宅地建物取引士の試験(以下宅建試験)を受けるために勉強する際、試験内容や試験勉強のポイント、申込期限などの各日程を把握することは非常に重要です。試験内容を把握しておくことで、自信をもって試験に挑むことができます。万が一申込期限を失念してしまうと、宅建試験に受験出来ない可能性もあるため注意が必要です。
そこで本記事では、宅建試験の試験内容と日程、合格のポイントなどを徹底解説していきます。ぜひ宅建試験合格のための参考にしてみてください。
目次
1 宅建の試験内容
宅建試験を受験するにあたり、把握しておきたい試験内容は以下の3点です。
・試験科目、出題範囲
・問題数、合格基準
・試験時間
それぞれの項目について詳細に解説していきます。試験内容を把握しておくことで、宅建試験合格までの筋道を立てることが出来るでしょう。
(1) 試験科目・出題範囲
宅建試験の試験科目・出題範囲は大きく以下の4つに分けられます。
◆宅建業法
◆民法
◆法令上の制限
◆税・その他
それぞれの特徴について詳しく解説していきます。宅建試験の合格に向けて、必ず確認しておきましょう。
① 宅建業法
宅建業法は、宅建試験の中で20問程度も出題される、頻出の試験科目です。内容は、主に宅地建物取引業、つまり不動産の業務に必要な法律の知識が出題されます。
毎年「35条書面」「37条書面」など、同じ範囲の問題が多く出題されます。そのため、4つの試験科目の中で最も点数を獲得しやすく、満点を狙うことも不可能ではありません。宅建業法は宅建試験の「合格の鍵」と言われるほど重要です。
② 民法等
民法をはじめ、借地借家法、区分所有法、不動産登記法から毎年14問程度出題されます。出題範囲が広いうえに、理解を問われる問題も多く、苦手意識を持つ人が多い試験科目です。
しかし、民法だけでおよそ7割(9〜10問)を占めているため、範囲を絞って勉強することで攻略できます。暗記に頼らず、民法の理解を中心に勉強してみてください。
③ 法令上の制限
法令上の制限とは、土地の利用や建物の建築を制限する法律のことです。土地計画法や建築基準法、国土利用計画法、農地法から出題されます。
出題数は毎年8問程度とやや少なめですが、理解しやすく得点もしやすいため、合格のためには非常に重要な範囲です。また民法と違い、暗記によって得点しやすい試験科目なので、準備を怠らなければ確実に点数を獲得できるでしょう。
④ 税・その他
税金や不当景品類及び不当表示防止法、住宅金融支援機構法、地下公示法から毎年8問程度出題されます。範囲が非常に広いですが暗記中心の試験科目であり、勉強量に比例するように点数アップすることも可能です。
ただし、毎年1問は必ず不動産の統計問題が出題されるため、試験前に最新の統計数値を確認しておく必要があります。
⑤ 問題数・合格基準
問題数は全部で50問です。合格率や合格基準点は毎年異なりますが、直近10年間の合格率は約15%〜約17%、合格基準点は31点〜38点の間で推移しています。合格率にさほど変化がない一方で、合格基準点は毎年異なります。その理由は、宅建試験では『相対評価制』を採用しているためです。そのため、受験者のレベルが高くなると必然的に合格基準点も高くなります。
下記の表は、過去10年間における宅建試験の受験者数や合格者数、合格率、合格基準点をまとめたものです。
実施年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格基準点 |
令和2年度(10月分) | 204,163 | 168,989 | 29,728 | 17.6% | 38点/50問中 |
令和元年度 | 276,019 | 220,797 | 37,481 | 17.0% | 35点/50問中 |
平成30年度 | 265,444 | 213,993 | 33,360 | 15.6% | 37点/50問中 |
平成29年度 | 258,511 | 209,354 | 32,644 | 15.6% | 35点/50問中 |
平成28年度 | 245,742 | 198,463 | 30,589 | 15.4% | 35点/50問中 |
平成27年度 | 243,199 | 194,926 | 30,028 | 15.4% | 31点/50問中 |
平成26年度 | 238,343 | 192,029 | 33,670 | 17.5% | 32点/50問中 |
平成25年度 | 234,586 | 186,304 | 28,470 | 15.3% | 33点/50問中 |
平成24年度 | 236,350 | 191,169 | 32,000 | 16.7% | 33点/50問中 |
平成23年度 | 231,596 | 188,572 | 30,391 | 16.1% | 36点/50問中 |
