司法試験予備試験の科目より 自分のことは自分で決める!〜「自己決定権」って? 具体的判例と答案作成のポイント

司法試験予備試験の科目より 自分のことは自分で決める!〜「自己決定権」って? 具体的判例と答案作成のポイント

1. 自己決定権とは?

自己決定権とは、自己の個人的事柄について、公権力から干渉されずに自ら決定する権利です。

憲法は、個別的に自分で決めることを保障しています。

・信教の自由(20条)
「何を信じるか信じないかを決める!」「私は○○教を信じる!」

・表現の自由(21条)
「何を(どこで)表現する・表現しないかを決める、何を知るかを決める」「私は○○政策に反対だ!」

・職業選択の自由(22条1項)
「何を仕事にするか決める」「私は予備試験、司法試験に合格して弁護士になる!」

しかし、上記以外のものについて、自分で決めた生きていくのに大切なことは沢山ありますね。それが、保障されるかどうかが13条の保障範囲として問題となります。

個人を尊重する(個人の尊厳)に基づくなら、私たちが生きていくのに大切である、不可欠である、と決めたことについて尊重されるべきです。

これを自己決定権といいます。

自己決定権は、憲法13条の幸福追求権の一内容として保障される、と考えることができます。

その理由は、憲法13条の幸福追求権は、個人の尊厳原理を規定しており、個人の人格的自律を前提として、そのような人格的生存に必要不可欠な権利・自由を包括的に保障した具体的権利と考えることができるからです。

自分で生きていくのに不可欠なものを決める、それを邪魔されない、このような自己決定権が保障されることは、まさに自分で決めて生きていく、人格生存に不可欠といえるからです。
(※13条の自己決定権の保障について、一般的な自由について幅広く保障する考える立場もあります)

このように考えると、13条の自己決定権の保障の中身は、自分で決めることにあり、保障範囲はかなり広いものと捉えることができそうです。以下のように分類してみましょう。

2. 自己決定権の種類

自己決定権を大きく3つに分類すると、

(1)生命・身体の処分を決める自由
具体的に問題となったことがあるのは、延命治療の拒否(尊厳死)、宗教的理由による輸血拒否など。

(2)家族のあり方を決める自由
結婚・離婚、妊娠・避妊・妊娠中絶の問題。

(3)ライフスタイルを決める自由
髪型の自由、服装の自由など。ここで対象となるのは、広範となりそうですが、保障範囲となるかどうかは、人格的生存に直接かかわるかどうかで判断されます。

3. 自己決定権の具体的判例

具体的に問題となった判例として有名なものは、

・輸血拒否事件(最判平成12.2.29)
・どぶろく事件(最判平成1.12.14)

があります。予備試験・司法試験を勉強する際には必須判例となります(特に輸血拒否事件)。

(1)輸血拒否事件(最判平成12.2.29)

事案

「エホバの証人」の信者が、医師に対して輸血を拒否する意思を明確に表示していましたが、手術の際に輸血されたことから損害賠償を請求した事件です。

判旨

「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする椎利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。」

本判決は、宗教的信念により輸血を伴う手術を拒否する権利を人格権の一内容として認め、輸血手術の方針を説明しない手術は人格権の侵害にあたるとして慰謝料請求を認めました。

「自己決定権」の概念を使っていませんが、患者の治療方法の決定を自己決定権に由来するとみたと評価できます。

ただし、この判例では、信者である患者が輸血を伴う手術を拒否するという明確な意思を表示していたことが重視されており、それを知りながら病院側が緊急事態に輸血する方針であることを説明せずに、患者に手術を承諾させ、拒否する機会を奪ったと判断しているので、この判例で一般的に治療方法の自己決定権が広く認められると捉えることはできず、事例的な判断であるといえます。

(2)どぶろく事件(最判平元12.14)

事案

酒類製造には免許制が採用されているため、個人が自己消費目的で酒を製造することは実際上禁止されていますが、被告人が無免許で清酒等を自家製造したとして起訴された事件です。

判旨

酒類製造免許制は、酒税の徴収確保のための合理的な制限として合憲としました。

本判決は、酒をつくる権利がどのような人権か明確にしておらず(参考:第一審は経済的自由としました)、最高裁は、酒をつくる権利が憲法で保障されるものと扱っていません。

この判例のように憲法で保障される範囲外とされてしまうと人権の問題ではなくなり、あとは規制の合理性についてゆるやかに審査されることになります。

4. 答案作成のポイント

上の二つの判例をみてわかるように、判例は制限される自由を具体的に事実からとりあげて憲法上保障される権利かどうかを判断しています。

予備試験・司法試験の論文で自己決定権に関する答案を書くときには、具体的に侵害されている個別的な自由・利益が何かを事案(問題文)から限定したうえで、人格的生存に不可欠かを問題文の事情から吟味し、保障範囲に入るか否かから検討する必要があります。

その自由が人格的生存に不可欠なもので憲法13条の保障範囲となると認定できたら、人権の問題として、審査基準、あてはめを行い、違憲合憲を論じることができます。

予備試験・司法試験のための判例勉強として、自己決定権で重要となるのは、その結果だけでなく事実の用い方、評価の仕方が大切です。

そこを意識して判例を読むと論文の勉強へとつながります。

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