行政書士は「食えない」という噂の真相はいかに?これからの時代に「食える」行政書士になるには

行政書士は「食えない」という噂の真相はいかに?これからの時代に「食える」行政書士になるには

行政書士は「食えない」という話を聞いたことはありますか?これから行政書士を目指す人にとっては、聞き捨てならない話ですよね。どんな資格にも上手くいく人・いかない人がいるものですが、行政書士はそんなに報われない仕事なのでしょうか。ウィズコロナの時代を迎え、どの業種も転換期を迎えている今、行政書士として成功するにはどうすれば良いのでしょうか?この記事で詳しくお伝えします!

1 行政書士は「食えない」?

行政書士といえば「街の法律家」とも呼ばれ、士業のなかでも親しみやすい職業の一つでしょう。行政書士が取り扱う書類の数は、許認可申請書類をはじめ10,000種類以上ともいわれるため、「書類のプロ」という別名がある程です。

しかし、そんな行政書士が「食えない」資格だと酷評されているのを、見かけることがあります。行政書士は本当に食べていけない職業なのでしょうか。

⑴ 行政書士は「食えない」といわれる理由は?

資格を取得しただけでは食べていけないのは、もちろんどの資格も同じです。むしろ、資格取得後が本当の勝負だといえるでしょう。しかし、行政書士に対する「食えない」仕事だという酷評は、他士業よりも見かける頻度が高いように感じます。その理由は何でしょうか?

➀ 試験の難易度があまり高くないから

下表は、平成30年度の、士業と呼ばれる代表的な国家資格の合格率を一覧表にしたものです。

 

資格 平成30年度合格率 資格 平成30年度合格率
司法書士 4.3% 行政書士 12.7%
社会保険労務士 6.3% 税理士 12.8%
公認会計士 11.1% 弁護士 29.1%

 

難易度を考える場合は、受験資格の有無も考慮しなければなりません。

例えば上表における弁護士の合格率は29.1%と、行政書士よりも高確率になっています。しかし、当該試験を受験している受験生の母体は、そもそも「法科大学院課程を修了」か「司法試験予備試験に合格」するかの受験資格を得ている選りすぐられた集団です。加えて、この受験資格には期限(5年)と回数(3回)の制限もかかります。受験生は受験資格というふるいにかけられたうえ、期間と回数の制限も設けられるため、真剣な姿勢で臨む受験生が集まりこのような高い合格率になると思われます。

行政書士試験には、弁理士や公認会計士と同じく受験資格が設けられておらず、誰でも受験できます。それにも関わらず合格率が比較的高いため、必然的に競合は多くなります。

➁ 競合が多いから

2018年における行政書士登録者数は、47,901人でした。これは税理士登録者数の77,069人に次ぐ数字です。

行政書士試験の受験者には、受験資格がないから「一応、受験してみた」という人や、公務員出身者も含まれます。そのため合格して登録する人の数が、このように高い数字になると考えられます。

③ 廃業する人が多いから

行政書士の登録形態には、社労士や司法書士のように「勤務行政書士」、つまり企業に所属してその会社の業務を専らおこなう「企業内行政書士」が存在しません。行政書士事務所で働く「使用人行政書士」は存在しますが、行政書士として働きたかったら「独立」という形を取る方が一般的です。すると、実務経験も人脈もないままに独立開業するために、暗礁に乗り上げてしまう行政書士が多くなります。その結果、残念ながら廃業に至ってしまうケースが多いことから、行政書士は「食えない資格」であるというイメージが定着したのかもしれません。

士業に限らず、個人事業主として開業した人は、開業後3年で60%以上が廃業してしまうといわれます。そもそも、独立開業で生き残ること自体が難しいのです。

⑵ 行政書士はAIに取って代わられてしまう?

