弁理士試験 免除制度 徹底解剖!!

弁理士試験 免除制度 徹底解剖!!

弁理士試験の合格の王道パターンは

1年目:短答式筆記試験 合格➡2年目:論文式筆記試験&口述試験 合格

です。

毎年、およそ6割の受験者がこのパターンを経て弁理士試験の合格を勝ち取っていきます(平成29年度弁理士試験における短答式筆記試験免除から合格した割合は63.9%)。

ただ、そもそも弁理士試験は短答式筆記試験・論文式筆記試験・口述試験の3つで構成されているのにもかかわらず、何故そのような合格パターンが可能なのでしょうか。

それは、弁理士試験に免除制度が存在するからです。

1回の受験で3つの試験に受かることができればそれが理想ではありますが、そううまくはいかない結果として免除制度の恩恵にあずかる方が多くなっているという状況にあるようです。

これが意味するのは、免除制度について理解を深めておくことも重要である、ということです。

そこで、今回は弁理士試験の免除制度についてお話ししたいと思います。

1. 弁理士試験 免除制度とは

弁理士試験の免除制度とは、条件を満たす方が必要とされる手続きを経ることで弁理士試験の一部を受けなくてもよくなる制度のことをいいます。

具体的には、短答式筆記試験の免除、論文式筆記試験(必須科目)の免除、論文式筆記試験(選択科目)の免除、口述試験の免除の4つが考えられます。

(1)短答式筆記試験 免除

該当者
免除内容
短答式筆記試験合格者
……①
短答式筆記試験の合格発表日から2年間、全ての試験科目が免除
工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了した方(平成20年1月以降に進学した方)
……②
大学院の課程修了日から2年間、工業所有権に関する法令・条約の試験科目が免除
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
……⑦
工業所有権に関する法令・条約の試験科目が免除

(2)論文式筆記試験(必須科目) 免除

該当者
免除内容
論文式筆記試験(必須科目)合格者
……③
論文式筆記試験の合格発表日から2年間、必須科目が免除
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
……⑦
必須科目が免除

(3)論文式筆記試験(選択科目) 免除

該当者
免除内容
論文式筆記試験(選択科目)合格者
……④
論文式筆記試験の合格発表日から永続的に選択科目が免除
修士又は博士の学位を有する方
……⑤
論文式筆記試験(選択科目)の「科目」に関する研究により学校教育法第104条に規定する修士又は博士の学位を有する方のうち、学位授与に係る論文の審査に合格した場合、選択科目が免除
専門職の学位を有する方
……⑤
論文式筆記試験(選択科目)の「科目」に関する研究により学校教育法第104条第1項に規定する文部科学大臣が定める学位を有する方のうち、専門職大学院が終了要件として定める一定の単位を修得し、かつ当該専門職大学院が終了要件として定める論文(前記単位には含まない)の審査に合格した場合、選択科目が免除
公的資格(技術士、一級建築士、第一種電気主任技術者、第二種電気主任技術者、薬剤師、情報処理技術者、電気通信主任技術者、司法試験合格者、行政書士、司法書士)を有する方
……⑥
各資格に対応する選択科目が免除
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
……⑦
選択科目が免除

(4)口述試験 免除

該当者
免除内容
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
……⑦
口述試験が免除

▼弁理士試験制度そのものについて気になった方は以下の記事をご参考ください。

弁理士試験制度 徹底解剖‼

2. 弁理士試験 免除制度申請手続の概要

上記の説明で、そもそも免除制度とは何なのか、どのような条件であると免除を受けることができるのかについて、わかっていただけたと思います。

免除制度の定義でも触れたように、ただ条件を満たしていれば免除を受けられるというわけではありません。

申請に必要な書類を提出するといった手続きを踏まなければなりません。

そこで、ここではそれぞれの条件にある人たちがどのような免除申請手続きが必要かについてお話ししたいと思います。

(1)短答式筆記試験合格者”>①短答式筆記試験合格者

短答式筆記試験合格者は、合格した年から2年間短答式筆記試験の免除を受けることができます。

翌年ないし翌々年に実際に短答式筆記試験免除の申請をする場合、受験願書に免除を受ける旨の記載をし、証明する書面を受験願書とともに提出する必要があります。

証明のための書面としては、弁理士試験短答式筆記試験合格通知のコピーが必要となります。

(2)短答式筆記試験一部科目免除者

工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了した方は、短答式筆記試験の一部の科目の免除を受けることができます。

