前文~法規範性・裁判規範性・平和的共存権~

前文~法規範性・裁判規範性・平和的共存権~

 

行政書士試験には、憲法からの出題があります。

日本という国がどのようにあるべきか、国家権力はどんなことを守るべきか、ということについて定めている憲法ですが、本文の103条に入る前には「前文」というものがあります。
これは日本国憲法のあり方について概要を示したもので、各条文による細かい規定の根底にあるものとも言えるでしょう。

前文

では、前文に一通り目を通してみましょう。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 

前文の表す意味

このような前文には、3つの意義が存在しています。

1つ目は「法規範性」。
法規範とは、国の法律等によって規定されている規範のことですが、日本国憲法前文は前文とはいえ、この法規範性があるのです。
憲法として扱われるということになるので、前文を改正したいということがあったら通常の憲法改正と同じ手続を踏まなくてはなりません。

2つ目の意義は「裁判規範性」です。
これは、裁判所が具体的な争訟を裁判する際に基準として用いることが出来る法規範のことをいいます。
たとえば遺産相続で争う裁判があったとして、「民法890条では被相続人の配偶者は常に相続人になると定められているから、被相続人Aの配偶者Bにこれだけ相続させなさい」というように、「民法890条」を根拠にして判決を下せるということです。

ということが可能な民法には裁判規範性があるのですが、憲法前文にはこれが無いのです。
裁判規範性が無い以上、「この法律は前文の内容と食い違っているから違憲だ」などというように裁判所へ訴えることは出来ません。
違憲判決を求める裁判を起こす際には、本文の条文を用いる必要があります。

3つ目は「平和的生存権」という意義です。
前文には「平和のうちに生存する権利」という記述がありますが、前述の通り前文に裁判規範性は無いため、具体的裁判規範としての権利としては否定されています(最高裁の判決ではありません)。
これは長沼ナイキ事件の判決で、第一審の札幌地裁は平和的生存権を認めたのですが国の控訴による第二審はそれを破棄、そして原告(住民側)の上告によった最高裁は結果的に憲法に触れることなく「原告適格がない」という理由で上告を棄却しました。

 

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