
はじめに
予備試験に合格した人が、いったいどのくらい勉強して合格したのか気になりますよね。
「社会人受験生はどうしていたのだろう?」
「土日だけの勉強でも合格できるのかな?」
「どうやって勉強時間をやりくりしたのだろう?」
考え始めるとキリがありません。
予備試験は超難関試験で3%~4%という低い合格率です。
超難関試験であるが故に、学習時間の確保も必須であり働きながら勉強時間の確保をするのは至難の技です。
“覚悟を決めて休職する”
“正社員を辞めて時間の融通の利く派遣やアルバイトの仕事に転職する” など
合格に必要な勉強時間を捻出するために、働き方を変えてチャレンジする人も少なくありません。
そもそも、休職や働き方を変えなければならないほど膨大な時間を捻出しなければならないのでしょうか?
そこで、この記事では『予備試験合格のための勉強時間』についてみていきたいと思います。
1 予備試験合格に必要な勉強時間は?
(1)法律初心者に必要な勉強時間の目安は?
一般的には、予備試験合格のために必要な勉強時間は、目安として2000時間ほどだといわれています。
2000時間(合格に必要な時間)÷5時間(1日の勉強時間)=400日
1日5時間勉強しても400日かかります。
・講義を聞く
・テキストを読む
・条文や判例を確認する
・過去問を解く(短答・論文)
・答練を受ける など
すべての科目について、これらをこなす必要があります。
また、合格にかかる年数は個々の事情(年齢や置かれた環境、記憶力等の違い)により異なります。
1年で見事“一発合格”する人もいれば、3~5年かけて合格する人もいます。
学生や受験勉強に専念できる環境にあれば、1年で合格も夢ではないかもしれません。
一方で、社会人受験生の場合は、突発的な残業や家庭の事情などもあり1日5時間も勉強時間の確保をすることはなかなかできないのではないでしょうか?
土日をフルに使える環境であれば、“1年半〜2年ほどの合格目標”でも夢ではありません。
最近では、忙しい社会人にとってはありがたいオンラインで講義が受けられる予備校も増えてきました。
オンライン講義を受講するだけでも一般的には300時間程度かかります。
オンラインで講義を聴くだけでも300時間程かかりますのではじめのうちは根気勝負です。
法律初学者であれば、まずは講義を一通り聴くという事を目標にして、難しい法律用語や独特な言い回しなどに慣れるところから始めましょう。
最初からすべてを理解しようとせずに早めにザッと一周して概要を掴んでしまうのがお勧めですよ。
また、社会人受験生は、通勤電車やお昼休みなどのスキマ時間にオンライン講義を活用して時間を効率よく使うことをお勧めします。
とにかく毎日法律に触れて“慣れる”ことが大切です。
(2)合理的なインプットの勉強は論文式で行おう
多くの資格学校のサイトでは、インプット(講義を聴く、テキストを読み込む)よりもアウトプット(論文を書く)に比重を置くべきと書かれていることがあります。
いったい何故なのでしょうか?
それは、論文の勉強(アウトプット)をしっかりと進めることが短答試験対策も兼ねているからです。
論文の勉強を進める上では、基礎的テキストや判例の読み込み、六法を引くことなどが欠かせません。
つまり、論文の勉強をしながら、もう一度インプットで行ったことを適宜繰り返すことになります。
このことからも、最初の1回目のインプット(講義を聴く、テキストを読み込む)はザッと大枠を捉えるイメージで良いのです。
例えば、有名な判例の名前を聞いて「聞いたことあるな」くらいのレベルです。
論文の勉強をしていると、分からないところを一つずつ埋めていくような感覚で、自ずとテキストや判例、講義を聴きたくなるものです。
結果的に、短答で必要な知識を“網羅的”に勉強していることになりますので、『論文対策』を地道にしっかりと進めていれば『短答対策』をさほど取らなくても大丈夫です。
そもそも、短答式は20%ほどの人が合格できるマークシートの選択式です。
事例や文章を読んで、解答が即座に出てくるレベルにならないと時間不足となるでしょう。
○=1か×=2か、正しいのはどれか、正しい組み合わせはどれか、といった出題形式です。
マークシートの選択肢は、解答の組み合わせで正しいものを選ぶものが多いので、解答欄を見ずに、まずは自分で○か×かをつけていきましょう。
問題文の左側に○×の解答を書いて、解答部分を隠してどんどん解いていくのがおすすめです。
最初のうちは、なかなか正答率が上がらず心が折れてしまいそうになります。
しかし、論文式をマスターして短答式に取り組んだ場合、法律の基礎知識が既にインプットされていますので、正解率が高くなり、○×式ではほぼ正解することができるようになります。
以上のことから、論文式対策から取り組むのが合理的でありお勧めとされている理由なのです。
2 予備試験の勉強時間の配分はどうする?!
