行政書士は定年後の仕事におすすめ?公務員からも転向できる行政書士として独立開業するには?

行政書士は定年後の仕事におすすめ?公務員からも転向できる行政書士として独立開業するには?

もはや年金だけで生活するのは難しくなった今、定年後はどんな仕事をして収入を得ていこうかと考えることが一般的になりました。数ある選択肢のなかでも人気なのは、「士業」と呼ばれる国家資格を取得し独占業務を行うことができる職業です。その士業の中でも行政書士は、「街の法律家」と呼ばれる親しみやすさ、作成できる書類が10,000種類を超える「書類のプロ」としての業務範囲の広さから、幅広い年齢層に人気の資格です。

定年後に行政書士になるのは果たしておすすめなのか、また軌道に乗せるためには何が必要なのかについて、この記事で詳しくフォーカスしていきます!

1 定年後の仕事としての行政書士

繰り返しますが、もはや、年金だけで老後に生活していけるほど甘い世の中ではなくなりました。定年後に新しい職に就いて働くなら、なるべく高収入で自分のペースで長く働ける仕事が良いはずです。行政書士は、そのような定年後の仕事の条件に当てはまるのでしょうか?

⑴ 行政書士とは?

行政書士は、「書士」が表す通り、官公署に提出する書類の作成などをおこなう専門家です。

行政書士の業務は、以下の3つに分類されます。

 

役所に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理
上記以外。遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成等
上記①、②以外の、成年後見、ADRなどの新しいサービス

東京都行政書士会ホームページの資料を基に作表

行政書士の主軸業務は、許認可申請をはじめとする、行政書士法に定められた「官公署に提出する」「権利義務」「事実証明」に関する書類作成・代理・相談です。その他にも広い業務範囲を持つ資格です。詳しくは後述しますが、行政書士はこのなかから専門分野をいくつか定めて仕事を請け負っています。

⑵ 定年後に行政書士として働くには?

行政書士として働くには、他の士業と同様に登録をしなければなりません。社会保険労務士(社労士)の場合は「勤務社労士」という登録形態がありますが、行政書士にはそれはありません。つまり、行政書士として働く場合は独立開業が一般的なのです。

しかし、試験合格後も一般企業に継続して勤務し、週末行政書士として働く人もいます。このように、定年後にいきなり本番業務に携わるよりも、定年前からキャリアを積んでおく方が良いかもしれません(ただし就業規則で副業が禁止されている場合は、この限りではありません)。

⑶ 定年後でも稼げる?

「定年後は行政書士になって年収1000万をめざそう」といった美味しい勧誘を聞いたことがあるのではないでしょうか?巷には、そのような勧誘文句が溢れています。また、反対に「行政書士では食えない」という話も聞いたことがあるのではないでしょうか。果たしてどちらが正しいのでしょうか。

定年後に行政書士として独立開業した人達の年収には、大きな隔たりがあるのは事実です。

➀  公務員から行政書士になった場合

公務員試験と行政書士試験は、民法・行政法などで出題範囲が被っており、仕事にも親和性があるといえます。そして、公務員には定年後無試験で行政書士に転向できるメリットがあります。このような公務員定年型の行政書士は、公務員年金が恵まれていることもあり、貪欲に営業をかける人が少ない傾向があります。

➁  公務員定年組や廃業組を除けば年収は高い

行政書士の年収の層は、300万円以下が多数派です。ここには廃業組といえる人や、先述の公務員定年組の人が含まれます。この層を省いて計算すると、行政書士の年収はぐっと高くなるだろうという意見があります。

実際、年収500~700万円クラスの行政書士も珍しくありませんし、1000万円クラスもいます。

2 定年後の仕事に行政書士がおすすめな理由

定年人材は、その日を迎えるまで会社に勤め上げた人達ですから、経験も豊富で人脈も豊かな魅力ある人材であるはずです。様々な面で能力が高い点は有利なはずですが、体力仕事や取得困難な資格は、定年人材には向いていません。その点行政書士は、どのようなところが定年後の仕事としておすすめなのでしょうか。

