法科大学院の募集停止の背景は予備試験にある?データから紐解きます

法科大学院の募集停止の背景は予備試験にある?データから紐解きます

法科大学院は、法曹を目指す人のために創設された教育機関で、創設当初はたくさんの法曹志望者が法科大学院に入学していました。もっとも、最近では、法科大学院の募集停止が年々増えてきているのが現実です。

これは法曹志望者が減ったことが原因なのか、予備試験制度が関連しているのか、この記事ではデータを紐解きながら考察してみます。

1 法科大学院の募集停止について

(1) 募集している法科大学院

令和2年度の募集している法科大学院の一覧は以下のとおりです。

募集している法科大学院
北海道大学 法学研究科 法律実務専攻
東北大学 法学研究科 総合法制専攻
筑波大学 人文社会ビジネス科学学術院 法曹専攻
千葉大学 専門法務研究科 法務専攻
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻
一橋大学 法学研究科 法務専攻
金沢大学 法務研究科 法務専攻
名古屋大学 法学研究科 実務法曹養成専攻
京都大学 法学研究科 法曹養成専攻
大阪大学 高等司法研究科 法務専攻
神戸大学 法学研究科 実務法律専攻
岡山大学 法務研究科 法務専攻
広島大学 人間社会科学研究科 実務法学専攻
九州大学 法務学府 実務法学専攻
琉球大学 法務研究科 法務専攻
東京都立大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻
大阪市立大学 法学研究科 法曹養成専攻 
学習院大学 法務研究科 法務専攻      
慶應義塾大学 法務研究科 法曹養成専攻
駒澤大学 法曹養成研究科 法曹養成専攻   
上智大学 法学研究科 法曹養成専攻     
専修大学 法務研究科 法務専攻
創価大学 法務研究科 法務専攻                 
中央大学 法務研究科 法務専攻            
日本大学 法務研究科 法務専攻            
法政大学 法務研究科 法務専攻            
明治大学 法務研究科 法務専攻            
早稲田大学 法務研究科 法務専攻            
愛知大学 法務研究科 法務専攻               
南山大学 法務研究科 法務専攻               
同志社大学 司法研究科 法務専攻               
立命館大学 法務研究科 法曹養成専攻     
関西大学 法務研究科 法曹養成専攻    
関西学院大学 司法研究科 法務専攻          
福岡大学 法曹実務研究科 法務専攻 

出典:各法科大学院の平成28年度~令和2年度入学者選抜実施状況等(調査時点:令和2年4月1日現在)

令和2年度において募集している法科大学院は全部で35校になります。

(2) 法科大学院の志願者の推移

法科大学院は、志願者が年々減少しています。

具体的な推移は以下のようになっています。2016年度の入試で初めて志願者が1万人を下回りました。文部科学省より)

グラフが示すとおり、年々、志願者数・入学者数ともに減少し、志願者数全体はここ数年は8千人台で推移しています。法科大学院が開始された2004年は志願者数が72,800人、入学者数が5,767人、倍率が13倍でした。

わずか10年あまりで志願者数は約10分の1になり、法科大学院を取り巻く環境は大きく変わってしまったと言えます。2013年以降も志願者数が減少していますが、その分学生を募集している大学院の減少も起こり、倍率が2〜3倍程度で推移しています。

2 法科大学院の募集停止の背景

法科大学院の志願者が減っていることに伴い、法科大学院の募集停止も相次いでいますが、なぜ志願者が減ってしまっているのか、いくつか考察してみます。

(1) 予備試験制度の導入

まず、一つ考えられるのは、予備試験制度が導入されたことにより、予備試験ルートの受験生が増えたことです。

予備試験は、平成23年(2011年)より開始され、司法試験の受験資格を得るための試験になります。

予備試験制度が導入されたことで、司法試験の受験資格を得るルートが2つになりました(法科大学院を修了する、または、予備試験に合格する)。

この予備試験制度により、多くの受験生は、法科大学院の進学よりも、予備試験を受験するという選択を選んだことが考えられます。

(※尚、令和5年より法科大学院在学中でも一定条件のもと司法試験が受験可能となります。)

現に、予備試験の受験者数の推移は、以下のとおりです。

年度 受験者数
平成23年 6,477
平成24年 7,183
平成25年 9,224
平成26年 10,347
平成27年 10,334
平成28年 10,442
平成29年 10,743
平成30年 11,136
令和元年 11,780
令和2年 10,608
令和3年 11,717

