働き方改革 デメリット例に見る主な課題・対策(助成金制度等)について徹底解説

働き方改革 デメリット例に見る主な課題・対策(助成金制度等)について徹底解説

働き方改革により、改めてワークライフバランスを考えることになった人は少なくないでしょう。働き方改革の導入によって、長時間労働や有給休暇の取得にメスが入り、一見すると労働者のメリットが多いように見えます。しかし、本当にメリットだけなのでしょうか。働き方改革が現場レベルに落とし込まれるようになって数ヶ月が経ちました。会社内にひずみは生じていませんか。本サイトでは、デメリットの例に見る、主な課題や対策を徹底解説していきます。

1 働き方改革のデメリットとは?

働き方改革のデメリットについて「会社にとってのデメリット」と「従業員にとってのデメリット」の2つに分けることができます。

まずは、「会社にとってのデメリット」は何なのかです。

会社にとってのデメリットとは、生産性が落ちてしまうこと、パフォーマンスが落ちてしまうことが挙げられます。なぜかというと、働き方改革で改善しなければならない「長時間労働の是正」、「有給休暇の取得」などを、企業内の制度そのものから見直さずにそのまま落とし込んでしまった場合、「残業禁止」や「早帰り」を強制する風潮になってしまいます。その結果、働いている従業員中には、仕事が終えられない責任を感じ、自主的に持ち帰って仕事をしなければならないということが発生します。持ち帰りの仕事についての制度ができていなければ、この行為はサービス残業になってしまいます。

また、このような仕事の埋め合わせは管理職や従業員の上司にくることが多くなると考えられます。これらのことが、従業員を混乱させ、モチベーションの低下へと繋がり、生産性やパフォーマンスが落ちてしまうことに繋がってしまいます。

また、正規雇用と非正規雇用の待遇是正の規定が、早くて2020年4月より導入されます。この導入にあたり、評価基準などがきちんと設けられていないと、かえって待遇差に不満を持たれてしまい、モチベーションの低下になってしまう恐れがあります。

次に、「従業員にとってのデメリット」についてですが、残業代を生活費として生計を立てていた場合、収入の減少によって生活に影響が出てしまいます。また、人手不足解消のため、業務効率化のツールとしてAIやITを導入する企業が増えてきます。AIやITの導入によって、新たな知識の取得が要求され、新たなストレスを抱えてしまう要因となります。

2 働き方改革諸政策におけるデメリット例

働き方改革では、長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現のために、時間外労働の上限規制、有給休暇の時季指定、フレックスタイム制の見直しや高度プロフェッショナル制度の創設、勤務間インターバル制度の普及促進などが行われています。そして、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保の実現のために、不合理な待遇差を解消するための規定や労働者に対する待遇に関する説明義務の強化が行われます。

これらの諸政策を実現するために取られている措置のうち、フレックスタイム制度とリモトートワークが注目されています。こちらの項目では、この2点のデメリットを解説いたします。

(1)フレックスタイム制度のデメリット

フレックスタイム制度とは、社員自身で始業・終業時間を決められる制度です。つまり、一斉に出社していたものが、バラバラに出社することが可能となる制度です。メリットはたくさんありますが、デメリットもあります。まず、会社自体がその制度をきちんと理解し、フレックスタイム制で働く社員の労働時間の管理が行き届いている必要があります。

例えば、A社とB社で取引があった場合、A社では9時から18時の定時、B社では6時から21時の中でフレックスタイム制という具合に、時間が変わってしまうと、今までよりも連携がとりづらくなる恐れがあります。あらかじめA社とB社の担当者がある程度お互いの時間を把握しておかなければ、急な連絡や相談に対応できず、取引が他社へと流れてしまいかねません。

デメリットはそれだけではありません。時間にルーズな社員は、この制度によって、より一層ルーズになってしまう恐れがあります。フレックスタイム制では、時間の自己管理能力や、仕事の計画性などが求められます。定時で始業と終業をしている会社と比較すると、フレックスタイム制を導入している会社は、このような社員に対する教育も行わなければならなくなります。

(2)リモートワークのデメリット

リモートワークとは、会社などに出社せずにパソコンや電話などの通信機器を使って仕事をするスタイルのことをいいます。在宅勤務や、テレワーク(離れたところで仕事をするの意味)と呼ばれることもあります。リモートワークで副業をしている人もいます。

