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      2017年本試験問題(刑事訴訟法)

      【刑事系科目】

      【第2問】(配点:100)
      次の【事例】を読んで、後記(設問1)及び(設問2)に答えなさい。
      【事例】
      1    平成28年9月1日に覚せい剤取締法違反(所持)により逮捕されたAは、同月4日、司法警察員Pの取調べにおいて、「所持していた覚せい剤は、逮捕される3日前の夜、H県I市J町の路上で、甲から買ったものである。」旨供述した。Pが甲について捜査したところ、甲は、覚せい剤取締法違反の前科3犯を有するものであり、現在、H県I市J町○丁目△番地所在のKマンション101号室(以下「甲方」という。)を賃借し、居住していることが判明した。また、A以外にも、その頃、覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕された複数の者が、覚せい剤を甲から買った旨供述していることも判明した。そこで、Pが、司法警察員Qらに、甲方への人の出入り及び甲の行動を確認させたところ、甲方には、甲とその内妻乙が居住しているほか、丙が頻繁に出入りしていること、甲が、Kマンション周辺の路上で、複数の氏名不詳者に茶封筒を交付し、これと引換えに現金を受領するという行為を繰り返していることが判明した。
      これらの事情から、Pは、甲が自宅を拠点に覚せい剤を密売しているとの疑いを強め、覚せい剤密売の全容を解明するためには甲方の捜査差押えを実施する必要があると考えた。Pは、同月15日、H地方裁判所裁判官に対し、甲に対する覚せい剤取締法違反(Aに対する営利目的の譲渡)の被疑事実で甲方の捜査差押許可状の発布を請求した。H地方裁判所裁判官は、同日、捜索すべき場所を「甲方」とし、差し押さえるべき物を「本件に関連する覚せい剤、電子秤、茶封筒、ビニール袋、注射器、手帳、ノート、メモ、通帳、携帯電話機」とする捜索差押許可状を発付した。
      Pは、Qから、甲が玄関のドアチェーンを掛けたまま郵便配達員に応対していたとの報告を受け、甲方の捜索の際、呼び鈴を鳴らしてドアを開けさせることができたとしても、ドアチェーンが掛かったままの可能性が高く、その場合、玄関から室内に入るのに時間が掛かり、甲らが証拠隠滅を図るおそれが高いと考えた。そこで、これに備えて、Qらが、甲方ベランダの外にあらかじめ待機し、Pの合図でベランダの柵を乗り越えて吐き出し窓のガラスを割って甲方に入ることとした。
      2 Pは、同月17日、甲方を捜索することとし、同日午後1時頃、QらをKマンション1回甲方ベランダの外に待機させた上、甲方玄関先の呼び鈴を鳴らした。すると、甲がドアチェーンを掛けたままドアを開けたので、Pは、直ちにQに合図を送った。①Pから合図を受けたQらは、ベランダの柵を乗り越え、掃き出し窓のガラスを割って解錠し、甲方に入った。居間には、乙が右手にハンドバッグを持った状態で、また、丙がズボンの右ポケットに右手を入れた状態で、それぞれ立っていた。その間に、Pは、携行していたクリッパーでドアチェーンを切断して玄関から甲方に入った。Pは、居間において、甲に捜索差押許可状を示した上、Qらと共に、甲方を捜索し、居間のテーブル付近において、電子秤1台、ビニール袋100枚、茶封筒50枚、注射器80本及び携帯電話機5台を発見し、これらを差し押さえた。
      Pらによる捜索中、居間に立っていた乙が、ハンドバッグを右手に持ったまま玄関に向かって歩き出した。それを見たPが、乙に対し、「待ちなさい。持っているバッグの中を見せなさい。」と言ったところ、乙は、「私のものなのに、なぜ見せないといけないんですか。嫌です。」と述べてこれを拒否し、そのまま玄関に向かった。そこで、②Pは「ちょっと待て。」と言いながら乙の持っていたハンドバッグをつかんでこれを取り上げ、その中身を捜索した。その結果、Pは、同ハンドバッグ内から、多数の氏名・電話番号が記載された手帳1冊及び甲名義の通帳1通を発見し、これらを差し押さえた。
      他方、丙は、ズボンの右ポケットに入れていた右手を抜いたが、右ポケットが膨らんだままであったほか、時折、ズボンの上から右ポケットに触れるなど、右ポケットを気にする素振りや、落ち着きなく室内を歩き回るなどの様子が見られた。そこで、Qは、丙に、「ズボンの右ポケットに何が入っているんだ。」と尋ねたが、丙は答えなかった。その後、丙は、右手を再び右ポケットに入れてトイレに向かって歩き出した。これに気付いたQは、丙に、「待ちなさい。右ポケットには何が入っている。トイレに行く前に、ポケットに入っているものを出して見せなさい。」と言って呼び止めた。これに対し、丙は、黙ったままQの脇を通り抜けてそのままトイレに入ろうとした。そこで、③Qは、丙の右腕をつかんで引っ張り、右ポケットから丙の右手を引き抜いたが、丙が右手に何も持っていなかったことから、更に丙のズボンの右ポケットに手を差し入れ、そこから5枚の紙片を取り出した。Qがその紙片を確認したところ、各紙片に、覚せい剤を売却した日、相手方、量及び代金額と思われる記載があったことから、これらを差し押さえた。