⑴ 行政書士試験は誰でも受験できる

行政書士試験には、受験資格は特に設けられていません。社労士(社会保険労務士)試験の場合は、学歴や実務経験などの受験資格が設けられており、条件を満たさない場合は研修を受けなくてはなりません。受験資格がないメリットは、行政書士試験受験へのハードルを大きく下げています。また、行政書士試験は30~40代の合格者が最も多いのですが、60代以上の合格者も少なくありません。これらの点から、行政書士は定年後のために取得するべき資格としておすすめなのです。

⑵ 他の資格と比べて難しすぎない

定年後のために取得する資格としては、弁護士や公認会計士も考えられるでしょう。しかし、これらは難関資格すぎてハードルが高すぎます。一方で行政書士試験の合格率は12~15%を推移しており、頑張れば合格に手が届く試験だといえます。

⑶ 初期投資が少なくて済む

定年後の開業にともなう初期投資は、少ないに越したことがありません。行政書士として独立開業し事務所を開く場合、登録費用などで20~30万円程度が必要になります。

その他必要な設備としては、パソコンやプリンター、電話、FAX、ホームページ開設の費用などでしょう。自宅を事務所として利用できれば家賃がかからないため、キャッシュアウトが小さくて済みます。

⑷ 裁量権の大きさ

近年の新卒の就活では、「ワークライフバランス」の実現性が就活生のチェックポイントとなっているようですが、「裁量権が大きいかどうか」も同様に重要視されているそうです。確かに、裁量権の大きさを求めて独立開業する人は多いです。行政書士として開業したら、誰も指示を出してくれませんから、自ら裁量権を持って働かなければいけません。

これまでの会社員時代とは違って、定年後こそ自分のペースで働きたいという人は多いのではないでしょうか。行政書士は、報酬体系を自分で決めることが許されています。案件1件で、10、20万円の報酬が頂けるケースもたくさんあります。どのくらい仕事を受けるかに関しても、自分のペースで決めることができます。

3 定年後に行政書士として働くための心得とは?

これまで、定年後の仕事として行政書士がおすすめである理由を挙げてきました。次は、定年後スタートの行政書士として、成功するための心得について触れていきます。

⑴ どの業務を専門業務とするか

行政書士の仕事である申請書類作成は、その取り扱える書類の種類が数千にも及びます。行政書士の業務範囲は広すぎて説明に困るほどです。代表的な業務は許認可申請ですが、建設業や風俗業に特化して専門知識を誇る行政書士もいますし、在留資格を専門とする国際的な行政書士もいます。遺言や相続は司法書士との共管(共同で管理すること)業務ですが、厳密には二者がおこなえる業務範囲が少しずつ違う点に注意が必要です。

下表は、行政書士の業務分野をまとめたものですが、どの行政書士もこのなかから複数の得意分野に特化し、依頼を受けています。

営業の許認可(建設業) 営業の許認可(風俗営業) 営業の許認可(運送業)

・自動車登録

在留資格・VISA 知的財産権・知的資産
法人の設立(NPO法人) 消費者問題 遺言・相続

東京都行政書士会ホームページの資料を基に作表

⑵ 自分の強みをしっかり理解する

お分かりのように、行政書士として独立開業するなら、あなたの強みを知り専門分野を選ぶことが先決です。例えば、在留資格や帰化申請に特化して経営をおこなう行政書士事務所には、英語や中国語が得意で国際感覚がある人材が属しているものです。

また、昨今の新型コロナウィルス感染拡大によって、補助金の特例が多く設けられましたが、経済産業省系の補助金申請は行政書士の専門分野です。これに携わるなら、技術開発などに知見がある人が適しています。このように、数ある行政書士業務の中から、分の資質と合致し競合よりも価値あるサービスを提供できる専門分野を、まず探さないといけません。