前述のとおり、論文の勉強をしっかりと進めていくことが短答対策を兼ねており合理的であるという事がおわかりいただけたかと思います。
いったい、論文の勉強と短答の勉強は、どのような時間配分で行うのがベストなのでしょうか?
その比重は、7 対 3(論文 対 短答)が目安です。
論文式の過去問や問題集から入り基礎力を養い、短答式試験(例年5月)の3ヶ月程前から短答対策を始めるという方法が合理的です。
論文式・短答式のお勧めの勉強法なども交えて、下記で解説していきますので、ご参考になさってください。
自分なりに楽しめる・飽きない勉強方を模索する事も、長い勉強期間を乗り切るコツです。
(1)論文式について
論文式は基本的な事例の問題中心に多くの時間を取るのがお勧めです。
論文式は、時間内に2000文字程度を書かなくてはなりません。
論文試験では六法が貸与されますが、それでも以下のような実力を備えていなければ合格は難しいでしょう。
・問題分析能力
・条文適用能力
・答案作成能力
つまり、事例を整理して、適用条文で問題をささっと解決できるように、事例の問題点をピックアップしていかなければなりません。
多角的なものの見方と事例分析・検証力が必要です。
どの科目も“法解釈”は事象によって微妙に違う事もありますが、そこの理解は法曹人になってからで十分です。
細かい事を気にし過ぎずに、まずは基本を抑えていく事が大切です。
予備試験では、極めて基本的な事象分析ができれば合格ラインに達するのですから、事例も比較的単純で基本的なものとなっています。
パターン(基本)を覚えてしまえば、応用も効きますので、そのためにも問題を繰り返し解く事が不可欠です。
『自分の手で書く』という経験をとにかく沢山積むことが大切です。
論文を書くことでしか『論文』は書けるようにはなりません。
予備試験は平成23年から始まった比較的新しい試験ですから、問題数が十分ではありません。
基本的な問題をクリアしたら、『司法試験の過去問』にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
予備試験と比較すると問われる知識の量や深さなどはあまり変わらないものの、問われ方に少し特徴がありますので、トレーニングになるのではないでしょうか。
応用力を鍛えるのでしたら、『司法試験の過去問』のチャレンジがお勧めです。
(2)短答式について
『理解度のチェック』のために、論文式の勉強をした後、短答式の設問に触れるのがお勧めです。
前述のとおり、短答式対策は「○×式」の解答で練習していくことをお勧めしました。
自分の解答の組み合わせが解答欄の中にないときは、自分の解答が何処か間違っているのです。
(例)
「○(自信あり)」「×(自信あり)」「○?(自信なし)」「×?(自信なし)」
「○」「×」「○?」「×?」 など
それを効率よく見直すために、短文式は、マークシートの解答覧を先に見るのではなく上記のようにメモ書きしていくのがお勧めです。
「?」がついたもの、“つまりうろ覚え”を徹底的に潰して基礎力を強化します。
自信があった解答まで間違っている都いう事は、合格ラインの実力ではないという証です。
一概には言えませんが、1番目に答えた解答が正しくて、迷った末に出した答えは、だいたい間違ってしまう事が多いというのが試験の通例ともいえます。
さまざまな試験で、同じことを経験したことがある人は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
(3)一般教養科目について
一般教養には余り時間を割かないようにしましょう。
その理由は、やり出すときりがないからです。
予備試験には、他士業の試験のように「足切り」というものがないので、例え一般教養が0点でも、他科目をしっかりと勉強して、7~8割得点できていれば合格できます。
合格点が6割程度だからです。
3 予備試験合格後から司法試験合格に向けて〜半年間の勉強時間の確保が大事〜
少し気の早い話ですが、予備試験に合格すると、司法試験の受験日までは半年程度しかありません。
予備試験合格に必要な学習時間についてみてきましたが、本丸ともいえる『司法試験』の合格に向けてどのように勉強を続けて行けば良いのでしょうか?
