法律系の資格はいくつもありますが、具体的なそれぞれの資格の仕事範囲はわかりずらいでしょう。
そこで、司法書士と他資格の違いを見ていきましょう。
合格率3%前後の司法書士は日本屈指の難関資格ですが、裁判官・検察官・弁護士と並んで「第4の法曹」とも言われ、実務法律家としても認知されています。そのため社会的ステータスが高く、個人の裁量次第では高収入も望めます。
弁護士との違いはどこにあるのでしょうか?
弁護士も司法書士も法律系資格であり、試験の難易度は非常に高く、同時に社会的ステータスの高い職業でもあります。
弁護士が法律全般の業務に携われることに対し、司法書士が携われる業務は限定されています。
しかし、求められるそれぞれの役割は異なっています。
弁護士は実際に起こった事件やトラブルに対して、適切な対処方法・解決策をアドバイスすることが多いのに対して、登記や相続の手続を円滑に進め、権利者である依頼人の損失を予め防ぐ"予防策的"な業務を行うのが司法書士です。
すなわち、弁護士の役割は既に起きた紛争を解決することがメインであるのに対し、司法書士の役割はトラブルを未然に防ぐ「予防司法」がメインだと言うことができます。
司法書士の仕事は、範囲が限定されている分、得意とする登記や供託業務に関しては弁護士よりも精通しているとも言えるでしょう。
書面作成で代理人をサポートし、きめ細やかな法サービスでスムーズな手続きを可能にするのが司法書士なのです。
弁護士法によると、弁護士の職務は下記の通りです。
・当事者その他関係人の依頼または官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする
・弁理士及び税理士の事務を行うことができる
弁護士は、あらゆる法律の専門家として相談、書類作成、代理交渉を行うことができます。代理人としての弁護士の発言は、本人のそれと同じ法的効力を持ちます。
続いては、司法書士の職務です。
法務省のホームページによると、司法書士の職務は下記の通りとされています。
・登記または供託に関する手続きの代理
・裁判所、検察庁または(地方)法務局に提出する書類の作成
・(地方)法務局長に対する登記または供託に関する審査請求(不服申立て)手続きの代理
・簡易訴訟代理等関係業務を行うこと(認定司法書士に限る)
・上記すべての業務に関する相談に応じること
代表的な業務は、不動産の登記・登録業務です。抵当権の設定・抹消の手続き、会社設立の際の登記手続きの代理も行えます。
供託とは、支払い意思のある債務者が、返済すべき額を法務局に預かってもらうことを指します。供託によって、債務者は債権者に債務を弁済したことになります。
非弁行為とは、弁護士でない者が報酬目的で、弁護士法によって禁じられている弁護士業務を行うことを指します。
司法書士の非弁行為としては、140万円以上の簡易訴訟の代理人となることが挙げられます。
司法書士のうち、認定司法書士は140万円以下の簡易訴訟の代理人となり、付随するさまざまな関係業務を代行することができます。しかし、140万円を超える案件については非弁行為にあたるため、認定司法書士が代理となることはもちろん、法律相談に応じることはできないのです。
司法書士より弁護士に依頼した方が費用がかかると思われがちですが、実際には費用の差は司法書士/弁護士の違いというよりも、事務所間の差と考えられます。
特に債務整理・過払金返還請求については、弁護士・司法書士ともにそれぞれの規定によって報酬に上限が定められているため、比較できる状況にはありません。
むしろ司法書士は少額事案のみで収入を確保する必要があることからか、費用が高くなっている例も見られるようです。
合格のために必要な時間は、一般的に司法書士3,000時間、司法試験6,000時間以上と言われています。
弁護士資格を持っていれば、法律行為を代理したりさまざま法律相談に応じたりすることができますので、より広い活躍の場を求める方は司法試験を目指すのもおすすめです。法学部を卒業していなくても、予備試験を受験し合格することで司法試験の受験資格を得ることができます。
司法書士と行政書士は、名前を見ると似ていそうな職業ですが、それぞれ専門分野として持つ分野は異なります。
行政書士の主な仕事とは、役所に提出するための複雑な内容の資料を作成することです。
行政書士が担当する書類の種類は、1万以上と言われています。ビジネスを始めたり進めたりするにあたって、国や行政に対して多種多様な申請が都度必要になりますが、非常に複雑なため、その資料の作成を代行して担当するのが行政書士です。例えば、飲食店の営業許可や建設会社の建築許可・認可に関する書類などがあげられます。
行政書士と比較をすると、司法書士も資料作成を担当する点では同じですが、主に登記(法に定められた規定の事柄を帳簿や台帳に記載すること)がメインとなります。登記は、司法書士にしかできません。
総務省による行政書士の仕事の範囲は以下の通りです。
・官公署に提出する書類(電磁的記録を含む。以下同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること
・官公署に提出する書類について、その提出の手続及び当該官公署に提出する許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く)について代理すること
・行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること
・契約その他に関する書類を代理人として作成すること
・行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること
行政書士は、数多くの複雑な資料作成を引き受けるため、高度な知識を必要とします。
実は、司法書士でも行政書士でもできる共同独占業務というものがあります。これは、司法書士と行政書士にしかできない業務です。
例えば、法務大臣あての帰化許可申請書の作成や、検察審査会への提出書類の作成などがあげられます。そのほか、検察あての告訴・告発状の作成も共同独占業務です。
例えば相続手続を行う際に、不動産の相続に関わる不動産登記は司法書士、遺産分割協議書の作成は行政書士、などと担当できる仕事は分けられており、1つの資格だけでは相続案件全てを担当することはできません。
しかし、ダブルライセンスの取得でさらに活躍することが可能です。
顧客にとっては一つの内容でも、実際の業務は司法書士と行政書士で分担しています。もし司法書士と行政書士、両方の資格を所持していれば、一層、仕事の幅が広がることは間違いありません。顧客の依頼が増えることで活躍の場を広げることも可能です。
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