予備試験の科目を徹底解説!科目の特色と対策方法を知ろう!

予備試験の科目を徹底解説!科目の特色と対策方法を知ろう!

はじめに
社会人になってから司法試験受験を考える人で、法科大学院に進む経済的・時間的余裕がない人は、もう一つの手段である「予備試験」受験の道を考えるでしょう。
2017年の高校生の予備試験合格者は、翌年の司法試験に大学1年生で、最年少合格者として一発合格の快挙を成し遂げたと新聞で読んだ人も多いと思います。
「高校生でも合格できるなら自分でも何とかなるかも?」という思いもあれば、5%を切る合格率に不安を覚えたりするでしょう。
この記事では、「予備試験とはどんな試験なのだろう?」、「自分にも可能性があるだろうか?」そんな人に向けて、予備試験の試験科目や合格に向けた勉強方法を解説していきます。

1. 予備試験とは?

現行の法科大学院修了者の司法試験制度が創設された平成20年ですが、政府が予備試験制度を導入したのは、平成23年からです。
法科大学院修了者のみを司法試験の受験資格とするのでは、既に社会人だったり、経済的にも時間的にも難しい人の場合、旧司法試験は誰でも受験できたのですから、急に制度を一変させるのは不公平です。
そのため、法科大学院に進めない事情のある人のために、広く司法試験チャレンジの門戸を開こうとした政府は、救済処置的な制度として、予備試験制度を設けました。
そうやって始まった制度ですが、今や時間的・経済的な負担をせずとも、司法試験にチャレンジできる別ルートとして利用する人が増加していきました。
最近では、予備試験に合格できれば司法試験合格に近づく模擬試験的として法科大学院在学中の学生がチャレンジすることも多くなったようです。
実際に、法務省のデータによると、ここ数年司法試験合格人数トップテンの法科大学院を追い越して、ダントツ一位の合格者数・合格率を誇るのが予備試験合格者となっています。
令和元年度の司法試験合格者トップテンの予備試験合格者と法科大学院の法務省のデータをグラフ化してみました。

予備試験合格者の司法試験合格率は、なんと81.8%にも及び、法科大学院1位の慶應義塾大学法科大学院の合格者数も合格率も大きく引き離して、堂々1位となっています。
予備試験は短答式・論文式・口述式の3段階の試験方式で、それぞれの試験に合格して次の試験の受験資格を得るシステムです。
では、いったいどのような試験なのでしょう。

2. 短答式試験の試験科目とは?

(1)試験内容

短答式は、平成31年(令和元年)は5月19日(日)に実施されました。

試験科目は、憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養の8科目です。

そして各科目の問題数は、各々10~15問程度で、1科目30分程度で、2科目、あるいは3科目一緒に行われますので、2科目なら1時間、3科目なら1時間半の時間で一気に解きます。

一般教養は、人文科学・社会科学・自然科学、英語という広い出題範囲ですが、40問中20問を選択でき、問題数が多いので、まとめて1時間半で解答します。

一般教養だけ範囲が広く科目数も多いので、60点満点ですが、それ以外の7科目は30点であり、合計270満点で、合格点は160点以上です。

マークシートによる解答方法で、朝から1日かけて一気に行われます。

平成31年(令和元年)の短答式試験の試験時間は、以下の通りに実施されました。

試験時間

試験科目

9:45~11:15(1時間30分)

民法・刑法・民事訴訟法

12:00~13:00(1時間)

憲法・行政法

14:15~15:15(1時間)

刑法・刑事訴訟法

16:00~17:30(1時間30分)

一般教養

合格発表は6月6日(木)17時頃、法務省HPで合格者の受験番号が発表されました。

合格通知書兼論文式受験票は、短答式の受験者の成績通知書と一緒に6月下旬に発送されました。

(2)合格ライン・合格率について

先述しましたが、合格ラインは、160点以上です。

法務省の令和元年予備試験のデータによると、受験者の平均点は、各科目5割前後なので、特別難しかったり簡単だったりする科目はなく、足切りのような致命的な落とし穴はありません。

詳しくは以下の表(法務省より引用)を参考にして下さい。

短答式試験は、点数を獲得する試験なので、160点を獲得するように、つまり6割程度の点数を獲得すれば良いということです。

令和元年の法務省のデータ によると、11,780人受験して合格者は2,696人。

その合格率は22.89%でした。

3. 論文式試験の試験科目とは?

