法律の勉強法って?【前編】~法律の勉強が難しいと言われる理由と最適な勉強法~

法律の勉強法って?【前編】~法律の勉強が難しいと言われる理由と最適な勉強法~

法律系の資格試験といえば、司法試験、宅建、司法書士、行政書士など、たくさんありますが、それぞれに共通して学ばなければならない「法律」について、日常用語からかなり離れていたり、なかなか慣れなかったり、理解が進まないことはありませんか?

法律をどのように勉強していけばよいか、勉強法がつかめず、憂鬱になりながら勉強している方も多くいると思います。

ここでは、法律の勉強法について、なぜ勉強が難しいのか、法律の勉強がなかなか進まない方のための効率的な勉強法など、詳しくご紹介します。

1 法律の勉強が難しいと言われる理由

(1) 情報の膨大性

日本の法律の数は、約1,900件あります。加えて、政令や規則などすべての法令を含めると、その数は8,632件にも及びます(令和2年12月現在)。

これらすべての法令を勉強しようとするのは、無理難題かもしれません。

さらに、資格試験では、学んできた法令を使って論文を書いたり、択一式試験を解いたりしますが、法令に規定されている条文は、後に述べるように抽象的な文言になっています。

そのため、裁判では、よく文言の解釈について争いが生じたりします。

特に司法試験や予備試験では、事例問題を解くときに、最高裁判例の示した解釈をもとに論述しますが、最高裁判例も膨大な数あるので、全ての判例を勉強しようとすると何年もかかってしまいます。

もちろん、資格試験で取り扱われる法律は全体の数に比べたらわずかなものですが、一つの法律でも、難しい単語がたくさん並べられているため、条文一つ一つを理解することはとても難しいと思います。

このように、情報は無限といっていいほどあり、法律の勉強は果てしない学問といえるのです。

(2) 抽象性が高い

法律は、条文から成り立っていますが、条文は、かなり抽象的です。

例えば、民法第709条を見てみましょう。

民法第709条(不法行為による損害賠償)

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者 は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

この条文は、例えば、交通事故で怪我をした時や、犯罪によってわざと怪我をさせられた場合などに、この条文を根拠に損害賠償請求をすることが考えられます。

一見してシンプルな条文といえそうですが、「過失」という文言は、具体的にどういった場合に過失にあたるのかは、この文言からは読み取れません。とても抽象的といえますよね。

また、

「他人の権利」の権利ってどこまでを権利といえるの?

「法律上保護される利益」ってどういう利益が含まれるの?

といったように、一つ一つの文言には、解釈をしなければ、具体的な事案に適用することができません。

そこで最高裁判例は、具体的な解釈を明らかにしているのです。

これは、ほんの一部にすぎず、他の条文にも、このような解釈が必要なものがたくさんあります。

この膨大な解釈を資格試験対策として学習しなければならないので、途中で挫折しそうになったり、終着点のない勉強が続いているように感じてしまうかもしれません。

(3) 勉強対象を絞ることが難しい

さきほどお話したように、膨大な法令の数、膨大な判例をもとに、資格試験の勉強をしていきますが、全ての法令を暗記したり、全ての判例を読んだりしていては、いつまで経っても勉強は終わりません。

特に、資格試験では、とりあえずテキストを読んだり、講義を聞いたり、インプットに時間を割いてしまいがちですが、テキストの中でも、特に重要なポイントや、覚えなければならないポイントは必ずあります。

しかし、初学の段階では、テキストに書いてある一言一句すべてを理解しようと時間をかけてしまい、なかなか勉強が進まないという話もよく聞きます。

このように勉強対象を事前に絞ることが難しいことが原因で、途中で挫折してしまったり、勉強が続かなくなってしまいます。

では、どのようにして、勉強対象を絞っていけばよいのか?

勉強を対象を絞るための重要なポイントは、過去問です。

過去問は、最も恐れてしまいがちですが、過去問を解いていくうちに、何が一番問われていて、合格のために何が一番重要なのかが見えてきます。

資格試験の勉強では、初学の段階ではインプットばかりしてしまいがちですが、最初から知識を全て入れたり、暗記したりすることは難しいことですし、一定程度の理解が進んできたら、過去問を解いてみましょう。

そうすれば、必要な学習範囲が見えてきて、インプットすべき重要な判例や知識を優先して勉強していけば、とても効率的な勉強ができるようになります。

法律系の資格試験でも、それぞれの試験によって取り扱われる内容が異なるので、それぞれにチューニングした学習が必要になってきます。

条文を読んだり、判例を読んだりと、勉強の作業そのものは一緒かもしれませんが、学習の密度覚えるべき箇所は異なってきます。

例えば、司法書士試験においては、判例の考え方・結論が重要になり、広範囲の知識を安定的に固めることが求められています。

これに対して、司法試験・予備試験では、判例の理由付けの部分を論述することが求められるので、判例が導いた結論となる理由を理解し、事案に即して条文を適切に適用することが求められます。

