司法試験の受験資格を得るためには2つのルートがあります。ひとつは法科大学院を修了すること、そしてもうひとつが「司法試験予備試験」に合格することです。
法曹三者と呼ばれる弁護士・検察官・裁判官になるための最初の関門とも言える予備試験は、非常に難易度が高いことでも知られています。ここからは予備試験の内容と難易度について、詳しく見ていきましょう。
目次
1 予備試験とは
司法試験予備試験とは「法科大学院修了程度の知識・能力があるかを判定する試験」で、合格すると司法試験の受験資格が得られます。
現在の司法試験の受験資格を得るには、予備試験に合格する「予備試験ルート」か、法科大学院を卒業する「法科大学院ルート」のいずれかをたどる必要があります。
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2 予備試験の受験資格
予備試験には受験資格がありません。誰でも受験することができます。法科大学院に通う必要がないため、時間的・経済的な負担なしに司法試験を目指すことが可能です。
ちなみに、法科大学院には入学条件があります。原則として大学を卒業(※飛び級もあり)していなければならず、法科大学院の入学から卒業までには2年もしくは3年の期間が必要です。予備試験ルートに比べると受験資格取得にかかる期間が長く、学費も負担しなければなりません。
3 予備試験受験者の特徴
予備試験の実受験者数は11,000人程度で推移しています。令和元年は11,780人でした。
年齢別に見ると、20~24歳が最も多く、40代と50代の合計がそれに続くボリュームゾーンとなっています。これは、大学生・法科大学院生と、働きながら受験する社会人が多いことを表しています。
さらに詳しく見てみると、大学在学中および法科大学院在学中の合計約4500人に対して、それ以外のいわゆる社会人は約6500人であることから、学生よりも社会人が多く受験している試験といえるでしょう。
参考:法務省ホームページhttp://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/shikaku_saiyo_index.html
4 予備試験の概要
予備試験は年に1回実施され、受験回数に制限はありません。
短答式試験、論文式試験、口述式試験の3つが実施され、短答式試験の合格者だけが論文式試験に進み、論文式試験の合格者だけが口述式試験を受験できる仕組みとなっています。
(1) スケジュール
短答式試験は5月中旬、論文式試験は7月中旬、口述式試験は10月下旬に実施されます。
5月 : 短答式
憲法/民法/刑法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法/行政法/
一般教養科目
▼
短答式試験合格
▼
7月 : 論文式
憲法/民法/刑法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法/行政法/
民事実務基礎/刑事実務基礎/一般教養科目
▼
論文式試験合格
▼
10月 : 口述式
民事実務基礎/刑事実務基礎
▼
予備試験合格
(2) 予備試験合格者数と合格率
予備試験の合格者数は全体として増加傾向にあり、平成29年度、平成30年度は400人超の合格者が出ています。予備試験合格を目指すには今がチャンスであるといえそうです。
令和元年度は受験者11,780人のうち、最終合格者は476名で、合格率は4.04%でした。例年、合格率はおよそ4%前後と、非常に難易度の高い試験となっています。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成23年 | 6477 | 116 | 1.79% |
平成24年 | 7183 | 219 | 3.05% |
平成25年 | 9224 | 351 | 3.81% |
平成26年 | 10347 | 356 | 3.44% |
平成27年 | 10334 | 394 | 3.81% |
平成28年 | 10442 | 405 | 3.88% |
平成29年 | 10743 | 444 | 4.13% |
平成30年 | 11136 | 433 | 3.90% |
令和元年 | 11780 | 476 | 4.04% |
令和2年 | 10680 | 442 | 4.13% |
5 予備試験の難易度
(1) 短答式試験
短答式試験は、マークシート方式(選択式)の試験です。法律7科目と言われる、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法に、一般教養を加えた合計8科目が問われます。六法の持込は認められていません。
科目 | 得点 |
憲法/民法/刑法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法/行政法 | 各30点 |
一般教養 | 60点 |
合計 | 270点 |
・難易度
