司法試験受験までの期間が短縮!?新設される法曹コースについて徹底解説!

司法試験受験までの期間が短縮!?新設される法曹コースについて徹底解説!

はじめに

司法試験を突破したいと思ったら、法科大学院を卒業するか、もしくは司法試験予備試験に合格するかのどちらかのルートを選択しなければなりません。短期合格を狙えるというメリットはあるものの、予備試験ルートの難易度は非常に高く、確実性はありません。
他方で、法科大学院ルートは確実に司法試験受験というプラチナチケットを獲得できることが約束されていますが、学部+法科大学院+司法試験受験までの期間で最短でも約8年間かかり、経済的にも時間的にも負担が大きいですよね。
そんな司法制度ですが、直近で、「法曹コース」新設という司法制度改革が開始したことが大きな話題を呼んでいます。
果たして「法曹コース」とは一体どのようなものでしょうか。そこで本記事では「法曹コース」について詳しく解説していきます。

1、法曹コース制度とは?

(1)新設された「法曹コース制度」とは何?

法曹コースとは一体どのような制度なのでしょうか。
結論からいうと、「
通常、最短で8年くらいかかる法曹養成制度を6年まで短縮する」制度のことをいいます。制度の概要として、大学入学後、法曹コースを選択し所定の成績をおさめると、3年間で法学部を卒業することができます。
卒業後は、大学が連携している法科大学院へエスカレーター式(法律の試験免除がある場合とない場合がある)に入学することができ、
必要な単位数を満たすと法科大学院在学中の最終学年で司法試験を受験することができる」ようになります。司法試験受験・合格と法科大学院卒業まで最短で5年間になるのです。
合格後の司法修習を合わせても、6年間で法曹となることができます。

例えば、高校卒業~司法修習までをストレートに進んだ場合、24歳で法曹の世界に入れることになりますね。2018年時点での司法試験の合格平均年齢は約29歳ですから、相当スピード感があります。
ただ、あくまで司法試験合格をストレートで通った場合のお話ですから、人によってはもう少しかかることもあります。

(2)法曹コースの制度詳細

法曹コースのざっくりとした概要が分かったところで、制度の詳細について解説していきます。
ちなみに、法曹コースに実際に学生が在籍するのは、
2020年度の2年次への進学者からと想定されています。つまり、2019年度に入学する大学1年生からということですから、もうすぐです。

そんな法曹コースですが、法科大学院等特別委員会は既に法曹コースの細かな制度詳細を公表しています。
制度の詳細はこうです。
基本的には法学部または法学にまつわる学部を持つ大学が、法曹コースの設置の認可を受けます。認可を受けた大学は自身の大学の法科大学院か、連携協定を結んだ法科大学院へエスカレーター式に生徒を送ります。
この際、大学と法科大学院間では、「法科大学院の既修者コース」に問題なく合流できるように

  • 共同で開講する科目
  • 履修制度
  • 教育課程の内容
  • 大学から法科大学院への「選抜」方法

などを連携して決めなければなりません。

下記は文部科学省が公表している法曹コースの制度詳細の資料のひとつです。
これは実際に法曹コース生がどのように法科大学院に進学するかを図解しています。
詳しく見ていきましょう。

引用:文部科学省「法科大学院等特別委員会(第91回) 配付資料

突然「選抜」という言葉が出てきて混乱してしまうかもしれませんが、
法科大学院に進学する際には、

  • 特別選抜枠
  • 一般選抜枠

​の2種類の選抜枠から進学する事になります。
特別選抜枠とは、いわゆる法曹コースから進学する際の選抜枠と認識してください。
基本的には法科大学院は協定先の大学から進学者を受け入れますが、協定先ではない大学からも受け入れることができます。

要点をまとめると以下の通りです。

  • 法曹コースと法曹コース以外の人の法科大学院進学方法は異なる
  • 法曹コースに在籍していれば、連携の有無関係なくどこの法科大学院にも進学することができる(特別選抜枠)
  • 連携先の法科大学院の場合、成績によって600名程度が論文式試験を受けずに進学することができる(5年一貫型  例:高校受験の指定校推薦)
  • 連携協定の関係にない法曹コースから進学する場合、または、連携協定の関係にある法曹コースの「5年一貫型」に選ばれなかった人は、論文式試験+学部成績で進学の合否が決まる(開放型  例:大学受験の公募推薦)
  • 一般選抜とは従来の法科大学院制度であり、学部4年間+法科大学院2年間の枠。法曹コース在籍外の者対象であるが、法曹コースの特別選抜枠に入れなかった人も受けることができる
  • 5年一貫型は法科大学院定員の4分の1という人数の上限があり、「5年一貫型」+「開放型」合わせて定員の2分の1が上限。

