2020年民法改正の内容とは? 時効消滅や成人年齢改正など、行政書士業務から改正のポイントを解説!

2020年民法改正の内容とは? 時効消滅や成人年齢改正など、行政書士業務から改正のポイントを解説!

2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大の渦中に、民法の改正がおこなわれました。

この改正は実に120年の時を経て、民法を時代にマッチさせようとする大改正です。今回の改正点は、今年度の行政書士試験の出題範囲に含まれるため、受験生は既に内容を確認していることでしょう。

この記事では、改正点が200箇所にものぼるという今回の民法改正についてまとめ、行政書士の業務から見た改正のポイントについても紹介します。

1 民法改正と行政書士

2020年4月1日に施行された、債権法をはじめとする民法改正は、120年ぶりの大改正となりました。これほど長い間、大きな改正がおこなわれずにいた背景には、日本の民法典が持つ特色や判例法理、学説の役割と機能があるといわれています。

国民生活センターのサイトにある「民法改正の経緯と概要」によると、民法の改正にまつわる議論が開始されたのは、2006年でした。その結果2020年4月1日を皮切りに、法の制定から約120年間にわたりほとんどそのままであった民法が、徐々に改正されていくことになりました。2006年より議論を重ねてきた法改正は、長い年月を経た分だけ膨大な変更点をともなうこととなりました。改正点は、条文など細かいものまで含めると、200箇所以上にものぼります。

(1)民法とは

民法 財産法
(行政書士試験出題範囲の中心)
民法総則 物権法 債権法
契約法 契約の効果、成立、種類
契約以外の法律関係 不当利得、不法行為、事務管理
家族法 親族法 親子、婚姻
相続法 法定相続、遺留分、遺言

上表は、民法の構造について分かりやすく書き表したものです。民法とは、私的な生活関係全般について一般的ルールを定めたもので、市民生活を円滑に営むためには不可欠なものです。民法には、買い物など契約に関するルールや、事件・事故が起こった場合の損害賠償に関するルールが含まれ、生活の基本となる法律が定められています。

制定から約120年も経てしまった民法には、その間に時代に合わなくなってしまったものや、重要なルールであるのに関わらず法律に条文化されていないものがあるといわれ、問題視されてきました。そのような中で満を持して今回の民法の大改正がおこなわれ、施行されるに至ったのです。

民法は大きくは財産法と家族法に分かれています。

今回の改正法は2020年4月1日を皮切りに、どんどん施行されていく予定です。2020年には改正債権法も施行されますが、その内容には時効の消滅などが含まれます。また家族法においては、成人年齢が18歳になったり、相続法が今般の長寿社会を反映したものとなったりと、私人の生活を保護する法律・民法が時代に合わせてアップデートされたかたちになりました。

(2)今回の主な改正点

民法改正は債権法を皮切りとして、2020年4月1日、新型コロナウイルス感染症拡大の騒ぎのなか施行されました。今回の改正点が行政書士試験の出題範囲に反映されるのは、2020年度実施の試験となります。

行政書士試験の出題の中心となる「財産法」では、多くの改正点が生じました。変更点を挙げると以下の通りです。

消滅時効、法定利率の変動、債務不履行による損害賠償、契約の解除、危険負担、詐害行為取消権、保証債務、債権譲渡、債権引受、売買、請負、消費貸借、賃貸借、定型約款に関する規定の新設ほか

後述しますが、相続法、遺言書保管法、特別養子縁組制度、成年年齢などにも、重要な改正点が設けられました。

(3)行政書士業務と民法

行政書士業務は、行政書士法で定められています。

下表は、行政書士法によって定められた行政書士の独占業務を筆頭に、行政書士の業務についてまとめたものです。ご覧の通り契約、遺言、遺産相続に関わるものをはじめ、民法によって規定される業務が多く含まれているため、今回の民法改正が行政書士の業務に深く関わってくることがわかるでしょう。