(1)試験内容

平成31年(令和元年)の論文式試験は7月14日(日)15日(月)の2日間で実施されました。
短答式試験に合格した人が受験資格を持つ論文試験です。
令和元年の論文試験の受験者数は2,580名でした。
各科目1題ずつ出題されますが、その時間と科目は以下の通りです。

試験日

試験時間

試験科目

7月14日(日)

9:30~11:50
(2時間20分)

憲法・行政法

13:15~15:35
(2時間20分)

刑法・刑事訴訟法

16:30~17:30
(1時間)

一般教養
(人文化学・社会科学・自然科学)

7月15日(月)

9:30~12:30
(3時間)

法律実務基礎科目(民事・刑事)

14:00~17:30
(3時間30分)

民法・商法・民事訴訟法

合格発表は、令和元年10月10日(木)、法務省のHPで発表されました。
合格通知書兼口述試験受験票、論文式試験の成績通知書の発送は10月中旬でした。

(2)合格ライン・合格率について

一科目50分、10科目で500点満点です。
1科目1500文字程度の論文を、制限時間内で作成しなければなりません。
法務省のデータ によると、令和元年の論文式試験の合格率19.1%で494人が合格しました。
合格点は230点以上で、最高点333.22点、平均点191.58点です。
そして、ここまで突破して口述試験に進める人は、4.2%と聞くと倒れそうですが、短答式合格者の内18.3%です。
約5人に1人は合格できると思うと、気休めですが安心ではありませんか?

4. 口述試験の試験科目とは?

(1)法律実務基礎科目の口述試験の内容

①試験日のスケジュール

口述試験は、論文式合格者が受験できるもので、平成31年(令和元年)10月26日(土)、27日(日)に実施されました。
試験時間は1人あたり15分~30分で、試験日に個室に案内されて行われます。
スケジュール的には、1日午前・午後か、1日目・2日目の2日に分けられるか、計4パターンに分けられます。
受験票に、日程と午後とか午前とか書かれています。
順番は早ければ待ち時間が少ないですが、遅い順番だと、数時間待たされることになります。
就職試験の面接と同じですが、待ち時間はリラックスして、個室に案内されて集中できるのが理想です。
そして、その本番までに、自分の精神力を持続できるのかが、結果を左右します。

②法律実務基礎科目について

法律実務基礎科目の民事刑事です。
弁論能力を試されます。
民事では、事例を分析して解決のために、どのような法律をどう構成して問題を解決し、依頼人を利益に導くかを試されます。
刑事では、事件を分析して、どの刑罰に該当するかを法的な構成要素に該当するかを検証して、正しい罪を求刑し、あるいは弁護し、どのような判決を下すかを弁論する能力を試されます。
これらの弁論内容は、論文試験の知識で十分足ります。
卒論の後に自分の卒論について行われる口述テストのような感じです。

(2)合格ライン・合格率

時間制限はありませんが、だいたい10~15分と予定されています。
基準点60点で、57~63点で採点され、56点以下だと不合格です。
しかし、概ね60点が半数程度となるような判定とされています。
口述試験は、よほどのことがないと合格させる試験ですから、対策さえしっかりしておけば、あまり心配する必要はありません。
面接のような気持ちで、論文試験の勉強の成果を、緊張せずにしっかりと弁論できるよう雰囲気に慣れておくようにしましょう。
そのためにも、予備校や塾の口述模試等で慣れる練習をすることをお勧めします。

法務省のデータでは、令和元年予備試験の口述試験までの最終合格者は494人。口述試験の合格者数は476人だったので、合格率は96%です。
口述試験だけの合格率は高いですが、予備試験全体の最終合格率は、4%となりました。

5. 予備試験に効率よく合格するために!

(1)予備試験の勉強は論文式から始めよう

①論文式から始めるのはなぜ?

予備試験の合格は、短答式試験に合格した人だけに論文式試験の受験票が送付される、いわゆる短答式合格が論文式の受験資格なのです。
というと、短答式からの勉強かと思われがちですが、実は論文式から入るのが、合格への近道なのです。
論文と聞くと難しそうですが、内容は法律の基礎知識ですから、司法試験よりもずっと簡単です。
だから法律初心者でも入門しやすく、基礎知識ですが、その正確性を身につけるためにも、論文として書いていく事は、基礎知識を身につけるのに合理的な方法なのです。
また、もう一つ理由があります。
論文式試験を解くには、問題分析力・条文適用能力・答案作成能力が必要です。
短答式は、問題分析能力・条文適用能力が必要であり、問題を読んで、この2つの能力を駆使して、事象を読みながら分析し、どの法律で解決するかを即座に判断して問題を解いていく問題です。
法律の基礎知識を正確に身につけて入れば、短答式も制覇できるというわけです。
論文式の対策は、同時に短文式の基礎対策もできるというわけです。
しかし、逆は上手くいきません。
短文式の勉強では、問題解決のための分析能力・条文適用能力が身につきます。
この2つの能力が身につくことは重要ですが、これだけでは論文の答案作成能力が身につきません。
実は、論文は短文式の勉強で身につけた知識能力を普通に文章に使用としたら、ほぼ時間オーバーとなってしまうからです。
理系論文を普段から書き慣れている人は、そうでもないかもしれませんが、予備試験受験をする人は、文系人の方が多いので、文系の論文形式では、多くの場合文体改造が必要となります。