予備試験合格者であれば、あまり心配し過ぎなくても大丈夫です。
なぜなら、現在の司法試験と予備試験の問題の難易度は限りなく近づいているからです。
とは言え、時間には限りがあり、あまり悠長に構えていてもいられませんので効率よく勉強を進めていきたいですよね。
いくつかポイントをあげてみていきましょう。
◆短答対策 予備試験のときの勉強を思い出しながら科目を絞って続ける
◆論文対策 司法試験の過去問を試験形式に慣れておく(予備試験に比べて問題文も書く分量も増える)
◆選択科目 唯一対策が必要なので資格学校などの利用が効率的
既に予備試験で、司法試験の基礎知識が身についているとは思うのですが、今までの復習をしっかりと行いましょう。
また、予備試験になかった選択問題の過去問にも慣れておく必要があります。
「 過去問に勝るものは無し」なので司法試験の過去問も忘れずに解いて対策しましょう。
予備試験と違い、司法試験は2日・休み・2日で4日間で行われますので、体力勝負です。
論文式試験の後の最終日に短答式試験が行われるので、論文式で疲れ果てて気が抜けるようなことがあってはなりません。
短答式が合格点に達していないと、論文式の採点をしてもらえません。
そのため、最後まで気を抜かない体力が必要となります。
あるいは、疲れ果てた状況でも集中力が続いて正解できるよう、訓練しておく必要があります。
例えば、『予備試験に合格して、一気に燃え尽きないように、予備試験受験勉強中と同じ生活スタイルを司法試験が終わるまで続ける』などです。
予備試験の受験中のように、スキマ時間を見つけ効率よく勉強しましょう。
忙しい社会人にとってはなかなか難しいでしょうが、自分のノルマを決めて、目標に向かって着実にこなしていきましょう。
規則正しい食生活に、十分な睡眠で記憶を着実に定着させて、司法試験までの時間を乗り切れるようがんばりましょう。
4 短期間集中での学習が合格のカギ!
(1)短期集中が記憶力アップのコツ
社会人は、日中仕事をしていますので、どうしても勉強時間が短くなります。
人間の集中力は2~3時間がMAXと言われています。
残業などが続くと時間のやりくりに苦労しますよね。
ですから、短期集中型で「今日はここまで」と決めて、集中しましょう。
時間を決めて集中して勉強することが、短期合格の鍵です。
仕事との両立なのですから、自分のペースで無理のないスケジュールでやっていきましょう。
「合格」から“逆算”して無理のないスケジュールを立てていく事が大変重要です。
「論文式が先」と先述しましたが、文章を集中して書くのは時間もかかり疲れるものです。
そのため、余力があれば休憩時間に短答問題を解くのもお勧めですよ。
短答式は○×式ドリルのような感覚なので、知識定着の確認テストにもなるのです。
最近では、短答アプリなどもあり、通勤時の満員電車の中でも問題集を広げずに勉強できるのでお勧めです。
通勤時や休憩時間、いつもより少し早起きして時間を作るなど、無理のない範囲で効率よく勉強を続けていきたいですね。
(2)社会人受験生は独学では難しい?
予備試験は、独学で行うのはやはりなかなか難しいので、予備校や塾・通信教育のカリキュラムに沿って効率良く勉強しましょう。
とくにフルタイム勤務の人は、予備校や塾への通学の時間も勿体ないので、ライフスタイルに合わせて、通信教育で自分なりの学習環境を作る事が大切です。
仕事をしながら法科大学院に通っているような気分で、2~3年ペースで頑張ってみてはいかがでしょうか?