官公署に提出する書類、その他権利義務または
事実証明に関する書類作成(行政書士の独占業務)
官公署への提出書類 ・飲食店営業許可
・帰化申請
・建設業や産業廃棄物処理業開業申請
権利義務に関する書類 ・各種契約書
・遺言書
・遺産分割協議書
・クーリングオフの内容証明郵便
事実証明に関する書類 ・各種議事録
・会計帳簿
・実地調査に基づく土地の現況測量図
➀の書類を官公署に提出する手続きと許認可等に関連する意見陳述の為の手続きを代理 許認可等に関連する意見陳述の為の手続き:
自動車の運転免許が取り消される場合など
➀の書類にかかる許認可等に関する審査請求等の不服申し立て等の手続きにおいての代理と、その書類の作成(特定行政書士の業務) 飲食店の営業許可申請をおこなったが、許可が下りなかった場合、審査請求書などの書面を作成し、行政庁に不服申し立てをおこなう場合など
➀の契約その他に関する書類を代理人として作成 ・申請者の代理人として書類に署名
・本人に確認なしで書類の記載訂正できる
➀の書類作成について相談に応じる ➀の書類作成について相談にのる

上表に記載されていても、他の法律によって制限されて行政書士がおこなうことができない業務もあります。

例えば、司法書士の独占業務である「法務局への書類提出」などがそれに該当します。また、③の「許認可等に関する審査請求等の不服申し立て等の手続きにおいての代理と、その書類の作成」は、然るべき研修を受けた特定行政書士のみがおこなえる業務になります。

2 行政書士試験と民法改正

行政書士試験の出題範囲の1/4を占める民法は、行政法と並んで配点率が高く、重要科目であることは間違いありません。総得点300点のうち、民法の配点は実に76点を占めます。それだけに、受験生は今回の法改正は無視できないでしょう。

(1)具体的な改正点

繰り返しますが、今回の民法改正の改正点は多く、200項目余りにも上ります。その中で、行政書士の実務や行政書士試験に特に影響がある法改正を挙げると、以下のようになります。

①債権法の改正
②相続法の改正
③特別養子縁組制度の改正
④遺言書保管法
⑤成年年齢の改正

各法律における具体的な改正点については、後ほど詳しく紹介します。まずは、行政書士試験の受験生は今回の法改正にどのように対処すればよいかを、初学者と学習経験者に分けて考えてみましょう。

(2)初学者はどのように対処すべきか

これまでの学習で既に得た知識がない分、初学者の方がまっさらなので、法改正にひっかかることなくスムーズに民法を学んでいけるでしょう。法改正にとらわれることなくテキストを読み込み、問題集をこなして試験の重要科目である民法を押さえていきましょう。

ただし法改正に限らず言えることですが、行政書士試験合格のコツは「すべて覚えようとしないこと」です。改正点をすべて覚えようとすればするほど、重要論点からズレていってしまうからです。

(3)学習経験者はどのように対処すべきか

学習経験者は、既に改正前の民法を学んだ土台があるため、頭に古いルールが残っている状態にあります。今回の改正では、特に債権法や家族法などで変更点が多いので、これまで得た知識をいったんリセットして、白紙に戻って新たに勉強する方が好ましいでしょう。

あまり変わっていないように思えるものも、総則が一部変更されているなど、探していけば変更点が随所にちりばめられています。自分で変更点をピックアップして覚えるのは大変なので、法改正に特化したテキストや問題集を購入したり、講座を受講したりして対処するのも良いでしょう。

3 民法改正の内容(債権法)

今回の改正点を紹介するにあたり、まずは民法の債権に関する規定の見直しについて触れていきましょう。債権に関する規定は、民法制定以来実に120年間、実質的な見直しがないままでした。