      その後、Pらは、押し入れ内から、ビニール袋に入った覚せい剤1袋(100グラム)を発見し、同日午後3時頃、甲、乙、及び丙を覚せい剤取締法違反(営利目的の共同所持)で現行犯逮捕した上、逮捕に伴う差押えとして、同覚せい剤を差し押さえた。
      3 甲ら3名は、同月19日、覚せい剤取締法違反(営利目的の共同所持)の被疑事実によりH地方検察庁検察官に送致され、同日、勾留された。
      甲ら3名は、取調べにおいて、いずれも被疑事実を認めた上で、平成27年11月頃から覚せい剤の密売を開始し、役割を分担しながら、携帯電話で注文を受けて覚せい剤を密売していたことなどを供述した。また、通帳等の記載から、甲ら3名の覚せい剤密売による売上金の5割相当額が甲名義の預金口座から乙名義の預金口座に送金されていることが判明した。甲は、当初、丁の覚せい剤密売への関与を否定したが、その後、丁の関与を認めるに至り、丁に対する前記送金は覚せい剤の売上金の分配であると供述した。乙は、丁の関与を一貫して否定し、丙は、丁のことは知らないと供述した。以上の過程で【資料】記載の[証拠1]ないし[証拠4]が作成された。
      検察官Rは、延長された勾留の満了日である平成28年10月8日、甲ら3名を覚せい剤取締法違反(営利目的の共同所持)により、H地方裁判所に公判請求した。
      4 Pは、甲の供述に基づき、同月19日、丁を覚せい剤取締法違反(甲ら3名との営利目的の共同所持)で通常逮捕した。丁は、「甲、乙のことは知っているが、丙のことは知らない。覚せい剤を甲らと共同で所持したことはない。甲は、毎週、私名義の預金口座に現金を送金してくれているが、その理由は分からない。昔、甲が、私の所有する自動車を運転中に事故を起こしたことがあり、その弁償として送金してくれているのではないか。」供述し、事件への関与を否認した。
      丁は、同月21日、覚せい剤取締法違反(甲ら3名との営利目的の共同所持)の被疑事実によりH地方検察庁検察官に送致され、同日、勾留された。
      丁は、その後も否認を続けたが、Rは、捜査の結果、延長された勾留の満了日である同年11月9日、丁について、甲ら3名と共謀の上、営利の目的で、覚せい剤100グラムを所持したとの事実で、H地方裁判所に公判請求した。
      Rは、丁の弁護人Sに対し、[証拠3]を含む検察官請求証拠を開示するとともに、甲の証人尋問が予想されたことから、[証拠1]、 [証拠2]及び [証拠4]を含む、甲及び乙の供述録取書等を任意開示した。
      5 丁に対する覚せい剤取締法違反被告事件の第1回公判期日において、丁は、「身に覚えがない。甲が覚せい剤の密売をしていたかどうかも知らない。」と陳述して公訴事実を否認し、Sは、検察官請求証拠のうち、[証拠3]について不同意との証拠意見を述べた。そこで、Rは、丁と甲らとの共謀を立証するため、甲の証人尋問を請求し、H地方裁判所はは、第2回公判期日においてこれを実施する旨の決定をした。
      第2回公判期日において、甲の証人尋問が実施され、甲は、「私は、以前、覚せい剤取締法違反により懲役2年の実刑判決を受け、平成27年6月に刑務所を出所した。すると、丁が刑務所に迎えに来てくれて、『しばらくはのんびり生活したらいい。」と言って50万円をくれた。同年8月頃、丁から、『何もしていないんだったら手伝わないか。』といわれ、覚せい剤の密売を手伝うようになった。同年10月下旬、丁から、『覚せい剤を仕入れてやるから、自分たちで売ってこい。俺の取り分は売上金の5割でいい。あとは自由に使っていい。』と言われたので、同年11月頃から、内妻の乙や知人の丙と一緒に覚せい剤を密売し、毎週、売上金の5割を丁名義の口座に振り込み、私が3割、乙及び丙が1割ずつ受け取っていた。丁からは、1ヶ月に1度の頻度で、密売用に覚せい剤100グラムを受け取っていた。』旨供述した(以下「甲証言」という。)。
      第3回公判期日において、④Sは、甲証言の証明力を争うため、[証拠1] [証拠2] 及び[証拠4]の各取調べを請求した。

      【設問1】 下線部①ないし③の捜査の違法性について、具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
      【設問2】
      1.裁判所は、下線部④で請求された各証拠について、これらを証拠として取り調べる旨の決定をすることができるか否かを論じなさい。
      2.仮に、前記1において、裁判所が甲証言の証明力を争うための証拠として取り調べた証拠があったとする。その場合、Rが「甲証言の証明力を回復するためである。」として、改めて[証拠3]の取調べを請求したとき、裁判所は、これを証拠として取り調べつ旨の決定をすることができるか否かを論じなさい。

      【参照条文】覚せい剤取締法
      第41条の2 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けたもの(略)は、10年以下の懲役に処する。
      2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万以下の罰金に処する。
      3 (略)

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