弁理士試験の選択科目はどれを選べばいいのか。選択科目の免除制度もあるって本当?

弁理士試験の選択科目はどれを選べばいいのか。選択科目の免除制度もあるって本当?

はじめに

弁理士試験には選択科目というものが存在しているのをご存知ですか?

弁理士試験は大きく短答式試験、論文式試験、口述試験の3つに分けられ、さらに論文式試験は必須科目と選択科目に分かれています。

弁理士試験の勉強を効率よいものにするためには、自分に合った選択科目を選ぶことがとても大事になってきます。

そのために、選択科目にはどういったものがあるのかをきちんと把握し、自分に合う最適な科目を見定める必要があります。

本記事では過去問を使って、わかりやすく選択科目について解説していますので、ぜひ最後まで読んでくださいね!

1、そもそも弁理士試験とはどんな試験?

(1)弁理士試験と弁理士法

そもそも弁理士資格とはどういった資格なのでしょうか。

弁理士資格とはざっくりいうと、知的な活動によって生まれた創作物ないしはアイデアそのものを保護する権利(知的財産権)に関する様々な業務を独占的におこなうことのできる国家資格を指します。

弁理士は、弁理士法で規定された業務を独占的におこなうことができ、弁理士資格を保有している者以外がこの業務をおこなうことは禁止されています。

知的財産権は大まかに分けて、以下の4つに分けられ、この知的財産権に関する様々な手続きなどを弁理士が代行することができます。

  • 著作権
  • 特許権
  • 実用新案権
  • 意匠権
  • 商標権

当然、独占業務をおこなう資格を得るのですから、弁理士資格を取得する弁理士試験は難関です。

この難関な弁理士試験は、弁理士法という弁理士にまつわる諸制度を定めた法律に従って実施されており、この法律では、弁理士の使命、職責、義務などが規定されています。

弁理士しかできない業務、弁理士がやってはいけないことなど、その規定はかなり詳細に定められています。

ここで日本におけるざっくりとした弁理士法の歴史を見てみましょう。

上記をみて分かる通り、年々弁理士試験をより良いものとするために、工業所有権審議会弁理士審査分科会試験部会が試験内容を変更しています。

これにより、短答式筆記試験への科目別合格基準の導入及び論文式筆記試験(選択科目)における選択問題の集約なども行われています。

また、試験問題についても、弁理士法及び弁理士法施行規則によって定められており、弁理士試験が実施される日に施行されている特許法などを中心に出題されています。

 

(2)弁理士試験の概要

弁理士は高いスキルを求められるイメージがありますが、実は受験資格としては学歴、年齢、国籍等による制限はなく、誰でも受験することができます。

また、願書交付期間は毎年3月上旬~4月上旬の行政機関の休日に該当する日を除いて行われます。

特にインターネットの場合は2月上旬~3月下旬と早めに行われますので、出願を検討している方は十分注意をしましょう。

願書は3月下旬~4月上旬に郵送のみ受け付け可能で、12,000円を特許印紙で納付してください。

弁理士試験は以下の3つのステージに分かれています。

  • ①短答式試験
  • ②論文式試験
  • ③口述式試験

それぞれの試験概要をみていきましょう。

 

①短答式試験

②論文式試験

③口述試験

 

2、過去問から見えてくる!おすすめの選択科目とは!?

(1)選択科目とはどんなもの?

弁理士試験の論文式試験においては、必須科目と同時に選択科目というものがあります。

その名の通り、以下の選択肢の中から1科目を選択して受験しなければなりません。

  • ①理工Ⅰ(機械・応用力学)…材料力学、流体力学、熱力学、土質工学
  • ②理工Ⅱ(数学・物理)…基礎物理学、電磁気学、回路理論
  • ③理工Ⅲ(化学)…物理化学、有機化学、無機化学
  • ④理工Ⅳ(生物)…生物学一般、生物化学
  • ⑤理工Ⅴ(情報)…情報理論、計算機工学
  • ⑥法律(弁理士の業務に関する法律)…民法

弁理士といえば、特許に関わる仕事がメインとなりますので、単に法律のことだけを身につければよいわけではありません。

例えば、何かの機械に関する特許を出願する場合には、機械・応用力学として材料力学、流体力学、熱力学、土質工学などの知識において、他と重複しない技術であるかを判断して申請する必要があります。