⑶ 仕事がしばらくなくても暮らせるだけの資金を

行政書士はサラリーマンではなく個人事業主であるため、顧客から報酬を頂くことができない場合は無収入になります。考えたくはありませんが、開業する際には、このような事態も想定しておかなければなりません。無収入でもしばらく生活できるだけの貯えはプールしておきましょう。

また、「行政書士だけでダメなら社労士の資格も取る」と考える人もいます。行政書士で全く稼げない場合は、資格の内容が問題であるというよりも、自身のサービスを売る仕組みが構築されていないのが問題なのです。このことに気付かなくてはいけません。資格だけ増やしていったからといって、顧客獲得の仕組みがなければ、資格商売は難しいのです。

4 どうやって顧客を獲得するか

最後に、独立開業において最も重要で、最も多くの人が懸念しているであろう「顧客獲得」について取り扱っていきます。会社員時代に営業経験ゼロでも、いざ独立開業したら営業を毎日の日課としなければなりません。

⑴ 営業活動

営業活動とは何をもってそう呼ぶのでしょうか。新規独立開業者が、まず行うべき項目を挙げましょう。

  • 名刺を作成する
  • チラシの作成・配布(自身の氏名、事務所住所、電話番号・顔写真を掲載)
  • ホームページを開設する
  • 異種業種交流会に参加する

「顔写真」の掲載は重要です。あなたは自身の顔写真を、ホームページやチラシに掲載できますか?それができないとお話にならないのです。顔写真が載っていないホームページは、信頼性に欠けます。最近は会社員でも、全員の顔写真を掲載する会社があります。個人事業主の場合は顔の掲載ができないと、顧客からの信頼獲得は厳しいです。

⑵ ITツールの利用

近年、ITツールに疎いことはもはや損失になってきています。定年人材はデジタルネイティブ世代と違って、ITに弱いのが普通かもしれません。しかし、自分ができなければWebマーケティングの専門会社に依頼する、くらいの考えは持ちたいものです。

現代は便利なITツールやサービスに溢れています。簡単に使えるものもありますから、良く研究してみましょう。ITツールを利用した営業活動の例を挙げていきます。

  • ホームページを開設する
  • ソーシャルメディアを利用する(ブログ・Facebook・ツィッターなど)
  • Yahoo!やGoogleのリスティング広告を出す

リスティング広告などの費用は、毎月4、5万円くらいかかるでしょう。それくらいの投資も想定しておきましょう。

⑶ 行政書士連合会と太いパイプを築く

行政書士連合会は登録時だけでなく、さまざまな研修イベントを開催してくれたり、業務に必要ないろいろな情報を発信してくれたりします。また、昨今のコロナ禍では持続化給付金の電話無料相談の相談員にも行政書士が指定されたため、連合会が募集をかけていました。

駆け出しで仕事がない時は、特に行政書士連合会を頼りにして、小さなチャンスがあれば回して頂けるようにしましょう。

4 サマリー

行政書士として開業して、直ぐに軌道に乗ると思っている人は少ないと思います。しかし、この記事に書いたような努力を怠ると、「廃業」に限りなく近付くのは事実です。顧客獲得までは時間がかかるため直ぐには仕事が来ず、ひたすら集客する日々が続くことになるでしょう。顧客獲得の仕組みが構築できたら、あとはお客様に喜んでもらえるサービスが提供できるように努めていきましょう。

5 まとめ

  • 行政書士は、官公署に提出する書類の作成などをおこなう専門家で、定年後の仕事として人気である。
  • 許認可申請など「官公署に提出する」「権利義務」「事実証明」の書類作成・代理・相談の他にも、守備範囲を広げている。
  • 試験合格後も一般企業に継続して勤務し、週末行政書士として働く人も。会社が許すならキャリアを積んでおくのも良い。
  • 行政書士の年収の層は300万円以下が多数派なのは、廃業組や公務員定年組が含まれるから。
  • 行政書士試験の合格率は12~15%を推移しており頑張れば合格に手が届く試験である。
  • 行政書士として独立開業する場合、登録費用などで20~30万円程度が必要。

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