法科大学院(ロースクール)と予備試験の違い

司法試験を受験するには、受験資格が必要で、法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要があります。
2つのルート違いや、どちらの方が司法試験合格に有利なのかなど、いくつかの視点から紹介していきます。

 

法科大学院ルートと予備試験ルート

⑴ 法科大学院とは

法科大学院とは、「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とする専門職学位課程のうち専ら法曹養成のための教育を行うことを目的とするものを置く専門職大学院(専門職大学院設置基準第18条第1項)であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするもの(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律第2条第1号)」です。

一言でいえば、法科大学院とは、法律家を養成するために設けられた機関をいいます。

法科大学院を修了するには、2年ないし3年必要となります。

法科大学院のカリキュラム

⑵ 予備試験とは

予備試験とは、「法科大学院修了程度の知識・能力があるかを判定する試験」です。試験は短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階の試験構成となり、それぞれに合格する必要があります。

予備試験に合格すれば、法科大学院を修了しなくても、司法試験を受験することが可能となります。

予備試験合格までの道のり

 

法科大学院ルートのメリット・デメリット

<メリット①>修了すれば、司法試験の受験資格が与えられる

法科大学院は、修了すれば、司法試験の受験資格が得られます。また、令和5年度の司法試験から、一定の要件を満たせば、法科大学院在学中にも、司法試験を受験することが可能となりました。

司法試験の受験資格を得るという観点からは、予備試験ルートと比較すると、法科大学院ルートのほうが確実といえます。

<メリット②>教授との距離が近い

法科大学院は、ソクラテスメソッドで授業が行われます。ソクラテスメソッドとは、教授が一方的に講義を行うのではなく、教授が学生に対して質問形式で行う授業のことをいいます。

ソクラテスメソッドでの授業スタイルでは、教授と学生が一対一で双方向にコミュニケーションをとるため、教授と学生の距離が近い中で法律の勉強ができるというメリットがあります。

また、教授と学生の距離が近く学生が教授へ質問を行う機会も多くあります。

このように、法科大学院では、教授との距離が近いため、積極的にそのチャンスを活かせば、有意義に法律を勉強することが可能です。

<メリット③>勉強仲間が作れる環境

法科大学院には、自習室があります。授業の合間だけでなく、毎日、自習室で勉強している法科大学院生もいます。クラスメートが周りで頑張っている姿を見ると、必然的に自分も頑張らなければならないという気持ちになり、モチベーションの維持が自然と可能となります。

また、講義についての内容や、司法試験の過去問について、自主ゼミを行うこともあります。自主ゼミがペースメーカーとなって、必然的に勉強する環境を作ることもできます。

このように、法科大学院に進学すれば、自分と同じように司法試験を目指す受験生と勉強することができ、モチベーションを保ちながら勉強することが可能です。

<デメリット①>時間がかかる

法科大学院を修了するには、2年ないし3年かかります。そのため、時間的な負担がかかってしまいます。

<デメリット②>必ずしも2年または3年で修了できるとは限らない

法科大学院を修了すれば司法試験の受験資格が与えられますが、法科大学院によっては、留年率が高い法科大学院も存在します。

特に、未修コースの進級率は、既習コースと比較すると、留年率は高いです。そのため、入学すれば、ストレートに法科大学院を修了できるというわけでもありません。留年すると、その分、修了年度も遅くなり、ますます時間的な負担がかかってしまうことになるでしょう。

 

予備試験ルートのメリット・デメリット

<メリット①>時間面でのメリット

予備試験は、試験にさえ合格すれば、受験資格を得られます。法科大学院ルートのように、必ずしも2年ないし3年間拘束されることはありません。

<メリット②>司法試験の合格率

予備試験ルートは、司法試験の合格率が非常に高いです。また、どの法科大学院修了者と比べても、予備試験ルートでの受験者のほうが、司法試験の合格率は高いです。この事実からすると、予備試験ルートは、司法試験に強いといえます。

予備試験ルートの司法試験合格率

<メリット③>就職活動で有利

大手法律事務所の内定は、司法試験の合格発表前に行われています。そのため、大手法律事務所は、合否が不明な時点で、内定を出すことになります。

この点、予備試験の司法試験の合格率は非常に高いです。ですから、法律事務所の採用担当者の立場からしても、司法試験に合格している可能性が高い予備試験ルートでの受験者を採用したいという考えになるのです。

実際に、大手法律事務所では、予備試験の合格発表後、司法試験を受験するまでの間に、予備試験合格者を対象としたインターンシップを行っています。大手法律事務所は、積極的に予備試験合格者の採用を行っていることは明白です。

このように、予備試験に合格すれば、就職活動を行う場合に、有利になります。

<デメリット①>合格率が低い

予備試験の合格率は3~4%です。そのため、予備試験に合格することは容易ではありません。

<デメリット②>モチベーションの維持が難しい

法科大学院では、クラスメートや教授と毎日顔を合わせるので、誰かと勉強する環境が自然と整っています。他方で、予備試験受験生は、そのような環境は自分で作らなければ、ひとりで勉強することになります。学習へのモチベーションを維持させることが難しいという点がデメリットとして挙げられます。

 

どちらのルートを選択するべきか

ここまで、法科大学院ルート・予備試験ルートのメリット・デメリットを紹介してきました。

各ルートには、魅力的な点がある反面、デメリットがありますが、予備試験ルートを目指すことをおすすめします。

法科大学院は、平日の日中に講義が行われます。加えて、法科大学院では、講義のための予習・復習の時間も必要となり、講義時間以外も法科大学院の講義のための準備をしなければなりません。社会人の方が、働きながら法科大学院へ進学することは非常に大変です。その点を踏まえると、時間的なメリットが大きい予備試験ルートはおすすめです。

 

一方で、予備試験は、合格率が低く、難関試験です。

そこで、学生の場合、司法試験を目指すなら、予備試験ルートを目指しつつ、法科大学院進学も検討することがおすすめです。

仮に、学部在学中に予備試験に合格できなくても、法科大学院への進学を検討することが可能です。予備試験ルートと法科大学院ルートの双方を視野に入れることで、司法試験の受験資格を得られる可能性を高めることが出来ます。

また、法科大学院入試と予備試験は試験科目が重なります。基本的に、法科大学院入試は、基本7科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)の論述式試験であるため、予備試験の対策を行っていれば、十分対応可能です。そのため、両方のルートを目指しても、負担が増えるということはありません。

 

これから法曹を目指すには

以上のことから、資格スクエアでは予備試験を目指した学習をおすすめしています。

予備試験と法科大学院の違いや、具体的な学習の方針については受験相談にて詳しくお伝えしています。

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