よって、このような知識を持っていることが証明できなければ、弁理士としては活躍できないと言っても過言ではありません。

ただ、あらゆる知識を専門的に身につけるのはほぼ不可能であり、選択試験という形で自分の得意なジャンルのみを選択できるように試験が構成されています。

しかし、得意だからといって簡単にクリアできる試験ではなく専門性の高い知識が求められます。

また、絶対評価で60点以上の得点を取る必要があり、弁理士試験の中でも対策講座が桁違いに少ないという問題もあります。

一見すると得意分野で勝負できるので難しいイメージはないのですが、実は選択科目が原因で落ちてしまうというケースは珍しくはありません。

対策が難しい選択科目なのですが、それぞれの科目において一定の出題傾向がみられます。

以下では、各科目における傾向などを2018年の過去問を参考にみていきましょう。

 

①理工Ⅰ(機械・応用力学)

理工Ⅰは、

  • 材料力学
  • 流体力学
  • 熱力学
  • 土質工学

の中から出題されます。

ちなみに2018年は、この中から材料力学、流体力学、熱力学が出題されました。

一例として材料力学は以下のような問題が出題されています。

図に示す長さ l の片持ち梁に、左端で q、右端で 0 となるように線形に変化する 分布荷重が鉛直下向きに加わっている。梁の長手方向に沿って梁の断面は一様であり、 断面二次モーメントは I である。また、梁のヤング率を E とし、微小変形を仮定し、自 重の影響は無視できるとする。以下の問いに答えよ。なお、図において片持ち梁の 左端を原点とし、梁の長手方向に沿って x 座標を定義し、梁に生じる曲げモーメントは 図の矢印の向きを正とする。

  • (1) 固定端における反力およびモーメントを求めよ。
  • (2) 位置 x における曲げモーメントを求めよ。
  • (3) 位置 x = l におけるたわみを求めよ。

この問題においては、熱応力に関する理解、梁に関する理解、平面での応力状態に関する理解が問われています。

数学的な知識も重要であり、ロジックを明確にして正しい答えを知識の中から引き出さなければなりません

流体力学としては、粘性流体の層流に関する理解、流体の無次元数に関する基礎的知識に関する出題、熱力学ではエントロピー、ガスサイクル、湿り空気に関する理解に関する出題が行われています。

 

②理工Ⅱ(数学・物理)

理工Ⅱ(数学・物理)は

  • 基礎物理学
  • 電磁気学
  • 回路理論

について出題されています。

主に半導体業界に特化して弁理士とし活躍したい方にとっては必要な知識とも言えます。

一例として基礎物理学は以下のような問題が出題されています。

1 振動運動に関する以下の問いに答えよ。【50点】

質量 m の質点 P が図1のように点 O から長さ ℓ の糸につるされ、紙面内を振動運動しているとする。ただし、糸がたるむことはない。θ は図1のように、糸が鉛直下方となす角度とする。重力加速度を g として、以下の問い(1)~(3)に答えよ。

  • (1) 質点 P の位置エネルギーを m、g、ℓ、Θを用いて表せ。ただし、質点 P が静止しているとき(θ = 0)の位置エネルギーを 0 とする。
  • (2) 質点 P の運動エネルギーを m、ℓ、Θを用いて表せ。ただし、Θは θの時間微分を表す。

 

この問題では、振動運動に関する理解や剛体運動に関する理解が必要となります。

頭の中で胴体をイメージして、それに対して必要なエネルギーを導き出す知識が必要となり、難易度もそれなりに高いことが伺いしれますね。

他では、電磁気学では静電場、定常電流が作る磁場、荷電粒子の磁場中での運動についての理解が問われ、回路理論では抵抗回路網、オペアンプを用いた電子回路、論理回路に関する理解が問われます。

回路理論は比較的頭の中でイメージしやすいので、得点を稼ぎやすいことも特徴です。

 

③理工Ⅲ(化学)

理工Ⅲ(化学)は

  • 物理化学
  • 有機化学
  • 無機化学

に関する問題が出題されます。

この科目は高校でも知識を得ることができるジャンルでもあり、専門性が少ない科目とも言えます。

一例として物理化学は以下のような問題が出題されています。

1 熱化学に関する以下の問いに答えよ。

 (1) n mol の気体を状態 A (p1, V1, T1) から状態 D (p2, V2, T2) へ可逆的に変化させる過程について考える。なお、気体は理想気体とし、必要があれば気体定数を R、状態 B における温度を TB とせよ。また、一定体積の条件下では、熱容量は温度に依存しないとする。A→B、B→D、A→C、C→D の過程において外界にする仕事 W を表す数式をそれぞれ示せ。

熱化学、化学反応速度論、金属錯体、物質の光吸収、発光についての理解が問われ、中には作図して示す問題もあります。

有機化学としては各種有機反応に関する理解、π電子を持つ化合物、有機反応機構、有機反応中間体、アルドール反応、分子構造解析、環状分子の立体配座に関する理解が問われます。