このリモートワークですが、出社せずに仕事ができるため、人材不足を補うことができると言われており、導入をしている企業や、新たに導入を検討しようとしている企業が増えています。しかし、このリモートワークですが、出社しないスタイルのため、通常の出勤スタイルよりも意思疎通が図られにくくなります。そういったコミュニケーション不足から、生産性が落ちてしまうと言う懸念がされています。具体的にいうと、仕事の進み具合の確認や、急ぎの案件への対応に支障が出てしまうのではないかとされています。

3 働き方改革のメリットからみるデメリットについて

今までデメリットに的を絞って解説してきましたが、働き方改革は、決してデメリットばかりではありません。十分なメリットはもちろんたくさんあります。しかし、メリット部分に目が行き過ぎて、デメリット部分から目を反らすというのにはリスクがあります。知らなかったが故に、後になって「あのときこうしておけば」と思うことが出てくることもあります。

この項目では、メリットに目が行きがちな論点から一歩引き、客観的な視点でデメリットを挙げていきます。逆説で物事を考えることにより、見えてくるものが変わっていきます。

(1)そもそもスキルありきや経験ありきの改革

賃金格差の是正のため、同じ仕事をしたら同じ賃金を支払いましょうという考え方である働き方改革ですが、そもそも経験の少ない新入社員はどうしたらいいのでしょうか。また、様々な働き方が推進され、転職歴があっても、中途採用でも、採用のための敷居が低くなって採用されるようになってきました。そうなると企業としては、一から新人教育を行わなければならないよりも、ビジネスマナーやスキル・経験がある、中途採用を優遇する方が楽だという考え方になります。2020年4月に導入される「同一労働・同一賃金制」関連などからみても、スキルや経験が不足している人や新卒には不利な制度です。

また、昨今はIT・AI・テレワークなどの導入を進めている企業が多くあります。その企業のスタイルにマッチするためには、IT・AI・テレワークなどの技術を新たに身につけておく必要が出てきます。

(2)常に自分を磨き、気を抜けない向上心を持つ

先ほど、スキルありき経験ありきの制度であることを解説いたしました。スキルありき経験ありきということは、常に自分を磨き、気を抜けない向上心を持つことが必要とされます。雇われて働いている人で、ただ終業時間がくるのを待ち、実力をセーブして働いている人は少なくありません。

そのような人は、同一労働・同一賃金制や、賃金格差是正の世の中になると、淘汰されていく恐れがあります。評価してもらう人になるためには、自己研鑽を積み、積極的にスキルや経験を自分に身につけさせていくことが大切となります。

特に、テレワークなどで出社しないスタイルを取っている従業員は、自分で自分を律して仕事をしなければならなくなります。はじめのうちはできていても、どんどんと怠慢になりやすいのがテレワークです。自分に合ったモチベーションを維持する方法を模索し、自己管理することが求められます。

(3)経営者からは悲鳴

実は、デメリットは従業員だけではありません。経営者サイドにもあります。例えば、今回の働き方改革によって、「労働時間の把握」、「評価」をしっかりと行わなければならなくなりました。本来は残業代などを支払わなければならなかった「名ばかり管理職」も、労働時間を把握し、残業代などを支払わなければなりません。しかも、「同一労働・同一賃金」の制度を当てはめると、「労働に対する正当な評価」を行わなければならなくなります。

これらはすべて、経営者が行わなくてはなりません。大企業で、人手が足りているところであれば、各部や各課の管理職などに、一般の従業員たちの評価を任せることができます。

しかし、中小企業ではそうはいきません。社長自らが従業員の労働時間の把握を行ったり、評価基準を作らなくてはならなかったりという会社もあります。

人手不足を解消するために行われているはずの働き方改革ですが、働き方改革を実現するための労働力が必要となってしまうのです。そのしわ寄せは、経営者へと向きます。

(4)自分の勤怠・体調管理は自分で

フレックスタイム制やテレワークなどでは、(2)で解説したように、自分に合ったモチベーションを維持する方法を模索し、自己管理することが求められていると書きました。さらに、体調管理にも気をつけなければなりません。

仕事をした分だけ評価してもらえるという制度は、一見耳障りの良い制度ですが、そのために自分を追い詰めていく人が中には出てきてしまう恐れがあります。時間外労働をきちんと自己申告できない人、仕事とプライベートのオンオフの切り替えがうまくいかない人などは、「まずは自分の身体が第一である」ということを必ず念頭に置きましょう。

テレワークを行っている人は、副業として他でも仕事をしているケースがあります。その場合、収入の高みを目指すため、トータルの勤務時間や、仕事とプライベートのオンオフが難しいように見受けられます。無理をしすぎないようにして、身体のことを考えつつ、仕事をしていく必要があります。

4 働き方改革のデメリット克服にむけた助成金制度とは?