会社を辞めて、数百万かけて法科大学院に通うよりは、リスクが少ない上に効率的ですよね。
「自分を追い詰めた方が良い」と言う人もいるかもしれませんが、気持ちを楽にして楽しみながら勉強した方が、小難しい法律は頭に入りやすいです。
(3)「規則正しい自分の勉強スタイル」をつくろう
1日決まった時間に、3~4時間勉強して、睡眠時間もしっかりと取りましょう。
良質な睡眠が効果的な記憶の定着を促し、眠っている間に記憶は定着します。
ですから、論文式は、寝る前にその日に解いた問題の解答をもう一度サラッと読んで布団に入ると朝までに記憶が定着しやすくお勧めですよ。
この記憶の定着については、医学的に証明されている根拠のある説です。
5時間以上の睡眠は確保しましょう。
睡眠時間が4時間を下回ると美容・内臓機能のメンテナンスが不十分となり、疲労感がたまり、健康に悪影響が出るだけでなく、集中力も記憶力も低下します。
免疫力低下で、風邪やインフルエンザにもかかりやすくなります。
さらに十分な睡眠を得るには、食事もしっかりとしなければならないのです。
徹夜をしたり、無理な朝型勉強をするよりも、毎日10時から1時まで勉強して6時半に起きる生活でも十分な勉強ができるというわけです。
そして、土日も会社に行くつもりで普段できない勉強をしてみてはいかがでしょうか?
そんな自分のライフスタイルにあった勉強法で進めていき、『あなた自身にとってベストなタイミングでの合格』勝ち取りましょう。
忙しい社会人だからこそ通信教育は時間に縛られないのでお勧めです。
5 サマリー
ご参考になったでしょうか?
予備試験の合格率は3%~4%の超難関試験です。
しかし、着実に課題をこなしていけば、決して合格できない試験ではないということがご理解いただけたのではないでしょうか。
科目数が多く聞き慣れない専門用語も多いので、それなりの勉強時間は必要です。
法学部卒の基本的な法律知識がある人と、全く無い人との間には、必要な勉強時間に1年間ほどの差があるでしょう。
ですが、法科大学院に行ったつもりで、勉強と仕事を両立し“楽しみながら”行っていく事が大切です。
自分にあまりプレッシャーをかけ過ぎるのも逆効果となってしまいます。
予備校や塾・通信教育といった、予備試験の対策を研究し尽くしたプロに勉強法を指導されながら、素直に実践していくのが“合格への近道”です。
勉強時間に関しては、会社の出勤日は3~4時間、休日は会社に行っているつもりで、仕事時間も合わせて10時間ほど勉強しましょう。
そうすると、2~3年で合格の道が見えてくるでしょう。
また、論文式から勉強して短答式を最後に行うのがお勧めです。
論文式(短答式の骨休め含む)に7割程度の時間を使い、短答式は3割程度の時間で大丈夫です。
仕事と勉強の両立をしながら、高い目標設定のもと難しい法律を勉強しているのです。
知的好奇心が満たされ将来の夢に向かってモチベーションも上がります。
ただし、独学は難しいので、「カリキュラムに沿った講義」と「学習スケジュール」が必要です。
予備校や塾に通うのも良いでしょうし、通学時間がなく時間的に自由が効く通信教育もお勧めです。
「1日何時間、今日はここまで!!」
などと自分にノルマを課して集中して勉強しましょう。
人は睡眠の間に記憶が定着しますので、良質な睡眠がとれるようにするのも、効果的な勉強時間を確保する秘訣です。
健康を維持するために5時間以上の睡眠は確保しましょう。
健康でなければ記憶の定着率も下がり、集中力も低下しますので、効率の良い勉強はできません。
そして、予備試験に合格したら、その緊張を維持しながら、予備試験には無い「選択式試験対策」を行いましょう。
司法試験の過去問を繰り返し行う事がマストです。
6 まとめ
・予備試験受験勉強に必要な時間は、2000時間が目安といわれている。
・学習時間の配分は論文式対策勉強7割、短答式試験3割がお勧め。
・夜間の法科大学院に通っているつもりで、スケジュールと1日のノルマを決めて地道にこなしていこう。社会人な無理
せず2~3年計画で行うのがお勧め。
・予備試験合格後、司法試験までは、今までの総復習と「選択試験対策」を行おう。
・「司法試験過去問」も忘れずに。
・司法試験は4日間続けて行われ、論文式3日、短答式1日で行われるので、最後まで体力勝負。本試験のタイムスケジュ
ールに慣れよう。そして、司法試験までの半年間もスキマ時 間を上手に使い勉強時間を確保しよう。
・予備試験も司法試験も決して登れない山ではないので、健康で計画的な時間の使い方で、勉強を続けていこう。