出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構のデータ
https://www.retio.or.jp/exam/pdf/zissigaikyo.pdf
上記の表から、宅地建物取引士が士業の仲間入りを果たした平成27年以降、合格基準点が大幅に上がっているのがわかります。このことから、平成27年以降、宅建試験の難易度が上がっているのは間違いないでしょう。このように、独学で宅建試験の勉強をするのは年々難しくなっているので対策が必要です。
(2) 試験時間
宅建試験の試験時間は、2時間(登録講習修了者は10分短縮)です。試験当日は緊張してしまい、時間が不足することは珍しくありません。事前にペース配分をあらかじめ考えておくことが重要になります。
またペース配分をする際には、見直しの時間を必ず設定することにも注意しましょう。引っ掛け問題につまずかないためにも、必ず見直しすることです。1点によって合否を分ける可能性もあるので、最後まで集中して時間を使い切りましょう。
本サイト内の別記事では、試験時間の理想的な配分についてさらに詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。
2 宅建試験受験に関する詳細
宅建試験を受ける場合、以下の内容を確認しておきましょう。
・受験資格
・試験会場
・試験日
・合格発表日
・申込み方法
・受験料
・感染症対策に関する注意点
勉強を始める前に、必ず確認するようにしておいてください。目標から逆算し、スケジュールを立てて勉強することができます。
また、2020年に発生した新型コロナウィルスをはじめ、感染症対策は非常に重要です。感染しない、またはさせないための注意点を紹介していますので、必ず確認するようにしておくとよいでしょう。
(1) 受験資格
基本的に、宅建試験は年齢・性別・学歴など問わず誰でも受験することができます。ただし例外として、過去に不正受験が発覚した人は受験が禁止されることもあります。
また、受験は出来るが、合格しても欠格事由により資格登録できないケースもあります。主なケースは以下の通りです。
・未婚の未成年者
・成年被後見人または被保佐人
・自己破産者(復権していない者)
・禁錮以上の刑を処せられて、刑の執行から5年経過していない者
・免許を取り消され、取消しの日から5年経過していない者
・暴力団員
厳密には他にもありますので、事前に確認しておきましょう。これらの事項に当てはまらない場合は、誰でも受験でき、資格登録も可能です。
(2) 試験会場
宅建試験の試験会場は、インターネットでの申込に限り選択することができます。ただし、試験会場の選択は先着順です。希望の試験会場が埋まっていた、もしくは郵送の場合は、試験センターにより割り振られます。
もし希望の試験会場がある場合、早めにインターネットで申込みを済ませておきましょう。
(3) 試験日
宅建試験の試験日は、毎年10月の第3日曜日に実施されます。しかし、2020年は新型コロナウィルスの影響により、10月18日の他に例外として一部地域に限り12月27日に受験日が設けられました。
こうした背景から、2021年の試験日はまだまだ不透明な状況だといえます。試験の公告は6月5日の予定ですので、必ず確認するようにしてください。
(4) 合格発表日
宅建試験の合格発表日は、毎年12月の第1水曜日です。しかし、2020年は新型コロナウィルスの影響で試験日が2回に分けられたため、合格発表日も12月2日と2月17日の2回ありました。
試験同様、2021年の合格発表もまだ明確には分からない状況です。こちらも公示の6月5日に正式発表される予定なので、試験日と併せて確認しておきましょう。
(5) 申込方法
申込方法は、インターネットと郵送の2択になります。それぞれの申込方法で受付期限が異なるので注意が必要です。
また先述の通り、希望の試験会場を選択したい場合はインターネットでの申し込みに限ります。
① インターネットによる申込み
インターネットでの申込み手順は以下の通りです。
1. 写真ファイルをダウンロードする
2. 一般財団法人 不動産適正取引機構の申込み情報入力画面から必要事項を入力
3. クレジットカードがコンビニ払いで支払いをする
試験料金には支払期限があります。期限を過ぎると、申込みが無効になるので注意しましょう。
② 郵送による申込み
郵送での申込み手順は以下の通りです。
1. 宅建協会や都道府県庁、書店などで願書を手に入れる
2. 規格に注意して顔写真を用意する(縦4.5cm×横3.5cmのパスポートサイズ)
3. 必要事項を記載
4. 郵便局か銀行で試験料金の支払い(振替払込受付証明書をもらい、願書に貼る)
5. 願書を提出
インターネットでの申し込みよりも少々手間が増えます。ただし、事務手数料が257円分安くなるのがメリットです。少しでもコストを抑えて受験したい人は、郵送で申し込みましょう。
