はじめに
弁護士や裁判官といった法律を扱うプロになりたいと考えたことはありませんか?
数々の有名ドラマでもその活躍ぶりは伺い知れますし、その仕事は本当に勇敢でかっこいいものです。
けれども、弁護士や裁判官を初めとした法曹になるためには、超難関の国家資格である「司法試験」に合格しなくてはなりません。例えば、大学生の場合は、周囲に既に司法試験の勉強を開始している人が一定数いるのではないでしょうか。
また、少しでも司法試験に合格したいという思いのある方は、自分の大学の司法試験合格率などは気になるところですよね。
自身の在籍している大学が実は、「司法試験合格の実績が高い」なんてことがあるかもしれません。
この記事では、それぞれの大学がどのくらい司法試験の合格者を輩出しているのか、という点に迫っていきます。
司法試験に挑戦したいと考えている方、自分の進路に迷っている方に是非読んでいただきたい記事となっています。
1、予備試験・司法試験とは何か?
ご存じの通り、司法試験は文系最難関と言われるほど難易度の高い試験です。
けれども合格の暁には、法のプロフェッショナルとして社会で活躍することができることでしょう。
しかし、司法試験は誰でも受験できる試験ではありません。
司法試験を受験するためには、以下の方法で受験資格を獲得する必要があるのです。
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法科大学院の学位を修了する(法科大学院ルート)
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司法試験予備試験に合格する(予備試験ルート)
このどちらかのルートを踏まないと司法試験を受験することはできません。文系最難関の試験だけあって、試験を受けること自体のハードルは非常に高いことが分かります。
ではこの二つのルートはどのような制度なのでしょうか?
当然、あなたにとってメリットのあるルートを選択することが、司法試験合格への近道になります。
(1)法科大学院の学位を修了する(法科大学院ルート)
法科大学院とは、法曹人材の育成に特化した専門性の高い大学院のことです。法科大学院を修了することで、司法試験の受験資格を得ることができます。
大学の延長線上にあるイメージが強い大学院ですが、これまで法律を全く勉強してこなかった人はもちろん、社会人でも入学することが可能です。
大学で既に法律の基本を勉強してきた人は2年間、法律を全く勉強してこなかった人は3年間を費やして法律を学習し、卒業するのが一般的です。
卒業後は確実に司法試験の受験資格を獲得することができるので、安全かつ確実なルートといえますね。
(2)司法試験予備試験に合格する(予備試験ルート)
司法試験予備試験(以下予備試験)とは、法科大学院の修了と同等の知識と能力を確かめるための試験です。
そのため、予備試験に合格すると司法試験の受験資格が与えられます。
予備試験には受験制限がありません。したがって、外国籍の人でも高卒の人でも誰でも受験できる試験です。しかし、合格率は3~4%と毎年非常に低い結果になっています。
というのも予備試験は、以下の3つの全ての形式の試験に合格する必要があるのです。
- 短答式
- 論文式
- 口述式
具体的にどのような問題が出題されているのか詳しく知りたい方は、形式ごとの概要と対策方法をまとめた記事をぜひ読んでくださいね。
「予備試験短答は本当に誰でも合格できる?プロの教える失敗しない対策法」
「勉強のプロ直伝!司法試験予備試験論文式の対策と過去問勉強法とは?」
この予備試験、実は年々人気が高まっています。
大学生の予備試験受験者も多く、予備試験は大学生にとってもトレンドとなっているようです。というのも、予備試験の勉強を進めることが法科大学院の入試対策につながったりする、などのメリットがあるからです。
大学生は第一志望で予備試験の合格を目指し、第二志望で有名法科大学院を目指す傾向がにあります。予備試験に受かったら「ラッキー」で、法科大学院は「保険」のような扱いなのかもしれません。
では、大学生なのにもかかわらず超難関の予備試験に、どのくらいの人が挑み、そして合格を勝ち取っているのでしょうか?具体的な数字を見ていきましょう。
2、予備試験ルートで司法試験に合格した人はどんな大学に在学していた?
超難関の予備試験。
大学生で合格を勝ち取るなんて到底無理だと思っていませんか?
しかし、実際には予備試験の受験は大学生のトレンドであり、合格者も多く存在しています。
ではどのくらいの人が、大学生のころから予備試験に挑み、合格しているのでしょうか?
▼令和元年司法試験予備試験受験状況(大学別・全体)
- 受験者数 7,750人
- 合格者数 314人(うち既卒60人)
- 合格率 4.05%
令和元年度予備試験では、全体の受験生が11,780人のうち65%ほどが学生であるという事実があり、合格率も4.05%(令和元年予備試験全体合格率4.04%)と大学生なのにもかかわらず高い水準にあります。
ひとくちに大学生といえど、当然ながら大学によって受験者数や合格者数にかなりの開きがあります。
予備試験合格者を多く輩出している大学とは一体どこなのでしょうか?
