法学部以外でも司法試験は目指せるの?非法学部生が法曹になるメリットも解説

法学部以外でも司法試験は目指せるの?非法学部生が法曹になるメリットも解説

法学部の学生でなくても司法試験を目指すことができます!本記事では、法学部以外の学生が司法試験を目指す方法や、『非法学部出身』の法曹になることのメリットについて解説します。

この記事を読んで進路の選択肢に『法曹』を加えてみませんか?

1 法曹になるためのステップ

法曹(弁護士・検察官・裁判官)になるには、大学の法学部を出るのは必須ではありません。

法曹になるためのステップは大きく3つにわかれます。

①司法試験の受験資格を獲得する。

②司法試験に合格する。

③司法修習を受けて、二回試験に合格する

(1) 司法試験の受験資格を取得

令和5年以降の司法試験の受験資格の取得方法は以下の3つです。

①法科大学院を修了する。

②法科大学院在学中に所定の単位を取得するなどの一定要件を満たすこと。(在学中受験資格:参照 法務省

③予備試験に合格する。

法科大学院に進学すると、修了または一定単位の取得によって司法試験の受験資格を得ることができます。

しかし、法科大学院入試にも大学卒業資格など一定の受験資格が必要になり誰でも受けられるわけではありません。

法科大学に進学した場合、授業に出席するための拘束時間が多くなります。そのため、社会人の方が仕事と両立しながら司法試験を目指すには不適かもしれません。また、年間100万円以上の学費がかかります。

 

一方で、予備試験には受験資格がありませんから、誰でも受けることができます。

また、予備試験の対策は自分のペースで進めることができるので、法科大学院に比べて仕事などと両立しやすいというメリットがあります。

さらに、予備試験対策のために予備校を利用した場合、お金がかかりますが、それでも法大学院の学費よりは抑えることが可能です。

しかし、予備試験の合格率は毎年4%ほどと極めて難関です。

 

そのため、予備試験を経由して司法試験に挑戦する場合、適切な受験対策をする必要があります。

(2)司法試験に合格する

令和5年の司法試験は、7月12日、13日、15日、16日の4日間に分けて行われます。

試験日程 試験科目
7月12日(水) 【論述式】選択科目、憲法、行政法
7月13日(木) 【論述式】民法、商法、民事訴訟法
7月15日(土) 【論述式】刑法、刑事訴訟法
7月16日(日) 【短答式】民法、憲法、刑法

(3) 司法修習を受けて、二回試験に合格する

司法試験に合格してもすぐに法曹になれるわけではありません。

司法試験に合格後、司法修習を1年間受ける必要があります。

司法修習では、裁判官、検察官、弁護士の実務を体験することで実務家として必要な知識や素養を学ぶことになります。

司法修習にいつ参加するかは司法試験合格者が自由に決めることができます。

そのため、司法試験に合格した年の司法修習に参加できない場合、翌年以降の司法修習に参加することも可能です。

司法修習中は原則として兼業が禁止されていますが、社会人の方は仕事の区切りをつけてから、翌年の司法修習に参加することができます。(裁判所法67条2項参照)

注意が必要なのは、法科大学院在学中に『在学中受験資格』に基づいて司法試験を受験した合格者です。

この場合、司法修習に参加するには司法試験に合格しただけでは足りず、法科大学院の修了資格も必要です。(参照:日弁連『弁護士になるには』)

1年間の司法修習を終えたら、『司法修習生考試』と言われる最終試験に合格する必要があります。この試験は、法曹になるために司法試験から数えて2回目に受ける試験なので『二回試験』と呼ばれています。