行政書士に関する懸念には、「AIによる代替可能性」があります。これも行政書士に限った話ではありませんが、単純な作業は近い将来、AIに代替され大幅に省力化されてしまうと囁かれています。比較的単純な書類作成業務が多い行政書士は、そのような仕事のなかの一つだと考えられることがあります。

➀ 行政書士業務のAI代替可能性はどのくらい?

2015年、野村総合研究所とオックスフォード大学は、今後10~20年における主たる士業の「AIによる代替の可能性」を調べました。以下はその結果について作表したものです。

 

士業 代替の可能性 士業 代替の可能性
中小企業診断士 0.2% 公認会計士 85.9%
弁護士 1.4% 税理士 92.5%
社労士 79.7% 行政書士 93.1%

 

上表によると、行政書士の業務は、驚くべきことに93.1%がAIによって代替可能性だという結果が出ています。中小企業診断士が0.2%、弁護士が1.4%という数値であるのに対して、行政書士の数値は実に高く算出されました。

➁ AIの脅威に打ち勝つには?

同調査によると、コンサルティング業務に代表されるような高いコミュニケーション能力を要する業務は、AIによる代替は不可能と評価されています。ですので、中小企業診断士や弁護士など、相手と深いコミュニケーションを取りながら企業や個人の事情に寄り添う職業は、AIによる代替可能性が極めて低いという結果が導き出されているのです。

しかし、息の長い行政書士になるためにコンサルティング業務に移行する、という考えは安直かもしれません。コンサルティング業界には、手ごわい競合がたくさんいます。

行政書士の業務は、まだまだ広がる可能性があります。行政書士が主軸業務の一つである入管業務に参入したのは、ほんの20年前です。世の中が変わりゆくなかで、行政書士の業務範囲も拡大する可能性があります。AIの脅威におののくよりも、自分の業務範囲をしっかりと確立して更に広げていく努力をしましょう。

 

2 こんな行政書士は「食えない」

行政書士の将来性について考えると、確かにこれまで挙げたようなネガティブな観点も存在します。しかし「食えない」行政書士が存在する理由には、職業自体が持つ要素だけでなく個体差も考えられます。次に、どんな行政書士が食えない状態に陥ってしまうのか調べてみましょう。

⑴ 他士業資格にすぐ逃げる

独立開業しても事務所が軌道に乗らないと、「自分には行政書士の資格しかないからだ」と考え、すぐに他士業資格取得に向けて切り替える人がいます。しかし、上手くいかない理由を全て単独資格のせいにするのは、違うのではないでしょうか。現に、行政書士資格だけで成功している人もたくさんいるからです。

行政書士で上手くいかないなら司法書士の資格を取得しようと考えるのは、安直です。辛口ですが、「行政書士で上手くいかない人は何をやっても上手くいかない」と言った先輩行政書士もいます。

⑵ メンタルをやられてしまう

行政書士の業務には、つらいことも多いといいます。どんな風につらいのか、具体的に挙げてみましょう。

・地味な書類作成作業が続く

・クライアントに印鑑を押してもらいに行って頭を下げなければならない

・クライアントの代わりに嫌な役割を代行しなければならない

・人間関係の板挟みにあう

・市民法務(相続・離婚など)関連業務では、人の負のパワーを浴びる

・弁護士でなく行政書士に依頼してくるクライアントは、もめないで問題解決することを望んでいる

・許認可申請などが上手く通らないとクライアントから恨まれたり損害賠償請求されたりする

・弁護士や税理士、司法書士、社労士の独占業務を侵害しないように気を遣う

 

神経をつかうことがない仕事はおそらくありませんが、行政書士の業務には上記のような精神的なつらさが付きまといます。

法律系資格の仕事をすると、精神を病む人も多いようです。法律系の仕事の代表格である弁護士ほどではないにせよ、精神的なつらさは付きまといます。

特定行政書士は違いますが、行政書士には紛争禁止規定が設けられています。つまり、行政書士に依頼してくるクライアントは、もめないで落としどころを上手く作って欲しいと願っています。大変疲れる仕事になります。