(3)法曹コースにもとめられていること

文部科学省はさらに、法曹コースに求められていることも明示しています。
以下、文部科学省の「
法曹コースの制度設計等について(案)資料2」の本文を抜粋します。

 【法曹コースに求められる事項】

・一以上の法科大学院と教育課程について協議し、その結果に基づき、当該法科大学院 における教育との接続に配慮した体系的・一貫的な教育課程を編成すること

・法科大学院の法律基本科目に相当する科目等について、法科大学院の既修者コースへ の進学に必要な学識を培うことができる充実した教育を行うこと

・厳格な成績評価を実施すること

・連携先の法科大学院において、当該法科大学院に進学する者が法学部で修得しておく べき学識・能力について整理し、公表すること

・希望する学生が3年次終了までに必要な単位を修得し、早期卒業・飛び入学をすること が促進されるよう、教育課程編成上の配慮や、適切な学習指導の実施等の教育上の配慮 を行うこと

引用:文部科学省「法曹コースの制度設計等について(案) 資料2

2、法曹コース制度化の背景

法曹コースの制度概要は理解できましたか?
では一体、法曹コース制度化の背景にはどのような事実があったのでしょうか。

その要因をひとつひとつみていきましょう。

(1)法曹志望者が減った

まずひとつめの要因として、昨今の法曹志望者の激減が挙げられます。
以下は司法試験受験者数の推移です。年々減少していることが一目で分かります。

良く取沙汰される内容として、法曹志望者激減の理由を「合格率の低さ」であると指摘する方もいます。
ところが、この点、旧司法試験の合格率が今より低かった時代、法曹志願者は今よりも多かったのですから「合格率の低さ」だけでは説明がつきませんよね。

それでは一体どこにあったのでしょうか。

それは「経済的、時間的な負担が大きい割に、弁護士は稼げない」という情報が拡散されたことに大きな要因があります。要は世間に「費用対効果の低い資格」として認識され始めているということです。
確かに、従来の法科大学院制度は最短でも8年弱の時間を要し、学費、機会損失や生活費などを計上すると、その経済的負担は計り知れません。ここまで苦労してやっとこさ法曹の一員になったとしても、弁護士の就職難が叫ばれる時代、暗雲立ち込めた未来に時間とお金を投資することは誰だって躊躇してしまうでしょう。

  • 合格の保証がない
  • 経済的、時間的な負担が大きい
  • 司法改革による弁護士数の増加に伴い、新人弁護士の就職難が社会問題になる
  • 就職できない弁護士はすぐに独立するものの、仕事の進め方が分からず、依頼が来ない

などの複数のマイナスな情報が氾濫したことにより、法曹志望者の人数は激減の一途を辿ることとなったのです。

(2)法科大学院人気低迷・・・

法曹志望者の激減に伴い、法科大学院進学率も激減しました。
法曹志願者=法科大学院入学希望者とする考え方もありますが、新司法試験制度の「予備試験」志願者をまったく計上しないわけにはいきません。ですから本記事では、予備試験志願者を除いた純粋な法科大学院入学者として解説をすすめていきます。
法科大学院入学者の激減の背景には以下のような理由があります。

  • 若年層の資格取得離れ
  • 上述の法曹志望者激減
  • 法科大学院卒の就職率が低いという情報の普及
  • 予備試験受験者の増加

法曹志望者が減ったことの要因のひとつに「経済的、時間的な負担が大きい」ことを挙げましたが、これは現在の法科大学院制度に起因しています。
現在の法科大学院制度は、
法学部4年間→法科大学院2年(既修コース)or3年(未修コース)→司法試験受験期間1年→司法修習1年とどれだけスムーズにいっても8年はかかります。現実問題、この期間の経済的、時間的な負担は大きく、お金のない若年層は諦めざるを得ません

法曹志望者の激減と重複した内容ですが、このような理由から、政府は法曹になる期間を短縮するため、法科大学院制度の改革案の検討を始めます。

 

(3)解決策としての法曹コース案

上述の法曹志望者・法科大学院入学者の減少を受け、政府は法曹コースの原案をだします。
2018年2月5日、文部科学省にて法科大学院改革について議論をおこなう中央教育審議会の特別委員会が開催されました。
そのときの法曹コースに関する改革案は、