実際に短答式筆記試験一部科目免除の申請をする場合、願書の提出に先立って工業所有権審議会から免除資格認定を受ける必要があります。

事前審査のためには、弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定申請書を工業所有権審議会会長あてに郵送にて提出します。

その際に、必要事項を記入した弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定申請書とともに大学院修了証明書、大学院成績証明書及び授業概要証明書を添付します。

それから、受験願書に免除を受ける旨の記載をし、証明する書面を受験願書とともに提出する必要があります。

証明する書面としては、弁理士試験論文式筆記試験科科目免除資格通知のコピー事前申請により工業所有権審議会会長から交付された弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定通知書及び弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格条件付認定通知書、大学院修了証明書及び大学院成績証明書が必要となります。

(3)論文式筆記試験(必須科目)合格者

論文式筆記試験(必須科目)合格者は、合格した年から2年間論文式筆記試験(必須科目)の免除を受けることができます。

翌年ないし翌々年に実際に論文式筆記試験(必須科目)免除の申請をする場合、受験願書に免除を受ける旨の記載をし、証明する書面を受験願書とともに提出する必要があります。

証明のための書面としては、弁理士試験論文式筆記試験科目免除資格通知のコピーが必要となります。

(4)論文式筆記試験(選択科目)合格者

論文式筆記試験(選択科目)合格者は、合格した年から永続的に論文式筆記試験(選択科目)の免除を受けることができます。

翌年以降、実際に論文式筆記試験(選択科目)免除の申請をする場合、受験願書に免除を受ける旨の記載をし、証明する書面を受験願書とともに提出する必要があります。

証明のための書面としては、弁理士試験論文式筆記試験科目免除資格通知のコピーが必要となります。

(5)『選択科目』に関する研究により修士、博士又は専門職の学位を有する方

『選択科目』に関する研究により修士、博士又は専門職の学位を有する方は、その研究に対応する論文式筆記試験(選択科目)の免除を受けることができます。

実際に論文式筆記試験(選択科目)免除の申請をする場合、願書の提出に先立って工業所有権審議会から免除資格認定を受ける必要があります。

事前審査のためには、弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定申請書を工業所有権審議会会長あてに郵送にて提出します。

その際に、必要事項を記入した弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定申請書とともに各々の学位によって大学院修了証明書、大学院成績証明書及び授業概要証明書を添付します。

各学位の必要書類の対応表は以下の通りです。

博士
修士
専門職
選択科目免除資格認定申請書
学位取得証明書
又は
大学院修了(見込)証明書
大学院成績証明書
指導教授又はこれに準ずる者の証明のある学位論文概要証明書
修了要件証明書

※〇:必要 -:不要
※提出書類はすべて原本

 

それから資格認定に審査を通過の上、受験願書に免除を受ける旨の記載をし、証明する書面を受験願書とともに提出する必要があります。

証明する書面としては、弁理士試験論文式筆記試験科科目免除資格通知のコピーと事前申請により工業所有権審議会会長から交付された弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定通知書及び弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格条件付認定通知書、大学院修了証明書及び大学院成績証明書が必要となります。