この2回試験に合格してやっと法曹になる資格が与えられます。

2 非法学部学生が司法試験を目指すには

非法学部の学生が司法試験を目指すには以下の3つの進路が考えられます。

(1) 法科大学院・未修者コースへの進学

法科大学院の未修者コースは、法律を本格的に学んだことがない人を対象としたコースです。修了に必要な期間は既修コースより1年長い3年間です。

入学試験

法科大学院の未修コースの入学試験を受験する場合、大学卒業資格などの受験資格が必要です。

未修者コースの入学試験では、法律の問題は出題されません。

その代わり、一般教養を測る問題や時事問題、小論文などが出題されます。

法科大学院によっては、面接試験や、外国語能力の試験が課せられる場合もあります。

② 未修者コースでの生活

まず、入学して1年目は未修者コースの生徒だけで法律の基本的知識を学びます。

そして、2年目からより発展的な授業を既習者コースの生徒と机を並べて受講します。

法律の初学者にとって、1年で法律の基本的な知識を学び、既修者と同じレベルまで習得することは、相当な苦労が必要です。

実際に、未修者コースの生徒の中には、既修者コースの生徒と自分のレベルの差を痛感して挫折してしまう方もいるそうです。

③ 司法試験の合格率

未修者コースを修了した法科大学院の司法試験の合格率は、既修者コースを修了した法科大学院生に比べて低いのが特徴です。

以下のグラフと表は直近5年間の法科大学院のコース別の司法試験合格率を比較したものです。

例えば、2021年の司法試験では、既修者コースを修了した受験生の合格率は45.4%であったのに対して、未修者コースを修了した受験生の合格率は半分以下の18.2%でした。

このような結果から、未修者コースに進学した場合、司法試験に合格するには相当の努力が必要になると言えます。

法科大学院 コース別 司法試験合格率の推移

既修合格率 既修合格者数 未修合格率 未修合格者数
2017年 32.7% 922人 12.1% 331人
2018年 33.2% 833人 15.5% 356人
2019年 40.0% 901人 15.6% 286人
2020年 43.7% 828人 17.6% 244人
2021年 45.4% 829人 18.2% 218人

(3)予備試験に合格する

① 法科大学院進学と比べたメリット

まず、予備試験の受験資格が制限されていません。そのため、法科大学院の入学試験の受験資格を持たない人でも予備試験を受けることができます。また、理論上は最短で司法試験を目指すことができます。

 

法科大学院では、修了要件を満たすために、司法試験では問われない授業の勉強や、アカデミックな科目の勉強をする必要があります。

一方、予備試験の試験科目はほとんどが司法試験の試験科目と共通です。そのため、予備試験対策に費やした勉強時間はそのまま司法試験の勉強時間となります。

 

そして、予備試験合格者は法科大学院修了生に比べて司法試験の合格率が高いのが特徴です。

以下の表とグラフは直近5年間の予備試験合格者の司法試験合格率です。

 

2021年の予備試験合格者の司法試験合格率は93.5%でした。

ちなみに、同じ年の法科大学院既修者コースの修了者の司法試験合格率は45.4%です。

② 法科大学院進学と比べたデメリット

予備試験の難易度は非常に高いです。以下の表とグラフは予備試験が開始された2011年からの予備試験の合格率です。

 

例えば、2021年の予備試験の最終合格率は3.99%でした。

法科大学院への進学や修了は決して簡単なことではありませんが、予備試験の難易度はそれ以上です。

 

『時間や費用を節約するために予備試験に挑戦したが、何年も合格することができず、結局、法科大学院進学比べて多くのコストがかかってしまった……。』なんてことにもなりかねません。

司法試験予備試験合格率推移

受験者数 合格者数 合格率
2011 平成23年 6,477 116 1.79%
2012 平成24年 7,183 219 3.05%
2013 平成25年 9,224 351 3.81%
2014 平成26年 10,347 356 3.44%
2015 平成27年 10,334 394 3.81%
2016 平成28年 10,442 429 4.11%
2017 平成29年 10,743 444 4.13%
2018 平成30年 11,136 433 3.89%
2019 平成31年 11,780 476 4.04%
2020 令和2年 10,608 442 4.17%
2021 令和3年 11,717 467 3.99%

(4) 非法学部生におすすめなアプローチ方法

司法試験を目指す法学部以外の学生におすすめのアプローチ方法があります。

それは、『予備試験合格をメインに勉強しつつ、法科大学院・既修コースの修了も視野にいれる』という方法です。

 

