予備試験の難易度はどのくらい?法律を全く勉強したことのない人でも受かるのか?

予備試験の難易度はどのくらい?法律を全く勉強したことのない人でも受かるのか?

はじめに

平成最後の年。平成30年の司法試験の最年少合格者は20歳の大学1年生です。

彼は、一昨年予備試験最年少合格者として高校生で合格しました。

この青年のお陰で、司法試験を身近に感じた人も多いのではないでしょうか。

今や超難関といわれる司法試験は、もしも予備試験に合格できたら、他学部でも、高校生でも、高学歴でなくても、「がんばったらなんとか合格できる?」と希望を抱かずにはいられない資格試験の一つかもしれません。

そこでこの記事では、その司法試験の入り口でもある予備試験が、いったいどのくらい難しい試験なのか、法律の勉強をしたことがない人でも合格できる可能性はあるのかを解説します。

1、そもそも司法試験予備試験とは何なのか?

(1)旧司法試験が廃止され、現行司法試験が始まった理由

予備試験は、経済的・時間的な理由で法科大学院に進むことができなかった人の救済処置として平成23年から開始された制度です。

そもそも現行の司法試験は、日本人の弁護士人口を増加させようとしたものです。

政府の法曹人口増加計画は、現行の司法試験開始前にまずは法曹界で働く法曹人を養成するための法科大学院を創設し、その法科大学院を修了した人は、現行司法試験に合格するだけの実力を持てるだけの履修科目を修了しているので、司法試験に合格しやすいというものでした。

 

実は、1998年に内閣府が調査した結果、先進国である欧米諸国に比べて日本の弁護士人口は非常に少なかったのです。

今から30年以上前に政府が強烈にショックを受けたそのデータは、次のようなものでした。

先進諸国の中で、国民1人当りの法曹人口が非常に少なく、資格取得者数も少ない日本の現状は、1997年の内閣府の法曹人口調査によると、法曹人1人当りの国民の人数が6300人もいるのです。

参考:1997-1998年法曹人口 |平成27年 法曹人口調査報告書

 

グラフからもわかるように、法曹人1人当りの国民の人数が日本だけ桁違いに多いことがわかります。

しかも、この少ない弁護士が都心部に集中し、地方や過疎地には、弁護士のいない地域も多かったのです。

そのため、少しでも欧米諸国に追いつこうと、法曹人口を増やす構想を立て始めました。

今から30年以上も昔の話です。

法科大学院という欧米諸国のロースクールのような法曹人養成学校を創設することで、法曹人口の増加を狙いました。

こうして、やっと政府が目指す法曹人口を実現すべく、法科大学院が新設されたのは、2004年(平成16年)、現行の司法試験が始まったのが、法科大学院修了者が初めて2006年(平成18年)です。

(2)現行司法試験が始まって日本の法曹人口はどうなったか?

その結果、日弁連の調査によると、現行司法試験合格者が司法修習を終え法曹人になる2012年(平成24年)には、法曹人口が約32134人(弁護士1810人、検察官2880人、裁判官36824人)となりました。

弁護士白書2016年版によると、平成28年には法曹人口総数が42612人、そのうち弁護士人数が37651人です。

4年間で約10000人もの法曹人口が増加しました。

国民人口統計によると平成28年の人口は126193人ですから、弁護士1人当りの日本国民の人数が3352人となりました。

訴訟国家アメリカに比べるとまだまだですが、ヨーロッパ諸国には、肩を並べることができました。

このように、現行司法試験は、法曹人口を欧米諸国と肩を並べられるように始まった制度なのです。

(3)法科大学院創設に遅れて予備試験が始まったのはなぜ?

現行司法試験の法科大学院制度が始まったものの、社会人で会社を辞めて法科大学院に進む経済的な、時間的な余裕がない人、大学に進む経済的余裕のない人にとっては、現行司法試験制度施行開始当時は、司法の道への可能性の扉を閉じてしまった結果となりました。

そんな不公平な状況を改正するために、遅ればせながら救済処置的な制度として、2010年に最後の旧司法試験の口述試験が終了した後、2011年(平成23年)から予備試験制度が始まったのです。

予備試験とは、法科大学院修了者と同等の知識・見識を有するものを選別する、いわゆる高卒認定試験(旧大検)の法科大学院版ともいえる試験です。

 

しかし、予備試験制度は、政府の目的とは違って、経済的・時間的な負担をしなくても良い「法科大学院以外の新たな道」という選択肢となってしまいました。

なぜなら、法科大学院よりも司法試験合格率が圧倒的に高かったからです。

平成30年司法試験に至っては、予備試験合格者の司法試験合格率は77.6%と、司法試験合格者数トップテンの法科大学院に比べて、合格者数も合格率も群を抜いて高い数字となっています。

2、予備試験の難易度はどのくらい?