(6)定められた他資格を有する方

公的資格を有する方は、その資格に対応する選択科目の免除を受けることができます。

実際に免除を申請する場合、弁理士試験の受験願書提出時に当該資格を有する証明書を添付する必要があります。

証明書は各資格によって異なります。

各資格の免除となる科目及び必要とされる証明書の対応表は以下の通りです。

資格
免除科目
必要証明書
技術士
理工Ⅰ(機械・応用力学)
理工Ⅱ(数学・物理)
理工Ⅲ(化学)
理工Ⅳ(生物)
理工Ⅴ(情報)
のいずれかの科目
技術士登録等証明書(原本)
一級建築士
理工Ⅰ(機械・応用力学)
一級建築士免許証の写し
(各都道府県の建築士会で原本照合を受けたものに限る)
第一種又は第二種電気主任技術者
理工Ⅱ(数学・物理)
電気主任技術者免状の写し
薬剤師
理工Ⅲ(化学)
薬剤師免許証の写し
情報処理技術者
理工Ⅴ(情報)
情報処理技術者試験合格証明書(原本)
(合格証書とは異なるため、合格証書の原本を送付しても免除は認められない)
電気通信主任技術者
理工Ⅴ(情報)
電気通信主任技術者資格者証の写し
司法試験
法律(弁理士の業務に関する法律)
司法試験合格証明書(原本)
司法書士
法律(弁理士の業務に関する法律)
登録事項証明書(原本)
行政書士
法律(弁理士の業務に関する法律)
登録事項証明書(原本)

(7)特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方

特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方は、短答式筆記試験における工業所有権に関する法令・条約の試験科目、論文式筆記試験、口述試験の免除を受けることができます。

すなわち、短答式筆記試験の主要四法(特許法・実用新案法、意匠法、商標法)と下三法のうち著作権法、不正競争防止法の分野で合格点に達すれば弁理士資格を手に入れることができるのです。

実際に免除の申請をする場合、受験願書に免除を受ける旨の記載をし、証明する書面を受験願書とともに提出する必要があります。

証明のための書面としては、特許庁において審判又は審査の事務に従事した期間が通算して5年以上になるものであることを特許庁長官が証明する書面が必要となります。

本記事は特許庁のWebサイトの情報に基づいて作成いたしました。
免除申請のプロセスについてより詳しく知りたい方は、直接特許庁のWebサイトをご確認することをオススメいたします(参照:特許庁-弁理士試験のご案内 4.弁理士試験の免除制度について)。

3. 弁理士試験データ ~免除者バージョン~

上記の説明で、免除を受けることができる人がどのような書類を準備しどういった手続きをすることで実際に免除を受けることができるかについてわかっていただけたと思います。

免除を申請するにも書類の提出や申請の準備などそれなりの労力が必要であるのです。

申請にそれなりに労力を要するということは、その分価値がある、あるいは価値が見込まれるから申請という面倒な手続きを行えるという側面があると思います。

そこで、ここでは実際の弁理士試験の免除制度を利用した方のデータを見ることでその真意を探っていきたいと思います。

(1)最終合格者

▶短答式筆記試験免除者が合格者全体の半分以上を占める

弁理士試験合格者 内訳 短答免除 論文免除

上記は、年度別弁理士試験合格者の免除に関するステイタスの内訳をあらわしたグラフです。

グラフからわかるように、合格者のうち短答式筆記試験の免除者の割合が最も高いことが分かります。

実際、平成21~29年度の弁理士試験合格者における短答式筆記試験免除者の割合の平均値は52.0%と過半数であることがわかります。

また、何かしらの免除を受けている人の合格率はおよそ72.3%と免除を受けない合格者の割合よりはるかに高いこともわかります。

やはり、免除制度を利用することの価値は一定程度あると言えます。

(2)短答式筆記試験

▶免除制度を利用する人の合格率は減少傾向

▶免除制度を利用せず普通に受ける方の合格率は安定している

弁理士短答式筆記試験 免除制度利用別合格率

上記は、弁理士短答式筆記試験における免除制度利用別の合格率の推移をあらわしたグラフです。

グラフからもわかるように、免除制度を利用する人の合格率は減少傾向にあることが分かります。

ここから分かるのは、短答式筆記試験においては免除制度を申請したからと言って必ずしも合格しやすくなるとは限らないということです。

また、免除制度を利用しない一般受験者の合格率は安定しているということもわかります。

実際それぞれの標準偏差を出してみると、一部科目免除者は15.4%、工業所有権法免除者は21.9%であるのに対して、一般受験者は7.0%と相対的にもかなり低い値となっています。