  • 法学部3年、法科大学院2年という期間で卒業できる仕組みの確立

についての内容です。
この時すでに、仮置きの名前で「法曹コース」と命名され、設置について議論がなされ、制度スタートのための議論の皮切りとなりました。

ところが、2018年11月26日、法科大学院に関連する学者、弁護士などからなる計3団体から、法曹コース設置案に対する反対の意見書が提示されました。
神戸大学名誉教授の宮澤節夫氏によると
「ロースクール教育の中身を崩壊させる本末転倒な案」と評され現行の予備試験の受験資格に一定の制限を設けることの検討を求めました。

この提案は、
本来、

  • 経済的理由により法科大学院へ進学困難な人への救済
  • 実務経験があり一定の知識を有する人の法曹入りのスピードの加速

などの趣旨で設けられた予備試験制度であったものの、いざ合格者のステータスをひも解くと大学生と法科大学院生の人数が多かった、などの事実に基づいています。

この関連法案の具体化が進むにつれ、各大学は新制度に対応するべく連携協定を結んだことを相次いで発表。
続いて、2019年2月15日には、文部科学省の法科大学院等特別委員会が法曹コースについての基本方針案を発表し、2019年3月12日、
政府は法曹コースにまつわる関連法案を閣議決定しました。それからおよそ3か月後の2019年6月19日、この法案は参議院本会議で可決、成立となったわけです。

3、法曹コース制度化のメリットは?

(1)早期に法曹になれる

法曹コース設置の一番のメリットは、従来の法科大学院ルートよりも圧倒的に早く法曹になれるという点です。これは今回の制度趣旨でもある「学生の経済的・時間的負担の削減」を目的としている観点からも分かりますが、「法曹コース」の目玉ですね。

(2)法曹コース→法科大学院は進学しやすい

法曹コースでは厳格な評価基準で評価されます。
ですから、きちんと良い評価を得ていれば、指定校推薦のようなかたちで特別選抜枠の「5年一貫型」に進学することができます。
成績をしっかり取っていれば確実に法科大学院に進学できることは大きなメリットとなります。

(3)法科大学院を卒業しなくても司法試験にチャレンジ可能

これは、法曹コース生だけに適用されるわけではありませんが、一定の水準の成績を修めた者は法科大学院在学時の最終学年時において司法試験を受験することができます。
従来は卒業と共に司法試験受験のチケットをもらえていたことから考えると、非常に期間を短縮できることになります。

4、法曹コース制度化のデメリットは?

(1)学部、大学院共に「司法試験の予備校依存」を招く?

もともと、法科大学院制度は実務ベースの新しい法曹を養成するために2004年に導入された制度です。以下は文部科学省が公示している法科大学院制度の意義とその概要です。

 1.法科大学院制度の意義

 今後、国民生活の様々な場面で法曹需要が増大することが予想されていますが、これに対応するためには、その質を維持しつつ、法曹人口の大幅な増加を図ることが喫緊の課題と考えられています。

しかしながら、従来の法曹養成制度では、厳しい受験競争のため受験技術優先の傾向が顕著になっていたこと、大幅な合格者数の増加をその質を維持しながら図ることには大きな困難が伴うこと等の問題点が指摘されていました。

 一方、大学における法学教育は、法的素養を備えた人材を社会の多様な分野に送り出すことを主な目的としており、プロフェッションとしての法曹を養成するという役割とは異なる独自の意義と機能を担っています。

また、学生の受験予備校への依存傾向が著しくなって「大学離れ」と言われる状況を招き、法曹となるべき者の資質の確保に重大な影響を及ぼしているとも言われていました。

 このような状況の中、司法が21世紀の我が国社会で期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立するためには、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠であり、その中核をなすものとして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院が構想されました。

引用:文部科学省法科大学院について

 2.新たな法曹養成制度の概要

 司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備

引用:文部科学省法科大学院について

つまり、「予備校依存の受験者が多く、司法試験という試験を突破するスキルはあるけど、実務家としての素養は備えていないよね。だったら、プロセスとしての法曹養成システムで段階を踏んで実務家を育成しよう!」という趣旨のものが法科大学院制度です。
法曹コース新設と在学中の司法試験受験(予備試験経由)は、このプロセスとしての法曹養成システムを回避してしまうことになりますから、「そもそもの司法改革のひとつである法科大学院制度の瓦解を招き、大学、大学院ともども予備校化しちゃうよ。」という危惧があるわけです。これと同質な内容の批判の声は実は多く、多数の学者や弁護士がその意見を表明しています。この批判に対をなすようにして与党関係者が以下の旨を明言しています。

「予備試験の影響で試験突破偏重の考え方の是正という観点が揺らいでいるため、まずは法科大学院そのものの魅力を取り戻す必要がある」

参照:毎日新聞「政府法学部「3年卒」検討 法科大学院「失敗」に危機感

※注:原文そのままではありません。

いずれにせよ「司法試験の予備校依存」が事実として進んでしまう場合、司法試験の対策を講じている従来の予備校やオンライン講座に軍配が上がってしまうことが容易に予測されます。
法曹コース、そして法科大学院の価値が「予備校」と比較しても遜色のないレベルになるのであれば、法曹コース設置はとても有意義な制度として広く認知されることでしょう。

(2)結局予備試験の方がいい?