まず、学部生のうちは予備試験の合格を目指して勉強します。しかし、先述の通り予備試験は簡単な試験ではありません。

そこで、もし、大学4年生の時に予備試験に合格できなかった場合、法科大学院の既修コースの入学試験の対策に切り替えます。

そして、法科大学院・既修者コースに進学して司法試験への挑戦を目指します。

 

このアプローチ方法をとることで、予備試験に合格して短期間で法曹になることを目指しつつ、予備試験に落ち続けることで結局司法試験の受験資格を得ることができないという事態を回避することができます。

また、未修者コースではなく、既修者コースに進学することで司法試験の合格可能性を上げることができます。

 

予備試験の勉強は、ほとんどが法科大学院の既修コースの入学試験の対策と重なります。

そのため、予備試験の対策をすることで、十分に法科大学院・既修コースの入学試験の対策にもなります。

 

このような方法をとることで、非法学部生でも司法試験合格の可能性を高めることができるでしょう。

 

3 最短ルートである予備試験に合格するのはどんな人?

では、次に予備試験に合格するのはどんな大学の人なのかを見ていきましょう。

以下の表は文部科学省のデータをもとに、出身大学別の予備試験の合格者数をまとめたものです(大学卒業・中退含む)

直近3年間の合格者数ランキングを見ると、上位には東京大学、慶應義塾大学、中央大学、早稲田大学、京都大学、一橋大学といった名門大学が名を連ねています。

令和元年度 令和2年度 令和3年度
東京大学 92人 東京大学 93人 東京大学 99人
慶應義塾大学 48人 慶應義塾大学 50人 慶應義塾大学 50人
中央大学 39人 中央大学 31人 早稲田大学 29人
早稲田大学 32人 早稲田大学 26人 中央大学 26人
一橋大学 14人 京都大学 21人 京都大学 22人
京都大学 13人 一橋大学 13人 一橋大学 22人
大阪大学 9人 大阪大学 10人 同志社大学 9人
神戸大学 8人 東北大学 8人 大阪大学 9人
明治大学 5人 明治大学 6人 神戸大学 5人
大阪市立大学 5人 名古屋大学 5人 名古屋大学 5人
千葉大学 5人 九州大学 5人 明治大学 4人
北海道大学 4人 同志社大学 4人 東北大学 3人
立教大学 4人 神戸大学 4人 千葉大学 3人
同志社大学 4人 関西大学 4人 北海道大学 2人
名古屋大学 3人 北海道大学 2人 九州大学 2人
東北大学 2人 日本大学 2人 立命館大学 2人
広島大学 2人 青山学院大学 2人 法政大学 2人
創価大学 2人 岡山大学 2人 大阪市立大学 2人
立命館大学 2人 首都大学東京 2人 広島大学 2人
法政大学 2人 立命館大学 1人 東京外国語大学 2人
岡山大学 2人 法政大学 1人 青山学院大学 1人
日本大学 1人 大阪市立大学 1人 日本大学 1人
上智大学 1人 熊本大学 1人 上智大学 1人
関西学院大学 1人 東京医科歯科大学 1人 立教大学 1人
大阪経済法科大学 1人 創価大学 1人 関西大学 1人
東京外国語大学 1人 東京外国語大学 1人 創価大学 1人
産業医科大学 1人 愛知大学 1人 成蹊大学 1人
鹿屋体育大学 1人 埼玉大学 1人 熊本大学 1人
九州大学 1人 中京大学 1人 香川大学 1人
青山学院大学 1人 福井大学 1人 新潟大学 1人
信州大学 1人 國學院大学 1人
中京大学 1人 信州大学 1人
学習院大学 1人 大阪電気通信大学 1人
首都大学東京(東京都立大学) 1人 ハーバード大学 1人
島根大学 1人 明海大学 1人
九州国際大学 1人
京都府立医科大学 1人
アリゾナ大学 1人

4 法学部出身者でなくても司法試験には合格できる!