②一般的な文体(文系論文等)と正解答案(理系論文)はどう違うの?

Ⅰ)一般的な文体(文系論文)の場合

一般的に起承転結の文章になる人が多いと思います。
しかし、この文体(文系論文等)で論説すると、次のようになります。
<事件のあらまし→問題点・争点→条文適用→争点部分の条文該当の理由解説→結論>
この文体では非常に長い文章となり、最後まで読んでいくうちに事情はよくわかっても、争点や理由がぼやけてきて、最後に結論ですから、最後まで読まないと何が言いたいのかわからない文章となります。
内容としては理にかなっていても、まずは時間内に結論まで文章にできないので、要点はぼやけるし、結論が無い文章では、その答案は0点です。

Ⅱ)正解答案(理系論文)の場合

一方、正解答案(理系論文等)の文章は次のようになります。
<事件のあらまし→結論(適用条文)→問題点・争点→争点部分の条文適用の理由>
「起結承転」の文章です。
結論が先に来ますので、結論を想定しながら文章を読むのでわかりやすい端的なものになります。
そして、時間不足で理由が不十分となっても、事象分析と結論(適用条文)が先に来ているので、読んでいるだけで、理解している文章となっています。
例え、争点部分となる問題点を書く途中で時間切れになっても、結論が合っていれば加点されます。
つまり、部分点が取れる答案になるのです。
しかし、起承転結の文章に慣れている人が、「起結承転」の文章を書くのは、実は大変なのです。
長年かけてついた書き癖は、なかなか直りません。
だから、論文式を初めから勉強することで、答案作成能力をつけながら理解していくのが、最も効果的な勉強法なのです。

(2)初心者にお勧めの論文式の勉強方法

では、法律初心者の方が、いきなり論文式試験問題を見てもちんぷんかんぷんでしょう。
読んだだけで、「自分には無理」と諦めてしまいそうになってしまうかもしれません。
しかし、そこはちょっと辛抱して、設問の事例を読んで、どういう事態になっているのかを箇条書きでも良いので、自分で整理してみましょう。

①民事の場合から解説

まず事態の整理できたら、解決すべき問題点を見つけ、そのためにどの法律が適用できるかを考えます。
法律初心者は、ここがわからないですよね。
ですから、事態の整理がついたら、そこから解答を読んでいきます。
まず、自分の事象分析が正しかったかも検証しましょう。
次に、結論がきて、その理由として、争点や適用条文、その理由が書かれているでしょう。
なるほどと思えれば良いのですが、初心者はその文章の中にわからない部分がたくさん出てくるでしょう。
条文・その理由、争点について、わからないことだらけかもしれません。
まずは、該当する条文を理解するために、民法解説書・六法全書等を読みましょう。
解説書に該当する判例等がでていたら、それもあわせて読みましょう。
まずは、解決すべき争点を見つけて、解決すべき法律を適用するので、もしかしたら解説を読んでも、わかった気分になっただけかもしれません。
それでも、たくさんの判例や過去問の解答を読んで多くの例に触れるうちに、後から理由がついてきます。
判例の場合は、理由が詳細に書かれていたり、判事の見解が最後についていたりするので、何となく「こういうことなのかな」程度にはなるでしょう。
小さな子供が、意味がわからないまま言葉を使って、成長とともに言葉を上手に使いこなせるようになるのと同じです。
マニュアル書を読むように、「この場合はこうする」と何となくの納得でも、正解文を読み通して理解した後に、もう一度設問の文章を読んで解答を見ないで論文を書いてみるのです。