働き方改革に対応し、浸透させていくために、政府は助成金制度を設けています。中小企業向けの「職場意識改善助成金」についてご紹介いたします。

(1)中小企業向けの「職場意識改善助成金」

2019年より始まり、現在も受付している助成金です。厚生労働省によると、「ワーク・ライフ・バランス実現のため、週労働時間60時間以上の雇用者の割合5割減、年次有給休暇取得率70%の達成(2020年目標)を目指しており、生産性の向上などを図ることにより、所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備に取組む中小企業事業主の皆さまを支援する」と書かれています。

つまり、「長時間労働をせず、取りづらかった有給休暇を使わせてあげるなどをし、職場の意識を改善して生産性を上げましょう。そのために、国から返済不要の補助金を出しますよ。」ということです。

(2)対象事業者

中小企業で、「交付決定日より前の時点で、全ての事業場の就業規則等に、病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇(以下「特別休暇」という。)のいずれかが明文化されていないこと」と「前年における、労働者の月間平均所定外労働時間数が10時間以上であること」の2つを満たしている必要があります。

(3)支給申請

申請の受付は2019年9月30日(月)まで(必着)です。

「1、労務管理担当者に対する研修」、「2、労働者に対する研修、周知・啓発」、「3、外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング」、「4、就業規則・労使協定等の作成・変更」、「5、人材確保に向けた取組」、「6、労務管理用ソフトウェアの導入・更新」、「7、労務管理用機器の導入・更新」、「8、デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新」、「9、テレワーク用通信機器の導入・更新」、「10、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)」の、1から10の中から1つの取り組みを選択し、年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減を行います。

支給申請するためには、事業実施期間中(交付決定の日から2020年2月3日まで)に、年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減の取り組みを実施し、少なくとも片方は実施ができるようにしなければ、助成金を受給できません。

5 働き方改革 デメリットに見る主な課題とその対策について

働き方改革を実現するためには、人材の確保や賃金アップによる費用負担の増加にもたえなければなりません。これは、長時間労働が法律で制限されたためです。制限され、長く働いてもらうことが厳しければ、労働力確保のため、新たに従業員を雇い入れることになります。

これは、大企業なら人手も資金力もあり、実現するために時間を割くことができます。しかし、中小企業は違います。中小企業は人手がそもそも足りなかったり、資金力が乏しかったりと、何らかの問題を抱えているところが多くあります。そんな中での、人材の確保や賃金アップは、中小企業にとって、大きな負担となります。

これらの対策をするためには、中長期的に数年先を見据えたロードマップを策定しておく必要があります。全体像を見据えて、採用を採用専門の業者に依頼するということも対策の一つといえます。そうすることで、採用のために時間を割かずに、自社の経営や働き方改革の実現に向けた社内整備などができるようになります。

6 サマリー

いかがだったでしょうか?働き方改革はメリットに注目したり、制度そのものを解説したりするサイトが数多く存在しています。しかし、メリットだけに目が行ってしまい、デメリット部分を考えていないと、将来、今と違った社会の情勢になっていたら、順応したり、割って入ったりしていくことが困難となります。

あらかじめデメリットを知っておくことは、自分(経営者・従業員ともに)にとって非常に大事な情報となります。

7 まとめ

・働き方改革での会社のデメリットとは、生産性が落ちること、パフォーマンスが落ちることである

・フレックスタイム制では、ある程度お互いの時間を把握しておかなければ、急な連絡や相談に対応できず、取引が他社へと流れてしまいかねない

・リモートワークは通常の出勤スタイルよりも意思疎通が図られにくくなり、コミュニケーション不足から、生産性が落ちる懸念がある

・2020年4月に導入される「同一労働・同一賃金制」関連などからみても、スキルや経験が不足している人や新卒には不利な制度である

・大企業ではできても、中小企業では社長自らが従業員の労働時間の把握を行ったり、評価基準を作らなくてはならなかったりする

・中小企業向けの「職場意識改善助成金」の制度がある

・働き方改革の対策をするためには、中長期的に数年先を見据えたロードマップを策定しておく必要がある

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