また、風俗業の許認可申請に限った話ではありませんが、クライアントが反社会的な組織である場合もあります。そういった組織と契約関係を持ってしまわないように、気を使う場合もあります。

こういった精神的負担が原因で行政書士がメンタルをやられ、廃業してしまうケースもあるのです。メンタルがやられそうだと感じたら、つらい状況を長期化させないための対策を立てるようにしましょう。

 

⑶ 「お金を使えない」か「使いすぎ」

独立開業には登録費用をはじめ、とにかくお金がかかります。最低限の初期費用に加え、独立開業した場合は、マーケティングや広告費といった費用も発生するでしょう。独立開業しても上手くいかない人には、こういった初期費用を「使えない」人と「使いすぎ」な人がいます。これはどちらも問題です。

まず「使わない」方ですが、ある程度の必要経費は存在することに気付かなければいけません。人脈がない場合は、様々な交流会・勉強会への参加費、集まりで配る名刺・ホームページ開設などの費用は必要経費です。とにかくあなたが開業したことを、多くの人に認知してもらわないといけません。

また「使いすぎる」人も、過剰支出で借金まみれになり、廃業まっしぐらになる場合があります。マーケティングや広告費は、業者の言われるがままにお金を出していると、とんでもない額になる場合もあるので注意が必要です。本来、士業の経費は比較的少なく、在庫も抱え込む必要がないため、堅実に起業できる数少ない事業です。本当に必要な経費は何なのか、見極める力が必要です。

3 行政書士は「食える」職業?

行政書士で上手くやっている人は確実に存在するため、行政書士は「食える」資格であるといえます。以下にはその理由を挙げていきます。

⑴ そもそも社会的認知度が高い

繰り返しますが、行政書士の登録者数は他の士業より頭一つ抜けて多いです。試験の難易度が比較的易しいこともあり登録者が多いので競合は確かに増えますが、その分行政書士の社会的認知度は高いことになります。「街の法律家」と呼ばれる通り、行政書士が親しみやすい法律家の地位を確立しているのは事実です。

⑵ 一定の需要が存在する

行政書士の主軸業務は、都道府県官公署に提出する書類の作成や事務の代行です。一見、誰にでもできるように思われますが、もし書類に不備があれば役所から再提出を求められたり、不許可になってしまうものです。

行政書士は、特に民法・行政法において専門的な知識をもち、行政制度について深い理解を持っています。公務員の勤続年数によっては行政書士試験の一部が免除されることは、行政制度に対する高い専門性を物語っています。行政に提出する公文書作成は、常に一定の需要がある仕事だといえます。

4 「食える」行政書士の条件とは?

行政書士は、取り扱える書類が10,000種類以上あることからも分かるように、業務範囲が実に広い仕事です。しかも、試験の内容と業務の関連性が薄いのも特徴です。つまり行政書士として一人前になるには、試験ができただけではダメで、実務に就いてからも法律知識を勉強する必要があります。

⑴ 「予防法務」に携わる

”「予防法務」って何?

予防法務とは、近い将来法的な紛争が生じないよう、事前に何らかの措置を取ることです。

例えば、遺産相続などで書類の不備があったり、相続人たちの間で行き違いがあったりした場合など、争いが起きてからでは対処が難しく、法廷での争いになることも珍しくありません。そうなってしまう前に、まずは行政書士へ相談しましょう。早い段階での相談あれば、労力もコストも軽減することが可能です。”

出典:愛媛県行政書士会

 

予防法務に対する需要は、コンプライアンス遵守の気風が高まるにつれ高くなっています。弁護士は依頼人を弁護して法廷で闘いますが、行政書士は法廷に持ち込まれるようなトラブルの発生を未然に防ぎます。これを「予防法務」といい、行政書士の持つ権利や事実証明に関する知識を活用して個人・企業をトラブルから守ります。予防法務の需要は今後も高まるため、対応できる実力を養っておきましょう。