▼令和元年度司法試験予備試験受験状況(大学別)
この表は令和元予備試験の受験状況を各大学ごとに上位校をまとめたものです。
やはり大学受験で一般的に「難関」なことで「有名」な大学が予備試験においても高い実績を残していることが分かります。
とはいえ、予備試験において肝心なことは出身の大学名ではありません。その後の予備試験や司法試験に合格するかということなのです。
そして予備試験にさえ合格してしまえば、司法試験の合格はもう目前。
というのも、予備試験合格者の司法試験合格率は81.8%と非常に高いものになっています。法科大学院修了コースからの司法試験合格率は34%弱ですので、81.8%という水準の高さは容易に見て取れますね。
そのため、予備試験の合格者は就職活動においても優遇されることがあります。大手の法律事務所から予備試験に合格した段階で声が掛けられたりすることが往々にしてあるようです。
では、試験で成績を残すためには、どのくらいの勉強期間が必要なのでしょうか?ここでは、予備試験に合格している人は、大学何年目で合格しているのか見ていきましょう。
▼令和元年度予備試験合格者(学年別)
やはり、大学3、4年生の合格割合は高くなっています。
つまり、勉強を開始して数年で予備試験の合格レベルまで到達することは可能なのです。
また、大学に入学する以前から法律の勉強を開始している人はごく少数。他方で、大学3年生や4年生で司法試験の受験勉強を始める人も多くいます。
「大学1年生から法律の勉強を開始しないと間に合わない」なんてことは決してありません。決断したその日から本気で勉強を開始すれば、既に勉強している人を追い越すことだってできます。
というのも、受験と同じく、予備試験は早く勉強を始めた人が早く合格する試験ではないからです。短期決戦。モチベーションを維持し、正しい方法で勉強した人が合格する試験なのです。
3、法科大学院ルートで司法試験に合格した人の出身大学院はどこ?
予備試験を目指してみよう!という気になった人もいるかもしれませんが、
やはり法科大学院への進学という選択肢は捨てきれないのではないでしょうか?
そこで重要になってくることが、どこの法科大学院に進学するか?ということです。
まずは司法試験における各法科大学院ごとの実績を見ていきましょう。
大学と同様に法科大学院から司法試験に合格した人の人数にもかなりの差が出ています。
中には100名以上の司法試験合格者を輩出する法科大学院もあります。他方で、合格者を全く輩出できなかった法科大学院もいくつか存在しており、実績にはかなりの差があるようです。
もし、あなたが法科大学院の進学をしているならば、実績のある法科大学院に進学しようと考えるのは当然のことです。
以下に令和元年の司法試験で全法科大学院がどのような実績を残しているのかまとめたものです。確認していきましょう。
▼令和元年度 司法試験実績(法科大学院別)※合格率順に表示
上の表からも分かるように、司法試験における法科大学院の実績には差がありあます。合格率や合格者数は重要な判断要素になりますね。
しかし、この他に注意すべきことがあります。
それは「法科大学院の相次ぐ閉鎖」です。
表では計73校の法科大学院の実績を掲載していますが、令和元年度募集中の大学院は35校しかありません。
それでは現在募集中の法科大学院を確認しておきましょう。
▼令和元年度募集中法科大学院一覧(35校)
次に注意すべき点は、基本的に大学院は予備試験の対策はもちろん、司法試験の対策をしてくれる場所ではないということです。試験の出題範囲を超えた専門的な内容を講義することもあります。
そのため、法科大学院に進学する際は合格率や合格者数だけでなく、奨学金や立地など、複合的に評価する必要があるでしょう。
とはいうものの、募集を受け付けている法科大学院だけで35校。「35校もいちいち調べなくてはならないのか・・・」という人のために各法科大学院全ての特色をまとめた記事を用意しています。ぜひ読んでくださいね。
35の法科大学院は何が違う?司法試験合格者数ランキング順に解説!
4、予備試験・司法試験に合格したので大学を中退した人はどれくらいいるのか?