『法曹になるには、やっぱり法学部出身出ないと厳しいかな?』と考える非法学部の方もいると思います。

しかし、非法学部の人が必ずしも法曹になるのに不利ということはありません。

実際に、非法学部出身の法曹の方も多数活躍しています。

(1) 法学部出身が司法試験に有利とは限らない

法学部出身者が司法試験に有利とは限らない理由は2つあります。

まず、1つ目に法学部の授業は司法試験対策を想定したものではありません。

日本の法学部は法曹を養成するための学部ではないので、法学部の授業では司法試験で出題されない範囲について多くの授業時間を費やすことがあります。

そこで、法学部出身者でも司法試験対策として基礎知識をインプットをする際、司法試験予備校の授業をメインで利用することも多々あります。

 

また、2つ目に法学部の授業だけでは、司法試験を突破するために必須なスキルを習得することはできない場合がほとんどです。

司法試験を突破するためには、長い事例問題を読み解いて、論理的な答案を作成するノウハウを学ぶ必要があります。

こうしたノウハウは司法試験の過去問を使って学ぶ方法が効率的ですが、法学部の授業で司法試験の過去問を解説する授業がなされることはほとんどありません。

そこで、法学部出身者でも、こうしたノウハウは予備校の授業や市販の教材を使って学ぶことになります。

 

このように、法学部での学習と司法試験のための学習は似てはいても、異なるものです。そのため、非法学部の出身者と法学部の出身者の間の差はそこまで大きなものではありません。

よって、非法学部出身者でも効率的に司法試験対策をすることができれば十分に逆転が可能なのです。

(2) 法学部出身でなくても予備試験に合格できる!

実際に、非法学部出身者の方であっても、予備試験に特化した効率的な対策をとることで予備試験に合格されている方がいます。

 

例えば、小林様(仮名)は非法学部の出身の方でありながら、お仕事と子育てを両立しながら予備試験に合格されました。

 

小林様は、約1年半の学習期間を経て、予備試験を1回目の受験で合格されました。日々の勉強時間は『平日休日も平均3~5時間、直前期では5~7時間くらい』だったそうです。

小林様の勉強法のポイントは、予備試験の過去問を何周も繰り返すアウトプットを重視した勉強法にあります。

 

予備試験や司法試験を突破するために必要な『問題を分析して、論理的に解答を導く能力』はこうしたアウトプットの勉強を通して鍛えることができます。

(3) 法曹になった後に自分の専門知識を役立てられる!

現状、法曹の多くは法学部出身がほとんどです。

しかし、法律問題の中には、医療や知的財産、ITといった理系学部で学ぶような知識が必要な分野もあります。

また、ファイナンスなどの企業法務の分野では金融や会計といった主に経済学部で専門的に学ぶような知識が必要になることがあります。このように法律問題に対処する際に、非法学部出身の方は自分が学部時代に学んだ専門知識を生かすことができます。

このため、非法学部出身の方が法曹になることは、非常に有意義であると言えるでしょう。

5 サマリー

いかがだったでしょうか?

法曹になるためには必ずしも法学部を出ている必要はありません。

非法学部出身の方でも効率的に勉強をすることで十分に司法試験合格を目指すことができます。

また、法学部以外の出身者が法曹になることで自身の専門知識を紛争解決に生かすこともできます。

将来、専門知識を必要とする紛争に巻き込まれた当事者を救うため、司法試験に挑戦するというキャリアを検討してみるのはいかがでしょうか?

6 まとめ

  • 法学部を卒業しなくても法曹になることができる。
  • 司法試験の受験資格を得る方法は3つある。①法科大学院の修了②法科大学院在学中に一定の要件を充足③予備試験に合格。
  • 法学部以外の方は、予備試験合格と法科大学院既修コースの修了を両睨みして司法試験の受験資格を得るアプローチ方法がおすすめ。
  • 予備試験合格者は東京大学や慶應義塾大学など難関大出身者に多い。
  • 法学部と非法学部では、司法試験対策をするのにそこまで大きな差はない。
  • 非法学部出身者も司法試験・予備試験に特化した対策をすることで法曹を目指せる。

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