行政書士は「稼げない」?業務内容・平均年収・給料を徹底解説

行政書士は「稼げない」?業務内容・平均年収・給料を徹底解説

はじめに

国家資格である行政書士の資格があれば、1万種類以上の許認可業務・中小企業の経営&財政コンサルタント業務を担当することが出来ます。

毎年4万人以上が受験する人気資格ですが、ここでこんな疑問を抱きがちではないでしょうか。

・そもそも行政書士とはどんな業務をするのか。

・あまり稼げないと聞くが、平均年収・生涯年収給料はどのくらいか。

・試験の難易度や、稼ぐコツを知りたい。

上位資格である司法書士・弁護士に隠れがちな行政書士の特徴を、年収を中心に紹介します。

1、行政書士の平均年収は?

行政書士の平均年収について、公式で統計調査が行われたことはありません。

国税庁・厚生労働省・日本行政書士会連合の調査から独自に算出したところ、およそ600~700万円程度と考えられます。

独立開業した行政書士・副業行政書士の一部は3,000万円を超えている一方で、200万円台の低所得層も広く、二極化しているのが現状です。

2、行政書士の業務内容とは

行政書士の業務内容は他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類・権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」と定められています。

引用(一部要約):行政書士法第1条2項

言い換えると、行政書士の仕事は「法的効力を持つ書類に関する作成・手続き代理・作成に関する相談業務」です。扱える書類や手続きを大別すると5類となり、それぞれの具体的な内容は次の通りです。

・官公署に提出する書類作成(行政書士の独占業務)

l  各種許認可・営業許可の申請書類(飲食業や旅館営業許可など1万種類以上)

l  在留外国人に関する申請書類(在留資格認定証明書交付申請・同変更または期間更新許可・永住許可申請など)

l  自動車に関する申請書類(自動車登録・名義変更・車庫証明・廃車手続き・運転代行業許可申請など)

・権利義務に関する書類作成

l  起業・開業の際の定款

l  相続関連の書類(遺言書・遺産分割協議書)

l  著作権・知的財産権の登録申請

l  各種契約書(贈与・売買・賃借・示談・委任など)

l  内容証明

l  告発状・告訴状

l  嘆願書・陳述書

・事実証明に関する書類作成

l  実地調査に基づく土地建物等の測量図

l  議事録

l  財務諸表(会計帳簿・貸借対照表・損益計算書)

・中小企業向けの助成金申請手続き・手続きに関するアドバイス

・行政処分に関する不服申し立て書類

※不服申し立ては日本行政書士連合会で定める研修を終えた「特定行政書士」のみ可能です。

最も需要が多いのは、営業許可の申請書類・法人の定款作成業務です。

ここで紹介した①の各書類は、行政書士のみに許された業務範囲です。

上位資格と位置付けられがちな司法書士では扱えません。

このような特徴から、行政書士は「街の法律家」「代書屋」との異名を持ち、起業・会社設立・個人商店開業にとって欠かせない存在です。

行政書士になるための資格

行政書士として活躍するためには、行政書士試験に合格するか他の要件を満たす必要があります。

l  行政書士法に定める資格保有者

l  行政書士試験合格者

l  弁護士

l  弁理士

l  公認会計士

l  税理士

l  公務員または特定独立行政法人で、通算20年間(高卒以上は17年以上)以上行政事務を担当した者

これらの要件を満たし、日本行政書士会連合に登録すると行政書士業務を担当することができます。

3、年齢別!行政書士の年収推移と生涯年収は?

まずは行政書士の年齢分布を紹介します。

行政書士の年齢分布

61~70歳:35.6%
71歳以上:19.9%
51~60歳:17.9%
41~50歳:17.3%
31~40歳:8.0%
20~30歳:0.8%
不明(無回答):0.5%

参考:日本行政書士会連合の統計調査結果

60歳以上のシニア行政書士が全体のほぼ半数を占めています。

この背景として、行政書士に定年が存在しないこと・地域密着型の活動スタイルが多いため必然的に高齢化しやすいことが考えられます。

次に、年齢別の平均年収を紹介します。

行政書士の年齢別平均年収(概算)

年齢

平均年収

国内全体の平均年収

20代

380万円

346万円

30代

490万円

455万円

40代

630万円

541万円

50代

700万円

661万円

60~65歳

460万円

262万円

70歳以上

400万円

237万円

20~30代までは、国内全体の平均年収とほとんど差はありません。シニア世代は平均の約1.5倍程度の高所得です。

生涯年収(生涯給料)

日本の平均生涯年収は2億1800万円(2017年度調べ)とされています。

これに対し、行政書士の生涯年収予測は3~5億にも及びます。30~65歳の間行政書士として活動したときの推定生涯年収は、それぞれ以下の通りです。

法律事務所で勤務した場合:2億9,000万円

独立開業した場合:3億2,000万円

※国税庁統計情報・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を元に概算

4、役職、企業の大きさ、仕事の内容で変わる行政書士の年収!

