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      2017年本試験問題(憲法)

      [公法系科目]
       
      〔第1問〕(配点:100)
      20**年,少子高齢化の影響で日本では労働力の不足が深刻化し,経済成長にとって大きな足かせとなっていた。日本では,それまで外国人のいわゆる非熟練労働者の受入れは認められていなかったが,政府は,労働力不足の深刻化を受け,労働力確保の必要性が特に高い農業と製造業を対象として,外国人非熟練労働者を受け入れる方針を決めた。受入れに際しては,十分な数の労働者を迅速かつ円滑に確保するとともに,適性のある労働者についてはある程度長期間にわたり雇用を継続できるようにすることが望まれた。他方,政府の上記方針決定に対し,野党からだけではなく与党からも,欧米諸国で移民を大規模に受け入れた結果として社会的・政治的な軋轢が生じた経験を参照した慎重論が強く主張された。そのため,特に労働力確保が必要な区域として受入れの対象区域を指定し,受け入れた外国人はその指定区域内でのみ就労できることとした上,いずれ必ず帰国し,日本への長期にわたる定住を認めないこと,さらに,受け入れた外国人に問題がある場合には迅速に出国させることが求められた。このように,外国人非熟練労働者の受入れについては,現行の出入国管理制度とは大幅に異なる枠組みが必要とされたことから,政府は,「農業及び製造業に従事する特定労務外国人の受入れに関する法律」(以下「特労法」又は「法」という。)を制定して外国人非熟練労働者のみに適用される本邦滞在制度(以下「新制度」という。)を創設し,新制度の下で受け入れる外国人については,出入国及び在留に関して,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)を適用しないこととした。
      新制度の概要は以下のとおりである(特労法の関連条文は【参考資料】のとおり。)。
      ・ 本邦において,熟練した技能や専門的知識を要しない特定の農業及び製造業の業務(以下「特定労務」という。)への就労を希望する,一定の条件を満たした外国人は,申請により,特定労務に従事する者として認証を受けることができる。
      ・ 特定労務外国人は,入管法上の在留資格を得ることなく本邦に入国し,法務大臣が指定する地域(基本的に市区町村を単位とする。)内で特定労務に就労することができる。
      ・ 滞在期間は3年とし,更新可能とする。ただし,滞在が長期間にわたったとしても,永住や帰化は認めない。
      ・ 特定労務外国人については,新制度の趣旨・目的を達成するため,滞在中の妊娠・出産を禁止するなど,本邦に滞在するに当たっての特別な禁止行為を定める(法第15条)。
      ・ 新制度の運用のため,滞在の認証に係る審査や強制出国についての審査及び強制出国命令書の発付等を行う行政官として,特定労務外国人審査官(以下「審査官」という。)を置き,新制度により滞在する外国人の違反事件の調査や,強制出国の執行等を行う行政官として,特定労務外国人警備官(以下「警備官」という。)を置く。審査官は,外国人の出入国ないし在留管理等の業務に10年以上従事した経歴があり,一定の試験に合格した者から任用する。審査官となった者は,警備官の行う業務には携わらない。