また、無機化学としては分子の構造、酸・塩基、水溶液中の電気化学反応に関する理解が必要です。

化学がメインとなりますが、熱化学などの物理的な問題も出題され総合的な知識を身につけなければなりません

 

④理工Ⅳ(生物)

理工Ⅳ(生物)では、

  • 生物学一般
  • 生物化学

から出題されます。

こちらも中学校あたりから身につけてきた知識の専門的な部分が出題される傾向があります。

一例として生物学一般は以下のような問題が出題されています。

2 生物学に関する以下の問いに答えよ。

  • (1) 原始大気から有機物が形成された可能性を検証しようとした、ユーリーとミラーの実験を2行程度で説明せよ。
  • (2) 原始生命は DNA やタンパク質を持たなかったとする、RNA ワールド仮説が広く受け入れられている。RNA ワールド仮説について、その根拠となる理由も含め、5行程度で説明せよ。
  • (3) 真核生物において、DNA の情報に基づいてタンパク質が合成される過程について、6行程度で説明せよ。

ここでは、生物の情報伝達系に関する一般的知識や生物学に関する一般的知識が問われます。

「6行程度で説明せよ」などの論文的記述も必要なのが特徴です。

生物化学としては、生物化学に関する基本的な知識やタンパク質と脂質に関する基本的知識と理解、生物化学の実験技術に関する基本的知識と理解が問われます。

 

⑤理工Ⅴ(情報)

理工Ⅴ(情報)では

  • 情報理論
  • 計算機工学

の中から出題されます。

情報理論は資格も制定されているので、所有されている方からすれば、比較的入り込みやすい科目でもあります。

一例として情報理論は以下のような問題が出題されています。

3 情報理論に関する以下の用語について、その内容を説明せよ。

  • (1) フーリエ変換 (Fourier transform)
  • (2) 量子化雑音 (quantization noise)
  • (3) 非対称鍵暗号 (asymmetric key cryptography)
  • (4) 完全符号 (perfect code)
  • (5) 畳み込み符号 (convolutional code)

この問題を中心として、マルコフ過程、ハフマン符号、情報理論に関する基礎的な知識を問う問題となっています。

計算機工学としては、論理回路、プログラムの変換と実行、計算機工学に関する基礎的な知識が必要となっています。

実行レベルではなく、知識レベルの問題が多いので、実務でできている方でも改めて知識をブラッシュアップすることができるかも重要です。

 

⑥法律(弁理士の業務に関する法律)

法律(弁理士の業務に関する法律)では、民法に関する知識が問われます。

一例として民法は以下のような問題が出題されています。

甲土地と乙土地は、隣接して位置している(下図参照)。甲土地を所有するAは、乙土地を所有するBとの間で、甲土地を要役地とし、乙土地を承役地とする地役権(以下、「本件地役権」という。)の設定を受ける旨の契約を締結した。本件地役権の設定契約は、Aが自動車により甲土地から乙土地を通って南側に位置する広い道路へと通行することを目的とするものである。Aは、本件地役権の設定契約の内容に従い、乙土地の西側 10 平方メートルの部分に通路(以下、「本件通路」という。)を開設し、これをアスファルトで舗装した。本件地役権の設定について、登記は備えられなかった。この事実を前提として、以下の(1)及び(2)の設問に答えなさい。なお、各設問は、それぞれ独立した問いである。
(1) 本件地役権の設定を受けたAは、本件通路を継続的に自動車で通行していた。他方、Bは、Cに対し、乙土地を売却した。Cは、BからCへの所有権移転登記を備えた。Bは、Cに対し、Aが本件通路を通行していることについて、好意でAを通行させているだけであると説明し、Cは、そのことを信じていた。その後、Cは、Aが本件地役権の設定を受けていることを知ったものの、その時点では、Bは、行方をくらましていた。そこで、Cは、Aが長期間不在にしている間に、アスファルトの舗装を剥がし、本件通路の痕跡を消した上で、Dに対し、乙土地を売却した。Dは、CからDへの所有権移転登記を備えた。Dは、Aが本件地役権の設定を受けていることを知らなかった。Aは、本件通路を修復し、これをアスファルトで舗装し直した。そこで、Dは、Aに対し、乙土地の所有権に基づいて、本件通路の撤去を求めた。Aは、どのような反論をすることが考えられるか。その根拠を説明した上で、その反論が認められるかどうかを検討しなさい。

論文式試験の必須科目と近い形で出題されますが、民法の法律的な知識が必要ですので、幅広い知識を習得しておく必要があります。

 

おすすめの選択科目はこれだ!

6つの選択科目がありますが、それぞれ難易度が高く難しい問題ばかりです。

そんな中で筆者おすすめの選択科目はズバリ、理工Ⅳ(生物)と理工Ⅴ(情報)です!

