司法試験合格後のビジョン 〜 弁護士は年齢よりも職歴の方が重視される傾向に

司法試験合格後のビジョン 〜 弁護士は年齢よりも職歴の方が重視される傾向に

1 弁護士という職業

司法試験に合格した場合のキャリア設計として、一番多く考えられるのが弁護士になるルートです。

受験を考えたことがない人でも「司法試験=弁護士」というイメージを抱いている場合も多く、世間一般の考えとして両者の結び付きはかなり強いものなのではないでしょうか。

 

それほど弁護士は魅力的な職業であると言う印象があることを示しているとも言えますね。

以下では、弁護士という職業について3つの魅力を解説します。

(1) 弁護士の所得は高額!

まず、一つ目の魅力として、弁護士の所得が高額であることが挙げられます。

 

例えば、2018年における日本の1世帯あたりにおける平均所得額は552万3,000円でした。

(参照:厚生労働省『平成30年 国民生活基礎調査の概況

一方で、同じ2018年における弁護士1人あたりの平均所得額は959万円でした。

(参照:日弁連『近年の弁護士の実勢について (弁護士実勢調査と事件動向調査を元に

 

なんと、日本の1世帯あたりの平均所得額と400万円以上の差があります。

 

確かに、司法制度改革の影響によって、弁護士の数が増加したことにより、弁護士の平均所得は減少傾向にあり、かつてほどの高所得は望めないかもしれません。

しかし、一般的な視点で見ると、まだまだ弁護士は収入面で魅力的な職業であると言えます。

(2) 弁護士には定年がない!

また、一般企業に勤務する場合や、公務員と異なって弁護士には定年がないことも魅力です。

例えば、70歳以上になると多くの一般企業や公務員では定年を迎えています。

ところが、2021年3月31日現在70歳以上の弁護士は5,929人もいます。

日本の弁護士は43,206人いるので、そのうちの約13%は70歳以上の弁護士と言うことになります。

(参照:日弁連『弁護士数の推移/男女別年齢構成/男女別弁護士数の推移』)

定年退職後、年金支給開始年齢までの収入をどうするべきか注目される中で、定年がなく収入が得られることも弁護士の大きな魅力でしょう。

(3) 弁護士の仕事にはやりがい がある!

弁護士の魅力を問われて、『弁護士の仕事には他では得ることのできないやりがいがある。』ことをあげる先生は少なくありません。

弁護士が携わる局面というのは、民事事件であれ、刑事事件であれ、ビジネス法務であれ、他人の人生を左右するような非常に重要な局面です。

だからこそ、弁護士の一つ一つの決断に大きな責任重圧が伴います。

しかし、自分の経験と知識を駆使して、重要な局面を乗り切った時、弁護士は他には変えがたいやりがいを感じることができます。

また、トラブルに巻き込まれている依頼人を自分の手で救うことが出来るのも弁護士だからこそでしょう。

 

主体的に問題解決をしたい自分の能力を誰かのために役立てたい、という方に、弁護士はぴったりの職業だと言えますね。

2 弁護士になるのに年齢制限はあるの?

弁護士になるのに年齢制限はありません。

他の法曹である検察官や裁判官には定年があり、上限が決まっています。

(参照:検察庁法22条、裁判所法50条)

ところが弁護士は法曹三者の中で唯一そのような年齢制限がありません。

そのため、生涯現役の弁護士として活動することもできますし一般企業などをリタイアした後にセカンドキャリアとして弁護士の活動をすることも可能というわけです。

また、下限についても年齢制限はありません。

すなわち、理論上、どんなに若くても弁護士になる資格を取得することができれば弁護士になることができます。

もっとも、ここで注意が必要なのが、弁護士になるために合格する必要のある司法試験には受験資格に制限があるということです。

具体的には法科大学院を修了した者か、司法試験予備試験に合格した者しか司法試験を受けることはできません。

(参照:司法試験法第4条第1項)

(なお、令和5年から、法科大学院の在学中に一定の条件を満たせば、法科大学院を修了をせずに受験資格を認められる制度も導入されます。参照:法務省『在学中受験資格に関するQ&A

法科大学院に入学するには一定の受験資格が必要です。

例えば、大学の卒業などの資格が求められます。

一方で、司法試験予備試験は誰もが受験することができます。

大学の卒業資格なども不要ですから、高校生が受験することもできます。

 

そのため、若くして弁護士になりたい場合は、予備試験を合格して司法試験の受験資格を得ることがお勧めです。

3 司法試験合格者の平均年齢は?