出典:法務省

平成23年当初は、予備試験の受験者数が6,477人でしたが、その後増加し、平成26年には受験者が1万人を超えました。

その後も1万人以上の受験者数を維持し、年々増加し続けていることが分かります。

法科大学院の志願者が減った=法曹志望者が減ったというようにも思えますが、予備試験の受験者数が増えていることからすれば、法曹志望者全体の数が減ったというよりも、予備試験ルートを選択した人が多いということがいえるかもしれません。

このことから、法科大学院の志願者が減り、結果として法科大学院が募集停止をせざるを得ない状況になったものと考えられます。

では、なぜ多くの受験生は予備試験の受験を選択するのかという点については、予備試験合格者の司法試験の合格率が高いことが考えられます。

令和3年度類型別司法試験合格率ランキング

順位 法科大学院名 受験者 最終合格者 合格率(対受験者数)
1 予備試験合格者 400 374 93.50%
2 愛知大法科大学院 3 2 66.70%
3 京都大法科大学院 185 114 61.60%
4 一橋大法科大学院 110 90 58.20%
5 慶應義塾大法科大学院 227 125 55.10%
6 東北大法科大学院 39 20 51.30%
7 東洋大法科大学院 2 1 50.00%
7 山梨学院大法科大学院 4 2 50.00%
9 早稲田大法科大学院 231 115 49.80%
10 岡山大法科大学院 33 16 48.50%

この表をみてのとおり、各法科大学院の合格率を凌いで、予備試験合格者の司法試験合格率が93.5%と、圧倒的に高いことが分かります。

予備試験そのものも、合格率が約4%と、難易度の高い試験ではありますが、受験資格がないことや、受験回数の制限もありません。

また、法科大学院に比べて、学費がかからないこと、最短合格を目指せることなどから、社会人にとっても受けやすい試験になっていることが関係しているのでしょう。

(2) 法科大学院制度の問題

法科大学院が設立された当初は、司法試験の合格者数を3,000人輩出することを目指していたこともあり、想定を超える法科大学院を設立してしまったということも考えられます。

司法試験の合格者数は年々減少しつづけ、令和3年度司法試験の合格者数は1,421人と、当初の半分以下の人数になっています。

法科大学院がある程度合格者を輩出できなければ、受験生からも人気がなくなってしまい、優秀な学生が集まらなくなると更に合格率も下がってしまいます。

また、文部科学省は各法科大学院を定期的に査定し、一定の司法試験合格率に達しなければ補助金を与えないという施策をとっているため、合格者数が少ないところは、法科大学院としての運営を維持することができなくなり、結果として募集停止をせざるを得なくなってしまうものと考えられます。

一方で、合格率や合格者数の高い法科大学院は、多くの受験者数が集中するため、その分人気の低い法科大学院は余計に募集停止に追い込まれてしまうといった関係にあります。

これらのことはあくまで推測ですが、こういった背景が法科大学院の募集停止と関係しているのかもしれません。

3 法科大学院の今後

最近では、法曹コースという制度が設立されました。

「法曹コース」は、2020年4月に施行された、司法試験の受験資格が緩和された新しいコースになります。

従来は、大学を4年で卒業した後、法科大学院の既修コース(2年)を経た後、司法試験を1回目受験で合格できた場合、その後は司法修習を1年間受け、二回試験に合格しなければならないため、最短ルートでも約8年かかります。

これに対し、法曹コースが設置されることで、法曹資格を最短で約6年で取得できるようになります。

この制度が設立されることで、法科大学院の志願者が増えることが期待されます。

また、2023年から法科大学院在学中に司法試験が受験できるようになることからも、法科大学院ルートから司法試験を受験する人が増えるのではないでしょうか。

法科大学院は、先輩合格者による受験指導が受けられたり、切磋琢磨し合える仲間ができる場所でもあります。

法科大学院に在学しながら予備試験を受験することもできるので、保険として進学するという選択もあります。

4 サマリー

法科大学院の募集停止により、法曹の未来が暗いのかといえば、そういうことではありません。法曹志望者が大きく減少しているわけではなく、様々な制度変革が要因となっていると考えられるため、これから法曹を目指す方は、そういった事情も含め、受験資格の選択を考えてみてくださいね。

5 まとめ

令和2年現在において、募集している法科大学院は35校

・法科大学院の志願者は、2012年は18,446人だったのに対して、2020年では8,161人と大きく減少している

・法科大学院の募集停止が相次いでいる背景として、予備試験制度の導入や、法科大学院制度自体の問題が考えられる

・もっとも、法科大学院では、2020年より法曹コースが設置されたことや、2023年からは在学中に司法試験の受験が可能になることに伴い、志願者が増えることが期待される

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