物理や化学はどうしても専門的な知識が必要となってきます。

そんな中、生物や情報は論文式試験対策で行ってきた論理的な回答スキルを活かせるのです。

よって、これといって自分の得意ジャンルのない方は生物や情報が比較的クリアしやすい科目と言えるでしょう。

 

3、選択科目は免除できるって本当??

ここまで選択科目の概要について解説してきましたが、実は、そもそも選択科目を受けなくてもよい場合があります

選択科目の免除制度は以下の事由を満たした場合に適用されます。

 

(1)弁理士試験選択科目の免除制度の手続について

「免除手続きの条件が分かった、さらに条件も満たしていた!」という方にお伝えしなければならないことがあります。

実は免除制度は「免除制度を利用する手続き」を書面で行わなければならないのです。

逆にいえばこれをおこなわない限りは免除を受けることはできませんから注意してください。

そこで、以下ではそれぞれの条件にある人たちがどのような免除申請手続きが必要なのかを詳しく解説していきます。

 

①論文式筆記試験(選択科目)合格者

選択科目の論文式筆記試験合格者は、合格した年からずっと選択式の論文式筆記試験の免除を受けることができます。

つまり一回合格すれば翌年からは受けなくて済むのです。

とはいえ、免除制度を使うには受験する際に提出する願書と合わせて「弁理士試験論文式筆記試験科目免除資格通知の写し」も一緒に提出しなければなりません。

 

②修士、博士又は専門職の学位を有する方

ここでいう修士、博士又は専門職の学位を有する方とは「選択科目」に関する研究をおこない、かつ修士、博士又はそれに対応した専門職の学位を有する方のことを指します。

これに該当する方は自身の研究に対応する選択科目の論文式筆記試験の免除を受けることができます。

実際に自身の研究に対応する選択科目の論文式筆記試験の免除をおこないたい場合、願書の提出より前にまず「工業所有権審議会による免除資格の認定」を受けなければなりません。

このためには最初に「弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定申請書」を郵送で工業所有権審議会会長に送る必要があります。

その際、

  • 弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定申請書
  • 各々の学位によって大学院修了証明書
  • 大学院成績証明書及び授業概要証明書

などを一緒に同封します。

ただ、この同封しなければならない書類は学位によって少し異なります。詳しくは以下を参照してください。

その後、免除資格認定の審査が行われます。

無事クリアした場合には、受験する際の願書に免除を受ける旨を必ず記載し、

  • 弁理士試験論文式筆記試験科科目免除資格通知のコピー
  • 工業所有権審議会会長から交付された弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格認定通知書及び弁理士試験短答式筆記試験一部科目免除資格条件付認定通知書
  • 大学院修了証明書及び大学院成績証明書証明する書面

を願書と合わせて提出しましょう。

 

③定められた他資格(公的資格)を有する方

以下でに記載のある公的資格を保有している方は、その資格内容に対応する選択科目の免除を受けることができます。

上記にもありますが、各資格によって必要証明書が異なります。

保有している方は、受験する際の願書に免除を受ける旨を必ず記載し、願書と一緒に提出してください。

④特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方

特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方は、

  • 短答式筆記試験における工業所有権に関する法令・条約の試験科目
  • 論文式筆記試験
  • 口述試験

の免除を受けることができます。

すなわち、短答式筆記試験の特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法のみに合格をすれば弁理士資格を取得することができます。

実際に免除の申請をしたい方は、受験する際の願書に免除を受ける旨を必ず記載し、特許庁において審判又は審査の事務に従事した期間が通算して5年以上になるものであることを特許庁長官が証明する書面を提出しましょう。

免除制度を受けたい方は、事前準備に時間がかかるものと認識し、早めに必要書類の準備に取り掛かりましょう。

 

4、サマリー

いかがでしたでしょうか?

意外と選択科目について対策が無く、どのように対策を取ればよいのか不安に思う方も多いと思います。

得意なジャンルがあればそれを選択科目として取り入れて、そうでないのであれば理工Ⅳ(生物)か理工Ⅴ(情報)を選択するのがおすすめです

また、そもそも試験を免除することができるかもしれない免除制度に関しては条件を満たしているかどうかよく確認をしましょう。その上で、満たしていたことが間違いない場合、必要書類を早め早めに用意することが重要です。

 

5、まとめ

  • 弁理士試験は筆記試験と口述式試験により構成されている
  • 選択科目とは論文式試験の中の一つで、6つの科目から1つを選択して受験する
  • 理工Ⅳ(生物)、理工Ⅴ(情報)が比較的クリアしやすい科目となっている
  • 選択科目にも免除制度があり、試験自体を免除することができる

 

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