次に、弁護士になるために絶対突破しなくてはならない司法試験と年齢の関係をみていきましょう。

下の表は近年の司法試験合格者の平均年齢・最高年齢・最低年齢をまとめたものです。

(参照:法務省『司法試験の結果について

上記の表を見れば明らかなように、司法試験合格者の平均年齢は28歳〜29歳であることがわかります。

この理由は、受験生の大半は法科大学院を修了して受験資格を得た受験生であり、20代の受験生が多いためです。

平均年齢 最高年齢 最低年齢 年齢差
平成18年 28.9 58 23 35
平成19年 29.2 56 24 32
平成20年 29 59 24 35
平成21年 28.8 55 24 31
平成22年 29.1 66 24 42
平成23年 28.5 60 23 37
平成24年 28.5 63 21 42
平成25年 28.4 57 20 37
平成26年 28.2 65 22 43
平成27年 29.1 68 21 47
平成28年 28.3 66 21 45
平成29年 28.8 71 21 50
平成30年 28.8 68 19 49
令和元年 28.9 65 20 45
令和2年 28.4 69 20 49
令和3年 28.3 69 18 51

なお、令和5年から法科大学院の在学中に司法試験を受験することも可能になるため、令和5年以降司法試験合格者の平均年齢は下がると考えられます。

(参照:法務省在学中受験資格に関するQ&A』)

 

4 最高齢の司法試験合格者の年齢は?

現行の司法試験制度(いわゆる新司法試験)になってから最高齢の司法試験合格者の年齢は71歳です。(平成29年司法試験)

 

例年ですと60代で司法試験に合格するとその年の最高齢の合格者になるようです。

 

なお、司法試験の受験資格は取得してから、5年を経過すると受験資格を喪失します。

(司法試験法4条1項1号、2号)

そのため、学生時代からずっと司法試験を受け続けて、60代になってやっと合格したという方はごく少数でしょう。

むしろ、高齢で司法試験に合格した受験生には、社会生活を経験してから法曹になる道を選び、司法試験に挑戦した方が多いと言えます。

 

ですから、司法試験の合格者の平均年齢より自分が高齢だから、という理由で司法試験の挑戦を諦める必要はないと言えます。

 

仕事があって法科大学院に通う余裕がないという人も、予備校を上手く活用して、予備試験に合格して司法試験に挑戦する受験生も毎年多くいます。

5 最年少の司法試験合格者の年齢は?

現行の司法試験制度になってからの最年少の司法試験合格者の年齢は18歳です。

 

例年ですと20歳から21歳で司法試験に合格するとその年の最年少の合格者になるようです。

 

若年で司法試験に合格するには、高校在学中または大学1、2年生のうちに予備試験に合格する必要があります。

 

ちなみに、予備試験の過去最年少合格者は令和3年の17歳です。

 

我こそは、最年少記録を更新するぞ!』、という志がある高校生の皆さんは是非挑戦してみてくださいね。

実際に高校生活と両立しながら予備試験の勉強をしている高校生も一定数います。

もちろん、多くの高校では法律を専門的に学ぶ機会がありませんから、独学か予備校を活用することになるでしょう。

 

大半の司法試験予備校では高校生の入塾も歓迎しているので、興味がある方は予備校の説明会に行ってみるのもいいでしょう。

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
司法試験合格と年齢の関係は?合格者の年齢データから徹底分析

6 高齢で弁護士になっても仕事はあるの?

さて、今まで司法試験と年齢の関係をみてきましたが、次に司法試験に合格した後、実際に弁護士として働く場面と年齢の関係をみていきましょう。

 

この記事をご覧の方の中には、

平均年齢より高齢で司法試験に合格しても、若い優秀な人たちより就職で不利になるのではないか?

今まで法律とは全く関係のない職種で働いていたのだが弁護士として活躍できるだろうか?

と不安に思っている方もいるのではないでしょうか?

 

(1) 就職に年齢はあまり関係ない!