(1)予備試験の難易度の推移

予備試験には、短答式試験、論述式試験、口述試験がありますが、これらのそれぞれの試験に関して、どれくらいの難易度なのでしょうか。

予備試験始まって以来、短答式・論文式・口述式試験のそれぞれの合格率の推移、最終合格者の推移(法務省発表データ)をグラフ化してみました。

①予備試験の最終合格率推移

予備試験合格率は、制度開始第1回目は1.8%と低いですが、2回目は3%に上昇し。3回目から昨年にかけて4%に届くかどうかを推移する、非常に難関試験です。

②予備試験の短答式合格率推移と試験内容

しかし、それぞれの試験を見て見ると、短答式はマークシートで、その合格率は20%前後です。

試験内容は、一般教養(人文科学、社会科学、自然科学、英語)と4科目(憲法・商法・民法・刑法)、手続き法3科目(刑事訴訟法・民事訴訟法・行政違法)の計8科目です。

③予備試験の論文式合格率の推移と試験内容

論文式は、第1回目は9.5%と少し低めですが、その後徐々に合格率が上昇し、やはり20%に届くかどうかといった感じです。

試験内容は、法律実務基礎科目(民事実務・刑事実務・法曹倫理)です。

1科目1題という出題形式で、法律の基礎的問題なので、法曹倫理は2科目のどちらにも含まれます。

非常に基本的な問題ですが、時間内に端的に1500文字の論文で解答するのは、なかなか難しいのです。

④予備試験の口述試験合格率推移と判定の仕方

口述試験は、もともと人物像をみる合格させるための面接試験のようなものであり、論文式合格の術力を答弁でも発揮できるかを見ます。

そのため、合格率は26年が91.0%とやや低いですが、ほぼ95%前後を推移しています。

つまり、予備試験の勝負は短答式と論文式というわけです。

(2)予備試験は地道に勉強すれば5人に1人合格

法律実務基礎科目の論文式から勉強して論文式がほぼ仕上がってから、短答式の勉強に入るのが合理的な勉強法です。

試験は、短答式を合格できた者だけが論文試験にチャレンジできるのですが、このような勉強法から考えると、論文式をしっかりマスターできれば、あとは論文式にない科目をマスターできているかどうかということです。

全科目を地道に勉強できれば、5人に1人は受かる試験だともいえます。

理屈ではそうだとしても、なかなかできないから最終合格率が低いのです。

3、予備試験に合格するメリットは?

 (1)予備試験は時間的・経済的に有利

現実問題、予備試験の合格率は3%から4%なのですから、予備試験の最終合格率を初めて見た人は、「こんなに難易度が高いのなら、法科大学院にいった方が良いのかも?」と思ってしまいそうですよね。

しかし、法科大学院に行くとなると、法学部卒なら2年、それ以外の学科卒なら3年はかかります。

大学から進むのであれば、親の支援にも頼ることもできれば、奨学金を利用してアルバイトをしながら苦学生ということもできるでしょう。

 

もちろん社会人も同じように苦学生でがんばることもできますが、社会人の場合は、一旦仕事を辞めて2年、あるいは3年も法科大学院に通って、「もしも司法試験に合格できなかったら?」という不安もあります。

何といっても、法科大学院の平均司法試験合格率は約20%だからです。

第1位、2位の京大法科大学院、東大法科大学院だけが50%越えなのです。

合格人数は少ないのですが、受験者数も少ない一橋大学も50%を超えています。

このように合格率の高い法科大学院に進むには、日本でも5本の指に入るような偏差値の高い難関大学の法科大学院に入学しなければなりません。

いくら社会人入試でも、合格率の高い法科大学院に入学するのは、それなりの学力が必要です。

司法試験合格人数トップテンに入る法科大学院に社会人入学するのは、そう簡単なことではありません。

 

また、経済的な負担のことも忘れてはなりません。

国立の法科大学院でもだいたい1年間100万円ほどかかるので、2年なら200万円、3年なら300万円となります。

私立ならもっとということになります。

私大法科大学院の中には、1年間の授業料が200万円という法科大学院もあります。

(2)弁護士志望なら予備試験が就職面でお勧め

また、法科大学院から司法試験に合格した人よりも予備試験から司法試験に合格した人の方が、司法試験に合格した後の就職率が高いのをご存じですか?