②刑事の場合

刑事の場合は、事件の概要を掴んだら、罪状の構成要素を理解しなければなりません。
行為・結果・因果関係・故意あるいは過失、この客観自由4つのが揃わないといけません。
つまり
事件の分析→罪状→行為・結果→因果関係があるかどうか→故意(あるいは過失)があるかどうか
この順に解説していきます。
民事の場合は、客観ばかりではなく、主観も入りますので、複雑ですが、刑事の場合は、パズルのピースを探し当てるように、思い込みを外して素直な気持ちで事件や事故の事象を読み解いていきましょう。
4つの構成要素を探すように読むこと、因果関係と故意あるいは過失という被疑者の心情も読み解かなければなりません。
設問がわからない場合は、解答を読みましょう。
解答を読んで、条文の構成要素がどうなっているかを暗記する必要があります。
解説書や六法全書を読んで、民事の勉強法と同様に行いましょう。
論文の文体を身体で覚える事が重要です。
そして、刑事の場合、罪状とそれに必要な構成要素がわかれば、半分正解も同然です。
現実の世界では、刑事事件の方が大変ですが、答案は刑事の方が単純かもしれません。

(3)論文試験が一通り終えたら短答式試験の問題を解こう

論文式試験問題を一通り勉強したら、短答式試験問題を解いてみましょう。
「一通りとは?」と思うかもしれません。
一通りとは、過去問を少なくとも5年分、あるいは塾や予備校・通信教育の問題集の範囲別だったり、全部通しでやった後だったり、あなたがやりやすいやり方で大丈夫です。
でも、短答式の試験は5月なので、夏くらいから勉強を始めたとして、年を明けて遅くとも2~3月くらいから始めましょう。
短答式は、マークシートの選択問題なので、既に文章が書かれています。
正しい解答、共犯・正犯・共同正犯等を選んだり、論文の考察過程の分析力が身についていれば解けます。
ただし、短答式に入っても、論文式試験問題を、試験当日の時間で1日2科目は解きましょう。
予備試験ではスピードが要求されます。
毎日やっておかないと、体力がついていかなくなります。
スポーツ選手や楽器の奏者が、毎日練習しないと、取り戻すのに休んだ数倍の時間がかかるといわれています。
予備試験も同じなのです。

6. サマリー


いかがでしたでしょうか。
予備試験の合格率は非常に低いものです。
でも、地道にやっていけば不可能な道ではないのです。
非常に科目数が多いように思えても、受験勉強と同じです。
独学では不可能かもしれませんが、過去問を研究し尽くした予備校や塾・通信教育等のスケジュールに合わせて、地道にやっていけば登れない山ではないのです。
1年では難しくても、数年かけて地道に行いましょう。
年齢が上がるほど、論文の文体を変えるのが難しくなります。
さらに、大学生は大学4年間の勉強と卒論で文体が身についてしまいますので、大学在学中の若い年齢ほど有利なのかもしれません。
丸覚えではなく、法律を理解して楽しみながら勉強できれば、それが理想です。
そういう人でないと、法曹界は向かないかもしれません。
1年間は、参考書や判例、論文式の回答書を、推理小説や週刊誌を読むように、楽しみながら読み尽くすことに費やし、その文体を読み慣れたところで、論文式の勉強を始めるのも良いかもしれません。

7. まとめ

  • 予備試験、法科大学院に進むのに経済的・時間的余裕のない人のための救済処置としてできた制度である。
  • ここ数年の司法試験の志願者は、予備試験合格者の方が法科大学院修了者よりも多くなったのが実情である。
  • 予備試験の合格率は、5%を切る難関試験であり、平成30年の合格率は4%にも満たない状況だ。
  • 予備試験は例年、5月に短答式試験1日、7月に論文式試験2日、10月に口述試験2日、11月初旬に合格発表だ。
  • 短答式はマークシート、論文式は科目別に1問ずつ、口述試験は9割以上が合格する面接試験のようなものである。
  • 合格ラインは、短答式は8科目をそれぞれ6割(160点/270点満点)以上。論文式の合格点は、500点満点中240点以上。
  • 論文試験から、その文体を身体で覚えるように勉強を始めるのが合理的である。論文式の文体と思考が身体に染みついた頃には、短答式は、マークシートの短答式なので、自然とできるようになる。
  • 口述試験は、合格させるための試験で、基準点60点で57~63点とれれば合格で、合格率も95%前後である。
  • 卒論の口述試験と同じような感じで、卒論を自力で書いた人は、ちゃんと弁論できれば合格する。
  • 予備試験の口述試験も同じで、論文試験の合格者にとっては、論文の復習をする範囲で口述試験の雰囲気に慣れ、落ち着いて弁論できれば合格できる。
  • 予備試験は司法試験の入り口として、法律初心者でも着実に勉強していけば突破できる試験である。ただし、独学は難しいので、予備試験・司法試験の研究対策をやり抜いた予備校・塾・通信教育のスケジュールに乗って勉強するのがお勧めだ。

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