      ・ 警備官は,上記の禁止行為を行ったことが疑われる者(以下「嫌疑者」という。)を覚知したときには調査を開始し,その結果,禁止行為を行ったと疑うに足りる相当な理由があるときは,裁判官の発する令状や,行政官の事前審査に基づく収容令書など,身柄を拘束する者とは別の立場の者が強制処分のために発する書面を要しないで,嫌疑者を収容することができる。
      ・ 警備官は,嫌疑者を収容するときは,違反が疑われる事実を告知し,収容後速やかに弁解を聴取する。警備官は,収容のために身柄を拘束したときから48時間以内に,審査官に,調書及び証拠物を送付するとともに,当該嫌疑者の収容を報告しなければならない。
      ・    審査官は,警備官から報告を受けた場合,速やかに当該嫌疑者による禁止行為の存否について審査を開始し,その存在を確認した場合には,同人を強制出国とする。
      立法過程では,滞在中の妊娠・出産を認めないのは女性の自己決定権に対する制約として厳し過ぎるのではないかなど,禁止行為が厳格に過ぎるのではないかとの意見のほか,裁判官の令状等を得ることもなく,警備官限りの判断で,直ちに外国人の身柄を拘束することは手続的保障の観点から問題ではないかとの疑問が呈された。しかし,日本への長期にわたる定住を認めないという趣旨を徹底する必要性や,外国人被扶養者の増加が我が国の社会保障制度や保育,教育,医療サービス等に及ぼす影響への懸念から,この程度の制約はやむを得ないとの意見が大勢を占めるに至った。また,収容の要件が限定され,収容後に一定の手続保障は与えられていることのほか,労働力確保の要請から入管法に比して緩やかな要件で入国を認める以上,受け入れた外国人に問題がある場合には迅速に出国させることにより我が国の秩序を守り国民の安心を得る必要があること,更には外国人の入国・滞在の可否は国家の主権的判断に属するという原則等が強調され,結局,特労法が制定された。
      A国籍の女性Bは新制度に基づいて来日し,機械部品を製造する工場で特定労務に従事していた。Bは,同じく新制度に基づいて入国し,同じ工場に勤務していたA国籍男性Cと親しくなり,しばらくして妊娠した。Bは懐妊後も引き続き工事で働いていたが,Bの体型の変化に気付いた雇用主がBの妊娠について通報した。これを受けて,警備官が早速調査を開始したところ,Bが産婦人科で受診した事実も確認された。このため,警備官は,Bが妊娠しているとの疑いを強め,法第18条第1項に基づきBを拘束して出国準備センターに収容した。警備官は,収容に際し,法第18条第2項に基づき,Bに対し,滞在中に妊娠し,法第15条第8号の禁止行為に該当するため収容する旨口頭で告げた。また,警備官が,法第18条第2項に基づき,収容後速やかにBから弁解を聴取したところ,Bは,「Cとの間の子を妊娠しているのは間違いない。ただ,滞在中に妊娠することを禁じられていると知っていたので,望んで妊娠したわけではない。この先日本に定住するつもりはなく,日本である程度お金を稼いだらA国に戻りたいとの気持ちは変わらないが,Cを愛しているので今は出産したい。」旨申し立てた。さらに,警備官から報告を受けた審査官は,審査を行った結果,Bの妊娠事実を認定し,強制出国命令書を発付した。
      Bは,間もなくA国に送り返された。Bは,妊娠したことを理由にいきなり収容されて帰国させられたことが納得できず,日本政府を訴えたいと考え,引き続き日本にいるCに相談した。Bから相談を受けたCが弁護士甲に相談したところ,甲は,Bの委任を受けて,Bの収容及び強制出国の根拠となった特労法の規定が憲法違反であるとして,国家賠償請求訴訟を提起しようと考えた。
       