行政書士としての活動方法には、大別して次の3パターンがあります。

※それぞれ、国税庁の統計資料・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」・日本行政書士会連合が発刊する「月刊日本行政」の統計情報を元にした概算です。

(1)独立開業するパターン

個人事業主として開業するか、法人化により従業員や他行政書士を雇用して「腕一本」で稼ぐスタイルです。

65歳以上になっても自由意思で働けて、継続的な顧客獲得に成功すれば年収2,000万~3,000万も実現可能です。

市場に食い込むにはハイレベルなマーケティング戦略が必要となるため、挫折する人が多いのも現状です。

独立開業している行政書士の平均年収

東京

約1,000万円

大阪

約1,100万円

全国平均

約860万円

大阪は在留外国人申請手続きが多いという背景があり、この業務に特化している行政書士が平均年収引き上げに貢献しています。

(2)雇われ行政書士(企業規模・役職別年収)

行政書士事務所・法律事務所に転職し、会社員として行政書士の業務に臨むスタイルです。

雇用形態上、定年退職は避けられないため、一生ものの仕事として考える場合は独立開業を目指す必要があります。

雇われ行政書士の平均年収

東京

690万円

大阪

580万円

全国平均

510万円

被雇用者として働く場合、サラリーマンとしてはごく普通の平均年収となります。

次に、企業規模別の平均年収を紹介します。

企業規模別・雇われ行政書士の平均年収

所属する企業規模

平均年収

大企業

700万円

中企業

410万円

小企業

360万円

大企業と中小企業で大きく差が開いていることが分かります

小規模な会社で行政書士として働く場合は、資格を生かすための手段を再考する必要があります。

厚生労働省の最新の賃金統計調査から、さらに役職別の平均収入も概算することができます。

役職別・雇われ行政書士の平均年収

役職

平均年収

非役職者

320万円

係長級

620万円

課長級

730万円

部長級

910万円

役職者は全国の平均年収を大きく上回り、社内で十分に法令知識が活用できていることが推察できます。

(3)副業行政書士

近年増えてきた「主な仕事は別にあり、収入アップ目的や業務上必要になった場合のみ行政書士業務を行う」という形です。

異業種でキャリアアップ中の人が行政書士資格をとって実務を担当しはじめる場合も、副業行政書士となります。

副業行政書士をしている人の年収(税申告されている副業収入)

東京

120万円

大阪

90万円

全国平均

34万円

課税されない年額20万円以下の稼働率の人も多く、全体的に低めの水準となっています。

5、行政書士として稼ぐには?

登録行政書士の数は、2018年5月時点で46,915名にも及びます。

行政書士には定年がなく65歳以上になっても働けるのがメリットですが、登録行政書士の9割程度は5年以内に廃業してしまうのが現状です。

営業許可や起業をメイン業務として開業する場合、地元密着型でコツコツ信頼を積み上げてきたライバルと差をつけるのは至難の業でしょう。

行政書士として生計を立てるのであれば、新しいニーズを開拓したり、異業種での経験を活かしたりする必要があります。

(1)稼げない行政書士の特徴

士業と言っても、登録さえすれば仕事が舞い込んでくるというわけではありません。

行政書士の本質は営業マンであり、積極的学習や営業を行わないとたちまち廃業に追い込まれます。

  • マーケティング戦略がない
  • 相続や会社設立等の地域密着型ジャンルに固執する
  • ITや次世代技術や社会情勢に疎い

近年は士業にも全国化・IT化の並が押し寄せており、業務内容の変化についていけなくなったという失敗談も多く聞かれます。

(2)稼げる行政書士の特徴

行政書士として成功するには、何よりも顧客の悩みやニーズを理解して営業戦略をしっかり練ることが大切です。

  • マーケティングについて経験・知識を取り入れている
  • 異業種の経験や人脈を生かしている
  • 本業行政書士ではなく、副業として収入を得ている

業務内容・ターゲットをかなり限定的な範囲まで絞り込む傾向にあることも、売上や収入を延ばす行政書士の特徴です。

近年行政書士が活躍している業務分野としては、インバウンド需要に伴う在留資格関係の申請手続き・旅館営業法申請です。

これだけで年商3,000万円に達する行政書士が多数出ています。

時流に乗って「自分の専門分野・最も得意とする業務」を見つけることに成功すれば、現役中の年収給与の総額を3~5億まで伸ばすことは難しくありません。

(3)ダブルライセンスを持つ行政書士の割合

日本行政書士会連合によると、2018年5月のアンケートで回答を得た4,338人の司法書士のうち、約半数にあたる2,308人が他の国家資格を取得して活躍しています。

弁護士・弁理士・公認会計士・税理士は、行政書士としての業務も認められているので、表中の計約30%は、行政書士試験の合格者ではないと考えられます。

法人に関する各種手続き(特に営業許可申請)は、行政書士が得意とする業務です。そのなかでも建設業や土地開発業に関しては許認可業務が複雑になりがちで、行政書士とは縁深い業務ジャンルです。

l  デベロッパーやゼネコンに特化した許可申請業務

l  企業顧問・経営コンサルタント

このような業務を強みして集客を目指す場合、どうしても専門知識が必要になります。

必然的に、土地不動産関係や税務関係資格とのダブルライセンスを選択することになります。

いずれにしても、稼いでいる資格保有者には「行政書士の仕事なら何でも出来るがそれ以外のことは分からない」という消極的な姿勢は見られません。

顧客ニーズを横断できる知識に貪欲な人が多いと見られます。

6、行政書士の試験は難しい?