③ 受付期限
郵送とインターネットでは受付期限が異なります。それぞれの受付期限は毎年以下の通りです。
・インターネット:7月1日9時30分~7月15日21時59分
・郵送:7月1日~7月31日(当日消印受付有効)
受付期限を過ぎてしまうと受験できないため、忘れないようにしてください。
(6) 受験料
宅建試験の受験料は7,000円です。ただしインターネットで申し込む際は、事務手数料として257円が必要になります。また、一度振り込んだ受験料は、申込みが受理されなかった場合を除き、返還されないので注意が必要です。
支払い方法についても、インターネットと郵送で異なります。インターネットの場合は、クレジットカードかコンビニ支払いを選択可能です。一方、郵送の場合は、銀行か郵便局で現金で支払う必要があります。
(7) 感染症対策に関する注意点
2020年に大きな問題となった新型コロナウィルスをはじめ、感染症の予防対策は徹底しておく必要があります。試験会場では3密になりがちで、感染リスクは決して低くありません。
ここでは、うつさない又はうつらないため、感染症対策をする際の注意点をご紹介します。
① 試験当日は自身で検温
当然のことですが、発熱がある場合は外出を自粛しなければいけません。仮に発熱があるまま試験会場に行っても、試験会場でも検温されます。
一生懸命勉強してきて断念するのはつらいですが、自身の体調を一番に考えるようにしてください。そして「まわりにうつさない」配慮も忘れないようにしましょう。
② マスクを必ず着用
感染症予防対策として、マスクはとても大切です、マスクは必ず着用するようにしてください。
ただし、試験会場では写真照合のためにマスクを一時的に外すよう言われることがあります。その際は、スタッフの方の指示に従って外し、再度着用するようにしてください。
③ 試験会場の換気に対応する服装
試験会場では、3密を避けるために窓を開け、換気しています。そのため、温度対策ができていないと、試験自体に集中できない恐れもあります。
着脱しやすい上着を持参するなど、温度に対応できる服装で試験に挑みましょう。
④ ゴミの持ち帰り
試験会場では、感染症予防のためにゴミを持ち帰るように指示されます。ビニール袋など、ゴミを入れる袋を用意しておくと便利です。
3 宅建試験の難易度
宅建試験は、他の難関国家試験と比較すると、難易度はそう高くありません。二級建築士と同程度の難易度だといわれています。
しかし、宅建試験は相対評価で合格点数を決めているため、まぐれ合格は起こりにくい試験でもあります。
また、平成27年度以降に宅地建物取引士に名称が変わってからは、年々難易度が高くなっているのも事実です。十分な学習と準備を欠かさないようにしましょう。
4 宅建試験合格のためのポイント
宅建試験に合格するための重要なポイントは以下の3点です。
◆得点の配分を考えて勉強する
◆学習計画を立てる
◆5点免除制度を活用する
試験内容は暗記するものが多いのも確かですが、やみくもに暗記するだけでは非効率です。上記の3点を詳しく解説していくので、学習の参考にしてみてください。
(1) 得点の配分を考えて勉強する
宅建試験に合格するために重要なのは、得点配分が高く点数を取りやすい科目を集中的に勉強することです。例えば、宅建業法は宅建試験50問の中で4割に当たる20問出題されます。しかも、例年類題が出題されることも多く、集中して勉強すれば効率よく点数を取れる可能性も高まります。
宅建の勉強方法については、別の記事でより詳しく紹介していますので、併せて参考にしてみてください。
▼宅建の勉強法について詳しく解説しています!
どれを入れるか悩む・・・聞く!
(2) 学習計画を立てる
宅建試験合格を目指す際、学習計画を組むことは非常に重要です。宅建は非常に出題範囲が広く、合格するのに必要な時間は300時間以上ともいわれています。つまり、1日2時間程度の勉強を半年続けないといけない計算です。試験日から逆算し、学習計画を立てることは必要不可欠でしょう。
一発合格を目指しているのであれば、まず学習計画を立てることがおすすめです。
(3) 5点免除制度を活用する
5点免除制度は、登録講習を受講することで、50問中5問を正解扱いにしてもらうことができる制度です。31点〜38点が合格ラインの宅建において、これは非常に大きいメリットといえます。
しかし、登録講習はだれでも受講できるわけではありません。受講資格は以下の2つの条件を満たす場合です。
・宅地建物取引業で就業していること
・従業者証明書を提示できること
5 まとめ
宅建試験を受験する際、詳細情報や試験内容、学習のポイントを調べておきましょう。事前にリサーチして計画的に学習することで、当日自信をもって受験に挑めます。
本記事で得た知識を、あなたの宅建試験合格に活かしてみてください。