結論から言いますと、弁護士の就職に年齢はあまり関係ありません

 

確かに、5大法律事務所と言われる大規模法律事務所では若くして司法試験に合格した人を積極的に採用しようとしています。

(例えば、予備試験合格者だけを対象として、弁護士事務所の様子を説明したり、所属弁護士と交流する機会を設けるウインタークラーク を開催しています。)

 

ところが、弁護士業界全体でみるとこうした大規模事務所は一部に過ぎません。

むしろ、大半の事務所は中小規模です。

日弁連の調査によると日本における全ての弁護士事務所の中で約93%の弁護士事務所は弁護士の数が5人以下の規模の事務所です。

(参照:日弁連『基礎的な統計情報(2021年)』)

 

こうした中小規模の事務所のほとんどは採用する弁護士の能力や人柄に重きをおいて評価しており、大規模事務所に比べて年齢を重要視することは少ないです。

 

そのため、自分が司法試験合格者の平均年齢より上だから就職できないのではないか、と不安になる必要はないのです。

また、次の章では年齢が上の人の方が、若い人に比べて就職で有利になる場合もあることを解説していきます。

(2) 年齢よりも職歴が評価される!

昨今の傾向として、弁護士事務所など法曹界では5年以上など一定の職歴がある人を採用するようになってきています。

職歴は、業種を問いません。

実際、事実上の年齢制限があるなどと言われてきた検察官も、近年では30代後半の任検が増えてきました。

例えば、令和2年に検察官として採用された人で最年長者は37歳でした。

法務省『第73期検事任官者について

なぜ、職歴が重視されるのでしょうか?

それは、弁護士や検察官、裁判官のような職業は市民に寄り添う仕事だからです。

会社や社会の常識がわかること、組織人としての言語が通用するということは即戦力としての働きにも繋がり、強い武器になることに間違いありません。

そして、自分が前職で得た知識や経験は弁護士として大きな強みになります。

例えば、中小企業に務めた経験のある弁護士がいたとします。

その勤務時代に得た経験は、実際に勤務した人でないと得られない貴重なものです。

職場の空気感や、上司と部下の関係性、取引先とのやりとり、ミスが発覚した際の責任の所在、納期前の慌ただしさ、などなど、いくら文献を調べても、インタビューを重ねても、実際に勤務してみないことには理解できないことは山ほどあります。

そのような現場で得た経験は、実際に中小企業に関連した案件に携わる際に大いに活用することができるでしょう。

したがって、社会人で司法試験を目指す事も、合格後を考えても理にかなったことなのです。

 

また、弁護士資格を持って企業の法務部で勤務したり、公務員として勤務するインハウスローヤー(組織内弁護士)という働き方もあります。

 

注】1.企業内弁護士数は、日弁連データをもとにJILA(日本組織内弁護士協会)調べによるもの。

     各年の調査年月については、次項「弁護士会別企業内弁護士数の推移」の表参照。

   2.任期付公務員数は、日弁連調べによるもので、各年6月現在。

(参照:日弁連『組織内弁護士数の推移』)

 

インハウスローヤー(組織内弁護士) としての働く弁護士の数は近年増加しています。

法律事務所で働く場合よりも福利厚生が充実していたり、労働時間が安定するなどのメリットが多々あることも一因なようです。

弁護士資格を取得後、このようなインハウスローヤー になる場合も、実際にその業界の関連企業に務めていた経験や公務員として勤務していた経験が大きなアドバンテージになるでしょう。

 

7 サマリー

いかがだったでしょうか?

確かに、司法試験の合格者の平均年齢は例年28歳から29歳です。

しかし、弁護士になるのに年齢制限はありません。

実際に、司法試験に18歳で合格する人も、60代で合格する人もいます。

司法試験合格者の平均年齢と自分の年齢がかけ離れているからといって、就職で不安に思う必要はありません。

大切なのは、今までの職歴です。

前職で得た知識や経験はその人にしか得られない貴重なものだからです。

弁護士になりたい!』と思ったら、まさにその時が弁護士を目指すベストなタイミングなのです。

8 まとめ

  • 弁護士は現在も高収入を目指せる職業である。
  • 弁護士になるのに年齢制限はない。生涯弁護士として活動することも、セカンドキャリアとして活動することもできる。
  • 司法試験の合格者の平均年齢は28歳から29歳である。
  • 司法試験の過去最高齢合格者は71歳である。
  • 司法試験の過去最年少合格者は18歳である。
  • 弁護士の就職に年齢はあまり関係ない。むしろ職歴が重要視される傾向にある。

予備試験カテゴリの最新記事