法曹コースは計6年間の期間で一気通貫に法曹入りが果たせるという制度ですが、一方で予備試験受験者には、1、2年で合格する方もいます。2年合格と考えても、予備試験2年+司法試験1年+司法修習1年と計4年間で法曹になることができます。どうみても法曹コースより早いですよね。さらにいえば、

「方向性×勉強時間」が適正で、かつ、やるべきことをやり切れば誰でも2年間で予備試験に合格することは可能です。
法曹コース→法科大学院で実務家育成の講義を受け計6年の期間を費やすのと、予備試験を2年間で突破し、2年早く実務家デビューするのでは、どちらが実務家としてのレベルが高いかはお分かりになりますよね。

こういった側面から、法曹コース設置が予備試験制度のメリットを凌駕しない限り、制度は失敗に終わってしまうと懸念されています。

これまで法曹コースについて詳しく解説してきました。
続いて、各大学の動きを紹介していきます。

5、「法曹コース」に関する各大学の情報(2019年7月4日現在)

公表されている各大学の「法曹コース」への対応は以下の通りです。

(1)「法曹コース」に関する各大学・法科大学院のHP一覧

東北大学
一橋大学
金沢大学
名古屋大学
大阪大学
神戸大学法科大学院
上智大学
中央大学
立命館大学
関西学院大学

明治学院大学
熊本大学

(2)大学別 法科大学院との連携協定情報

▼明治学院大学法学部

  • 早稲田大学法科大学院(※詳細はこちらから)
  • 慶応義塾大学法科大学院(※詳細はこちらから)
  • 中央大学法科大学院(※詳細はこちらから)

▼新潟大学法学部

  • 早稲田大学法科大学院(※詳細はこちらから)
  • 慶應義塾大学法科大学院(※詳細はこちらから)
  • 中央大学法科大学院(※詳細はこちらから)
  • 東北大学法科大学院(※詳細はこちらから)
  • 神戸大学法科大学院(※詳細はこちらから)

▼信州大学経法学部(※詳細はこちらから)

  • 早稲田大学法科大学院

▼熊本大学法学部(※詳細はこちらから)

  • 早稲田大学法科大学院
  • 中央大学法科大学院
  • 神戸大学法科大学院
  • 九州大学法科大学院

▼鹿児島大学法文学部(※詳細はこちらから)

  • 中央大学法科大学院
  • 神戸大学法科法科大学院

※上記情報は更新予定です。逐一チェックしましょう。

6、サマリー

法曹コース制度の実施は、2019年6月19日の法案成立で決定となりました。
ストレートに進学していき、司法試験に一発合格できれば6年で法曹の仲間入りができる「法曹コース」。
批判も多く、今後どのように制度が変容していくかはまだまだ想像できませんが、法曹志望者の激減という社会問題に対して良い効果をもたらせてくれることを期待したいですね。

7、まとめ

  • 法曹コースとは「通常、最短で8年くらいかかる法曹養成制度を6年まで短縮する」制度のこと
  • 法曹コースに実際に学生が在籍するのは、2020年度の2年次への進学者を想定している
  • 法科大学院進学は特別選抜枠と一般選抜枠に分かれ、法曹コースは特別選抜枠に該当する
  • 特別選抜枠は、学部成績上位600名程度が入学試験(論文)なしに進学できる「5年一貫型」と、学部成績+入学試験(論文)で合否を決める「開放型」に分かれる
  • 法曹コース新設の背景には、①法曹志望者の激減②法科大学院の人気低迷(予備試験の人気増加)などがある
  • 法曹コース制度化のメリットは①早期に法曹になれる②法曹コース→法科大学院は進学しやすい③法科大学院を卒業しなくても司法試験にチャレンジ可能
  • 法曹コース制度化のデメリットは①学部、大学院共に「司法試験の予備校依存」を招く可能性がある②予備試験人気を凌駕できない場合に、結局予備試験に流れてしまう可能性がある
  • 法曹コース制度化に伴い、各大学が相次いで法科大学院と連携協定を結んでいる

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