債権法に関する改正には、以下のような内容が盛り込まれました。

錯誤、消滅時効の期間の統一化(短期消滅時効の廃止など)、法定利率を変動させる規定の新設、保証債務の規定の整備、定型約款に関する規定の新設など

ここからは、これら債権法の改正点を、

・時効に関する見直し
・法定利率に関する見直し
・定型約款規定の創設
・個人保証の制限

以上の4点にまとめて解説していきます。

(1)時効に関する見直し

旧ルール 新ルール
債権の種類 時効期間

原則5年
ケースによっては最長10年

医師の診療報酬 3年
弁護士の報酬 2年
飲食代金 1年
動産のレンタル代金 1年
商取引債権 5年

法務省 民法(債権法)改正資料を基に作表

消滅時効とは、貸していたお金を返してもらう権利などに定められた消滅時効期間のことです。一定の期間が過ぎると、権利が無効になってしまいます。

改正前からの「権利を行使することができる時」から「10年間」行使しなければ消滅するというものに加え、「債権者が権利を行使できることを知った時」から「5年間」行使しなければ消滅することと改正されました。

債権者は権利を行使できる事を知っているのが一般的なので、今回の改正では実質的には消滅時効期間が5年に短縮されたと言えます。

また、職業別の債権、定期給付債権の短期消滅時効の定めが廃止され、定期金債権に関しては時効の起算点が見直されました。時効の起算点と時効期間は、以下の通りです。

【旧ルール】
①客観的に権利を行使することができる時から10年間で債権は消滅する
②債権者の職業ごとに時効期間の多数の例外が定められていた

【新ルール】
・①の原則に加え、債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年で債権は消滅
・②の例外は全て廃止

(2)法定利率に関する見直し

法定利率は、現行の民法では年5%で、実勢金利には関係なく固定制でした。今回の法改正では法定利率を年3%に引き下げました。加えて今後は、実勢金利を参考に3年ごとに利率を見直す「変動制」が採用されました。

また、これまで商行為について生じた債権には、民事法定利率よりも高い6%の法定利率が適用されてきましたが、これが廃止されました。そして民事法定利率と同じく年3%の変動制が適用されることとなりました。

(3)定型約款規定の創設

電気・ガスの契約や、預金や保険の契約、電車・バスに乗るための契約など、様々な場面で用いられている「利用規約」を、民法では「定型約款」と呼びます。これまでの民法には「利用規約」などのように、当事者の一方が契約内容を画一的に定めた契約条項(いわゆる約款)についてのルールがありませんでした。

今回の法改正では、この定型約款に関するルールが新設されました。定型約款の中の条項が、どのような場合に契約内容となるのか、というものです。また、消費者からの不満が多かった、利用者の利益を一方的に害する不当な条項については、その効力が否定されるようになりました。

(4)個人保証の制限

これまで民法では「保証契約」を書面でおこなうこととしていましたが、それ以外については特に定められていませんでした。

今回の改正で明確にされたことの一つに、賃貸物件の原状回復についてが挙げられます。

借りていた住居から退去する際、借りていた人は、その部屋を元の状態に原状回復して返す義務があります。しかし、借りる前と全く同じ状態にして返すのは難しいため、多くのもめ事が発生していました。新しい民法では、生活で付く汚れや傷は直さなくてもよいというルールが明確にされました。

また、敷金についても新ルールが設けられました。

敷金とは借り手から預かるお金のことで、貸す側が賃料などの支払をきちんと受けられるようにするのが本来の目的です。そのため、借り手がきちんと家賃などを支払っているなら、普通の使い方では生じないような汚れや傷があった場合を除いて、賃貸借の終了時にその全額を返すのが原則となります。

①保証ってなに?

保証とは、債務(契約等に基づく義務)を負っている人が債務を履行できない場合、その人に代わって債務の履行を約束することです。保証は日常生活でも広くおこなわれているため、知らない人はあまりいないでしょう。今回の法改正では、保証人に対する保護が厚くなりました。

②「根保証」ってなに?