(3)論文式筆記試験

▶免除しない一般の方と選択科目免除者の合格率はほぼ同じ

弁理士論文式筆記試験 免除制度利用別合格率

上記は、弁理士論文式筆記試験における免除制度利用別の合格率の推移をあらわしたグラフです。

グラフからもわかるように、免除制度を利用しない人と選択科目の免除を利用する人の合格率は似たような数値であることが分かります。

ここから示唆されるのは、論文試験においては選択科目の免除の有無が大きく影響はしないということです。

すなわち、合否を大きく分けるのは選択科目の免除申請の有無にかかわらず受ける必須科目の出来であるということです。

▼免除制度利用者に絞らない受験者全体の弁理士試験データについて気になった方は以下の記事をご参考ください。

弁理士試験制度 徹底解剖‼

4. 弁理士試験 免除制度のメリット・デメリット

これまでの説明で、免除制度の利用は申請するのにそれなりの労力はかかるものの申請するだけの価値はあると考えられるということまでは分かっていただけたと思います。

しかし、そこには注意すべき論理が存在します。

そこで、ここでは弁理士試験の免除制度を利用するメリット・デメリットを見ることで注意すべき論理について言及したいと思います。

(1)免除制度のメリット

免除制度を利用する最大のメリットは、絞られた分野のみに注力して勉強できる点です。

普通なら1年で3つの試験を受けなければならないところを2つないし1つに減らすことができる、あるいは勉強しなければならない科目数を減らすことができるのは、1試験ないし1科目あたりに費やせる勉強時間を増やせることを意味します。

科目数が多い弁理士試験においては、的を絞って勉強できるのはかなり効果的です。

特に、弁理士試験を受けようとする段階で①理系の大学院出身者、②他資格保有者、である場合は免除を受けられる可能性が非常に高いですから免除制度を利用しない手はないと思います。

(2)免除制度のデメリット

免除制度を利用することのデメリットとしては2点考えられます。

1つ目は、シナジーが働かない点です。

弁理士試験を構成する3試験のうち、特に難しいとされる短答式筆記試験と論文式筆記試験ではそれぞれに特徴があります。

論文式筆記試験では基礎的な内容が問われるのに対して、短答式筆記試験では例外部分や細かい部分が問われます。

したがって、論文式筆記試験・短答式筆記試験を両方とも勉強していくことで基礎的な内容と応用的な内容を同時に学んでいくため相乗効果を働かせながら勉強を進めていくことができます。

しかしながら、免除制度を利用して片方に注力する場合は、この相乗効果が薄くなってしまう場合があります。

これは、同時に勉強を進めることによるシナジーが生み出す効率性の恩恵を受けにくくなります。

2つ目は、油断を生む可能性がある点です。

片方に注力することで、かけられる時間が増えること自体は良いことのように思えますが、人によってはその”余裕”をうまく利用できずかえってマイナスに働く場合があります。

やらなければならないことが多い状況では余裕がないためにひたすら勉強に注力できるのに対して、余裕が生まれることでかえって緊張感が失われ計画性や効率性がなくなってしまうこともあるのです。

このように、メリットとデメリットを考慮した上で、免除制度の利用に関して間違っていなければならない論理があります。

それは、免除制度は目的ではなく手段であるということです。

弁理士試験を受ける方にとっての最大の目的は無論、弁理士試験に合格することであり、合格可能性を高めるための手段として免除制度の利用はあるのです。

すなわち、すでに免除を受けることのできるステイタスにある方であれば免除を申請しない理由はないですが、免除制度を利用するために別の資格や新しい科目に手を出すのはリスクが高く、見当違いなのです。

人によっては割り切ってその年は短答だけをとりに行く戦略をとる方もいるかもしれませんが、弁理士試験は1年に1度しか行われないために必然的に2年計画ということになります。

自分の状況やバックグラウンドを熟考した上で非効率的で遠回りにならないかをしっかり見極める必要があるのです。

5. 終わりに

今回は、弁理士試験の免除制度についてお伝えしてきました。

免除制度がそもそもどのようなものであるかについてはもちろん、実際に免除制度を利用することで合格可能性を高められるのか、各々の状況によっては免除制度が弁理士試験合格にとって遠回りになることがあるということをわかっていただけたと思います。

各々の現在の状況をしっかり熟考した上で、弁理士試験の合格に最善の選択をしていただきたいと思います。

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