このように、学習の対象は同じでも、勉強の仕方、理解すべきポイント、焦点をあてる場所は資格試験によって異なります。

そのため、それぞれの資格試験において、過去問を通じて、合格に必要な能力は何なのか、どのように条文や判例を勉強していかなければならないのかを見極める必要があるのです。

特に短期合格を目指す方は、最初に漫然とインプットだけやらずに、なるべく速く過去問に着手することがとても重要です。

2 最適な法律の勉強法は?

資格試験では、上で述べたように、それぞれの試験によって対策は異なるので、ここでは、全ての試験に共通している法律の勉強法のポイントをご紹介します。

法律の勉強法のポイントとしては、

①原則・例外・再例外の関係性、

②要件効果、

③重要な最高裁判例の3つがあげられます。

(1) 法律の勉強法のポイントその1原則・例外・再例外の関係性

例えば、Xさん(買主)がYさん(売主)との間でリンゴを10個500円で購入したとします。

しかし、Xさんが500円を支払わない場合に、Yさんは、Xさんに対して、売買契約に基づく代金支払請求をすることができます。

民法第555条により、Xさんは、リンゴを10個500円で買う、Yさんは、リンゴを10個500円で売るということについて意思の合致があったいうことがYさんの主張の根拠となります。

民法第555条 

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

これが、原則です。XさんとYさんは、売買契約を締結しているわけですから、Yさんは売主の権利として、上記請求ができることになります。

これに対して、Xさんは、「リンゴがトマトだと勘違いして買ってしまった。錯誤にあたるから、売買契約を取り消したい」と主張するとします。

この場合に、Xさんは、500円の代金支払いを免れたいということで、民法95条に基づき、売買契約を取り消したとします。

錯誤による取消しの根拠部分となる民法第95条1項を見てみましょう。

民法第95条

1 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

これが、例外になります。

これに対してさらにYさんは、「Xさんには、重大な過失があるから、売買契約を取り消すことはできない」と主張するとします。

Yさんの主張の根拠は、Xさんには、民法第95条3項柱書の「重大な過失」があったとする主張です。

仮にXさんに「重大な過失」があった場合、Xさんは、売買契約を取り消すことができなくなります。

民法第95条3項は以下のような規定となっています。

民法第95条3項

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

これが再例外となります。

このように、法律には一定のルールができており、他の条文でも、こういった原則⇒例外⇒再例外の階層関係になっています。

ここでは再例外の階層までの説明になりますが、さらに再々例外というように、階層関係がさらに続いていくものもあります。

民法95条を読むだけではパッとしませんが、事案に即して考えば、「この条文はこういう時に使うのか」と理解できるかもしれません。

また条文にもよりますが、原則⇒例外⇒再例外の構造を意識しながら読んでいくと、理解が進むかもしれません。

(2) 法律の勉強法のポイントその2要件効果

ここでも民法第95条をみてみましょう。

民法第95条

1 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

さきほどの事案の例で、Xさんが売買契約を取り消したい場合の要件を見てみましょう。

民法95条に基づいて取り消すための要件は、

①-1「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(95条1項1号)

①-2「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」+「法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」(95条1項2号、95条2項)

②「錯誤に基づくもの」(95条1項柱書)

③「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」(95条1項柱書)

となります。

これらの要件に該当すれば、効果として、

「意思表示」は「取り消すことができる。」(95条1項柱書)ということになります。

上の要件を満たさなければ、効果は発生しないので、一つでも要件を満たさなければ、Xさんは売買契約を取り消すことはできません。

(3) 法律の勉強法その3重要な最高裁判例をおさえる!

民法第95条を例に取り上げてきましたが、上で挙げた要件の中でも、最高裁判例で示された解釈がある場合には、その解釈を学習して、試験本番で書けるようにしなければなりません。

最高裁判例の中でも、特に過去問に何度も頻出しているような重要な判例はしっかりおさえましょう。

3 サマリー

法律はただでさえ難しい言葉が並べられていて理解するのに時間がかかると思います。

しかし、上記のように、法律の勉強法は、勉強方法の重要なポイントをおさえて、膨大な情報から勉強対象を上手く絞ることができれば、どのように勉強すべきかが自ずから見えてきます。

これから勉強しようとしている方、勉強を始めているけど、行き詰っている方は是非実践してみてください。

予備試験カテゴリの最新記事