⑵ 業務分野を吟味する

競合の数や収益性を考慮して、自らの業務分野を選ぶのもアリです。例えば「建設業許可」は非常に魅力ある分野で、建設業許可を専門とする行政書士も多いのです。行政書士の取り扱い分野として広く認知されているうえ、更新業務も見込むことができ、「産業廃棄物処理業許可申請」など他業務へ広がる可能性もあります。

難易度はトップクラスであるため、更に勉強して知識を補う必要があります。また風俗業許認可申請など競合が少ない分野を、敢えて専門分野に選ぶのもアリです。

⑶ インターネットでの発信力を持つ

営業の方法には、是非インターネットの力を取り込みましょう。ホームページやSNSを立ち上げるのはもちろんのこと、それらの媒体を使ってブログとメルマガを発信したりして、あなたの専門知識を披露する場を作りましょう。

ブログとメルマガは決して最新の手法ではありませんが、あなたの知識や見解、人となりを表現する場として最適です。表面的な経歴しか公表していない行政書士と、ネット上で時事問題・社会問題に対する本人の法律的見解を配信している行政書士だったら、あなたはどちらに仕事を依頼したいですか。

今般のコロナ禍では、補助金に関する解説動画を発信する行政書士が注目を集めました。簡略化・デジタル化の流れにあるとはいえ、補助金申請はまだまだ煩雑な作業です。専門知識を以て分かりやすく解説を動画配信できるような行政書士は、一遍に認知度と信頼性を上げることができるでしょう。

5 将来性のある行政書士になるには?

これまでは、「食える」行政書士にはそれなりの理由があることを解説しました。しかし、これからの時代を生き抜くためには、プラスαの要素が求められます。

⑴ Twitterやブログは実名・顔写真入りで

拡散効果のあるSNSでは実名を使いましょう。顔も出すのが好印象です。「行政書士という固い仕事で、そこまでするの?」と思われるかもしれませんが、その方が好印象なのです。

行政書士は客商売であるため、印象は良いに越したことはありません。実名・顔写真入りで情報発信を始めると、自分のことが客観視できるようになりどんどん洗練されて行きます

⑵ ビジネスセンスを磨こう

他士業は行政書士とは違い、企業に勤務することが認められています。行政書士にも「使用人行政書士」という働き方がありますが、生涯その働き方を続けるのは難しいでしょう。

独立開業する士業には、ビジネスセンスが求められます。競合と自分を差別化してアピールする力が求められるのです。

独立開業するしか道がない行政書士にとって、集客力の有無は生き残れるかどうかに大きく関わってきます。

行政書士は、ビジネスチャンスには大きく恵まれています。許認可申請にも様々な分野があるし、相続・遺言などの市民法務や入管業務にも携われるため、専門分野は自分の資質に合わせて選ぶことができます。ビジネスチャンスはあるので、あとは集客力です。自分でブログを書いたり交流会に出向くことはタダでできますから、勇気を出してやってみましょう。

6 サマリー

「食えない」行政書士と「食える」行政書士の違いをまとめて参りました。独立開業を余儀なくされる行政書士は、業務知識以外にビジネスセンスも求められます。両方をおこなうのは大変ですが、その分やり甲斐も大きいでしょう。

7 まとめ

・行政書士は取り扱う10,000種類以上ともいわれ、「書類のプロ」と称される。

・しかし行政書士は他士業よりも「食えない資格」と酷評されていることが多い。

・行政書士試験には受験資格がないため誰でも受験でき、合格率が高いので競合が多くなる。

・2015年の野村総研らの調査は、行政書士業務のAIによる代替の可能性は93.1%と算出した。

・食えなくなる行政書士の特徴は他士業資格取得に逃げたり、顧客の負の感情を受けメンタルをやられ廃業においこまれるなどである。

・将来性のある行政書士になるには、予防法務の専門知識を付けたり収益性の高い分野に特化したりする必要がある。

・ビジネスセンスも併せ持たなければならない。

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