
社会保険関係 | 健康保険、介護保険、 厚生年金保険 |
・新規適用の手続き ・採用・退職時に必要な手続き ・標準報酬月額の算定基礎届・月額変更届 ・給付申請の手続き |
労働保険関係 | 労災保険と雇用保険 | ・新規適用の手続き ・採用・退職時に必要な手続き ・年度更新手続き ・給付申請の手続き ・労働基準監督署へ労使協定や就業規則の届出 ・雇用に関する助成金申請手続き |
コンサルティング | 人事労務コンサルティング | ・個別労働関係紛争の予防と解決 ・年金制度、企業退職金制度についての相談及びコンサルティング ・福利厚生について |
制度構築援助 | ・賃金制度 ・労働条件 ・労働関係法令に基づく就業規則作成 (社員が10人以上になったら) ・社内規定整備 ・英文就業規則 ・人事制度 ・高年齢従業員の継続雇用制度など |
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給与計算 |
(2)外国人の起業サポート
また、日本で起業したい外国人を支える業務も積極的におこなっております。その場合、契約書作成、許認可申請、業務委託契約書などの書類作成・申請業務が発生しますので、これらの業務を専門とする行政書士と連携するのが良いでしょう。
4 サマリー
英語が堪能な社労士には、活躍の場が広がっていることがお分かりいただけたでしょうか。社労士の業務には法令遵守が関わってくるため責任は大きいですが、ビジネスにおける国際化の促進を担うことができるため、大変やりがいのある仕事です。
5 まとめ
・社会保険労務士という国家資格は、日本独自のものである。
・国際化の中で、英語が堪能な社労士はまだまだ少ないため、英語ができる社労士は引く手あまたである。
・外資系企業をメイン顧客にする社労士事務所は、外国人の幹部層とやりとりするので、ビジネスレベルの英語力が求められる。
・英語を使う業務には、外資系企業の労務管理、日本企業の海外進出、外国人の起業支援などがある。
・外国人起業家を支える場合、契約書作成、許認可申請を専門とする行政書士と連携するのが良い。