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      2017年本試験問題(商法)

      【民事系科目】

      (第2問)(配点:100((設問1)から(設問3)までの配点の割合は、35:40:25))
      次の文章を読んで、後記の(設問1)から(設問3)までに答えなさい。

      1.    A及びBは、Cから、加工食品の製造業及び卸売業を営む甲株式会社(以下「甲社」という。)を設立するので、協力してほしいと頼まれた。そこで、甲社の設立に際し、Aは、唯一の発起人となるとともに、甲社の設立に際して発行される株式の一部を引き受け、出資の履行として1200万円を払い込み、Bは、発起人とならなかったが、残りの株式を引き受け、出資の履行として1800万円を払い込んだ。
      2.    Aは、甲社の設立手続を進める上で、当初の1ヶ月間は、設立事務を行う事務所と設立事務を補助する事務員が必要であると考えた。そこで、Aは、Dから、平成23年5月9日、「甲社発起人A」の名義で、事務所用建物を、賃貸期間を1ヶ月に限り、賃料を後払いで60万円とする約定により賃借した。また、Aは、同月12日、「甲社発起人A」の名義で、Eを、設立事務を補助する事務員として、期間を1ヶ月に限り、報酬を後払いで40万円とする約定により雇用した。なお、当該賃料及び当該報酬は、相場に照らし、いずれも適正な金額であった。
      3.    Aは、Fとの間で、平成23年5月13日、「甲社発起人A」の名義で、設立後の甲社の事業に用いる目的で、食品加工用の機械(以下「本件機械」という。)を、甲社の成立を条件として、本件機械の引渡し及び代金の支払の期日をいずれも同年7月29日とし、代金を800万円とする約定により、甲社がFから購入する契約(以下「本件購入契約」という。)を締結した。
      4.    平成23年6月14日、甲社の設立登記がされた。公証人の認証を受けた甲社の定款には、設立費用については「設立費用は80万円以内とする。」との記載のみがあり、また、甲社の成立を条件として特定の財産を譲り受けることを約する契約については記載がなかった。なお、当該設立費用については、裁判所の選任した検査役の調査等の必要な手続を経ていた。
      甲社は取締役会設置会社かつ監査役設置会社であり、甲社の代表取締役はCである。甲社の設立時の株主は、A及びBの二人のみであり、甲社の発行済株式及び総株主の議決権のいずれも、40%はAが、60%はBが、それぞれ保有している。甲社の純資産額は、設立後、数ヶ月の間、3000万円を超えることがなかった。
      5.    甲社は、Fから、平成23年6月16日、本件機械について代金として50万円を追加する用に要求されるとともに、この要求に応じないのであれば、本件購入契約の有効性を問題とし、本件機械の引渡しに応じないと主張された。

      【設問1】
      (1)    Aは、Dに対して上記2の賃料60万円を、Eに対して上記2の報酬40万円を、いずれも支払っておらず、甲社は、その成立後、直ちに、D及びEから、これらの支払いを求められた。この場合において、甲社がこれらの支払を拒否することができるかどうかについて、判例の立場及びその当否を検討した上で、論じなさい。
      (2)    甲社の代表取締役Cは、本件機械が甲社の事業活動に不可欠であったことから、上記5のFの要求に応じることもやむを得ないが、できれば代金を追加して支払うことなく本件機械の引渡しを受けたいと考え、平成23年6月20日頃、その旨を弁護士に相談した。当該弁護士の立場に立って、本件購入契約に関する会社法上の問題点について論じた上で、それを踏まえつつ、甲社が本件機械の引渡しを受けるために採ることができる方法及びこれに必要となる会社法上の手続について、検討しなさい。