予備試験や司法試験の合格に伴い、大学を中退した人もいます。
▼司法試験・予備試験合格による中退
(参照:内閣官房 法曹養成制度改革顧問会議資料)
この統計は平成26年度をもって終了してしまっているためにこれより新しいデータを確認することはできないのですが、ごくわずかではあるものの、大学生のうちから合格を掴み取り大学を辞めてしまった人がいるのです。
このことから、司法試験や予備試験の合格者にとって出身大学はほとんど重要ではないことが分かります。
また、法科大学院に入学したものの、途中で予備試験に合格したために大学院を中退する人もいます。
「せっかく法科大学院に通ってるのに、予備試験を受験する必要があるの?」
と疑問に思うのも無理ありません。
彼らはなぜ法科大学院に通っているのに、予備試験を受験したのでしょうか?
大半の場合、法科大学院を卒業できる見込みがないから予備試験のシフトしたのではありません。
予備試験に合格することで箔がつくだけでなく、司法試験の合格に近づくからです。
上述したように、予備試験合格者の司法試験合格率は非常に高いものです。
どんなに実績のある法科大学院よりも合格率が高いのですから、予備試験に合格することが司法試験の合格につながることは明白です。
また、予備試験に合格することで箔がつきます。大手の法律事務所で採用が決まったりなど、華やかな法曹界での活躍が待っているのです。
法科大学院に進学した人であっても目指す予備試験。まだまだ沢山の時間的猶予がある大学生に予備試験はお勧めです。
5、さあ、予備試験を受験しよう
司法試験受験者にとって「法科大学院コース」にするか「予備試験コース」にするかといった選択はとても重要なことでしょう。
ここははっきりと「予備試験コース」をお勧めします。
これまで見てきたように、予備試験の受験者数は増加傾向にあり、人気が高まってきていますが、その傾向を作り出すだけのメリットがあるのです。
しかし、予備試験に合格するためには当然そのための試験勉強が必要になります。
あなたがもし大学生ならば、大学の履修科目だけで予備試験に合格することは困難であると気がついているはずです。もちろん、大学によって研究室の制度が充実している学校はあります。けれども、研究室に加入していても別途予備試験の勉強は必要になります。
そこで、どのような方法で予備試験に合格するのか検討する必要がでてきますね。
基本的な選択は以下の3通りです。
- 予備校に通う
- オンライン講座を利用する
- 独学で勉強する
まずは、金銭的な負担が発生する「予備校」と「オンライン講座」について比較してみましょう。
そもそも「予備校」とは、資格予備校のことを示し、予備試験のための対策をしてくれます。他方の「オンライン講座」も予備試験の徹底した対策を行ってくれます。
しかし、「オンライン講座」は受講生を集めて勉強をさせる教室を持っていません。
そのため、安い受講料で、いつでも好きな時に勉強することができるのです。
このようにメリットの大きい「オンライン講座」ですが、受講生同士の交流が取りにくいという欠点もあります。そのため、モチベーションが保てない状況に陥るかもしれません。
けれど、勉強の進捗管理などは「オンライン講座」でも充実しており、大学の学友と勉強のモチベーションを確認することもできるのではないでしょうか?
また、「司法試験に合格したい!」という強い信念がモチベーションの維持には最大の効果をもたらしてくれることでしょう。
次に予備試験に「独学」で合格したいと考えている方にお話をします。
司法試験に劣らない難しさを誇る予備試験。独学で合格するなんて到底不可能だと思っていませんか?
予備試験に独学で合格することは可能です。
正しい勉強を継続すれば、全く不可能なことではないのです。では、正しい勉強とは具体的にどんな勉強なのでしょうか?
この方法を詳しく解説した記事があります。「お金がないなら独学しかない!自力で司法試験予備試験を突破する方法」この記事をしっかり読み、ぜひ勉強に役立ててくださいね。
6、サマリー
いかがだったでしょうか?
この記事を読んでいる人の中で、案外自分の大学が司法試験において優秀な実績を残していることを知った人もいるかもしれませんね。
しかし、司法試験に合格さえしてしまえば、出身の大学の学歴が重要視されるケースはほとんどありません。
大切なことは過去の学歴ではなく、この先いかにして合格を勝ち取るかということです。
ぜひこの記事を合格のための近道を見つける手がかりにしてください。
7、まとめ
・司法試験を受験するためには「法科大学院コース」と「予備試験コース」がある
・学生は「予備試験」を目指しつつ「法科大学院」を受験する傾向がある
・予備試験合格者の司法試験合格率は81.8%と非常に高い
・大学生でも予備試験に合格している人がおり、大学3,4年生の合格者割合が高い
・各法科大学院の司法試験合格者と合格率は乖離している
・相次ぐ法科大学院の閉鎖、令和元年度募集中の法科大学院は35校
・法科大学院に通いながら予備試験を受験する人もいる
・具体的な合格の必勝法は「お金がないなら独学しかない!自力で司法試験予備試験を突破する方法」で確認