合格率は毎年20%前後で、予備試験の最初の関門といえます。配点は、法律7科目が各30点、一般教養が60点の合計270点満点です。合格点は160~170点程度で、おおむね6割程度の得点で突破できる試験となっています。
・出題形式
出題形式は正誤問題がほとんどです。選択肢すべての正誤がわからなければ正解できない問題と、一部の選択肢のみ分かれば正解を導き出せる問題があります。
正誤問題のほかには、括弧内に入る語句を選択させる問題や、学説から導かれる結論を答える論理問題も出題されます。
試験範囲は極めて広範です。各科目すべての範囲からまんべんなく出題されるため、短答式試験を突破するためには、試験範囲を抜け漏れなく学習することが必要となります。
・対策
コツコツと問題演習を重ねるのが近道
→直前に詰め込まず、半年以上前からしっかりと。
過去問を何度も繰り返し演習する
→知識の応用で答えられる問題も多い。
自信を持って正解した問題は次回から除外を
→2週目以降のスピードを上げ、できない箇所に集中。
(2) 論文式試験
その名の通り、論述によって解答するのが論文式試験です。A4の白紙4枚分に解答を書く形式は、多くの人にとって圧倒的な分量を感じるものではないでしょうか。
論文式試験こそが予備試験最大の山場であるため、これを突破することに全力を割く必要があります。科目数は法律7科目に、実務基礎科目(民事・刑事)と一般教養も加えた合計10科目です。
科目 | 得点 |
憲法/民法/刑法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法/行政法/ 実務基礎(民事 / 刑事)/一般教養 |
各50点 |
合計 | 500点 |
・難易度
合格率は短答式試験と同じ20%程度です。ただし、短答式試験を突破した人のうち20%に入る必要があることから、短答式試験よりも難易度は高いといえます。
繰り返しになりますが、予備試験合格の最大のポイントは、この論文式試験突破にあるのです。
・出題形式
論文式試験では、事件について具体的に書かれた事例を読んだ上で設問に答える問題が出題されます。事例の内容は、A4用紙1枚~数枚分にわたります。
出題される範囲は、短答式試験に比べると限定されていると言えるでしょう。同じ論点が繰り返し出題されることもあります。
・対策
過去問で傾向を知り、知識の定着率を上げる
→答案例を参照しながらでもアウトプットを重ねる。
ポイントは「少ない知識をいかに使うか」
→知識を正確に使い、答案に表現すること。
知識のインプットと答案を書く演習を同時に進める
→短期合格を目指すなら十分な時間の確保が必要。
(3) 口述式試験
試験官2名の前で口頭で問題を出され、これに答えていくのが口述式試験です。これに合格すると、予備試験の最終合格となります。
試験科目は、民事実務と刑事実務の2つです。論文式試験と同様、民事実務は民法と民事訴訟法が、刑事実務は刑法と刑事訴訟法が土台となっています。
・難易度
合格率は9割を超えています。とはいえ、論文式試験の合格者のみに課される試験のため、レベルは非常に高く、油断は禁物です。
論文式試験の合格発表から口述式試験実施までの2週間で、しっかりと対策をしておく必要があります。
・出題形式
口述式試験は、主査・副査の2人と問答を行う形で進められていきます。主査からの質問が多く、副査は補助的な質問を行う場合が多いようです。
民事実務基礎科目と刑事実務基礎科目の2科目が、2日に分けて出題されます。民事実務基礎科目では、要件事実や民事保全・執行に関する問題等が、刑事実務基礎科目では、犯人性や刑事訴訟の手続に関する問題等が出題されます。
・対策
口述式の必須分野をマスターする
→短答式、論文式でほとんど問われない問題も出題される。
論文式試験が終わってからでも間に合う
→まずは論文式試験の対策に集中すること。
緊張していても正確な知識をアウトプットするために
→ノート・単語帳・論証集・定義集で最後の確認を。
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6 予備試験に合格したら
予備試験を突破できたら、翌年5月の司法試験を受験することができます。予備試験の合格発表は11月なので、わずか半年の間に司法試験の準備をしなければなりません。
ただ、司法試験の短答式試験は3科目のみ、論文式試験の科目は予備試験と大幅に重なっているため、新たに勉強する分野はほとんどありません。適切な対策で、翌年の司法試験合格を目指しましょう。
7 まとめ
- 予備試験は司法試験の受験資格を得るための試験
- 法科大学院を修了するより、時間的・経済的な負担が少ない
- 社会人が多く受験している
- 短答式・論文式・口述式試験を実施。短答式から順に合格者のみが次へ進める
- 合格率は約4%。高難易度の狭き門
- 合格すると、半年後の司法試験を受験できる
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