      6.    平成27年12月、甲社の取締役会は、甲社と取引関係があった加工食品の小売販売業
      を営む乙株式会社(以下「乙社」という。)が経営不振に陥り、乙社から援助を求められたことを受け、乙社の全ての発行済株式を取得して、乙社を完全子会社化した上で、乙社の経営を立て直すことを決定した。乙社を完全子会社化するのは、甲社の経営方針に反対する少数株主を排除するためであった。
      乙社は、会社法上の公開会社であるが、金融商品取引所にその発行する株式を上場していない。乙社は、種類株式発行会社ではなく、その定款には、その発行する株式について株券を発行する定めや単元株式数に関する定めはない。なお、乙社の定款のうち、本問に関係する定めは別紙の1のとおりである。
      7.    甲社は、乙社の株式を買い集め、乙社の発行済株式の60%に当たる6000株を取得した。乙社の取締役はいずれも乙社が甲社の完全子会社となることに賛成していたが、乙社の創業者の一族である株主Gは、乙社が甲社の完全子会社となることに強硬に反対し、甲社からの株式売却の勧誘にも一切応じない姿勢を見せていた。
      8.    乙社は従業員持株制度を採用しており、乙社の従業員のうち希望者が従業員持株会に加入している。当該従業員持株会(以下「本件持株会」という。)は、平成28年3月31日の時点で、乙社の従業員20人から成る民法上の組合であり、乙社の株式を1200株取得しており、当該1200株については下記9のとおり株主名簿に株主として本件持株会の理事長であるHが記載されている。本件持株会の会員は、積立口数に応じて本件持株会が保有する乙社の株式について持分を有し、各自の持分に相当する株式を管理の目的をもって理事長に信託している。すなわち、当該1200株については、実質的には、本件持株会の会員である従業員20人が、その持分に応じて、保有していることとなる。本件持株会の規約のうち本問に関係する定めは別紙の2のとおりである。なお、本件持株会の規約の内容は適法であり、当該規約に基づく株式の信託を無効とする事由はない。
      9.    平成28年3月31日の最終の株主名簿に記載された乙社の株主及びその持株数は、次のとおりであった。
      甲社:6000株、G:2000株、乙社従業員持株会(本件持株会)理事長H:1200株、I:800株
      10. 甲社と乙社の取締役が話し合った結果、乙社を甲社の完全子会社とするため、乙社は、株式の併合をすることとなった。乙社の代表取締役Jは、取締役会の決議に基づき、平成28年6月1日に定時株主総会の招集通知を発した。当該召集通知には、株主総会の目的の一つが株式の併合であること、株式の併合に係る議案の概要として、①3000株を1株に併合すること、②株式の併合がその効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)を同年7月11日とすること、③効力発生日における発行可能株式総数を効力発生日における発行済株式の総数の4倍に当たる数とすることが記載されていた。他方で、株主総会に出席しない株主が書面又は電磁的方法によって議決権を行使することができることとする旨は記載されていなかった。
      乙社は、当該召集通知を発した日に、上記①から③までの事項を公告するとともに、上記①から③までの事項を含む株式の併合に関する所定の事項を記載した書面を本店に備え置いた。
      11. 上記10の召集通知に基づき平成28年6月20日に開催された乙社の定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)には、Gのほか、甲社の代表取締役Cが甲社を代表して出席し、また、本件持株会の発足以来その会員であるKが本件持株会理事長Hの代理人として出席した。Kは、その際、本件株主総会において議決権行使の代理人をKとする旨のHが作成した委任状を乙社に提出した。なお、本件持株会の会員でHに対し本件株主総会における議決権行使についての特別の指示をしたものはいなかった。
      12. Iは平成27年10月1日に死亡し、Iの唯一の相続人であるLが、Iが保有していた乙社株式800株(以下「本件株式」という。)を相続した。Lは、Iの生前から、乙社の株主名簿上のIの住所においてIと同居しており、Iが死亡した後も、引き続き同所において居住している。Lは、Iの生前から、Iが本件株式を保有していたことを知っていたものの、本件株式を相続により取得した後も、本件株式について株主名簿の名義書換えを請求していなかったが、I宛ての本件株主総会の召集通知を受け取った日の翌日である平成28年6月3日、乙社に対し、相続により本件株式を取得したことを証する書面を提示して株主名簿の名義書換えを請求するとともに、上記10の株式の併合に反対する旨を乙社に通知した。乙社は、同日、Lの請求のとおり株主名簿の名義書換えを行った。
      本件株主総会の当日、Lは、本件株主総会の会場に現れ、入場を求めたが、乙社の受付担当者は、乙社の代表取締役Jの指示に基づき、Lが本件株主総会に係る議決権行使の基準日において株主名簿上の株主でなかったことを理由として、Lの入場を認めなかった。
      13. 本件株主総会において、乙社の代表取締役Jは、株式の併合をすることを必要とする理由として、①株主への通知や配当金の支払いに掛かるコストを削減するために株主の人数を減少させる必要があること、②乙社は、数年後に、会社の事業規模に合わせて資本金の額を減少する予定であり、そのためには、会社法上、発行済株式の総数を減少させる必要があることの2点を説明したが、乙社を甲社の完全子会社とした上で甲社の支援により乙社の経営を立て直すという本来の目的については説明しなかった。
      14. 本件株主総会において、上記10の株式の併合の議決については、Gが反対したが、甲社及びHの代理人であるKが賛成したことにより、可決された。(以下「本件議決」という。)

      【設問2】Gは、本件決議の瑕疵を主張して、本件決議の効力を否定することを検討している。平成28年7月20日の時点で、本件決議の効力を争うためにGの立場において考えられる主張及びその当否について、論じなさい。

      【設問3】上記10の株式の併合により乙社の株式を失うこととなるLの経済的利益が会社法上どのように保護されるかについて、論じなさい。ただし、株式の併合をやめることを請求し、株式の併合の効力を否定し、又は損害賠償を請求するという手段については、論じなくてよい。


      別紙

      1 乙株式会社定款(抜粋)
      (なお、以下の定めは、設立時から本件株主総会の終結の時までの間、変更されていない。)

      (定時株主総会の基準日)
      第11条 当会社は、毎年3月31日の最終の株主名簿に記載された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において議決件を行使することができる株主とする。
      (決議)
      第15条 株主総会の普通決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合のほか、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する。
      2 会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。
      (議決権の代理行使)
      第16条 株主は、当会社のほかの株主1名を代理人として、その議決権を行使することができる。

      2 乙株式会社従業員持株会規約(抜粋)
      (株式の管理及び名義)
      第10条 会員は、各自の持分に相当する株式を管理の目的をもって理事長に信託するものとする。
      2 前項により理事長が受託する株式は、株主名簿において理事長名義とする。
      (議決権の行使)
      第11条 理事長名義の株式の議決権は、理事長が行使するものとする。ただし、会員は各自の持分に相当する株式の議決権の行使について、理事長に対し、株主総会ごとに特別の指示を与えることができる。

       

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