一般的に、合格率20%以下が難関試験と考えられています。

行政書士試験の直近5年の合格率は10~15%と、決して高い数値ではありません。

宅地建物取引主任士(合格まで400時間程度)・日商簿記1級(合格まで800時間程度)と同程度の合格率です。

過去5年間の行政書士試験合格率

年度

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

受験者数

55,436

48,869

44,366

41,053

40,449

合格率

10.10%

8.30%

13.10%

10.00%

15.70%

2008年は6.5%・2010年は6.6%だったことを考慮すると、最新2017年度の合格率はかなり改善されました。

しかし、試験問題自体が易しくなったわけではありません。

合格率上昇の主な理由は、年々受験者数が減少していることにあります。

(1)合格者の年齢層・性別

過去10年を通して、行政書士合格者の半数以上は30~40代の男性です。転職によるキャリアアップや、業務上の必要にかられた受験者が多いと見られます。

(2)試験範囲

3つの士業(弁護士・司法書士・行政書士)のなかでは最も試験科目が少ないものの、挫折する人の多い民法を含む法令5科目と非常に広い範囲です。

行政書士試験の出題範囲

試験科目

出題形式

科目

問題数

配点

法令科目

5肢択一式

憲法・民法・商法・行政法・基礎法学

46問

244点

多肢選択式

記述式

一般知識

5肢択一式

政治経済・社会・情報通信・個人情報保護・文章理解

14問

56点

合計

60問

300点

試験内容は選択式問題57問+記述式3問で構成されています。うち20~23問は行政法と約3分の1を占め、次いで民法から10~12問出題されます。上位2資格とは異なり、後述試験は行われません。

合否判定は絶対評点方式であり、全科目計180点以上(法令122点以上・一般知識24点以上)が合格ラインです。

(3)試験概要(実施時期・受験資格)

行政書士試験は、毎年1回・11月中旬に全国の会場で行われます。

平成30年度行政書士試験の概要

受験資格:不問

申込期間:2018年7月30日~8月31日

試験日:2018年11月11日

受験手数料:7,000円

合格発表:2019年1月30日(合格証は2月15日前後に送付)

7、行政書士試験の対策方法

独学で合格を目指す場合はおよそ1,000時間程度・通信講座であれば600時間程度の勉強が必要だと言われています。

勉強の準備期間として、最短でも1年を見込む必要があります。

最優先すべき科目は、出題ボリューム最多の行政法・民法の2科目です。

反対に憲法・商法&会社法はそれぞれ2~5問程度なので、試験直前のおさらい程度で構いません。

テキスト・過去問を揃えて何度も往復するように学習するのが、独学で合格を目指す場合の勉強法です。

8、行政書士試験を突破して、活躍しよう!

行政書士試験に合格すると、転職・独立開業・資格を生かした一般就職など、様々な道が開けます。

本格的に法務メインでキャリアを積みたい場合は、会計事務所や法律事務所への転職が近道でしょう。

在籍中の会社でコンプライアンス監修者・法務担当者として成長することも、ひとつの可能性として十分考えられます。

スキルシェアや公務員という道も

シェアリングビジネスが盛んになっている近年、自分のもっているスキルをオンラインで販売できるサービスが出現しています。

行政書士試験に合格した経験そのものにも需要をつかんでみるのも手です。

あまり知られていませんが、公務員への中途採用を目指すという道もあります。

公務員採用には30歳以下という年齢制限があるものの、民間企業で5年以上の勤務年数があれば、59歳まで転職のチャンスがあります。

行政書士資格を持っている場合、実務に関する基礎知識があるとして採用されやすくなります。

9、サマリー

意外に行政書士の年収が低く、驚いた人もいるのではないでしょうか。

すでに業界が飽和状態であるため、試験対策本で説明されがちな「街の法律屋さん」として活動するのは現実的でない状況です。

行政書士試験合格後は、働き方や自分に向いている業務について、分析やさらなる勉強をする必要があります。

一方で、すでに他業種でキャリアを積んでいる・あるいは現在の業種に行政書士の知識を活かしたいという人は、自分の強みを十分に伸ばして収入アップできる可能性があります。

10、まとめ

  • 行政書士の主な業務は「許認可申請を含む法的書類の作成業務」だ。
  • 平均年収は600万円程度だが、年収給与の二極化が進んでいる。
  • 資格を生かすためには、営業戦略と異業種経験が必須と言える。

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