根保証は、単なる保証とは少し違います。根保証とは、保証対象となる債務が契約の時点では特定していない保証のことです。保証人の責任が、結果的にどの程度となるのかを予測することは難しいものですが、今回の民法改正では、保証対象となる債務の内容にかかわらず、極度額(保証の上限額)を定めなければ効力を生じないことと定められました。

根保証の実例としては,以下のようなものがあります。

Ⅰ 誰かが住居を借りる際、借り手が支払わなければならない賃料等の支払を保証すること
Ⅱ 誰かが入院する際、患者が支払わなければならない入院費用等の支払を保証すること

今回の改正点で新たに設けられたルールは次の通りです。

ⅰ 極度額を事前に合意すること
ⅱ その合意を書面または電磁的記録でおこなうこと
ⅲ これらを1つでも守らないと根保証契約全体が無効になること

※個人が保証人になる場合。会社などが保証人になる場合は適用されない
※公法改正は,2020年4月1日以後に締結された契約にのみ適用される

4 民法改正の内容(家族法)

ここからは、相続法の改正をはじめとして、家族法における改正点について紹介します。

(1)相続法の改正

①配偶者居住権の創設 被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点から
②婚姻期間が 20 年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
①自筆証書遺言の方式緩和 遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止する観点から
②法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設 (遺言書保管法)
その他、預貯金の払戻し制度の創設、遺留分制度の見直し、特別の寄与の制度の創設など

相続法の改正は、昭和55年以降おこなわれることはありませんでした。今回は、配偶者の居住権の保護、遺産分割や遺言制度に関する見直しなどがおこなわれました。例えば、配偶者の居住権の保護は、長寿化にともない、配偶者の死去により住むところを失うような場合の問題解決を目的に改正されたものです。相続税の改正は段階的施行はありましたが、2020年4月1日に施行されます。

(2)特別養子縁組制度の改正

特別養子縁組制度に関する民法改正は、2019年6月7日に成立しました。

この法改正の背景には、特別養子縁組制度の利用促進の願いがあります。そのため今回の法改正では、特別養子縁組における養子の年齢の上限を、6歳未満から原則15歳未満に引き上げるなどの変更がおこなわれています。特別養子縁組制度の改正法の施行日は、2020年4月1日です。

(3)遺言書保管法(遺言書の保管に関する法律)

遺言書保管法とは、法務局における自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を、新設する為の法律です。遺言書保管法の施行日は、2020年7月10日です。

(4)成人年齢の改正

成人年齢が18歳に引き下げられ、女性の婚姻年齢が18歳に引き上げられます。施行年度まで数年ありますので、先走って試験でひっかからないように気をつけましょう。この改正法は、2022年4月1日に施行されます。

成人年齢引き下げの主なポイントは、以下の通りです。

現在 2022年4月以降
ローンやクレジットカードの契約 20歳未満は親の同意が必要 18歳でも親の同意なく契約可能に
民事裁判を起こせる年齢 20歳未満は保護者などの代理人が必要 18歳から自分で裁判を起こせる
パスポート 20歳未満は5年有効のパスポートのみ取得可能 10年有効も取得できる
結婚できる年齢 男性は18歳以上
女性は16歳以上
男女ともに18歳以上に統一
飲酒、喫煙、公営ギャンブル 20歳未満は禁止 健康への影響などを考慮し、20歳未満禁止を維持

5 サマリー

本記事では、200箇所以上になるという民法改正のポイントを、行政書士業務の観点からまとめてきました。行政書士試験の法改正対策に役立てて頂ければ幸いです。

6 まとめ

・2020年4月、120年の時を経て、時代にマッチした民法の大改正がおこなわれた。

・民法の改正点は、条文も含め200箇所にものぼる。

・行政書士試験の出題の中心となる「財産法」では、消滅時効、法定利率の変動など多くの改正点が生じた。

・「利用規約」のような定型約款が設けられ、どの条項がどの場合に契約内容となるかという基本的なルールが定められた。

・また、利用者が不利益を被る不当な条項については、効力が否定されることになる。

・相続法の改正では、配偶者の居住権の保護、遺産分割や遺言制度に関する見直しなどがおこなわれた。

・成人年齢が18歳に引き下げられ、女性の婚姻年齢が18歳に引き上げられる改正法は、2022年4月1日に施行される。

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