独立開業できる資格のひとつである行政書士の資格。行政書士は「士業」と呼ばれる法律系の職業です。士業の資格の中では難易度が低いイメージもあるようですが、実際はどうなのでしょうか。行政書士試験の内容や合格率について、また、独学での合格は可能なのか、確認していきましょう。
- 行政書士試験の難易度は司法試験よりは低いが、宅建よりも高い(難しい)
- 合格率は10~15%(令和元年は11.5%)
- 勉強時間は1日あたり最大2.7時間?!
目次
1 行政書士とは

行政書士の主な仕事内容は、書類の作成、申請の代行です。
司法書士との違いはその書類の提出先で、司法書士は法務局や裁判所、行政書士は行政機関が中心となっています。また、平成26年には、許認可の申請に関する紛争について当事者に代わって争うことが認められている「特定行政書士」が誕生しました。行政書士の年収は、実力次第で1000万円を超えることもあるそうです。
2 行政書士試験について
ここからは行政書士試験の概要を詳しくご紹介します。試験を実施している一般財団法人行政書士試験研究センターのホームページ(https://gyosei-shiken.or.jp/)も参考にしてみてください。
(1)受験資格・試験日
行政書士試験は、年齢、学歴、国籍などに関係なく、誰でも受験できます。試験日は例年11月の第2日曜日、午後1時~午後4時までです。
(2)科目・内容・試験方法
試験科目は以下の通りで、問題数は全60問です。
・「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)
憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題。
法令については、試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題されます。
・「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)
政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解
(3)試験の形式
以上の科目について筆記試験が行われます。行政書士試験の出題形式は「択一式」と「記述式」の2通りです。
択一式はさらに「5肢択一式」と「多肢選択式」に分かれています。「5肢択一式」は5つの選択肢から適切な解答を1つ選ぶもの、「多肢選択式」は20の選択肢から長文の空欄にあてはまる語句を1つ選ぶものです。
記述式は、問いに対して40字程度で解答する問題が出題されます。 「行政書士の業務に関し必要な法令等」は択一式および記述式、「行政書士の業務に関連する一般知識等」は択一式で出題されます。
試験科目 | 出題形式 | 科目 | 問題数 | 配点 | 満点 | ||
法令等 (46問) | 択一式 (43問) | 5肢択一式 | 基礎法学 | 2問 | 各4点 | 8点 | 160点 |
憲法 | 5問 | 20点 | |||||
行政法 | 19問 | 76点 | |||||
民法 | 9問 | 36点 | |||||
商法・会社法 | 5問 | 20点 | |||||
多肢選択式 | 憲法 | 1問 | 各8点 | 8点 | 24点 | ||
行政法 | 2問 | 16点 | |||||
記述式(3問) | 行政法 | 1問 | 各20点 | 20点 | 60点 | ||
民法 | 2問 | 40点 | |||||
一般知識等 (14問) | 択一式 | 5肢択一式 | 政治・経済・社会 | 7問 | 各4点 | 28点 | 56点 |
情報通信・個人情報保護 | 4問 | 16点 | |||||
文章理解 | 3問 | 12点 | |||||
合計 | 60問 | 300点 |
(平成30年度)
(4)合格基準
次の要件をいずれも満たすことが、行政書士試験の合格基準となります。
①行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者
②行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者
③試験全体の得点が、満点の60パーセント以上である者
この合格基準については試験問題の難易度を評価し、補正的措置を加えることがあるとされています。 補正的措置とは、受験者の正答率などから、その年度の試験問題の難易度が過去と比較して著しく変動していると認められた場合に、合格基準(合格基準点)を見直すことによって、過去の試験問題の難易度との均衡を図るものです。
3 行政書士試験の対策のポイント
上記の試験内容からもわかるように、行政書士には民法から行政法まで幅広い法律の知識が必要となります。試験ではそれを使いこなす技術が問われるほか、一般知識として政治や経済に関する基本的な理解や時事問題への関心が求められてもいます。
記述式問題では文章の読解力に加え、文字制限のある中で書く訓練も必要です。 このような点から、行政書士試験は総合的な法律知識と幅広い一般知識が必要な、高難易度の試験といえるでしょう。
4 行政書士試験の近年の合格率は10~15%
ここ数年の行政書士試験の受験者数、合格者数、合格率を見てみましょう。 平成30年度は12.7%、令和元年度は11.5%、令和2年度は10.7%と近年は合格率10~15%で推移しています。
前述の通り、行政書士試験は誰でも受験が可能です。十分な準備をしないまま、とりあえず受験してみるという「記念受験組」も含まれているため、データ上の合格率は10%程度と低くなっています。
もっとも、しっかり勉強した人にとっては、飛び抜けて難しい試験ではありませんので、見かけ上の合格率に怯む必要はありません。
5 行政書士の難易度は、宅建士よりも高く、予備試験よりも低い
では、行政書士試験の難易度は相対的に見てどれほどのものなのでしょうか。2つの試験と比較して考えてみましょう。
(1)宅建との比較
まずは宅建士の資格との比較です。主婦やサラリーマンにも取得する方が多く、半年ほどの勉強で取得に至る人もいる宅建士の資格。下の記事からもわかるように、宅建と比べると行政書士試験の難易度の方が高そうです。
▼宅建の合格率は? 必要な事務手続きは? 宅建にまつわる一問一答Q&A
そもそも法律系の資格とはどのようなものか学ぼうとするならば、行政書士試験を受験する前に宅建の勉強をして資格取得を目指すという考え方もあります。宅建を取得してから行政書士の資格を狙うなど、行政書士試験の前段階には向いているかもしれません。
(2)予備試験との比較
続いて、予備試験と比較してみましょう。
予備試験と行政書士試験とでは、一般知識等科目の傾向は異なりますが、法律科目の範囲が重なっています。そのため、予備試験受験生の中には、7月の論文式試験の終了後に行政書士試験を受験する方も見られます。特別な行政書士試験対策をせずに、過去問を数年分解いただけで合格するケースもあるようです。
以上のことから、予備試験に比べると行政書士試験の難易度は低いといえます。
6 行政書士試験の勉強時間は「効率の良さ」を意識する
前項では参考までに比較をしましたが、行政書士試験の難易度が高いことには変わりありません。
行政書士試験も他資格と同様に、多くの勉強時間を要します。初めて法律学習に臨む人が独学で学習する場合、1年間で800~1,000時間程度は必要と言われています。
1年間を365日とすると、1日あたり最大2.7時間の学習時間を確保しなければならない計算になりますね。
とはいえ、社会人として毎日働きながらでも、時間管理と勉強方法さえ間違えなければ、合格が目指せる資格です。
合格のためにはとにかく効率的に勉強することが重要となります。自分ひとりでは方向性を誤る可能性があるので、方向性を正してもらう機会も必要です。もし短期合格を目指すならば、勉強方法について試行錯誤の時間はないと考えて、最初から効率良く勉強することを意識しましょう。
行政書士は、今後のキャリアアップや将来的な独立を考えている方に、ぜひとも挑戦していただきたい資格のひとつです。
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7 まとめ
・行政書士試験は筆記試験で、行政書士の業務に関する「法令」と「一般知識等」について出題される
・出題形式は「択一式」と「記述式」
・幅広い法律の知識と、政治・経済・時事問題に関する一般知識が必要
・記述式問題の対策として、書く訓練と読解力が求められる
・合格率は10~15%で推移、難易度は高め
・勉強時間はとにかく効率の良さを意識することが重要
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