      〔設問1〕
      あなたが弁護士甲であるとして,上記の国家賠償請求訴訟においてどのような憲法上の主張を行うかを述べなさい。なお,憲法第14条違反については論じなくてもよい。

      〔設問2〕
      〔設問1〕で述べられた甲の主張に対する国の反論を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を述べなさい。
       

      【参考資料】農業及び製造業に従事する特定労務外国人の受入れに関する法律(抄)
      (目的)
      第1条 この法律は,我が国の農業及び製造業に必要な労働力の確保に支障が生じつつあることに鑑み,我が国において就労しようとする特定労務外国人の受入れに関して必要な措置を定めることにより,我が国の文化や秩序との調和を図りつつ,特定労務における労働力の円滑な供給を実現し,もって国民生活の安定及び社会経済の発展に資することを目的とする。
      (定義)
      第2条 この法律で,「特定労務」とは,農業又は製造業の業務のうち,その習得に相当の期間を要する熟練した技能や専門的知識を要しないものとして,法務大臣が指定したものをいう。
      (認証の付与及び認証の効果)
      第4条 法務大臣は,以下の各号を満たす外国人の申請により,当該外国人に本邦において特定労務に従事する者として認証を付与することができる。
      一 申請時点で年齢が満20歳以上45歳未満であること
      二 心身ともに健全であること
      三 本邦において特定労務への就労を希望していること
      四 本邦への帰化又は永住を希望しないこと
      五 過去に第15条各号のいずれかに該当して本邦からの出国を強制されたことがないこと
      六~八 (略)
      2 前項の認証を受けた外国人(以下「特定労務外国人」という。)は,出入国管理及び難民認定法(昭和26年10月4日政令第319号。以下「入管法」という。)の規定にかかわらず,本邦に入国し,滞在することができる。
      3 特定労務外国人のは,法務大臣が告示により指定する特別区域内において,特定労務に従事することができる。
      4 特定労務外国人の認証は,認証を受けた日から3年を経過した時又は本邦を出国した時のいずれか早い時に,その効力を失う。ただし,特定労務外国人は,申請により認証期間の更新を受けることができる。
      5 特定労務外国人については,別段の定めがない限り,入管法の規定は適用しない。
      (認証の申請に必要な書類)
      第5条 外国人は,特定労務外国人の認証の申請に際し,次に掲げる書類を提出しなければならない。
      一~四 (略)
      五 第15条各号に掲げる事項を理解した上で同事由に該当する行為をしない旨を誓約する書面
      (禁止行為)
      第15条 特定労務外国人は,次に掲げる行為をしてはならない。
      一~五 (略)
      六 正当な理由なく,特定労務を継続して1月以上行わないで滞在すること
      七 本邦内において配偶者又は子(日本国民及び入管法上の在留資格を有する者を除く。)を扶養すること
      八 本邦滞在中に妊娠し又は出産すること
      (収容)
      第18条 特定労務外国人警備官(以下「警備官」という。)は,特定労務外国人について第15条各号に該当する事実があると疑うに足りる相当な理由がある場合には,当該特定労務外国人(以下「嫌疑者」という。)を収容することができる。
      2 前項の規定によって収容するときは,警備官は,嫌疑者に対し,収容の理由を口頭で告知し,収容後速やかにその弁解を聴取しなければならない。
      3 第1項の規定によって収容する場所は,出国準備センターとする。
      4 警備官は,第1項の規定により嫌疑者を収容したときは,嫌疑者の身体を拘束した時から48時間以内に,特定労務外国人審査官(以下「審査官」という。)に,調書及び証拠物を送付し,当該嫌疑者の収容を報告しなければならない。
      5 第1項の規定による収容は,14日を超えてはならない。
      (収容後の審査官による審査)
      第19条 審査官は,前条第4項の規定により嫌疑者の収容に関する報告を受けたときは,速やかに審査を開始し,第15条各号に該当する事実の有無を確認しなければならない。
      2 審査官が,審査の結果,嫌疑者に第15条各号に該当する事実がない又は当該事実の存否が明らかでないと認定したときは,警備官は,直ちにその者を放免しなければならない。
      3 審査官は,審査の結果,嫌疑者に第15条各号に該当する事実が存在すると認定したときは,速やかに強制出国命令書を発付しなければならない。
      4 前条第5項の規定にかかわらず,前項の強制出国命令書が発付されたときは,出国の時まで前条第1項に基づく収容を継続することができる。
      (強制出国命令書の執行)
      第23条 強制出国命令書は,警備官が執行する,
      2 警備官は,強制出国命令書を執行するときは,強制出国命令を受ける者に強制出国命令書又はその写しを示して,速やかにその者の国籍又は市民権の属する国に出国させなければならない。

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