確かに、長い目で見ると、ゆっくりと時間をかけて法曹人になっていくための法曹人のための養成校である法科大学院で学ぶのも、経験としては大切かもしれません。

知識を詰め込むだけでなく、法曹人の倫理や思考等を体験しながら身体に叩き込むことのできる法科大学院の履修科目を全て修了することは、法曹倫理と法曹界の思考を体感する上で大切かもしれません。

しかし、現行の司法試験に合格して司法修習を終えた新法曹資格取得者の場合、検事や裁判官といった国家公務員になれれば問題ないのですが、弁護士資格の場合は、就職先が足りずに弁護士ニートになってしまう人の方が多いのが実情です。

一方、予備試験合格者の法曹資格取得者には、大手弁護士事務所の採用担当は、予備試験合格者にスカウトにきたり、予備試験合格者のみの採用枠を設けていたりするのです。

この差はどうしてなのでしょう。

 

政府が理想とする法科大学院の履修科目を優秀な成績で修了できた者としての、知識・見識が試される選別試験が「予備試験」なのですから、司法試験にほぼ合格できる実力を備えた人を選別できる試験であるともいえます。

だから、司法試験に合格できる可能性も高いのです。

さらに、裁判官・検事についても、司法試験の成績が目安とされます。

そもそも司法修習生の卒業試験である二回試験の成績が優秀な成績順に希望の進路に合格しやすいのです。

つまり、司法試験に優秀な成績で合格しやすい予備試験合格者の方が、二回試験の成績が優秀となるか旺盛が高いので、必然的に裁判官や検事に採用されやすいといえるのです。

それだけでなく、優秀な成績で合格できる可能性が高いので、その結果、司法修習の卒業試験でもある二回試験に優秀な成績で合格しやすいからです。

つまり、予備試験合格者は、法曹資格取得後の就職が保障されているようなものなのです。

このような就職面で断然有利であるということは、長い目で先を見るより切実な問題ともいえます。

しかも、予備試験合格者で司法試験に合格すれば、法科大学院よりも2~3年早く就職することができます。

(3)予備試験の勉強はさまざまな道への扉になる

予備試験の勉強は、法科大学院入学の勉強を兼ねることができます。

だから、予備試験に万が一不合格でも、法科大学院を一緒に受験しておけば、法科大学院をもしもの時の滑り止めにできます。

また、国家一種試験の勉強とも重なります。

予備試験の勉強は、例え不合格だったとしても、複数の選択肢への門戸を開くことになり、人生の開拓に有利となるのです。

4、予備試験に合格して司法試験に落ちてしまう人の特徴とは?

予備試験合格から司法試験までは、本当にあっという間です。

11月に予備試験に合格して、12月頭くらいまでに願書を提出して、翌年5月には司法試験本番です。

予備試験に合格して司法試験までに半年の間に、精神力を維持して、司法試験の試験になれるように訓練が必要です。

予備試験と司法試験は試験が類似している点が多いので、合格しやすいのですが、司法試験は一気に数日間で行われます。

予備試験のように、5月に短答式、7月に論文式、10月に口述試験といった間隔はありません。

数日間の緊張で、集中力が途切れたら合格率が低下します。

約80%という高い合格率ですが、20%の人は、モチベーションと精神力・集中力・体力不足で不合格となってしまうともいえます。

5、難易度の高い予備試験合格を目指すには

法律に全く不慣れな人は、2~3年がかりがお勧めです。

1年目は参考書を読んで、ひたすら論文式の解答論文を読み、判例を読み、といった感じで一通り法律になれることから始めましょう。

そして、2年目に、一気に論文式の文体を身体が覚え込んでしまうまで、ひたすら問題集や過去問を繰り返し解いていきます。

予備試験の回数はまだ8回だけなので、過去問だけでは不十分なのです。

 

予備試験後、司法試験まで半年ほどですから、司法試験の過去問もやっておくのがお勧めです。

政府の方針では、法科大学院は、法曹人養成校であり、法科大学院終了後には司法試験に合格できる実力が身についていることを目標としています。

そのため、高卒認定試験の法科大学院版ともいえる予備試験は、政府の方針通り、高い確率で司法試験合格の実力が可能とされています。

実際に予備試験合格者の司法試験合格率はやく70%を超えて約80%となっています。

ですから、予備試験の試験科目は、司法試験の試験科目に非常によく似ているのです。

実際に比べてみましょう。

予備試験

司法試験

憲法

行政法

民法

商法

民事訴訟法

刑法

刑事訴訟法

選択科目

×

法律実務基礎科目

×

一般教養

×

予備試験の方が、試験科目は多いことがわかります。

余裕があれば、司法試験の過去問もチャレンジすることもお勧めします。

さらに、法律初心者の場合は、英語のスピードラーニングで、ひたすら聞き流すように、論文式をどんなときも読むか書き写すかしているくらいの気持ちで、身体で覚える努力をしましょう。

参考書の意味がわからないときは、片っ端から判例を読んでみましょう。

言葉のわからない子供が、使い方を覚えることで自分なりに意味を会得していくような感じで、判例を読んで解説文を読むのを繰り返しているうちに、ある日ヘレンケラーの「Water」の理解のように、突然納得できるのです。

ただし、ただ文字を追うのでは、いくら繰り返しても時間の無駄です。

事例を読めば、頭の中で情景が浮かび、事例を整理して、問題点、適用条文、刑法なら罪状の構成要素に当てはまるかどうかを検証できるように訓練する習慣をつけましょう。

問題集も過去問も、とにかく繰り返し、時間内で解けるまで、この検証術を繰り返すと、自然とできるようになります。

そこまで繰り返すには、並大抵の勉強量ではありませんが、とにかく地道な努力が実を結びます。

こうして、本番の時間で1500文字にまとめて論文式答案を作成できるように、時間との勝負を身体で体得していくのです。

そして、短文式は、論文式をマスターしてから、論文式にない一般教養や憲法・商法・手続き法等をマスターしつつ、論文科目と同じ民法・刑法も時間に慣れましょう。

こうして、論文式と短文式の対策ができれば、予備試験の準備は万全です。

 

口述試験については、論文まで合格した後に口述対策をする事で十分です。

論文式に合格してから数ヶ月あるので、勉強した事をしっかりと答弁できるように、模擬口述試験等を受けることで、慣れていきましょう。

しっかりと答弁できれば、論文式に合格できる実力はすでにあるのですから、口述式試験は大丈夫です。

そもそも口述試験は合格させるようにできているのですから。

緊張したり、上がったりして、一言も話せなかったとか、法曹倫理に欠けるような発言をしない限り大丈夫です。

6、サマリー

いかがだったでしょうか。

法科大学院に通うよりも予備試験受験の方が、経済的にも時間的にもお得なだけでなく、合格すれば、就職にも有利と聞けば、予備試験が断然良さそうだと思いませんか?

また、予備試験対策は法科大学院への道を滑り止めにできます。

さらに、予備試験に落ちても国家試験一種に合格しやすかったりします。

 

合格率が3%~4%という難関試験ですが、短答式・論文式はそれぞれ20%前後です。

5人に一人は合格できるということです。

しっかりと受験勉強の時間が確保できれば、予備試験は不可能ではないと思えてきませんか?

法律に不慣れで、勉強時間が土日しかとれないなら、3~4年計画でゆっくりとやっていけば良いのです。

 

とにかく、法律は丸覚えではなく、身近な事例に当てはめて、理屈で覚えるのがコツです。

そして、予備試験に合格しても、そこで燃え尽きてはいけません。

予備試験は、あくまで司法試験の合格への前段階の「予備」段階なのです。

ただ受験資格を得ただけです。

ですから、予備試験合格のあとの司法試験受験までの半年は、気持ちを引き締めて、司法試験の受験の試験時間に身体を慣らすようにしましょう。

司法試験は、4日間も連続で1日かけて行われる超ハードスケジュールです。

集中力が持続する体力をつけ、試験の時間に慣れることが重要となってきます。

7、まとめ

・法科大学院とは、司法試験受験のための法科大学院以外のもう一つの道である。

・法科大学院に合格できれば、司法試験合格後の就職先が保証されたようなものである。

・大手法律事務所のスカウトや、特別採用枠もあれば、司法試験を郵趣な成績で合格できるので、司法修習生としての卒業試験ともいえる二回試験の成績も好成績となり、検事や裁判官にも慣れる可能性が高い。

・予備試験に合格できれば、司法試験の受験資格を得られるので、法科大学院に通うための2~3年の時間と200万から700万という法科大学院の授業料が不要となる。

・短期間で法曹界への道が開くので、人生のスタートあるいは再スタートが早く切れる。

・予備試験に合格した後の半年間に司法試験に耐えられる体力と精神力を鍛える必要がある。予備試験合格で燃え尽きてしまわないよう注意しよう。

・予備試験合格は3%~4%の狭き門だが、数年かけて地道に勉強していけば、越えられない山ではないのだ。

・短答式→論文式という試験の順番だが、勉強するうときは、法律の基礎的な問題が多い論文から始めよう。何度も繰り返し、身体で法律の論文の文体を覚え込むまでコツコツと一つずつ片付けていくのがお勧めだ。

・予備試験合格には、目の前の事から一つずつ片付けていく、粘く諦めない強い精神力を持つことが大切だ。初めは解けなくても、繰り返すことで自然と頭に入ってくるようになる。

・法律の基本は想像力だ。事例を想像し的確に分析して行くには、事例を想像できなければ、解決すべき問題点や罪状の構成ができないからだ。

・予備試験は最終合格率で怖じ気づくのではなく「自分にもできる」という根性が最も重要だ。

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